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皇国で武器を取ったら、次は闇のダンジョンだ。ここはいつメンとグロリア様の分の装備を揃えたっきり。今回は、フェリックス氏とアンナさんの腕輪まで狙いたい。
「ふん」
ヴィンちゃんが左の拳を右の手のひらで受け止める抱拳礼を繰り出すと、雑魚からボスまで全てのモンスターが、ペシャリと潰れた。ヤベえ、これ今までのどの高速周回より速ぇ。
「ふん」ペシャリ。拾う。戻される。
「ふん」ペシャリ。拾う。戻される。
1分間に2〜3周できる。闇の腕輪、いや各属性の腕輪のドロップ率は、大体1/200程度であるが、1時間に150周くらいして、半日で腕輪が二個落ちた。このダンジョンにはしばらくお世話になると思っていたが、あっちゅう間に攻略が完了してしまった。
光のダンジョンは、もっとエグかった。彼が龍神なせいか、廃教会の祭壇で「祈る」というアクションが不要。手で何かをこじ開ける動作で、無理やりダンジョンへ侵入、「ふん」ペシャリで終了。飛翔すら使わずして、闇のダンジョンの周回速度を超えた。
光の腕輪も、無事半日で二個ゲット。これでフェリックス氏とアンナさんが光属性に戻っても、闇属性から元に戻らなかった場合でも、役に立つだろう。更に、キール、ダヴィードにおいても、自属性とは違うが、光属性の武器ならば、多少ダメージの通りが良いはずだ。
私は、時間が余ったら、王都の上級ダンジョンのアイススライムを狩りに行こうと計画していたのだが、どうやら不要そうだ。このスピードで周回できるなら、こちらの方が時間あたりの経験値効率が良い。
しばらくして衝撃的な事実が判明したのだが、それは何と、私抜きで周回してもらっても、大丈夫だということだ。5の四人組は、ヴィンちゃんと共に、祭壇の間に現れては消え、現れては消え。しかも私はヴィンちゃんと契約しているせいか、私にもちゃんと経験値が入ってくる。私は廃教会の奥の部屋で、一人黙々と攻略ノートを作り始めた。
そして更に衝撃的な事実が判明したのだが、私とヴィンちゃん方式で、彼らも竜を召喚して、ヴィンちゃんと一緒に周回してもらうと、本人不在でもちゃんと経験値を入手することができた。先日皇国で契約したカイル爺の緑の竜とともに、龍神と愉快な仲間たちは、主不在で元気に周回を始めた。ヴィンちゃんは「なぜ我が」という顔をしていたが、「ありがと、助かるよ」と声をかけると、「うむ」と言って、張り切って周回に戻って行った。
残った私たちは、廃教会に残された奥の居住スペースで、雑談をしながら攻略ノートを作っていた。
「いよいよ自分で何もしなくても、経験値稼ぎなんてね…」
デイヴィッド様がため息をついている。彼はヒーロー願望満載で、フェリチャーナ姫に良いところを見せたいのだが、そんなことはどうでもよろしい。彼には、かつてデイモン閣下とエリオット氏に放った、「いいですか、レベル上げは効率、レベル上げは作業なのです」の一言を贈っておいた。彼らには、ここの周回が一息ついたら、領都や王都で取れるスキルは全て取ってもらって、スキルの種子を吐くほど喰わせてやる予定だ。
後は、宝錫や鍵、魔鏡やタリスマンなど、攻略上絶対必要なものや、あると助かるものなんか、全部200年後の現在から持ち出そうかと思ったのだが、過去の世界線で何かあって、いざという時にこちらで必要になるかもしれないからと、その辺は過去で調達することにした。まあ、在処も取得方法も全部覚えているから、問題ないだろう。これらもノートに書き記しておいた。後で回し読みしてもらう。
それにしても、話の流れから言って、今回のヒロインはフェリチャーナことアンナさんだろう。妹姫は現在、立派な男だし。前回の200年前には、キールとダヴィードと、両方と仲良さそうだったが、勇者の装備を身につけられるのは一人。今回はどっちにするんだろう。やっぱ、年齢的にデイヴィッド様だろうか。現に今、夫婦なわけだし。
「それなんですが、アリス様」
なんとアンナさんとカイル爺は、アンナさんの前世でご夫婦だったらしい。
「諸事情により、短い間でしたが」
「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ」
デイヴィッド様が、この世の終わりのような顔をしていた。どうも親密度で言えば、キールの方が100歩も200歩も進んでいるようだ。
ジジイやるな?の巻。(ノ´∀`*)
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