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目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第2章 学園生活の始まり
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95 学園初日


 今日から学園生活の始まり。

 私が通うのは、ハーヴェ王立総合学園。幅広く総合的に学ぶことが出来きる所だ。

 王都には他にも騎士学園や専門学園がある。

 魔法が使えない人達だけでなく、騎士や魔法師を目指したい者や専門的な道に進みたい人はこの二学園のどちらかに通う事になる。

 私は初日ということもあり、授業が始まるより早い時間帯にお兄様達と一緒に学園に登校する。

 学園は静かで生徒の姿はなく私達だけだ。

 私はお兄様達と一緒に先生方がいらっしゃる教師棟へ向かった。

 話には聞いていたけれど、とても広くて迷いそうで、お兄様に説明を受けながら歩いていくと教師棟へ着いた。

 向かったのは教師棟の学園長室。

 お兄様がノックをし、返事を待って中へと入ると、そこにはお祖父様と同じ年くらいの方と三十代位の男性がいらっしゃった。



「おはようございます。学園長、クランツ先生」

「「おはようございます」」



 マティお兄様が挨拶をし、私とレインお兄様も続いて挨拶をする。


 

「おはよう。シベリウスの諸君。無事で何よりだ。魔物の大規模襲来の対応、お疲れ様」

「ありがとうございます。紹介します。妹のアリシアです。シア、こちらは学園長のエーヴェルト・カルネウス先生で、隣がローランド・クランツ先生だよ」

「初めてお目にかかります。アリシア・シベリウスです。ご指導の程、よろしくお願い致します」

「アリシア嬢。首席合格おめでとう。隣にいるクランツは君のクラス担任で、専門教科は魔法学だ。分からない事は何でも聞くといい」

「シベリウスのクラスの担任のクランツだ。よろしく」

「よろしくお願い致します」



 クランツ先生は背が高くて目つきが少し鋭く、一見厳しそうな人だ。


 

「学園はまだ始まって間もないので、授業もまだ基礎の段階だから、アリシア嬢なら遅れることはなかろう。同じクラスになるレグリス・セイデリアは明日登校する事となっている」



