9話 外が騒がしい
どうぞ、
今日も今日とて、客の対応の合間に二人と話していると、店の外、ダンジョンの入り口前辺りが騒がしくなった。
「どうしたんだろ?」
止水が話すのを止めて、店の外を見る。
俺もそっちを見ながら。
「あー、あの騒ぎ方はモンスターでも出てきたかな」
「「え?」」
驚いた顔で俺を見る二人。
そんな二人に訳知り顔で説明する。
「二人も知ってるように、良くあることだろ? ま、そのうち誰かに倒されるだろ」
そう言って店の中に視線を戻す。
店の中は、いつもどおりで変わった様子はなかった。
「はぁ~」
貴崎は納得いかないように店の中を見渡しており、止水は苦笑いしていた。
まあ、あの程度はここらでは日常の風景なのだから。
◇
「まだやってますね~。今日は大物でしょうか」
美坂がボソッと呟く。
あれからもう30分以上は経っている。
確かにいつもよりは10分ばかり長いか。
そう思い、外を見る。人だかりは徐々にこちらに近づいているように見える。
人混みの間から、少しモンスターの姿が見えた。
止水が、あっと声を上げる
「あれ、キマイラ!?」
「サナ、マジ? それ10階辺りのフロアボスじゃなかったっけ?」
「うん、少ししか見えなかったけど間違いない」
「それヤバくない? 少なくとも上級以上じゃないと、死人でるでしょ!」
「うん。おにいさん、大丈夫だと思うけど念のために逃げる準備していて。ミナ、行こ」
止水は俺の方を向いてそう言うと、貴崎に声をかけ、出ていく。
貴崎も真面目な顔で返事をした後。
「お兄さん、サナの言ったことちゃんと聞いてよね。ま、私が倒しちゃうけどね。じゃ」
手を振って出ていった。
美坂がすすっと寄ってきて聞いてくる。
「店長、どうしますか?」
「……うーん、いつも通りだな。危なくなったらお前らは裏口から逃げろ」
「店長はどうするんですか?」
「もちろん残る。なにせ店長だからな。それにこの店を守る必要がある」
美坂はそれを聞いて、はあ、そうですか。了解しました。とレジに戻っていった。