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目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第2章 学園生活の始まり
97/273

97 話が通じない令嬢


 翌日の早朝。

 モニカを伴って、先日確認した場所に来てみると、上級生の方達が数名いらっしゃったのと、その中にディオお姉様を見つけた。

 挨拶をする為声を掛けようと思ったら、ディオお姉様もこちらに気付いて先に手を振ってきた。



「ディオお姉様、おはようございます」

「おはよう、シア! まさか朝から会えるとは思ってなかったわ。シアも自主練するのかしら?」

「はい、領地では毎朝お養父様に訓練をつけて頂いていたので、身体を動かさないと鈍りそうですし、何より一年は実技がまだだと伺いましたので。(わたくし)もこちらを使わせていただいても宜しいでしょうか?」

「勿論よ! 皆様に紹介しますわ」



 お姉様はそう言うと、上級生の皆様を紹介してくださった。

 その中の一人はクリスティナ・ベリセリウス侯爵令嬢でマティお兄様同じ年齢、ベリセリウス侯爵家の長女だ。



「初めまして、アリシア・シベリウスです。よろしくお願い致します」

「此方こそよろしくお願いしますね」

「入学して早々から自主練なんて、感心しますわ」

「シベリウス辺境伯様はとても厳しい方とお聞きしたことありますけれど⋯⋯」

「お養父様は確かに厳しいですけど、とてもお優しいですわ」

「シアのお養父様はシアの事をとても溺愛してますものね」



 ディオお姉様にそう言われてしまい、微笑ましい感じに皆様に見られてしまった。

 此処ではその日、自主練をしている中の最高学年の方が責任者になるようで、いつも同じ人だとは限らないみたい。

 だけど、大体同じ面々で練習を行っているので、上級生の知り合いが出来て嬉しく思う。

 此処を使用する時の注意事項や、魔法の練習をする場合の注意事項を聞き、早速練習を始める。

 軽く準備運動をしてからお養父様に教えて頂いた一人で行う訓練を始める。

 暫く一人集中して行っていると、ディオお姉様から手合わせしようと声を掛けていただいたので、折角なのでそのお誘いを受けた。

 上級生の一人が見てくれるようで、開始の号令で手合わせをする。

 お姉様はやはりお強い。

 鋭い攻撃と一撃が一撃が重い⋯⋯。

 だけど、私も負けるつもりはないので食らい付く。

 暫く打ち合っていたけれど、やはり私が打ち負けてしまった。

 私が息を整えていると、お姉様は少し難しいお顔をしていた。



「⋯⋯シアって確か双剣って言ってなかったかしら?」

「はい、普段は双剣ですが、学園では教わることないだろうってお養父様にお聞きしたので、学園では一本で頑張ろうかと思いまして⋯⋯」

「なるほどね。シアが双剣使って手合わせしたら、(わたくし)負けそうね」

「それは、手合わせしてみないと分かりませんわ」

「そうね、今度はちゃんと双剣で相手をしてね」

「分かりましたわ。よろしくお願い致します」



 お姉様と手合わせしたり、他の上級生の方の手合わせを見学したりしていると、良い時間となり訓練を終え、皆様にお礼とまたお願いしますと挨拶をして部屋に戻ってきた。

 湯を使って、食堂へ朝食を頂きに行く。

 そして、昨夜読み終わった本の返却に図書館へ行き、違う本を借りに行くという、朝の日課になりそう。

 教室に行くとすでにレグリスもいて、彼や周囲のクラスメイトに挨拶をして席に着く。

 授業は変わらずまだ基礎の段階で、復習をしているといった感じだ。

 休憩時間も相変わらずで、レグリスと話をしていると突っかかってくる感じも、毎日飽きないのかなと思いながらも適度に相手をする。

 そんな風に日々が過ぎ、私にとっては初めての週末なので、私は王都のシベリウスの邸に戻っていた。

 勿論お兄様達も一緒だ。



「シア、学園はどうかな?」

「授業は昨日まではまだ復習のような感じで、来週から本格的に始まるようです。毎日図書室に行くのは楽しみですわ。後、早朝に自主練をしているのですが、ディオお姉様や他の上級生の方達と楽しくしております」

