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第3話.鬼が公園で武勇伝ってどうなんですか?

 

 スーパーからの帰り道。

 生活必需品なども買いに様々なとこへ寄った二人だったが、

 行きも通った公園にどうしても行きたいと、ララノアが言うので一度帰宅し材料全ての下ごしらえを終え冷蔵庫に入れて仕方なく公園へ行くことが決定し・・・実際来たのだが・・・。


「そこで妾が言ってやったのじゃ!待て魔王!アラタに挑みたくば妾に勝ってからにせよ!とな!」

「うぉぉお!!姉ちゃんかっけぇ!!」

「まじすげえよ!!」

「そうかな。なんか下っ端の発言に思えるけど。」


 一人めっちゃ大人びた子供居るなおい。

 それにさ。


「おいララノア。俺の見間違いじゃなければ・・・」

「ええそうね。私もあんたと同意見よ。」


 今目の前で武勇伝を語っている黒髪ポニテの角が生えたあいつは・・・。


「・・・む?・・・・・・・・・む?・・・・・・・・・アラタ!?アラタではないか!!」

「げ・・・。本当にあいつじゃないの・・・。」

「はぁ。バカがまた一人・・・。」

「バカが()()・・・?またって何よ!?ねぇ!それって私の事を言ってるのかしら!?」


 一件凛とした面持ちで、猫目で鋭いが優しい笑みで子供たちと話していて、全体的にスマートな印象を抱かせる目の前の『鬼』は、ララノアと同じく対魔王パーティで苦楽を共にしたスズカである。


「アラタぁぁあ!!!!良かったのじゃ!!」

「うげ!走ってくんなよ!」


 どこぞの姫様とは違い、おそらく知能が胸にいっているであろうスズカは、笑みを浮かべ抱きついてくる。


「・・・てあれ。よく考えたら。」

「なんじゃ?」

「お前何で日本語話せてんの?」

「む?この程度造作もないであろう。元々妾の故郷『ヤマト』を一から作り上げたのは日本人じゃ。日本語も話せるに決まっておろう。」

「むむ・・・・・・。おっぱい脳筋に負けた・・・。」


 一国の姫がおっぱいなんて口にすんじゃねえよ。


「ん?そこに居るのは・・・ほぉほぉ。まな板ではないか!」

「うるさいわね!この胸が大きいだけの脳筋!!」

「はいはいバカ二人はそこで喧嘩を終えろ。」

「バカって何よ!!(なんじゃ!!)」


 こういう時は息ぴったりなんだよな・・・。


「はぁ・・・。なんでお前がここに居るのかも聞きたいし、その角・・・今はコスプレとしか思われてないがとりあえず家に帰るぞ。」

「ええそうね。()()()の家に帰りましょう!」


 いつからお前も住人になったんだ。

 いやまぁ、もうそれしか無いんだけどな。


「そうじゃな!妾もこれから住む家じゃ。」


 まぁ必然的にそうなりますよね。


()()()()()の家よ!」

()()()()()の家じゃ!」

「はいはい聞いてますかー。」

「脳筋!」

「駄エルフ。」

「聞こえてるわよ!そこ!」


 おっと小声で囁いたつもりが聞こえていたらしい。


 二人がワイワイ喧嘩しているうちに自宅へと着き、腹が減ったのですき焼きの準備を開始する。


「多めに買っておいて良かったな。」


 祝勝会と意気込み結構多めに買ってしまっていた材料。

 スズカも追加で三人となればちょうど良いだろう。


「ほう・・・。これが日本の住まいか。」

「あまり驚かないんだな。」

「うむ。」


 しかし初めて見るものばかりで興味はあるのかテレビ等を付けたり消したり、挙句の果てには某有名メーカーの掃除機を武器と勘違いしてにやりと笑みを浮かべる。


「ほう。妾の手に馴染むか。お主中々()いやつよ。」

「いやそれ掃除機だから。ゴミを吸い取ってくれる家電だから。」

「ほう。家伝か。」

「うん多分伝わり方が違うな。そういう代々受け継いできた宝刀とかじゃなくて、ただの家電なんだよ。」

「ゴミ共を葬る家伝の宝刀じゃな。」

「ダメだ聞いてねえこいつ・・・。」


 この鬼は鬼でかなりのぶっ飛び具合であり、同族ではないがアホという同族の括りで同族嫌悪というのか駄エルフとはよく喧嘩ばかりしている。

 いや・・・案外喧嘩するほど仲が良いという言葉があっているのかもしれない。


「ふふん!見なさい!この部屋は雨が降るのよ!」


 自信満々に無い胸を張り、シャワーの蛇口をひねる駄エルフ。

 そして、また同じことを繰り返し濡れる駄エルフ。

 更にはシャワーに興奮し、掃除機を置いて濡れに行くアホ。


「勘弁してくれ・・・。」

「凄いのじゃ!!見よ!これが妾の魔法である!」

「違うから。水道代払ってるから出てんだよ。しかもお前魔法使えないだろうが。」


 駄エルフは魔法の極致(きょくち)に至っていたが、この鬼は身体能力が凄まじく魔法などなくとも元から持ち合わせる鬼特有の『力』で魔王の部下たちを薙ぎ払っていた。


 魔王戦の少し前に鬼の長として父から地位を受け継いでいたスズカの身体能力は鬼の中でも群を抜いていて、歴代最強と(うた)われた英雄であるあらたと短期で戦闘になれば勝てると言われた鬼でもある。


