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目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第1章  大切なもの
85/264

85 王都 シベリウス邸


 お兄様が学園に戻られてからは、またいつもの日常に戻り、勉強や訓練に励む。

 いつもはサムエル達に訓練に付き合って貰っているけれど、休息日の早朝には、お養父様にレオンお兄様と共に訓練を付けていただく事も続けていた。

 そんな風に暫く平和に過ごしていると、季節も変わり気付けば十一月も終わりに近づいていた。


 十二月から社交シーズンの始まり。

 王都に貴族達が集まってくる。

 いつもはこの社交シーズンに会議を行うのだが、今年は世界会議がこの国で開催するのも合間って、前倒しで行ったため、この時期の会議は今回は無いようだ。


 お養父様達も流石に王家主催の夜会には参加する予定なので、始まりの十二月と年明けの二回は必ず出席をする。

 それ以外は情報交換や収集、他の貴族との交流等を行うようで、お養母様もお茶会の予定が既に幾つか入っているので、お養母様も忙しいようだった。

 何時もこのように予定が沢山入るので、年明け初めの王家主催の夜会までは王都で過ごすという。

 年明けは家族と過ごすのが当たり前なので、レオンお兄様と共に私も王都へ行くことになっている。

 邸は今は王都へ行く準備に追われている。



 王都へ出発する二日前。

 私は離宮のお祖父様達に会っていた。



「今年も後僅かだな。ステラよ、シベリウスでの生活はどうだ?」

「最近は何事もなく穏やかに暮らしておりますわ。レオンお兄様と街に行くこともあります。皆とても生き生きとしていて、街を歩くのがとても楽しいのです」

「そうか。ステラが楽しそうで何よりだ。訓練も怠っていないな?」

「勿論ですわ。伯父様の訓練はとても厳しいですけれど、楽しいです」

「はは! 訓練が楽しいか! それは頼もしいな」



 お祖父様は楽しそうに私の話を聞いていた。

 お祖母様は若干呆れていらっしゃるけれど⋯⋯。

 勿論訓練だけでなく、淑女教育も伯母様にきちんと習っていますよ。



「そろそろ王都に来るのだろう?」

「はい。二日後に王都へ向けて出発する予定です」

「そうか⋯⋯」

「お祖父様?」

「いや、アリシアとして来るからまぁ大事ないと思うがな、王都の邸、敷地内から余り出ないようにしなさい。何かあれば直ぐに此処に転移してくるといい」

「分かりましたわ」



 やっぱり私が王都の来るのは心配なのね。



「さぁ! お祖父様のお話が終わったら次は(わたくし)の番ですよ」

「お祖母様?」

「あれから大分身長も延びたでしょう? 採寸しましょう」

「えっと、はい⋯⋯」



 笑顔の圧が凄くて頷くことしか出来なかったわ。

 まぁ、採寸だけならいいかな。

 と軽く思っていたことを後で後悔する事となる。

 私達は部屋を移動して、お祖母様に案内された部屋に入ると、そこにはお祖母様専属のお針子隊が待ち構えていた。



「待たせたわね。さぁステラ! 今から新しいドレスを仕立てるわよ!」

「⋯⋯お手柔らかにお願い致しますわ」



 半分諦めぎみでそう答えた。

 だけど、勢いが凄くて、この色は⋯⋯、このレースは⋯⋯と話していて、ドレスの形はどうのとか、そこへついついと私は口を挟んでしまった。

 何となくデザインを変えたくて、そして、可愛らしすぎて、そんなにリボンは要らないかなぁと思っての事⋯⋯。

 そうしたら、目の色を変えた皆様が私に襲いかかる!

 失敗したわ。エーヴェの時の二の舞になってしまった。

 だけど、避けたいデザインってあるでしょう?