「シアは何処に行ってもぶれないね」



 その言葉、モニカにも同じこと言われたわ。

 だって、本を読むのも楽しいし、身体を動かすのも好きだから止めたくない。



「お兄様達はどんな授業をされているのですか?」

「六年にもなれば、選択授業が殆どだからね。私は経営学や社会学、魔法学に武術といったものを選択しているよ」

「二年から選択授業があるものの、三年から本格的に自分が何をしたいかで授業内容が選べるんだよ。応用からの実戦といった感じかな。一、二学年での授業内容を更に難しく、自分達で考えることが多くなり、本格的に学んでいると実感するよ」

「なるほど。では三年から殆どが選択授業に変わるのですね」

「そうだよ。基本授業は変わらずあるけどね」



 二年までは皆同じ授業でそれにプラスして選択授業があり、三年からは将来何に進むかによって、共通科目以外は選択授業に変わるのね。

 それは楽しみだわ。



「授業は置いといて、友達は出来たかな?」

「お友達、と言えるような方はまだおりませんわ。レグリスだけかしら」

「シアは人見知りって訳ではないよね?」

「違いますけれど⋯⋯」

「何かあったのかい?」



 そう言うと、お兄様の空気が冷えた。

 何かって訳ではないけれど、あの人達のお陰で若干遠巻きにされてる感じはあるのよね。

 どうしたものか⋯⋯。



「シア、隠さずに話しなさい」

「隠しているわけではないのですが、レオンお兄様はご存じでしょ? あの令嬢の事」

「あのって、僕が教室に迎えに行った時のあの令嬢の事?」

「そうです。サンドラ・ヒュランデル公爵令嬢の事ですわ。彼女が何かと突っ掛かってきますので、皆様に遠巻きにされているのです。(わたくし)は全く気にしていませんが、やはり公爵家の者ですので、皆様何も言えないのですわ」



 私がそう話すとマティお兄様は少し考えた。


 

「確か、ヒュランデル家の後妻の娘だったかな。かなり甘やかされているとか。公爵はとても出来る人らしいけれど、忙しすぎて家庭の事は後妻に任せきりだとか、そう言った事をカロリーネ嬢が愚痴っていたのを小耳に挟んだことはあるよ。ちなみに、カロリーネ嬢は公爵家の長女で前妻の娘だよ」

「そうなのですね」

「何かされたらすぐに言うんだよ」

「分かりましたわ。ですが、出来ることは自分で対処いたします」

「シアなら大丈夫だと思うけど、父上達に知られたら大変だと思うよ」

「兄上、父上よりもヴィンス様に知られるのが一番不味いと思う⋯⋯」



 どうしてそこでヴィンスお兄様が出てくるのかしら。

 私が何故か分からず首を傾げていると、レオンお兄様は苦笑していた。



「毎日シアの教室へ行くのを塞き止めているんだよ」

「そうなのですか?」

「同じ学園に、近くにいるからシアに会いたくてたまらないんだよ。流石に殿下が毎日辺境伯令嬢に会いに行くのはまずいからと話してるんだけどね。我慢するのも大変みたいだよ」

(わたくし)もお兄様に気兼ねなく会いたいです。だけど、(わたくし)も我慢しているので、お兄様も我慢してくださいとお伝えてください」

「それは、直接殿下にお手紙を書いて欲しいな」

「え?」



 レオンお兄様はそうお願いしてくると、どこからとも無く多くの手紙を卓上に載せた。


 

「はい! これ全部シア宛のヴィンス様からの手紙ね」

「これ全部ですか!?」



 何通あるの、これ⋯⋯。

 いくつか手にとって開けて読んでみると、『もっとステラに会いたい』とか『抱き締めたい』とか⋯⋯。

 恋文みたいな手紙が沢山あった。

 お兄様達にも渡すと「やばいな⋯⋯」と呟いていた。

 私だってお兄様に会いたいのに、こんな手紙渡されたら会いたくてしようがないわ!

 もう!

 頑張って我慢してるのに!

