表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第2章 学園生活の始まり
96/264

96 学園生活二日目


 翌日、いつもの癖で早くに目が覚めた。

 領にいる時はいつも早朝に訓練していたので、本当は此処でも続けたいのだけれど、出来る場所とかあるのかな。

 今日はマルガレータさんに確認してみよう。

 聞くことを考えていると、コンコンコンッと控えめなノックと「モニカです」と声をかけられたので、「どうぞ」と返事をする。



「おはようございます」

「おはよう、モニカ。領と同じ感覚で目が覚めてしまったわ」

「習慣は中々抜けませんからね」

「ここでも自発的に身体を動かしたいのだけれど。今日は確認してみようと思っているの」

「シア様、此処でも訓練される事はないのでは?」

「けど、一年は実技が直ぐに始まらないみたいだし、身体が鈍るといけないから⋯⋯」

「シア様は真面目ですわね」



 モニカには苦笑されてしまったけれど、身体は動かしておきたい。

 朝食まで時間があるのでモニカと話をしながらゆっくりし、食堂が開く時間帯に行きモニカと共に朝食を頂く。

 そして、少し早いけれど学園に行く準備をしてまだ何処に何があるとか分からないので、図書室の場所も知っておきたいし、散策がてら早めに登校する。

 今分かっているのは、教室と食堂、中庭、教師棟位なので景色を楽しみながら歩いていると、この広い学園でレオンお兄様にばったり会った。



「シア! こんな時間に此処で会えるなんて!」

「おはようございます、お兄様。会えて嬉しいですわ」

「おはよう。まだ早いのにどうしたの? 何か問題でもあった?」

「特に何もありませんわ。まだ学園内の事が分かっていないので、早くきて散策していたのです。図書室の場所も知りたかったので」

「シアってば、やっぱり図書室の場所知りたいんだね。案内してあげるよ」

「ありがとうございます!」



 お兄様達と初日の話をしながら、図書室に案内して貰う。

 一応初日の出来事をお兄様に伝えておいた。

 他の誰かから伝わったら後が怖そうだもの。

 まぁ大したことではないから、お兄様も「中にはそう言う人達はいるから、シアも気を付けて」と言うだけに留まった。

 図書室に付くと、既に解放されていた。

 朝から勉強をしに来る人も多くいるみたいだから七時から開いているみたい。

 良いこと聞いたわ!

 私が目を輝かせ中を見回しているとお兄様に呆れられていた。


「夢中になりすぎて授業に遅れないようにね」

「流石に気をつけますね」


 