 レグリスも無事だったのね。良かった。

 明日会えるのなら楽しみが増えたわ。

 しかも同じクラスって心強いわね。


 学園長が「ざっと学園の事を話しておこう」というと、簡単に教えていただく。

 クラス分けは試験の成績順となっていて、上位十五名がS―Ⅰクラス。

 成績が維持されれば、二年はそのままS―Ⅱクラスとなり、同じように成績が維持されたら卒業までクラスの面々は変わらないようだ。

 一年は共通科目のみで、実技のある武術や魔法は三ヶ月はみっちりと基礎を習い、最初の二週間の休暇日明けから実技に入る。

 三年からは共通科目の他に選択科目が追加されるとの事。

 週の五日は寮での生活で、週末には邸に帰っても良いとこのと。

 これは事前に聞いていたので知っていた。

 寮の事は後程寮管に聞きなさいとの事で、授業の内容に話は移り、教科によって先生が違うので、クランツ先生は魔法の授業を行ってくれるようだ。

 座学は教室で行い、実技は各分野で場所が異なるので、クラスの人達に聞くように言われた。

 昼食は食堂があるので、そちらで取ったり、外の庭園で食べてもいいそうだ。

 ざっと説明を受けたけれど、結構いい時間になっていた。



「シア、私達はそろそろ教室へ行かないと間に合わないから、そろそろ行くね。何かあったら直ぐ言いなさい。いいね?」

「はい。マティお兄様、レオンお兄様もありがとうございます」

「シア、頑張ってね」



 お兄様達は私の頭を撫でて、先生方に挨拶をして部屋を後にした。



「今のところ何か質問はないか?」

「特にありませんわ」

「分からなければその都度聞いてくれたらいい。では、私達もそろそろ教室へ向かおうか」

「アリシア嬢、よく励みなさい」

「はい、学園長。ありがとうございます」



 私はクランツ先生に付いて、教室へ向かう。

 先程とは違う通路なので、先生に説明して貰いながら進むと、着いたようだ。



「此処がS―Ⅰクラスの教室だ」



 中からはざわざわと話し声が聞こえるが、先生が中へ入ると静かになった。

 私は先生の後ろについて教室内へ入ると、興味津々な視線を感じる。

 その視線を無視しながら先生の側近くに立ち、前を向く。

 ざっと見た感じ、殆どが貴族で、平民は大体五人位かしら。



「おはよう。少し遅れたが、今日から授業に出席するシベリウスだ。仲良くするように」

「ご紹介頂きました、アリシア・シベリウスです。よろしくお願い致します」

「シベリウスの席は、窓際の真ん中の空いてる席だ」

「ありがとうございます」



 私は先生に言われた席に向かい、その周りの席の子達に会釈して席に着く。

 今日の一限目は魔法の基礎なので、クランツ先生がそのまま教壇に立ち、早速授業が始まる。

 前回の何処まで習っているかの説明があり、私に問題ないか確認が入るが、特に問題がないので、そのまま進めて貰う。

 授業は“記憶”と同じような感じで進んでいく。

 先生からの質問に答えたり、その授業風景は何だか少し懐かしいと感じる。

 魔法の基礎だけど、復習にもなるし、クランツ先生の授業はとても分かりやすく、楽しかった。



「さて、今日の授業で分からなかったところはあるか? ⋯⋯なさそうだな。では今日はここまでだ」

「「「ありがとうございました」」」



 学園初日の初めての授業が終わり、十分の休憩に入る。

 入学式から居てないので、既にグループが出来ているみたい。

 さて、どうしようかな⋯⋯。



「シア!!」



 そこへ大きな声で呼ばれたのでちょっとビックリした。

 けど、この声は⋯⋯。

 声がした方に視線を向けると思った人物が立っていた。



 「ディオおねぇ⋯⋯」



 私が言い終える前に抱き締められた!

 力が強い⋯⋯。



「無事で良かったわ! 心配したのよ。怪我はないかしら?」



 私は顔から抱き締められていたので話すことも出来ず、だんだん苦しくなってきて、思わずディオお姉様の背中をぽんぽんと叩いた。

 ディオお姉様はヴィクセル家のご令嬢で彼の家は代々騎士団や魔法師団の上層部に所属する方が多く、現ヴィクセル伯爵は軍部の総団長を拝命している。

 お姉様ももれなくそちらへの道を進むようで、力が強い。

 ちなみに、ディオお姉様とは五歳の時に初めてお会いしてからの付き合いで、お姉様と呼んで欲しいということでそう呼ばせて貰っている。



「あっ! ごめんなさい。つい⋯⋯大丈夫?」

「はぁ⋯⋯もう、ディオお姉様ったら手加減してくださいませ」

「それだけ貴女の事が心配だったのよ。お母様にお話を聞いたときは私もシベリウスに行こうかと思ったもの。全力で止められてしまったけれど」

「それは、止められて当然ですわ。 ⋯⋯ディオお姉様、ご心配をお掛けして申し訳ありません」

「いいのよ。遅くなったけど、首席入学おめでとう」

「ありがとうございます。これからもよろしくお願い致しますわ」



 ディオお姉様の登場で、周りはお姉様に見惚れていたり、上級生の登場に遠巻きにしている。



「これからは学園で一緒ですし、困ったことがあったら直ぐいうのよ?」

「ありがとうございます。お姉様」



 お姉様は「そろそろ戻るわね」と来たときと同じく颯爽と去っていった。

 学園でお兄様達以外で会いに来てくれる人がいるのは嬉しい。

 お姉様とお会いしてちょっと肩の力が抜けたかも。

 思ったより緊張していたみたい。

 お姉様にはお礼いわなくては。

 それから午前中の授業を受け、昼食の時間となる。

 食堂の場所はお兄様達より大体聞いてはいたけれど、心許ない。

 私は隣に座っている子に勇気を出して声を掛けてみた。



「あの、もしよろしければ、(わたくし)もお昼をご一緒させていただいても良いでしょうか?」

「えっ!? 一緒に食べるのが私達で大丈夫ですか!?」



 ――⋯⋯どういう意味?


