表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/9

奥屋敷の奥の間、幼少期

 真っ白な刺繍着物を着た母の月華(げっか)と母とは色違いの薄桃の着物を着た幼子の少女の心咲(こはる)が、仲良く縁側で寄り添い並んでコソコソ話をしているように小さな声で笑顔で楽しそうに会話して座る。

 月華が庭で積んだシロツメクサで編んだ花冠を手渡されると、心咲は小さな両手で自分の小さな頭に乗せた。

 

 心咲「かーさま、どう?似合う?」

 

 心咲は花冠に両手を乗せたまま、月華へ少しはにかんだ笑顔を向けながら見上げる。

 

 月華「ええ。とてもよく、似合っているわ」

 

 心咲「そう?えへへ・・・なら、とーさまにも、見せたいな・・・」

 

 頬を薄ら桃色に染めて照れながら嬉しそうな笑顔を浮かべていた心咲は、【とーさま】と言葉に出した瞬間、顔色が曇り寂しそうに言う。

 

 月華「・・・海里(かいり)さんとは、月に一度の式礼の儀でしか会えない、しきたり・・・心咲も分かってるとは思うけど・・・自分の父親ですもの、会いたいわよね・・・私には・・・どうしてあげることもできなくて・・・不甲斐ない母で、ごめんなさいね・・・」

 

 御役目と言っても心咲はまだ幼く、父親が恋しい時期である。それを考えると居た堪れず、月華は悲しそうに心咲を見つめる。

 心咲はそんな月華を見てぎゅっと一度、どこか心中察したように花冠を強く握りしめた後、さっとその両手を月華の腕にしがみついて顔を隠すように埋める。

 月華はやるせない気持ちで、反対の手で心咲の頭を優しくゆっくりと撫でた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