 学園に登校して二日目にお兄様に会った時も頑張って色々と我慢したのよ。

 はぁ⋯⋯。

 今夜頑張ってお兄様にお返事書きましょう。


 お兄様達とお茶会が終わり、自室に戻ってからお兄様のお手紙に全て目を通す。

 大体同じ内容なのだけれどね。

 私は何通も書くのではなく、一通だけど、私の想いを全て文字に認めて封をする。

 とても分厚くなってしまったわ。

 翌日、レオンお兄様から渡して頂くのに、昨夜認めた手紙を渡すと、呆れられた⋯⋯。

 だって、色々と言いたい事を書いていたらこの量になってしまったんだもの。

 休息日二日目の夕方には寮へ戻る。

 休息日はあっという間に終わった。


 翌日、いつもと同じ時間に教室へと向かう。

 今日は図書室で借りる本に少し悩んだので教室に向かうのが遅くなってしまったので、室内には殆どの生徒が揃っていた。

 私は挨拶をして席に着くと、あの令嬢と取り巻き達が現れた。



「お聞きしたのですけど、貴女はシベリウスの養女らしいですわね」

「えぇ、そうですわ」



 急に何をいうかと思えば⋯⋯。

 別に隠しているわけでもないので肯定する。


 

「血の繋がりもないのにレオナルド様達に馴れ馴れしくするのは如何なものかしら? 身の程を弁えた方がよろしくてよ」

「誰に聞いたのかは存じませんが、(わたくし)とお兄様達とは血の繋がりはありますわ。元々お兄様達と、シベリウス家とは遠縁ですもの」

「遠縁だなんて、薄いではありませんか。本家にご迷惑ですわ」

「何故迷惑等と赤の他人に言われないといけないのでしょう? 結局のところ、ヒュランデル様は何が仰りたいのですか?」

「まぁ! 首席といえど大したことはありませんのね。養女なら大人しく、レオナルド様達に迷惑かけないようしなさいと言うことよ! そう思いませんこと、皆様」



 会話にならないわ⋯⋯。

 本当にどうして彼女はこの教室にいるのかしら。

 彼女に同意してるのは取り巻きの者達だけね。

 他の方々は巻き込まれたくないといった感じかしら。

 そこでやっと時間になり、先生がやって来て授業が始まった。

 楽しもうと思ったけれど、会話が成り立たないのでは疲れるわね。

 それに、お兄様達の事まで出されると不愉快だ。

 女性の事は同姓に聞くのが一番ね。

 翌日の早朝訓練の時にディオお姉様に相談することにして、授業に集中した。


 翌日、開放される時間ぴったりに練習場へ行き、ディオお姉様を待った。

 訓練中に相談するのはご迷惑だろうから、相談したいことがあるので今日の昼食をご一緒しても良いか確認したら、否もなく直ぐに良い返事を貰ったので、昼食が楽しみになった。


 この日は特に突っかかってくることもなく、午前中の授業を受け、昼休憩になると私は食堂で待ち合わせをしているので、そちらへ向かう。

 食堂へ着くとディオお姉様に直ぐにお会いできた。

 ディオお姉様だけだと思っていたけれど、一緒に訓練をしている先輩方の内、三人が一緒だった。



「シア、先輩方も貴女の事を心配いるからご一緒しても良いかしら?」

「勿論ですわ。ありがとうございます」

「いいのよ。可愛い後輩が悩んでいるのだったら相談に乗るのは当たり前よ」

「先ずは昼食を注文して席に着きましょう」



 私達は昼食を注文して受け取り、テラス席へと移動した。

 そのテラス席は他の席と距離があるので誰かに聞かれることはないでしょう。

 ちなみに、先輩方三人の内一人は、クリスティナ・ベリセリウス侯爵令嬢で後のお二人は、ヨハンナ・ダールグレン子爵令嬢とルイス様。

 ルイス様は平民だけど、成績優秀の武芸も嗜まれる将来有望だそうだ。



「それで、シアの相談事って何かしら? もしかして、誰かに苛められているの?」

「それはないですわ。少々面倒な方に目をつけられてしまい、対処に困っているのです」

「誰かしら?」

「サンドラ・ヒュランデル様です」

「「「あー⋯⋯」」」



 皆様はご存じなのか仲良く同じ反応を示す。

 そんなに有名なのかしら。



「休日にお兄様達にお伺いしたのですが、ヒュランデル家の後妻の令嬢で、かなり甘やかされているとか⋯⋯」

「かなりどころの話ではないのよ。色んなところで良くない話しを聞くわね」

「甘やかされている割には頭は良かったのかしら。シアはSクラスでしょう?」

「はい、その通りですわ」

「あまり頭は良さそうでない事は聞いたのだけれど、噂に過ぎなかったのかしら」

「いえ⋯⋯、会話をする限りでは、その、よろしくないかと。ですが、会話が成り立たないだけで、勉学は出来るのかもしれませんわ」



 私は今までの事を皆様に話して聞かせた。

 これに対しても皆様同じ反応をされていた。

 それはそうよね。

 会話が成立してないもの。

 内容も微妙ですし⋯⋯。

 何度も思うけれど、どうしてSクラスなのかしら?