 

「勿論ですわ」



 私が彼女達に返事をすると、何故か怯えたような表情で、視線を逸らされた。

 その理由はすぐに分かった。


 

「お待ちになって。貴女、その者達は平民でしてよ。そんな者達より(わたくし)達と一緒に行きましょう」



 急に尊大な言い方で割って入ってきたのは気の強そうな貴族の子だった。

 その話し方に私には不信感しかなく、一緒に食べたいとは思わない。



「この学園でそのような発言はお止めになられたら? (わたくし)から声を掛けたので今日は彼女達とご一緒致しますわ。よろしいでしょうか?」

「えっと⋯⋯私達は、遠慮しておきます! ごめんなさい!」



 そう言うと脱兎のごとく教室からいなくなった。



「あら、平民に捨てられたのね。可哀想に。では失礼」



 そしてその令嬢達も教室を出ていった。


 

 ――⋯⋯一体何なの?


 

 この学園では貴族平民関係なく学ぶ場所のはずが、まさかの階級差別が行われていた。

 折角お友達作れるかと思ったのに、これは前途多難ね。

 というか、あの令嬢達には呆れしか無いわね。

 取り敢えずは、食堂に行きましょう。

 何とか着いて、昼食を頂く。

 こんなに人が多いと一人でも気にならない。

 食べ終わったら園内を迷わない程度に散策しながら教室に戻る。

 ちらほらと教室に戻ってきている人達もいたが、私は声をかけずに席に戻る。

 午後の授業を二科目受けて、今日は終わりとなった。

 その後、寮へ散策しながら辿りついて寮管の人に話を聞くのに部屋へ通されると、モニカが部屋の中で待っていた。



「おかえりなさいませ」

「ただいま、モニカ」

「少しお疲れですか?」

「⋯⋯後で話すわ」



 モニカと挨拶をしているのを寮管の方は待っていてくれた。

 年配の優しそうなご婦人で女子寮の寮の管理責任者の方。



「お待たせいたしました」

「大丈夫ですよ。お掛けなさい」

「失礼致します」

「初めまして。私は学園女子寮の管理責任者のマルガレータです。よろしくお願いしますね」

「初めまして。(わたくし)はアリシア・シベリウスです。よろしくお願い致します」

「丁寧な挨拶をありがとう」



 管理者の彼女はとても優しそうな面差しの方で安心する。

 


「今日から入寮ということですけど、鍵は後ろの侍女の方に渡してあります。門限がありますので、必ず夜六時までには寮に戻るように。学園の用事や家の事情がある場合で、戻るのが遅くなるときは必ず事前に連絡するようにお願いしますね」

「分かりましたわ」



 彼女の説明に頷くと、マルガレータさんは話を聞く姿勢に満足するように頷いた。


 

「寮内での出来事は自己責任ですので、よく考えて行動するように。後の詳細はまとめてモニカさんに渡してありますので、必ず貴女も目を通しておいてください。寮の決まりごとを破った場合は、それも成績に響きますのでそのつもりでね」

「分かりました。気を付けますわ」

「何か聞いておきたいことはあるかしら?」

「今のところありません」

「何か分からないことが出来たらいつでも聞いてくださいね」

「ありがとうございます。これからよろしくお願い致します」



 私はマルガレータさんに挨拶をして、モニカの案内で部屋へ行く。

 一年は一階に部屋があり、私は一番端の部屋だった。

 中は思ったよりも広くモニカやお祖母様達が調えてくれていたので、とても快適に過ごせそう。

 私は部屋着に着替えて、今日の事をモニカに話すとそれはもう呆れていた。

 今日はお友達が出来なかったけれど、明日はレグリスが来るし、今日よりはましでしょう。



「シア様、その令嬢達とはあまり関わらない方が良さそうな気がしますね」

「少し面倒臭そうな気はするわ」

「マティアス様達には報告致しますか?」

「⋯⋯しなくていいわ。まだ初日だもの。何かされたわけではないしね」

「シア様、もし何かありましたら隠さず必ずお話しくださいね」

「⋯⋯何かされたら(わたくし)が隠すと思っているの?」

「シア様なら大したことなければ何も話さないと思います」



 そうかもしれない⋯⋯。

 そうなったら言わないかもね。

 心配をかけたくないのと大袈裟にしたくないのとで、きっと言わないでしょう。



「シア様?」

「モニカ、心配しないで。何も言わないということは、本当に大したこと無いという事よ。それに仮定の話でしょう? 学園生活を楽しみたいし、そうならないようにするつもりよ」