「たく。」


 はぁ。とため息を吐くあらただったが、異世界へ行く前の一人生活を思い出し『こんな生活も悪くないかもな。』と思い自室へと向かい二人に着せる服を持ってくる。


「ほれ。早く着てこい。」

「うむ。中々に気が利くのぉ。」

「・・・・・・。」


 どーだ駄エルフ?

 お前の姫としてのプライドが邪魔して服を着る手伝いをしろなんて言い出しにくいだろ?お?


 あらたは挑発するようなムカつく表情でララノアを見る。

 ララノアもそれに気がついて居たので、ぷくぅと頬を膨らましあらたを睨む。


「どうしたのじゃ・・・?まさか・・・?ララノアよ?お主一人で服も着れ・・・」

「着れるわよ!!」


 ララノアは、スズカの言葉を即座に否定しその場で服を脱ごうとしていたので慌ててあらたがとめ、

 自室へと案内し二人に着替えを促す。


「ほんと疲れるな・・・。」


 そう言うあらたの表情は何故か明るげで、嬉しそうだった。






 すき焼きの準備が整い、リビングのテーブルの上にガスコンロを置くと鍋を上に乗せ着火する。


「三人分の食器を用意して・・・と。よし。」


 暫くすると、部屋から二人が出てくる。

 一人はご満悦そうにニマニマと笑い、一人は悔しげにこちらへ向かってくる。


「いやぁそうかそうか。お姫様は服も着れぬときたか。」

「くっ・・・。屈辱だわ。まさかあんたに、服の着方を教わるなんて・・・。」

「これからも色々教えてやっても良いのだぞ?」

「うるさいわねっ!って・・・何か良い匂いがするわ。」

「む・・・。言われてみれば・・・じゃな。」

「おう。来たか。準備できてるぞ。」


 二人してすき焼きを見やり動きが止まる。


「アラタ・・・」

「アラタよ・・・」

「な、なんだよ。」

「何よ・・・この犯罪的な匂いは・・・。反則じゃない・・・。」

「うむ・・・それには同意じゃ・・・。妾の種族も御先祖の影響で比較的日本人に似た和食を好んで食べていたが・・・。」


 どうやら既に満足していただけたようだ。


「これだけじゃないぞ。」


 あらたは、ニヤリと笑みを浮か『気持ち悪いわね。』


「酷いな。」


 手に持っていた卵を見せる。


「ほう。ドラゴンの卵じゃ・・・違うのう。大きさで一目瞭然・・・じゃな。」

「違うでしょ。ヴェズニールの卵でしょ。いや・・・でも色が違うわね・・・。」


 致し方なし。異世界から来たのだから。


「これは鶏っていう鳥の卵だ。」

「「ニワトリ・・・?」」

「おう。卵は基本的に食事に欠かせないと言っても良い食べ物だ。そしてこのすき焼きではとんでもない最強アイテムでもある。」

「ほお!なんじゃ!古の魔術の類か!?」

「違うわ!これは・・・これは黒魔法ね!?」


 どっちもちげぇよアホ。

 美味しく頂くだけに決まってんだろ。


 卵を綺麗に割ると中からは濃厚そうな黄身と綺麗な白身が現れる。

 あらたは、二人に見せるように卵をかき混ぜる。


「まぁ、卵割るなんて習慣はあまりあっちでは無いからな。無駄にしたくもないし俺が二人の分も割るから。」

「なんじゃ。ドラゴンの卵のように硬い殻をぶっ壊すんじゃないんじゃな。」

「ええそうね。ヴェズニールの卵は繊細な魔力コントロールも重要だったわ。」


 二人の仲良さげな会話を聞きながら、あらたは、二人の器に卵を投下する。


「ふむ。これをかき混ぜて何をするんじゃ?」

「それは私も気になるわね。」

「その前に・・・だ。」


 あらたは手と手を合わせる。


「お前らもしっかり合わせろ。」

「!ええ。これは知ってるわ。」

「そうじゃな。あらたと出会ってからは食事の際にはこれが癖になっておる。」

「「「いただきます。」」」


 三人で声を合わせて、食事の合図をしあらたは二人に食べ方を教える。


「この混ぜた卵があるだろ?これに、春菊を巻いた牛肉を軽く付けて・・・だ。」


 綺麗な黄色の卵を絡めた絶品な料理を、あらたは口いっぱいに頬張る。


「はふい・・・。はふい・・・けど・・・・・・。はぁ・・・。うまぁ・・・。やっばい。久々すぎて泣けてきた。食事ってこんなにもありがたいものなんだな・・・。ほらお前らも・・・。」