「はぁ。なるほどね。貴女が悩むわけだわ。会話が成立しないのでは」

「どのように対処すればよろしいのでしょう? レグリスと話をするのも、あのような事を言われ続けると彼に申し訳ないですし⋯⋯(わたくし)にだけというなら特に気にしないのですけれど」

「そうねぇ。あぁいう令嬢は自分が優位に立って、男にちやほやされるのが好きなのよね。それに公爵家というのもあるからでしょうね」

(わたくし)、登校初日に、近くの席の方に昼食をご一緒しても良いかお聞きしたら、ヒュランデル様に彼女達は平民だから(わたくし)達と一緒に食べましょう、と誘われたのですが、そのように階級差別をする方とはご一緒したくありませんでしたのでお断りしたのです。その後(わたくし)が声をかけた方達にも断られてしまって⋯⋯この学園の主旨に沿っていませんし、何よりそういった事を平然と口に出来ることが不愉快でした」



 私が初日にあったことを話すと一様に驚いていたのを見ると、この様にあからさまな事はあまり無いのかと少しは安心できる。


 

「まぁ、そんな事もあったの!? シア、まさかとは思うけど、お友達はまだ出来ていないの? いつもお昼はどうしているの?」

「え⋯⋯あの、レグリスと食べたり一人の時もあります。新しく出来たお友達は、まだおりません」

「あら! では私達が初めてのお友達かしら?」

「あの、先輩方をお友達だなんて⋯⋯、宜しいのでしょうか⋯⋯」

「何を言っているの! 貴女はとても素敵な子だわ。学園に入学して間もないの自主練はするし、礼儀正しいくて、平民だろうと関係なく接するでしょう? 私は平民だけれど、貴女は他の方々、貴族の方に接するのと同じようにしてくれるわ。中々いないわよ、貴女と同じ年では。私は年下とか関係なしに、お友達になりたいわ。ダメかしら?」

「いえ! とても嬉しいですわ」

「なら、私達はお友達ね。あっ、後、私に様付けは止めてくれると嬉しいわ」

「あら、ルイスだけずるいわ。勿論(わたくし)達もお友達よね? (わたくし)の事はティナと呼んでね」

(わたくし)の事はハンナお姉様と呼んで欲しいわ。妹が欲しかったのよ」



 ハンナ様がそう言うと、ティナ様とルイス様も同じようにお姉様と呼んで欲しいと言われて、皆様の事をお姉様と呼ぶこととなった。

 それはさておき、私は本題に戻りたいので軌道修正する。



「お姉様方、本題に戻ってもよろしいでしょうか?」

「ごめんなさい、つい⋯⋯」

「そうね、貴女はどう対処しようと思っていたの?」

(わたくし)としては、対処というか、それすらも楽しもうと思っていたのですが、お兄様達の事も言われてしまったら、何だか嫌になってしまって⋯⋯」

「なるほどね。まだ学園が始まったばかりですし、成績で打ち負かすのもまだ難しいですものね。前期の試験もまだまだ先だし」



 こういった対応は難しい事この上ない。

 此方が対処しようとしてもきっとあれこれ難癖つけられるのが落ちだわ。

 だけど、こうやってお姉様方に話を聞いて貰えただけでも楽になった。

 もう少し様子を見てみようかな。

 それに、もうすぐお昼も終わってしまいますし⋯⋯。



「お姉様方、お話を聞いてくださってありがとうございます。もう少し様子を見てみようと思います」

「直ぐに案が思い浮かばなくてごめんなさいね。(わたくし)達も考えておくわ」

「何かあったら直ぐに話すよの!」

「はい。ありがとうございます」



 私はお姉様方にお礼を言い、午後の授業に向かった。


ご覧頂き、ありがとうございます。


すみせんが、九月は更新を週二日目~三日に変更します。

いつも読んで頂いている皆様にはお待たせしてしまいますが、次話も楽しんで頂けたら嬉しいです。

よろしくお願い致します。

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