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今回も、読んでくださってありがとうございます。
デイヴィッドは甚だ不機嫌であった。せっかくアリスと良い感じに距離を詰められたと思ったのに、とんだ邪魔が入ったものだ。まるで自分に媚び諂わない、まるで自分を異性視せずに、あたかも長年の気の合う友人のように、同じものを食べ、同じものを見て、同じタイミングで笑える女。彼女との貴重な時間を邪魔されて、今までの人生で、一番怒り狂ったかもしれない。母には止められたが、ジャスティンの弟、ジュリアンと言ったか。先ほどセシリー嬢が奇妙な声で「貴様には地獄すら生ぬるい」と呟いていたが、まさにその一言だ。彼には一度、お勉強が必要だろう。
その後、アリスとセシリー嬢が、「退かぬ!媚びぬ!顧みぬ!」とか「世紀末救世主伝説!」などと盛り上がっていたが、そのうち「もうあれが見られないのか」としんみりしていた。何事かと声を掛けようとして、ブリジット嬢に止められた。あれは付き合ってはいけないヤツだそうだ。悔しいが、ここは退いておこう。セシリー嬢が女性でなかったら、最も危険な排除対象である。
アリス・アクロイド。その辺のどこにでもいそうな貴族令嬢。黙っていれば、可憐な少女。蓋を開ければ、誰よりも速く、誰よりも自由で、誰よりも自分を強きに導く女神。彼女は、デイヴィッドの欲しいものを、全て持っていた。絶対に、逃すわけには行かない。
「あんな荒ぶった兄上、初めてだぞ…」
デイモン閣下が、二の腕をさすりながら震えている。
「グロリア様の血筋を見ました」
お通夜のような雰囲気のエリオット氏。まさに今のデイヴィッド様は、標準語モードのグロリア様に瓜二つだ。
「よっぽど楽しいデートだったんですか、お嬢様?」
「そうなんだよぉブリジット。市のシャワルマうんまー、お面がバーン、水タバコブワーだったのにさぁ、あんのショタ野郎が」
公衆の面前でオーネ呼ばわり。奴は万死に値する。
「ゼニ○メと一緒に、捻り潰してやる」
「ゼニゼニ」
裕貴くんの気の抜けた合いの手が入る。やめれ。
さて、別行動した彼らの釣果であるが、ブリジットと裕貴くんは、可もなく不可もなく。フェリックス氏と一緒に市を周り、デートスポット探し。色々終わったらダーリンたちとデートに繰り出すそうだ。裕貴くんが何やら言いたそうにしていたが、ブリジットに止められていた。何かあったのだろうか。まあ、彼女らが言いにくいなら、敢えて聞くまい。
一方宮殿組は、皇国学園の現状について、皇妃様に相談しに行ったらしい。このままでは、協力を続けるのは難しいと。何しろ、最も重要な記憶を持つアリスがオーネと侮られるようでは、計画は立ち行かない。彼女は詳細なレポートを上げてくれてはいるが、彼女以外はそのゲームとやらを体験したことがないため、レポートだけを頼りに「攻略」と「クリア」に導くのは、不可能に近い。先日の遺跡の隠し扉にしたって、「入って左に隠し扉がある」「入り方は、微妙に窪んだ場所に魔力を注ぐ」と書いてあっても、実際にその場で見るのとは大違いだ。いわんや、その先のダンジョンをや。彼女抜きで初見で挑もうものなら、たとえ相応のレベルを持った彼らでも、踏破できたかどうか分からない。敵も強いし、なんせギミックがエグいのだ。
協議の結果、急遽皇国学園にて、親善試合が行われることとなった。彼らが真に大将級、中将級の竜を持つ実力者であること。アリスに至っては、竜がなくともそれ相応の能力があると知られれば、侮る者もいなくなるのではないか。多少注目を集めてしまうことは致し方ないが、これを機に皇族の子息も認識を改め、協力的な態度に転じるのではないか、ということである。
オーネの汚名を雪ぐ日は、思ったより早くに訪れそうだ。
日曜日は、みんなと昼食を摂ってから、寮へ戻る。帰り際に、フェリックス氏に呼び止められた。
「お嬢、これ」
彼の胸元を飾っていたネックレス。ペンダントトップが聖銀で、中にはアメジストが埋め込まれている。彼の首から外し、そのまま私の首の後ろに回し、金具を留める。
「外に出たきゃ、それでいつでも俺を呼びな」
またちゃんとしたヤツ用意するからよ、ということであった。ちょ、これ、魔道具じゃん。魔道具ってクッソ高いんですけど。
「あー、いいなぁアリスちゃん。僕も君に何か贈っていい?」
その様子をデイヴィッド様が目ざとく見つけて、割り込んでくる。顔はニッコニコだけど、昨日帰ってからなんか超怖ぇよ。
「えっ?はぁ、まあ…」
「じゃあ、約束ね!ふふっ、楽しみだなぁ」
彼は一見ご機嫌な様子で、みんなと男子寮行きの竜車へ乗り込んだ。フェリックス氏は、グロリア様とアンナさんと一緒に宮殿行きの竜車へ。私たちは女子寮へ。3-3-3、一人足りないサッカーチームのようである。
「アリスさぁん、モッテモテですねぇ?」
裕貴くんがニヤニヤしている。
「ちょ、セシリーちゃん。お嬢様をからかわないの。またこの人照れて逃げるっスよ」
「照れてないし!」
自分でもちょっと顔が火照っているのが分かる。くっそ、ハニトラめぇ!
「でもさぁ、ネックレスって、首輪っぽくてちょっと独占欲チックじゃないっスか?」
「あー、閣下が張り切ってブリジットにプレゼントしそう」
「あぁん俺もエリくんからアクセ欲しいなぁ〜」
聖銀やオリハルコンは、超級ダンジョンの亜竜がいっぱい落とすので、腕輪の中に山ほど入っている。後でこっそりデイモン閣下とエリオット氏に渡しておこう。いつメンの彼らと回っていた時には、雑魚ドロップはほとんどスルーして、超高速周回してたもんな。後発組とは、みんなでドロップ品を山分けするようにしている。みんな私に押し付けたがるので、腕輪の中がすごいことになっているのだ。これ、あとどんくらい入るんだろう。
その日は早々にベッドに入って、翌日に備えた。裕貴くんにイジられるのも面白くないし。だが、枕元に置いたネックレスと、左手の薬指に嵌めた指輪が気になって、なかなか眠れなかった。
例によって、ジュリアン君も人名辞典から、適当にJで拾ってきました。
次は、どんなキャラに名前を付けるか決まってないが、Kだな。(←
竜の階級については、全てWikipedia様からの丸パク…丸写…参考にさせていただいておりますです。
レベル5 少尉級 Leutnant(L)
レベル10 中尉級 Oberleutnant (OL)
レベル20 大尉級 Hauptmann(H)
レベル30 少佐級 Major(M)
レベル40 中佐級 Oberstleutnant(OTL)
レベル50 大佐級 Oberst(O)
レベル60 少将級 Generalmajor(GM)
レベル70 中将級 Generalleutnant(GL)
レベル80 大将級 General(GEN)
上級大尉と准将はスキップ。
中尉と中佐が分かりにくい。
目下の悩みは、出てくる単語のどこまでをドイツ語風に、どこまでをアラブ風にするかというところ。
雑なチャンポンで申し訳ありません。(´Д⊂ヽ
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