15話 忍び寄る黒い塊
それでは続きをどうぞ。
さっきまでコンビニの店長に絡んでいた探索者三人組は、ダンジョンの中にいた。
ダンジョンの中は真っ暗闇ではなく、周囲の壁が薄暗く光っており数メートル先は見通せる状態だ。ただ、道が続く先の奥は薄暗いため、見ることはできない。
この階層の周囲や地面、それに人三人分の高さはある天井は青黒いレンガを敷き詰めていて通路を形成しており、道が奥まで続いていた。このダンジョンは70階までは踏破されているが、階層ごとに景色はがらりと変わるらしい。
ごん。
三人のうち、先頭に立っている男が壁を蹴る。
「くそ、むかつくな」
すると後ろを歩いていた他の男たちも立ち止まり各々に男に続く。
「マジでそれ」
「ああ。……それにしても、入ってからかなり歩いたんだがモンスターとは会わないな」
それを聞いた、さっき壁を蹴っていた男は周りを見る。
「そういうダンジョンじゃないのか?もっと下に降りると出てくるとか。深いダンジョンだとよくあるんだろ?」
「いや、そんな情報はなかったぜ?」
「うーん、ちょっと嫌な予感がするな」
「……マジそれ」
三人は曲がりなりにも、高難易度に属するこのダンジョンに挑むだけあって、それなりに情報収集も行うし上級探索者に比べるとまだまだ劣るものの、中級の中では比較的に優秀な方ではあった。
「どうする、戻るか?」
「そうだな……、ん?」
先頭にいた男が前を見て声を挙げる。
「おい、あれ、子供か?」
男が指を差した先。薄暗い闇の中、ぼんやりとした子供ぐらいの背丈の白い影が浮かび上がる。のこりの二人も見ると、肌の真っ白な子供が一人立っているのが見えた。男は声をかける。
「おい、そこで何をしている?」
「待て。……おかしくないか? こんなところで一人で子供がいるなんて」
「……探索者にはあれぐらいのやつもいるだろ? 一人ってのは聞いたことはないけどな」
周囲に気を配りながらゆっくりを近づこうとする男。後ろの男が慌ててそれを止める。
「おい、待て。やっぱりおかしいぞ。あんな格好で一人でダンジョンにいるわけないだろ」
探索者であればなんらかの装備をまとっているはずが、何も持っていないように見える。
「いや、でもよ。もしかすると、なんかの事故で装備を落としたのかもしれないぜ?」
そう言って子供の方を見たとき、子供は背を向けて走り出す。釣られて思わず追いかける男。
「あ、待てよ」
「おい、行くな。くそ、あいつを追うぞ」
先に行った男を二人も追って、三人で子供を追う。もし彼らが上級や上級に近い探索者パーティーであれば迷わず戻ったであろう。この判断が彼らの命運を分けることになった。
三人がたどり着いた先は少し広がった空間であり、奥にはさっきまで走っていた子供が横たわっていた。
ゆっくり近づく三人。はっきりと見える距離まで近づいた時にその正体がわかり、思わず立ち止まる。それは、人の子供のように見えたそれは、子供のように見せた白い糸の塊。
「ちっ。罠だ」
「逃げるぞ」
「ああ」
焦った顔ですぐさま踵を返す三人。しかし、それと同時に三人の真上、天井から黒い大きな塊が彼ら目がけて落ちてきたのだった。




