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AGI極子爵令嬢の逃亡劇  作者: 明和里苳


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52/73

70(6−4)

今回も、読んでくださってありがとうございます。

 ところが200年後に集結し、さて魔王をどうやって倒せばいいのか、と調べている間に、私たちが学園で魔王を倒しちゃったと。


「ですから、私共わたくしどもはあなたに深く感謝しているのですよ、アリス様」


 魔族が消え、残る王妃一派も消え。領都に居ながら、ある程度情報は掴んでいたものの、200年前からの宿敵を、想定よりも早く、鮮やかに始末したアリスたち。しばらく情報は錯綜さくそうしており、最初に領都に訪れた時には、まさかデイモンと学友たちが、ということだったが、のちにアリスが有用な情報を持ち、彼らが常人離れした強さを持つことが分かり、本当に彼らが宿敵を倒してくれたのだ、と確認したという。


「我らは魔王を倒すという目的で、四人まで集めたのは良いものの、それ以外に魔王を倒す目処も立っておりませんでしたからのう…」


 そう。彼らは攻略情報を持たず、手探りで討伐を計画していた。5ファイブの中では、姉姫もしくは妹姫が、例の伝説の聖女と勇者の装備を整え、魔王と対峙するわけだが、肝心のフェリチャーナもフェリーチャも、今世では闇属性だ。伝説の武器防具が使えない。魔王もただやられたわけではない。再び転生の輪に入る姉妹に、反転の呪いを掛けたのだ。闇属性では、光属性専用の聖女の装束は使えず、魔王に対して有効な打撃を与えるスキルを持たない。先に逃がされた妹姫のフェリーチャにおいては、性別まで反転させる徹底ぶりだ。


 外見も全く違う。可憐なブロンドの姉妹は、黒髪黒目と、一目で闇属性と分かる姿にされてしまった。闇属性を持つ者は、今も昔も何かと忌避される。どの時代に生まれ変わろうと、平凡で平穏な人生とは、いささか縁遠い。してや、一目で分かる者は特に。現にフェリックスは生まれて間もなく孤児院に捨てられていたし…この辺は、彼は古ぼけたドレスに包まれていので、今世どこかの夫婦から生まれたのか、それとも生まれたばかりのところまで時をさかのぼった状態でこの時代に「落ちた」のかは、定かでは無いが。


 優しく甘い顔つきは、凛々しく。痣の位置は、体の見えにくいところに。反転は徹底していた。私も、フェリックス氏の痣とFeliciaの刺繍を見て、まさか彼がフェリーチャ姫だとは、まったく結び付かなかった。




 フェリックスは、自分がフェリーチャ王女だと聞いて、全くピンと来なかった。だが、アンナの痣を見て、うっすらと思い出した。いつも物静かで理知的な、長いストレートのブロンドの少女。お転婆な自分が何かやらかすと、いつも「姉上、姉上」と泣きついて、その度に彼女は自分をハグして、やさしくあやしてくれた。双子だというのに、彼女は常に「姉」であった。その姉上が、ある時思い詰めた表情で私を呼び出すと、彼女の背後に開いた暗い穴に、私を突き飛ばした。姉上、なぜ。それから彼は、永遠とも思える長い間か、もしくは一瞬か。暗い暗い穴の中を、ひたすら落ち続けた。だから彼は今でも、浮遊感や落下の感覚が苦手だ。


 デイヴィッドは、生まれた時からいつも、何かに急き立てられるように、強くなりたかった。誰よりも速く、誰よりも強く。ダッシュウッドの麒麟児と呼ばれ、学園でも敵無しだった彼は、それでもいつまでも強くなりたいという渇望感を抑えられなかった。そんな時、お忍びで訪れた学園祭で、長いストレートの()()()()()()()の少女に心を奪われた。皇国では、彼女と共に死線を潜り抜けた。やっと、自分が仕えるべき姫を守れた、という達成感。しかし彼女は、自分を必要としないほどの強さを持ち、のちにあの強大な敵を、一人で易々と倒して見せた。敢えて顔には出さないが、言いようのない虚脱感と虚無感。彼は帰りの馬車の中では、ほとんど無言だった。


 今、こうしてようやく答え合わせが訪れた。彼が何としても護りたかったのは、彼女ではなかった。あの時、自分の力がわずかに及ばず、目の前で命と引き換えに魔王を封印した、長いブロンドの少女。自分があと少し強ければ。自分があと少し速ければ。ずっとその一念を抱え、彼女のために強くあろうとした、その彼女は、ずっと自分のそばにいた。しかも妻として。




 彼らの話は、思ったより手短に終わった。なんというか、「でしたとさ、おしまい」という感じで。だが、アリスは話が終わっても、しばらく考え込んでいた。そして、解散しようとする彼らに、言い放った。


「魔王、倒したいですか?」

【悲報】アリス、いろいろ人違いされてたの巻。

彼女が童顔なのがまた、彼らの人違いに拍車を掛けております。


もうこのへん、詳細に描写する文章力がなくて、何度も挫折したのち、やはり説明回に落ち着きました。

この章は説明回の連発で終わるかもです…。(´Д⊂ヽ


今回も、読んでくださってありがとうございます。

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温かい応援、心から感謝いたします。

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