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籠の中の鳥たち   作者: 天沢 綾
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1-2

 

一週間前‐午後11時過ぎ。

 

ライトグリーンのSUV車。窓を景色がビュンビュンと後ろへ過ぎ去っていく。アクセルをぐんと深く踏み込み、ハンドルを力いっぱい握っているのは梨沙だった。


「今すぐ停まるんだ、梨沙」

 

助手席から必死に()()る涼太の声を聞き流し、梨沙はまっすぐ前だけを見つめながら、暗い夜道を突き進んでいった。


いつしかパトカーのサイレンが聞こえてきた。涼太が助手席からバックミラー越しに後方を見ると、100mほど後ろで、パトカーのライトがちらちらしているのが見えた。


「まずい」

 

梨沙が信号のない一直線の道を制限速度を上回るスピードで走っていたのは、数十分前にアパートでかわした(くだ)らない(いさか)いが原因だった。


言い争いの末、梨沙はついカッとなりアパートを出て、車に飛び乗った。涼太は(あわ)てて後を追い、間一髪のところ、助手席に乗り込んだのだった。


「このままだと……。梨沙、今すぐスピードを落して」

「悪いことをしてるんだから、素直に(つか)まればいいのよ。そうでしょう?」

「あのくらいの言い争いで、そこまでおかしくなるのか? 自分が今、何をいい、何をしているのか(わか)ってるのか!」

「えぇ、解ってるわ」

「いいや、ちっとも解ってない。解ってないから行動に移せないんだ。――答えて、僕は誰?」

「警察官」

「そう! 警官! わかる? 警官だぞ! 警官が助手席に乗っておいて、スピード違反なんて!」

「それくらい、別にいいんじゃない」

「はぁ!」


もう終わりだ、涼太は思いながら、助手席で頭を(かか)えた。

(あぁ、もう、どうにでもなれ……)

涼太が顔を上げた時、パトカーは自分たちの車を追い越し、サイレンを鳴らしながら猛スピードで前方へと去って行った。


「よかったわねぇ、私たちを追っていたわけじゃなかったみたい」

「今、よかった、って言った?」

「えぇ、言った」

「よくない! さっきの一瞬で、何もかも終わっていたかもしれないんだぞ!」

「そうよ。ここで涼太が私を現行犯逮捕すればいいんだわ」

「……ったく。あのスーパーに車を停めて。運転は交代だ」

 


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