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イベント・夏

夏に出てくる例の虫

掲載日:2022/08/17

 盛夏の季節にアパートで青年がラジオを聴きながら、パソコンに向かっていた。

「締め切りが……締め切りが……」

 パソコン室には所狭しと本が置いてある。

 和書、洋書、辞書、翻訳の仕事だろうか、様々な本が並んでいた。

「また!この、ええい!」

 散らかったカップ麺や焼きそば、カップ飯などのケース。

 その近くをうろつくのは、薄茶色い平たい虫が一匹。

 青年はその虫を見つけるとすぐに叩き潰そうと本を手に取る。


「一寸の虫にも五分の魂って昔習ったけど、そんなこと言ってる場合かよ!」

 虫を探そうとするも部屋が散らかっていて見失う。

「そんなことより締め切りだ締め切り!今日中に提出なんだよ!」

 まったく学校で何を習っていたのだろうか。

 夏休みの宿題を余裕をもってこなしていれば、この状況は避けられただろうに。

 クーラーの効いた部屋からわずかに覗く太陽が、青年を見守っていた。


 ふと気が付くと青年は小さくなっていた。

「は?なんだ?夢か?」

 戸惑う青年の前に現れるのは二本の足で立つ薄茶色い平たい虫。

 手となった足の一本一本には丸めた新聞紙が一本ずつ。

 自分より大きな虫に青年は襲われ、瞳を閉じる。


「うわあああああ!」

 ゆっくりと瞳を開くと、目の前にはパソコンがあり、ラジオも明日の天気を告げている。

「って夢か――ええいまた!うっとおしい!」

 薄茶色い虫がキーボードの上に姿を見せる。

 慌てて叩こうとするも無視は逃げ、本はキーボードを叩く。

 画面に映る文字が戻ったりおかしな変換をする。

「あああああ!せっかく作ったのに!畜生!あいつのせいだ!」

 部屋のあちこちに積まれた本に八つ当たりをする青年。

 八つ当たりで本が飛び、本が部屋のあちこちにぶつかっていく。

 壁に。机に。カレンダーに。ポスターに。そして本棚に。

 何冊か本が本棚にあたると、本棚が揺れ始める。

 「くそっ!どこに行ったあの虫けらが!……ってうわああああ!」

 本があたった衝撃なのか、それとも地震か。本棚は青年めがけて倒れだした。

 

 *


 しばらくして救急車とパトカーが青年の住んでいた場所に集まる。

 近くにはテレビ局のアナウンサーがいて状況を説明していた。


「怖いねえ。本棚やタンスは地震対策しておいたほうがよさそうだね」

「それもそうだけど、部屋が散らかっててあいつが出たそうよ」

「きちんと掃除してほしいものよね」

「通り道に罠仕掛けておけばねえ」

「それか薬品よね。煙の出るやつ」

 周囲のやじ馬が井戸端会議を始める中、青年は担架によって担ぎ出された。


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