 いつもの如く注意され、私としても学園に入学したばかりなのに授業に遅れるような事はしたくないので朝は読みたい本を見繕うだけに止めよう。

 図書室の本は貸し出しも出来るみたいなので、寮に戻る前に借りて行くのも良いかもしれない。

 楽しみが出来たわ。

 図書室で貸し出しが直ぐ出来るように登録だけしておき、お兄様にお礼を言って教室に向かった。

 授業がはじまる三十分前に教室に着くと、まだ人も少なかった。

 私は中にいる人達に挨拶の声を掛けて教室に入る。

 挨拶は大事だものね。

 何人かは挨拶を返してくれた。

 慌てず、少しずつ仲良くなっていこう。

 指定されている机に着き、教科書を準備しておく。

 八時十分前になると全員揃った。

 そしてクランツ先生とレグリスが教室内に入ってくる。

 昨日と同じく、レグリスの紹介をするとレグリスも私の時と同じく自己紹介をして、指定された席に着く。

 そこ前にレグリスと目が合い、目線だけで挨拶をする。

 クランツ先生は「では、今日も一日しっかりと学ぶように」と言い、他のクラスの授業に向かった。

 入れ違いで、一限目の歴史学でアンドレア先生だ。

 歴史はこの国の成り立ちから始まっている。

 特に難しいこともなく、この先生の特徴は生徒を指名して質問をしてくる。

 それも結構難しいところをついてくる。

 そして、何人か当てて答えられなかったら何故か最期に私を指名してくるので、きちんとお答えする。

 小さい頃から色んな本を読んでいて良かったと思う。

 そして授業終わりの十分前に必ず小テストを挟むので、授業は気を抜けない。

 テストが終わると一限目の授業は終わりとなる。

 休憩時間となり私はレグリスの元へ行く。



「お互いちゃんと生きてたな」

「えぇ、レグリスも無事で良かったわ。セイデリアは大丈夫?」

「まぁな。取り敢えず領民は皆無事だから上々かな。そっちは?」

「同じよ。領民は⋯⋯皆無事よ」

「きつかったな⋯⋯」

「そうね⋯⋯」

「はぁ。まぁ終わったことだし、シアは昨日から通ってるんだろう?」

「そうよ。今日で二日目よ」

「昼休み案内よろしく」

「まだ(わたくし)もよくは分かってないのだけれど、分かりましたわ」



 二人で雑談をしていると、あの令嬢達が話しかけてきた。



「貴方達、どういう関係ですの?」

「どうって⋯⋯歴史習ってないのか?」

「勿論習っていますわ。ですが、私の質問と歴史なんて関係ないでしょう」



 そう何故かバカにしたように話していたが、私達は逆に呆れ返ってしまった。

 よくこれでSクラスに入れたわね。



(わたくし)達、シベリウスとセイデリアは昔から兄弟領としてあるのですよ。小さい頃から交流があるのは当たり前の事ですわ」

「そんなこと知ってますわ! (わたくし)が聞いてますのは、そういった関係ではなくてよ! 教室内でベタベタとはしたないですわ!」



 ――⋯⋯えっ? ベタベタって、意味分からない。


 

 レグリスには触れてないし、レグリスも私に触ってない。

 ただ言葉を交わしていだけ。



「はぁ⋯⋯面倒臭い女だな」

「なっ!? (わたくし)は公爵家の者よ! 貴方達みたいな辺境にいる貴族とは訳が違うのよ。 口の聞き方に気を付けなさい!」



 面倒臭い⋯⋯。

 私とレグリスの心の中で意見は一致していた。

 そこへ二限目の始まりを告げる音が鳴ったと同時にクランツ先生が入ってきた。



「何を騒いでいるんだ? 廊下まで聞こえていたぞ」

「何でもありませんわ!」



 そう答えるのは公爵令嬢こと、サンドラ・ヒュランデル。

 ほんとにどうやってSクラスになったのかしら。

 不思議で仕方ないわ。

 まぁ先生がいらしたことで、授業が始まるので大人しくはなったけれど、今回の事で何故か私は目を付けられたみたい。

 休み時間になると、取り巻き達と一緒になってぐだぐだと話しているのが聞こえる。

 わざと聞こえるように話しているとしか思えない感じだ。

 何処の世界でもこういう人はいるのね。

 まともに聞いていると精神的には良くないけれど、雑音くらいに聞いていると面白いわね。


 午前中の授業が終わりお昼休憩となったので、約束通りにレグリスと一緒に食堂へ行こうと思ったら、教室の外から声をかけられた。



「シア、レグリス! 迎えにきたよ」

「レオンお兄様、どうされたのですか?」

「殿下が二つの領の事について、僕達から話が聞きたいと仰ってね。お昼を共にしながら聞こうということになったんだよ」

「分かりました。シア、行こうか」

「はい」



 私達はレオンお兄様について教室を出た。

 教室内ではあの令嬢達が悔しそうに、騒ぎ立てていた。



「何だか変なのがいるみたいだね」

「今朝話していた令嬢です。変というか、自分が注目されたい感じかしら? それとも、男性にちやほやされたい感じ?」

「何だそれ」

「レグリスは気を付けた方がいいわ」

「なんで俺が?」

「元々は(わたくし)が貴方と仲良くしてるのが気にくわない感じでしたもの」

「なんでだ?」

「レグリスの見目がいいからよ。あの令嬢は格好いい殿方からちやほやされたいのよ」

「面倒臭すぎる」



 本気で嫌だというように顔を顰めている。

 絡まれる私も面倒だからレグリスとは違う意味で私も嫌なのは一緒だから気持は良く分かる。


 

