表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天上天下唯が独尊 ~あたしが世界最強になるまで~  作者: はの
勇者パーティ編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/69

第三十五話 後始末

 エーザロの剣が風を起こし、風が唯の首筋をくすぐる。

 

「殺気が隠せてないわよ。馬鹿ね」

 

 唯はエーザロの方へと振り向き、エーザロの剣に齧りついて受け止める。

 そのまま首を動かしてエーザロの剣をへし折り、咥えたままの刃でエーザロの喉元を掻き切った。

 

「サ……サンターガ……様……」

 

 エーザロの首から、血が噴き出す。

 エーザロはそのまま倒れ、唯によって頭を踏みつけられた。

 

「A級。あんたのことは側近として、信用してたんだけどね。許可なくあたしの命を狙うなら、もういらないわ」

 

「かたき……を……」

 

「さよなら」

 

 そして、そのまま頭部を踏み砕いた。

 血と脳が周囲に撒き散らされ、唯の足を汚す。

 

「仕える主がいなくなっても、主への忠誠は消えないのね。王都を落とせば騎士団長が下僕になるかもってのは、安直すぎたかもしれないわ」

 

 唯はぶつぶつと呟きながら、足を地面にこすりつけて、靴の裏についた汚れを落とす。

 

「だから将棋は嫌いなのよ」

 

 唯が物思いにふけっていると、唯に首を絞められたままのエルが金切り声をあげた。

 どうしてそんなに容易く人を殺せるのか。

 早く仲間を助けさせてくれ。

 痛い、苦しい、辛い。

 あふれ出す感情が、エルの言葉をごちゃまぜにして、ただの音となっていた。

 

「わかったわかった。五月蠅いから泣かないで」

 

 唯がエルから手を離すと、エルは地面にドスンと落ちた。

 そして、目の前に立つ唯に向かって回復魔法をかけた。

 

 唯の斬られた腕が再生する。

 唯の潰された目が再生する。

 全身の火傷どころか服の穴まで治り、唯は戦いが始まる前の健康な姿を取り戻した。

 

「すごいわね、これ。今まで見たどの魔法よりも強力じゃない」

 

 エルは唯の治療が終わるや否や、急いでフーの元へと駆け寄った。

 フーの体に開いた穴に手をかざし、フーの全身を治していく。

 

「ケホ……コホ……」

 

 正常に呼吸ができるようになったフーを見て安堵する時間も惜しみ、エルはイカリの方へと走り出す。

 瞬間、ゴキンボキンとフーのいた場所から何かが折れる音がした。

 エルが立ち止まって振り返ると、そこにはフーの両手両足を踏み、骨を折る唯が立っていた。

 

「な、何をやってるの!?」

 

「へ? 五人全員が両手両足なんて動かせたら、またあたしに襲い掛かって来るでしょ?」

 

「治療させてくれるって!?」

 

「治療させてあげたでしょ? 治ったから、死なない程度に壊したのよ」

 

「そん……なの……!」

 

 エルは必死に言葉を発したが、イカリの致命傷を治すのが先だと再び走り出した。

 後方から唯が着いてきているのも気にせずに、エルはイカリの元に辿り着き、回復魔法でイカリを直した。

 

「ぬおおおおお!!」

 

 怪我の治ったイカリは目を開き、立ち上がったかと思えば唯に向かって拳を振るう。

 

「ね? こうなるでしょ?」

 

 が、唯は一対五を制したのだ。

 今更一対一で負ける気などなかった。

 拳を躱し、イカリの腕を掴んでへし折った。

 

「ぐう!?」

 

 腕一本の後は、もう一本。

 だらりと下がった両腕を前に、二本の膝も蹴り砕いて、完全にイカリの動きを停止させる。

 ばたりと倒れたイカリの頭を、唯はグリグリと踏みつけながらエルを見つめる。

 

「後の二人は、治さなくていいの?」

 

 エルは下唇をグッと噛みしめながら、残り二人の方へと走る。

 唯も当然後をついていき、エルの治したスミヤキとジビエの四肢をへし折った。

 

 

 

 

 

 

 治療を終えたエルは、その場に膝をつく。

 命こそ救えたが、決して望んでいない現状に、絶望を隠せない。

 

「さ、下僕の証明として、これをつけてくれる?」

 

 そんなエルに、唯は奴隷の首輪を差し出した。

 エルは死んだ目で首輪を受け取り、恐る恐る口を開く。

 

「これは、つけられません?」

 

「何で?」

 

「これは、私には意味がないからです」

 

「どういう意味?」

 

「奴隷の首輪は、一定の強さを持つ人間であれば、自力で外すことができるんです。少なくとも、A級以上には意味を成しません」

 

「あー、それでかあ」

 

 エルの言葉に納得した唯は、遠くで死んでいるエーザロを見た。

 どうやってエーザロが奴隷の首輪を外したのかという唯の疑問は、エルの一言で解決した。

 

 同時に、奴隷の首輪を黙って受け入れたA級剣士であるパンチェッタのことを思い出し、握る拳に力が入る。

 

「つまり、騎士団長もあたしの寝首をかく気満々だったってことね。町に戻ったら殺しとかなくちゃ」

 

「か、必ずしもそう言うわけではないと思います! 首輪を外すことはできますが、命令違反による爆破を防ぐことはできません! A級であっても、外し方を間違えれば致命傷です!」

 

 騎士団長が誰を指しているか朧げなエルではあったが、自身の言葉で誰かが唯の手にかけられると気づき、急いで釈明をする。

 唯は納得できない表情でエルを見た。

 

「ま、いいわ。理由については、後で本人に聞くから」

 

 そして、四肢を負った他の勇者パーティのメンバーと、それを取り囲むように立ち止まる兵たちを見た。

 

「あんたたちも投降しなさい? 一人でも反抗したら、みせしめに勇者パーティの誰かを殺すからね」

 

 勇者パーティの存在は、世界にとってあまりにも大きい。

 少なくとも、兵一人分の人生よりも。

 

 唯は、兵たちが手から武器を落としていくのを見て、満足そうに笑う。

 エルを担ぎ、悠々とブッチーノ町へと戻っていく。

 

 町の中には、武器を持った町人たちが控えていた。

 

「勇者たちを牢に運びなさい。全員、別々の牢にね」

 

 唯の命令が下る。

 町人たちは、勇者パーティの四人を回収に動いた。

 立ち尽くす兵たちの目の前で。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