外伝4
今回も、読んでくださってありがとうございます。
あけましておめでとうございます!
新年一発目の話がアレで申し訳ありません!
先に謝っておきます!
ダダダダダダダ、バタン。
ダッシュウッド城の一角、使用人などが暮らす宿舎棟で、廊下を慌ただしく走る音が聞こえる。緊急時には致し方ないとして、貴族の館で響いて良い音ではない。その騒音を立てた人物もまた、普段そのような粗相を犯すような者ではないのだが
「助けてください!」
そのまま政務棟を駆け抜け、執務室まで転がり込む。着衣は著しく乱れ、シャツのボタンは無惨に引きちぎられていた。これが女性ならば、すわ乱暴かと肝を冷やすところである。
「エリオット、一体どうしたのだ」
部屋の主は、ノックもせずに飛び込んできた部下に声を掛ける。だが大体予測はついている。この男が血相を変えて逃げ込んでくるというと、その原因は一つしかないことを。エリオットは内鍵を掛け、補助錠を掛け、応接用のソファーなどを扉の前に移動させているが、やがて部屋の前で鈴を鳴らすような可憐な声が響いた。
「エリくん?ここにいるのね?」
「ヒッ…!」
かすかに金属音がしたかと思うと、内鍵はクルリと回転し、補助錠もそれに続いた。まるで一度解いたことのある知恵の輪のようだ。細い腕のどこにそんな膂力があるのか、ソファーをひょいと持ち上げては元にあった場所に戻す。現状復帰までに約30秒。
「も〜、デイモン様のお部屋でかくれんぼしちゃダメだぞッ☆」
満面の笑みで近づいてくる、絶世の美少女。その手には、見慣れぬ物体があった。
今日は新年節の祝日。政務棟は、一部の常駐部門を残してほぼ無人である。休日ゆえ、本来ならば部屋の主であるデイモンも、部下のエリオットも、出勤してくる必要はないのだが、なぜか他のパーティーメンバーも、何だかんだと集まってくる。ある者は休暇であっても仕事を片付けておきたいから。ある者はその手伝いに。そしてある者は、暇だから。結局それから10分もしないうちに、いつしかフルメンバーが揃っていた。
部屋の隅で、エリオットが体育座りで震えている。そこに上着を掛けてやる上司。後からやってきたブリジットが手際よくお茶を用意し、アリスとセシリーが真っ先にお茶を楽しむ。いつもの光景である。いつもと違うのは
「セシリー嬢。その、いつもの営みだとは思うのだが、流石にそれは無いのではないか…」
「えー、だって閣下、今年はウサギ年ですよ?」
そう、彼の手にあった物体、それはウサ耳カチューシャに網タイツ、そして尻尾つきのきわどいレオタードであった。
「ウサギ年とは何なのだ」
「裕貴くん、器用だよねぇ。ちゃんと襟とカフスも作ってある」
「徹夜で作らされた姉貴のコスプレ衣装…あの時の苦労は、この時のためにあったんス…」
どこか遠くを見ながらつぶやいている。
「でもエリオット氏がどんなに美少女でもさぁ、男子にレオタードはちょっとアレだよぉ」
「だからパニエスカートまで用意したのに」
「配慮の方向が違うっスよ…」
ブリジットがお茶をすすりながらツッコむ。
コンコンコン、ガチャ
「おお、揃っておったか。皆に新年の言祝ぎを…いかがした?」
グロリア様が晴れやかな笑顔で執務室を訪ねて来られた。彼女は実家や王都などを飛び回っているため、領都を空けることが多いが、滞在する間はいつも執務室に遊びに来る。そのまま応接セットに収まり、事のあらましを聞いて、「なるほどのう」と。
「セシリーよ。こういうことは、双方の合意が必要じゃ。相手があのように嫌がっていることを、無理強いしてはならぬぞえ」
「はい…グロリア様」
さすがのセシリーも、シュンとしている。
「そしてエリオットよ。お主が忌避感を感じるものは仕方ないが、何もそれを着て往来に出よということではなかろう?二人で密やかな秘め事を共有するのも、夫婦関係を深めるコツじゃ」
グロリア様がいたずらっぽくウィンクを送る。彼女が言うと、秘め事という単語が更に艶かしい。エリオットは真っ赤だ。
「さあ、その様子では差し支えるであろう。部屋に戻って身支度を整えてまいれ。デイモン」
「心得ました、母上」
デイモンに付き添われて、エリオットは一旦自室へ戻って行った。
「セシリーよ、こういうものは、段階を踏むのが大事なのじゃ」
「グロリア様…!」
「よいか、まずはカチューシャ。そして誰も見ていないからと、下着から替えさせる。少しずつ、少しずつじゃ」
「分かってらっしゃる…!」
アリスが目を輝かせている。
「なぁに、時間はたっぷりあるのじゃ。従順に躾けて行く過程もまた、オツなものよ」
そうして艶やかな唇に、舌をチラリと這わせる。ぞっとするほどの妖艶さであった。辺境伯もそうやって従順に躾けられたのだ。この人が義母になるのだということに、ブリジットは目眩を覚えた。
「して、その衣装じゃが」
エリオットには、まだ早いのであろう?ということで、グロリア様がお持ち帰りになった。「今年は楽しい一年になりそうじゃ」とのことである。どっちが着るのか、それは誰も聞く勇気がなかった。
今書き上がりのほやほやなので(正月から何書いてんだ)、また後から修正とご挨拶を書き込みたいと思います。
皆様、あけましておめでとうございます!
【追記】
皆様、改めまして、あけましておめでとうございます!
旧年中は、このような作品を読みにきてくださり、本当にありがとうございました。
思い切ってなろうに投稿を始めて、本当によかった。
自分の妄想話が、どなたかに読んでいただけて、少しでもクスッと笑っていただければ、と思い、今年もマイペースでバカ話を更新して参りたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします!
皆様、今年もどうぞお元気で、いいこといっぱい、幸せいっぱい、楽しいこといっぱいの、素敵な一年をお過ごしくださいね♪
今回も、読んでくださってありがとうございます。
評価、ブックマーク、いいね、とても励みになります。
温かい応援、心から感謝いたします。