「大変だね。シアも気を付けるんだよ」

「はい、お兄様。ですが、色んな方がいらっしゃって面白半分で楽しんでますわ」

「お前、ほんと色んな意味ですごいよな」

「ありがとうございます」



 褒めてないとぼそっと呟くレグリスは呆れていた。

 話をしながら歩いていると、目的地に着いたみたい。

 お兄様がノックをして声を掛けると、中から「どうぞ」と返事があり私たちは中へと入る。

 そこにはヴィンセントお兄様、マティお兄様にレグリスの兄弟達が揃っていた。



「お待たせいたしました」

「待ってたよ。シア、首席入学おめでとう」

「ありがとうございます。殿下」

「従兄なんだから、ここでは従兄様(おにいさま)と呼んで欲しいな」



 ヴィンスお兄様はそう懇願するようにお願いしてきた。

 確かに、シベリウスの養女なので一応従兄にはなる。

 なるけれど、他で従兄(あに)と呼ばなければ大丈夫かな⋯⋯。



「分かりましたわ。従兄様(おにいさま)

「君がセイデリア家の三男レグリスだね。話はマルクスから聞いているよ。次席入学おめでとう」

「ありがとうございます。ご挨拶が遅れ申し訳ございません。初めてお目にかかります。レグリス・セイデリアです。よろしくお願い致します」

「よろしく。先ずは二人共座りなさい」

「「はい、失礼致します」」



 既に料理が並べられていて、私達も席に着くと、ヴィンスお兄様は話し始めた。



「今回の魔物の大規模襲来の殲滅に感謝する。民達に被害がないのも、両領から先に侵攻を食い止めたのも領主一族の力とその地に住む力ある者達のお陰だ。この国の王族の一人として深く感謝する。そして、無事にまた学園に登校する姿を見て安心した。それで、今回の事について大人達の目線ではなく同じ世代の者から話が聞きたくて集まって貰ったんだ。食べながらでいいから聞かせて欲しい。今後の対策や学園での授業にも活かしたい」



 お兄様がそう言いと一番の年長者である、セイデリアの長兄、ジスラン様から年の順で話し始めた。

 魔物の動きやそれに対応する自分達の連携の取り方、王宮からの支援もあったが、一番何が必要か、何があったら嬉しいか⋯⋯。

 皆が思ったことを話していくと、最期に私とレグリスの番になった。

 殆ど皆が話した意見と同じなので、殆どない。

 気になることはあるけれど、それを此処で話してしまっても良いものか、私の事を知らないセイデリアの人達がいるからね。

 細かい所を伝えるのは止めて大まかに話そうかな。



「シアとレグリスはどうだった?」

「私が感じた事は兄達が話してくれましたので。ただ、自分の無力さを痛感いたしました。能力や実力はもちろんですが、何よりも密な連携が大事だと学びました」

(わたくし)が気になったことは、皆様の身体の状態です。戦闘を長時間行っていると体力だけの問題ではなく、水分、塩分や糖分が必要です。それらを効率的に摂取出来ればよりよくなると思いました」

「⋯⋯あの時シアに強制的に何か飲まされたあれは何だったのかな? 後で聞こうと思ってたけど忘れていたよ」

「あれは、(わたくし)特製、水、塩分、砂糖を加えた飲み物ですよ。お兄様はあの時足元がふらついていしてらしたので⋯⋯危なかったですわ」



 私が伝えると、そんなもの飲めるのかというような目で見られた。

 まぁ確かに、あれは普段は飲めないわ。



「え⋯⋯っと、あれはそんな飲み物だったの? 話に聞いたら飲めそうにないけど、あの時すんなり飲めたのは何故だろう? というか、よく僕が目眩を起こしていたのが分かったね」

「それは、あの時お兄様にはそれらが全て足りなかったからですよ。身体が求めていたから飲めたのです。丁度お兄様が視界に入った時、少しふらついていたのが目に入りましたから」