「勿論学園生活を楽しんで頂きたいのですが、シア様なら問題ないかと思いますが、イェルハルド様も仰っていたように、対応にはお気をつけください」

「分かっているわ」



 まだ学園生活は始まったばかりだし、先の事は分からないけれど、何が起きても楽しもうと思う。

 先ずは、寮の事を理解していないとモニカに迷惑かけてしまうので、先に資料を読み込んでおかないと⋯⋯。

 お兄様達より話は聞いているけれど、男子寮と女子寮で違いがあるといけないしね。



 朝食は六時から七時半まで食堂を解放しているそうで、食堂で食べてもいいし、部屋に持ち帰って食べることも出来るみたい。

 夕食は十八時から二十時まで。

 これが休息日の二日間は、昼食が十一時から十三時までらしい。


 各階に談話室があり、他の生徒と交流する事も出来る。

 二学年ずつ階が分かれていて、最終学年にもなると寮生活でなく自宅から通っても良いようで、それが何故かという八学年ならば働き先が決まっている者が多く、両立すので寮生活が難しい事から最高学年ではそれが許される。

 仕事先は七学年の後半で決まることが多いようだ。

 女生徒の場合は結婚をする人達も多いので、八学年ともなればそれに向けての準備や勉強期間があり、それらは各家庭で行うために、こちらも同様に寮生活は義務ではない。

 この事から八学年の寮部屋は少なく、殆どの八学年生は自宅通いをしているので、実質七学年生までしか寮にはいないようだ。


 読み進めると、規則の項目の多さに驚いた。

 それも、そんな規則が要るのかと言った内容もある。

 規則を破ると勿論罰則もあるようだ。

 例えば、女子寮なので、男子を招き入れる事の禁止。

 これを破れば、部屋での謹慎一週間並びに反省文の提出。

 三回繰り返せば、停学三ヶ月と重くなる。

 それでも直らなければ、学園からの追放処分。

 中々厳しいけれど、それぐらいしなければならなかった事があるのかな。

 あれ、と言うことは⋯⋯。

 私には影が付いているけれど、二人共に男性。

 もし声に出して話し声が洩れてばれたら大変よね?

 彼等とは契約があるから念話が出来るので寮にいる間は話をする時は声に出さないでおきましょう。


 後は門限を破りった時、夜中に寮を抜け出した時、生徒同士のいざこざに関してや相手を傷つけた場合、王立学園の生徒として相応しくない振る舞いをした場合、階級差別が発覚した場合、服装に関してその他諸々⋯⋯。

 きっと今まで色んな問題があって事細かに規律が出来たのでしょう。


 全て読み終わるとそれなりの時間となっていて、夕食を頂きにモニカと共に食堂へ行くと、それなりに人が多かった。

 此処では侍女と共に食事をしても何も言われないが、大体の令嬢達は食事を共にしていないようだ。

 後からモニカに聞けば、令嬢達が帰宅する前に食事を済ませているのだとか。

 私はモニカに聞いて、情報交換の為にほかの侍女達と食事を共にしてもいいし、私と一緒に食事を摂ってもいいし、そこはモニの意思に任せた。

 今日は既に食事を済ませていたようで、私だけでいただく。

 食事はかなり美味しかった。

 美味しい食事を頂いた後は部屋へ戻り予習をし、就寝するのみ。

 消灯時間は二十二時で、それ以降廊下には出ない。

 部屋内は特に制限はないので勉強をしたり、読書をしたり自由時間。

 モニカの部屋は私の部屋の隣にあり、直ぐに行き来出来るようになっている。

 モニカにはあまり遅くまで読書や勉強をしないよう言われて、就寝の挨拶をし、私の部屋を出た。

 私は少し読書をして明日に備えて早めに休むことにした。



ご覧頂き、ありがとうございます。

次話も楽しんで頂けたら嬉しいです。

よろしくお願い致します。

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