6話 誰かおしえてもらう
どうぞ
客の入りが一区切りしたのを見計らってか、美坂がにこにこ顔で寄ってきてはなしかけてきた。
「店長、お楽しみでしたね」
「ああ?」
「あれ、反応薄いな~。もう、白銀の戦乙女ですよ! 超有名探索者ですよ」
「らしいな。……あー、あの二人も有名なのか?」
ギョッとした顔で俺を見る美坂。
どうやら有名人だったらしい。
そこへ楠木くんが助けを出してくれる。
「美坂さん、店長はその超有名探索者パーティーも知らなかったみたいですよ」
美坂は楠木くんを見た後、勢いよく振り返る。
「え? マジですか」
まあ、マジだけど。
そう心の中で呟く。
「店長、普段、何して生きてるんですか」
「店長しながら生きてるよ。見たらわかるだろ、店長ってのは忙しいんだよ」
「はあ、まあそれは分かりますが……。でも、もうちょっと探索者のこと、勉強した方がいいですよ」
「あ、それ僕も言いました」
楠木くんがすかさず被せてくる。
「分かった分かった。で、さっきの二人は有名なのか?」
これ以上言われては敵わないと、話を戻す。
「もちろん有名ですよ。赤い髪の女の子が貴崎ミナちゃんで、水色の髪の子が止水サナカちゃん。超優秀な剣士と弓士らしいですよ」
たしかに立っていたときの姿勢や重心の取り方はそうだなと、思い返す。
ただ、あの細腕で剣が振れたり、弓が引けるとは思いがたいが、なんでも異界に入る時間が長ければ長いほど、特殊な能力に目覚めたり、人外の力が身に付くらしい。
中には、魔法まがいみたいなこともできるんだとか。
ファンタジーだな。いや、異世界転移を経験した俺が言うのも何だが。
「で、その有名で優秀な二人になんで俺が絡まれないといけなかったんだ?」
美坂は頭を捻りながら。
「うーん、なんでですかね。今日、ダンジョンで調子が悪かったのかな? 普段はすごくいい子なんですよ。あ、店長がすごくやらしい目で見てたんじゃないですか~?」
「そんな訳ないだろ。さ、仕事しろ、仕事。俺はちょっと外見てくるからな」
「「はーい」」
そんな二人の声を背に聞きながら、店の入り口に向かった。