「なるほど⋯⋯」



 そう、あの時目につかなかったら危なかったと思う。


 

「お飲みになった後は身体が少し楽になったのではありませんか?」

「確かに⋯⋯少し頭がはっきりして、身体も動くようになったよ」

「そういうことです。中々戦いの最中に摂るのは難しいかもしれませんが、必要です」

「父上からシベリウスのアリシア嬢は頭が良いと聞いていたが、そこまで考えているとは⋯⋯」

「確かに戦闘中に暑さも合間ってふらっとふらつくことはある。だが、それは戦いの最中においては命取り」



 私も熱くて頭に酸素も回ってないと感じることもあったし、水分が中々補給出来ない事もあって、交代で休む時にさっと作っておいたのが本当にに良かった。

 お養父様にこの事を報告する暇無かったけれど、今度帰った時にでも話そうかな。

 先にヴィンスお兄様達に話しておいても問題は無いでしょう。



「シア、今は時間がないけれど、今度それらについて詳しく聞きたい。それの作り方も教えて貰ってもいいかな?」

「勿論です。従兄様(おにいさま)

「皆も色んな話が聞けて有意義だった。ありがとう」

「いえ、私達もこうやって改めて考える時間があり、自身の為にもなりますので」

「では、午後からの授業に行こうか」



 お昼休憩も終わりに近いので、私達は各々教室へと戻った。

 午後からの授業を受け、この日の授業を全て終えると、レグリスは昨日の私と同じく寮へ手続きをしに向かい、私は図書室へ向かった。

 図書室にはちらほらと生徒の姿があり、私はどのような本があるのか見て回り、一冊本を借りて寮へと戻った。

 そのまま先日訪れたマルガレータさんの所へ行き、今朝モニカに話したことを確認しに行くと、女性で騎士を目指してる人もいるので、この寮にもそういった人達が自主練出来る場所があり、そこを教えて貰って時間は朝五時位から解放しているそうなので、誰でも使用して良いそうだ。

 マルガレータさんにお礼を伝え部屋に戻ると、モニカが待ち構えていた。


 

「ただいま、モニカ」

「お帰りなさいませ。今日は遅かったですが、何かありましたか?」

「帰りに図書室に寄っていたの。そして先程マルガレータさんに朝練の有無を確認してきたのよ」

「シア様は何処にいても変わりませんね」



 モニカに呆れられながら部屋着に着替え、お茶を淹れてもらい、今日の出来事を話す。

 一応あの令嬢達の事も話しておいた。

 明日からもどんな感じで話し掛けてくるのか、色んな意味で楽しみではある。

 続けば辟易しそうだけどね⋯⋯。



「明日の朝から早速身体を動かそうと思っているの。モニカは寝ていても良いわ」

「いえ、起きて付き添いいたします」

(わたくし)は好きでするのだから、付き合わすのは悪いわ」

(わたくし)に対してその様なお気遣いは要りませんわ。シア様をお一人で行動させるなんて出来ません」

「学園では一人で行動したりするわよ?」

「それはそうですが⋯⋯」



 モニカはなおも食い下がろうとする。

 学園は他の人の目もあるから大丈夫だと思うのだけどね。

 あぁけど朝の訓練の時は流石に人は少ないだろう。


 

『姫様、モニカ殿に付き添って頂くのがよろしいかと』

『何故?』

『我々は勿論いますが、日中と違い、早朝ともなれば人の目が少ないので、侍女が側にいるのといないのとは違います』

『わかったわ』



 私が考えていた事を皆に指摘されてしまった。


 

「シア様?」

「モニカ、朝早くから悪いけれど、やはりお願いできる?」

「勿論です」

「ありがとう」



 影達からの言葉でモニカにも付き合って貰うことにした。

 明日の朝の予定が決まって、今夜は借りてきた本を読んで寝ましょう。


ご覧頂き、ありがとうございます。

次話も楽しんで頂けたら嬉しいです。

よろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