 どうやら二人も限界の様だ。あらたの幸せそうな表情を見て既に鍋に箸を進めていた。

 ララノアは箸をあまり使ったことがないのでスプーンとフォークで食事をしているが、スズカは手馴れた様子で春菊を牛肉で包み卵に絡め口へ運ぶ・・・。


「んんんんん・・・・・・。んまいッ!!!んまいのじゃッ!!!!!!」

「ッ!!!何よこれッ!!!美味しすぎないッ!?」

「この春菊なる野菜も非常に独特な味わいじゃが、癖になるのぉ!」

「牛肉は牛肉で薄く切られてるけど一切物足りなさが無いし固くない!!美味しすぎるわ!!」

「満足してくれたようで一安心だな。」


 二人は、どうやらすき焼きが好きになったようで。

 バクバクと頬張っていた。


「最初は皆で一つの食事を囲うなんて・・・と思ったけどこれも悪くないわね!何か幸せだわ!」

「のぉ!これは!この細いキノコはなんという名前じゃ!」

「それはエノキっていうキノコだ。食べてみろ。」

「むぐむぐ・・・・・・な、なんじゃこの食感!なんとも言えないこの歯ごたえがまた癖になるのじゃ!」


 こいつは、本当に幸せそうに食うな。

 作った側からすると嬉しいことこの上ない。


「このネギ・・・ていうのも、外側の食感がシャキっとしてるのに中はトロトロで甘いし、すき焼きのスープがしっかり染み込んでるのもまた最高ね・・・。」


 こっちもこっちで所作はさすが王族というか美しいが、美味しそうに食べてくれている。


「このシラタキなるものも、食感が独特でムニュムニュしてると思うたら噛んだ時にシャキッとしておる!これはどの食材も甲乙つけがたいのぉ!全て優勝じゃ!」


 お前は何の大会開いてんの?


「はぁ・・・幸せだわ・・・。こんな事なら魔王なんて倒す前に来てれば良かったわね。」


 お前はお前で王族としてその発言はどうなんだ・・・。


 ゆっくりと時間をかけアツアツのすき焼きを堪能した三人だが、具材が尽きてきた為ここであらたが口を開く。


「そろそろしめにするか!」

「な、なんじゃと!?追加じゃ!追加するのじゃ!」

「んな横暴な。待ってろ。しめっていうのはな。」


 あらたは立ち上がり冷蔵庫へと向かうと、とある食材を持ってくる。

 すき焼きにはこれは欠かせないだろう。


「うどんだ。」

「ウドン・・・?」

「ウドンじゃと!?」


 スズカが驚くのも無理はない。

 鬼族にもうどんという食材の存在はあるからだ。

 しかしそれは異世界で成り立ったこの世界のうどんを真似た別の食材。

 この安くて美味しいしめを侮ることなかれ。


「良いか。よーく煮込むんだ。」


 うどんの袋を開き、具材がほぼ尽きていたすき焼きの中へうどんを入れる。


「ウドンに関しては妾の舌は誤魔化せんのじゃ。」

「ふっ。バカめ。異世界のうどんで満足しているような舌であればこの世界のうどんを越えられまい。」

「なんじゃと!?」

「あぁ・・・なにか始まったわ・・・。」


 ララノアは呆れ顔で二人の会話を聞きながらうどんを待つ。


「もう良いじゃろ!!」

「そうだな・・・もう良いと思うぞ。」


 グツグツと煮込んだうどんの色はすき焼きの色に少し似通っており、見た感じであればしっかりと味が染み込んでいる様子だった。


「ふん!妾の採点甘く見ておるからの!いざ審判の時じゃ!」

「早く食え。」


 ツルツルッとうどんを啜るスズカ。


「どうだ?」

「な・・・な・・・なんという事じゃ!?これがあのウドンじゃというのか!?」

「どうだ。この世界の食事を侮っていた感想は!」

「まだ続いてるのねそのテンション・・・。」

「妾の・・・負けじゃッ!くッ!なんという事じゃ・・・ッ!」

「あんたも無理に合わせなく・・・あんたは元々からそんな感じだったわね・・・スズカ・・・。」

「ララノア。お前も食べてみろ。」

「ええ。頂くわ。」


 ララノアは、フォークでうどんを掴むとスプーンの上にクルクルと巻き口へ運ぶ。


「!お、美味しいわ!」

「そうだろうそうだろう。」

「スルッと口の中へ侵入してきたと思ったら、不意にモチっが押し寄せてくるのじゃ!」


 その独特な表現はどこから来たんだよ。


 二人の満足気な表情を見た後にうどんを器へ移し自らも口へと運ぶ。


「はぁ・・・やっぱり美味いわ・・・。最高。」


 暫くはしめのうどんに舌鼓を打った三人だったが、うどんも底を尽き、そこで食事を終える。


「ん。じゃあ。」


 三人は当たり前の様に手を合わせる。


「「「ごちそうさまでした。」」」


 こうしてすき焼きを最後までしっかり堪能した三人は、食器をキッチンへと運び、食事を終えたのであった。

書いててめちゃくちゃ楽しいですねこれ・・・。

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