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外伝1

今回も、読んでくださってありがとうございます。


※注意※ 37話の別視点になります。

ちょっと乙女ゲー的な感じになります。

読まなくても全く問題ありません。

この作品に乙女ゲーを要素をお求めでない方は、回れ右でお願いいたします。


クリスマスにリア充をのろいたい方に捧げます。

「すっ…げ…」


 デイヴィッドは、目の前の妖精姫アリスの舞いにに釘付けであった。学園祭の日、領地からこっそり抜け出して、話題の模擬戦を見に行ったとき、何を思ったか彼女は装備を仕舞い、学生服で王太子と相対した。涼しい顔で王太子の攻撃をかわし切り、わざとミスを装って彼の攻撃を誘い、いとも簡単に舞台に沈めた。


 その後、おびただしい魔物が現れた時も、動揺一つせず、弟や母に迷わず指示を出し、怪我人の一人も出さず、初手で完封した。


 正直、これまでの人生で、欲しいものは何でも手に入った。やりたいと思うことは何でもこなせたし、達成したい目標もすべて叶えてきた。ぶっちゃけ、人生ってチョロいもんだと思ってた。


 そんなデイヴィッドが、人生で一番感動した。こんなに心が震えたのは、初めてだと思った。


 だが違った。あれが一番じゃなかった。


 彼女はあの時、本気の一部も出していなかったのだ。風のドレスが、細剣が、彼女の風属性スキルと呼応して、淡く輝く。そして、目にも止まらぬスピードで、竜の弱点を確実に狙って叩く。


 自分が父とは違う特質を持っていることは、気づいていた。いくら鍛え上げようとしても、父や弟のような体格は手に入らなかった。その代わりに、自分には圧倒的な剣速があった。剣速だけなら誰にも負けない。自分は自分の剣を極めよう。そして、若くしてある程度、極めたつもりだったのだ。


 だが違った。圧倒的な剣速とは、彼女のものを指すのだ。


 心臓が苦しい。掴まれたというより、もはや握りつぶされそうだ。この感情をどう表現したらいいのか、デイヴィッドには分からなかった。




 嫌なものを見てしまった。デイヴィッド様の横顔、あれは男が女に本気になる時の顔だ。


 お嬢というのは、不思議な女だ。生まれる前に、この世界を物語として遊んだことがあるという。前世では、恐らく今の俺と同じくらいの人生を生きていただろう、ということだが、中身がまるで子供と変わらない。面白そうなことに飛びつき、美味しそうなものに目がなく、面倒そうなことからは脱兎だっとの勢いで逃げる。色恋沙汰もそうだ。


 彼女の婚約者役の選定では、辺境伯家の中でもそれなりの腕があるということで、俺に決まった。デイモン様によれば、彼女の過去世において、周囲は黒目黒髪ばかりだったというから、それもあるだろう。要は、彼女を落として囲い込め、ということである。長い任務が始まった。


 俺と同じくらいの年齢まで生きていた、というのはあながち間違ってはいないようだ。辺境伯家の目論見もくろみをすぐに見抜き、俺を見てはハニトラだと逃げ回るようになった。肯定するわけには行かないから、否定してはさりげなく接近を繰り返したのだが、少しでも誘惑の匂いを嗅ぎ取ると、拒否反応と警戒心がすさまじい。自己評価が極端に低く、いつもは腹立たしいほどに鈍感なくせに、こういう時だけ異常な鋭さで、一目散に逃げて行く。


 彼女の侍女のブリジットによると、「彼女は野鳥と同じ。捕まえようとすると逃げるから、巣箱と餌を置いて見守るのが良い」とのこと。デイモン様は、彼女がなつくブリジットをパートナーに据え、間接的にお嬢をおびき寄せる方針に決めたようだ。正直、彼女を手元に置いておくには、それが一番賢いやり方だと思う。


 俺はある時から、任務としてお嬢を落とすことは諦めた。何なら、お嬢が望むなら、辺境伯家から逃してやってもいい。願わくば、その時は俺も一緒について行きたいが、一定以上の距離に踏み込まれるのを嫌うお嬢について行くという意味でも、隠密を抜けるという意味でも、厳しいだろう。




 辺境伯家は、まだ彼女を囲い込むことを諦めてはいない。特にグロリア様は、お嬢をお気に入りだ。どんな手段を使ってでも、逃すつもりはないだろう。デイヴィッド様はその感情をえてストレートに表現する手段に出ているが、正直悪手あくしゅだ。お嬢は、まるでおとぎ話の妖精。鳥籠に捕えられるような女じゃない。


 ダニエル様も、


「何ということだ…」


 とため息をこぼしている。アーネスト坊ちゃんは、ただ涙を流して、地竜が倒れ伏すのを見ていた。

先にネタバラシをしてしまうと、このAGI極に限ってそんな真面目なラブストーリーが展開されるわけがない。

デイヴィッドもアリスもそんなタマではないのです。

フェリックス氏、残念。


今回も、読んでくださってありがとうございます。

評価、ブックマーク、いいね、とても励みになります。

温かい応援、心から感謝いたします。

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