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2話 世界は大変なことに

どうぞ

俺がこのコンビニの店長になったのはいまから二年前。


たまたま親戚の叔母さんがやっていたこのコンビニを、当時、とある事情で働く場所が見つからなかった俺が引き継ぐことになったのだ。


とある事情というのが、異世界で勇者をやっていて魔王を倒したら戻ってきたからなのだが、言っても信じてもらえないか、研究施設送りになるだけだと思いだれにも言ってはいない。


なにせ、中学のときに帰宅途中、当時、ネット小説ではやっていた異世界に転移させられ、勇者をさせられていたのだ。


昔から石橋を精密検査してから渡ると言われるほどに慎重派な俺はじっくりと約十年の年月をかけて、魔王を倒すと、その世界の女神様にこの世界に戻してもらった。


帰るときに女神様には、ため息をつかれながら、あなたならもう少し早く倒せたのでは、とありがたいお言葉(苦言)を頂戴したが。


ただ、この異世界転移がくせもので、戻る場合には、どうやら転移してからあちらで過ごした年月と、こちらでの転移した時点から経過した年月を合わせる必要があった。

そんなことを戻る直前になって聞かされたわけだが、元の世界への転移は魔王を倒してから少しの期間しか使えないらしく、元から帰るつもりだった俺は、あまり考える暇もなく転移することになったのだった。


そして、戻ってきたときには、晴れて、中学校も卒業していない、20才を過ぎた人間ができていたわけだ。


いきなり行方不明になっていた人間が十年も経って戻ってきたら普通であれば大問題になるだろう。


ただそうはならなかった。


こちらの世界では常識が一変する大きな出来事が起こっていた。


俺が異世界に拉致されて、数ヵ月後、ダンジョン、そう呼ばれる異界が、世界のあちらこちらで発生したのだ。


ここ日本では、発生初期に、とある比較的小規模の地方都市がまるまる一つ異界に飲み込まれたらしい。


生存者数はごく僅かで、国内でのダンジョン発生事案としては最悪の死者行方不明者数を出したのだとか。


それ以降、幾つかの街で規模は小さいながらも同様の事案が発生し行方不明者を出したようだ。


年々数は少なくなるものの、数年たってから行方不明者が発見されることもあり、このため、見つかった際に役所で申請すれば、その間の補償を受けることができるのだ。


そして俺はこの制度を利用すべく、親族の助けを借りて親に言われるがままにしれっと申請をしたのだった(とはいえ、10年も経って見つかることはほとんどなく、役所の人にはかなり怪しまれたが……)。


補償には、行方不明になった年から教育をやり直すことができる制度もあるが、まさか、20才過ぎたおっさんが、十代前半の中学生に交じるわけにはいくまい。

丁重にご辞退した。


そうなると働き口を探す必要があるが、中学校も卒業していない俺には有望な働き口はなかった。


いや、一つあるにはあったのだが、俺はできればやりたくはなかった。


それは探索者と呼ばれる、ダンジョンで異界生物を倒し素材を手に入れたり、物を見つけたりする職業だ。


なんでも今や、小学生のなりたい職業ランキングで一位なんだとか。世も末だと思うね。


しかし、10年も探索者みたいなことを異世界でやってきていた俺はもうあんなことはこりごりだったのだ。


そんな時、運良く、叔母のやっていたコンビニで継いでくれる人を探していると言うことで俺は手を上げたのだった。

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