異世界の生活の一端を見るー一家庭の、特定人物からの考察
フェルをみていて,驚くべきこの世界の文明に触れるのである。
それは冷蔵庫に魔道レンジ、ドライヤーといったものである。つくづく人というのは行きつく先と求める幸福は共通しているものなのだと痛感させられる。そして同じ人間であるのだという同族意識もより一層増す、そして見知った機構を持つものを、この世界で見られ少しのなつかしさを覚える。
いきなりの異世界であったから、まったく別の、自分たちの常識が及びもしない世界ではないかという不安をそれらの代物は払拭させてくれた。ほんの些細な出来事ではあれど少しの安心感を感じさせるに十分なものであった。
(あの…魔道具って呼べばいいのか?)少し戸惑いながらも、より詳細に魔法技術の代物について聞きたいと思い、尋ねる。
(はい、魔力や魔石などを使って動く、この街ではごく一般的な生活用品のようですね。)
(あれは、どうやって動いているんだろうな?)
(まだ詳細は把握しかねますが、結果を生むための一手段としての魔力といったエネルギー……といったところでしょうか?あれくらいのもであれば、今のところ何の脅威にもならないと思われますが。)
(まぁな、でも同一のエネルギーを源としているのか、途中で違う形に置き換えられているのか?とか気にならないか?)
(私にとっては些細なことです。)とさも何の問題もないといわんばかりに冷え切った視線と口調でそう言い放つ。その姿は見るだけでこちらが寒くなりそうな、凍え切った降り積もる雪のように白い長髪と、少し虚ろな純白の瞳でその姿が儚げながらしっかりと映し出されていた。
(なぁあんまり慣れてなくて今気になったんだけどさー、その姿が変わるのって何なの?)
(あーやっと気づいてくれたんですかーマスター)とあふれんばかりの笑顔と限界まで見開かれた眼(吸い込まれそうである)と純真さを振りまいてうれしそうに、そうとてもうれしそうに近づいてくるのである。
(これはですねぇ、ますたぁーのぉー脳内イメージの具現化といいますかぁー、マスターの見たいように理想が映し出されるといいますかぁー、そういったものなんですよー)甘ったるくそう説明する口調に耳を傾けながら最後の仕切りなおすかのような言葉がやけに耳に残った。)
(あとぉー裸の王様やーポロロみたいに良い子とかぁー見れる人にしかみれなかったりもするぅんですよー)と甘ったるく続ける。つまり俺が甘ったるさを求めているということなのか?それともどうなんだろうか?こいつと話しているといつも冷静さを失わされてしまう。いつの間にかこいつのペースにのまれることが多いな。まぁ嫌じゃないが、俺が一番冷静に話せるのもこいつだけだしな。と彼女に気づかれないよう心の中でつぶやく。一時の平穏と気恥ずかしさの回避は何にもまして得がたいものである。
余談だがフェルのシャワーシーンは丁寧に取り除かれており、シャワーにも魔石の技術が使われていることを後になって知る。その時完全に加工された健全版異世界人の日常シャワー編とでもいうべきものを見せてもらった。とはいってもなかなかに刺激的ではあるが。ほかにも見ていない映像はあると思われるが十分な収穫はあったし今後また暇があった時にでも見ることにしよう。そうして眼前に映し出されたモニターをとじふかふかベッドへとダイブする。もといダイブはしていないのだが、正確にはゆっくりとベッドまで歩いていき、中に入るとうつ伏せになって顔を枕にうずめ、ポヨンポヨンしただけだが、そういう風に脳内で変換して、した気分になっているだけなのである。ひとしきりの爽快感と敷布団の上質で滑らかな肌触りを味わうと体勢を起こしベッドボードと自分の間に布団を置き、もたれかかる。
(この体勢が一番楽なんだよなー)と布団にもたれかかりダラーんと天井を見つめる。そこにはなにやら魔法陣のようなものが、ぽつりぽつりとあり部屋中を照らしていた。
しばらくだらだらとしたのち、今日の異世界生活1日目に思いをはせ、眠りについた。