 私、そこまで可愛らしいリボンなんて要らない。

 たとえ子供でも⋯⋯。

 だから、リボンはリボンでもちょっと少しアレンジしたらどうなのかなと、何種類かデザイン画を描いてみたら、お祖母様も一緒に「素晴らしいわ!」とお褒めいただき、そこからは、そのデザインを更にアレンジし、色や生地を決めて、ようやく解放された⋯⋯。

 その後、お祖父様も交えてお茶を頂き、一息付く。



「お疲れ、ステラ。大丈夫か?」

「はい。お祖母様達の勢いが凄くて圧倒されましたけれど⋯⋯」

「まぁ! ステラのデザインは画期的で凄いのよ! オリーに聞いていたけれど、本当に素晴らしいわ。皆に見せびらかしたいくらいよ」

「ほぉ。ステラにはその様な才能もあるのか。王宮に戻ったときの一つの武器になるな」

「そうなの! イルも楽しみにしていらして。とっても可愛らしく仕上がるから」

「ふむ。ステラは何を着ても可愛いが、更に可愛くなるのはいいな。楽しみだ」

「お祖父様もお祖母様も誉めすぎですわ」

「ステラが可愛くて仕方ないのだ。アンセに自慢してやろう」



 それは止めてください!

 お父様を煽らないでください!

 次のお手紙が恐い。

 ヴァン様の一件でのお手紙も、凄い枚数で凄く怖かったのだから!

 その後は穏やかに話を楽しみ、王都に来てから何度か離宮に顔を出すよう言われて、私はシベリウスへと戻ってきた。



 それから、予定通りに二日後、私達は馬車で王都に向かった。

 私はと言うと、初めて馬車での領から出るのと、王都へ向かうのとで少しの楽しみと若干不安があるのだけれど、お養父様達が一緒なので、そこは気にしないことにする。


 馬車はお養父様達といっしょに乗っているので、長時間乗っていても苦ではなく、色んなお話しを聞けて楽しかった。

 夜は宿に泊まり、その地の料理を楽しんだり、雰囲気が味わったことの無いものだからとても新鮮だった。

 そんな行程で、二日後には王都にはいった。

 王都はシベリウスの街とは比べ物にならない程の賑わいを見せており、街中を行き来する人達も色んな国の人々が行き交っていた。

 カーテンを全て開けるわけにはいかないので、そっと覗くだけだったけれど、それでも王都の様子が見れて、嬉しくなった。

 暫く走ると、街の喧騒が薄れて貴族の邸がある区画に入っていった。

 そこから更に進むと一つの大きな邸に着いた。

 此処がシベリウスの王都の邸。

 彼方とは少し趣が違うけれど、それでも彼方と似た感じがする。


 馬車が止まり、お兄様、私お養父様にお養母様の順で降りると、王都の邸で働く執事や侍女達が出迎えてくれた。



「「「お帰りなさいませ」」」



 何時も思うのだけれど、こういった貴族の邸で働く人達は凄いと思う。

 それが仕事なのだと言われたらそれまでなのだけれど。

 仕事も丁寧でお出迎えも揃っていて尊敬に値する。


 私達は居間に移動して、少し話をする。

 私は此処に来るのが初めてだからだ。

 会議のあの一件は別として⋯⋯。

 お養父様達からも、私には邸の敷地内から出ないよう注意がなされ、庭に出るときも必ず護衛かレオンお兄様と一緒にいなさいと言われた。

 大体お祖父様に注意された通りである。

 私の不注意で迷惑をかけるのは本意ではないので、邸で大人しくしているつもりです。


 邸内は明日レオンお兄様に案内して貰うこととなり、私達は一旦部屋へ下がり、身なりを整える。

 流石に旅装のままはよろしくないものね。

 此処での侍女はモニカは勿論、この邸で働いている、アイナという、モニカよりも年上の侍女が付いてくれた。

 アイナの案内で部屋へ行き、着替える。

 すでにお養母様によって此処での着替えも全て仕立てられていて驚きしかない。

 驚きといえば、私が普通に受け入れられている事もそうだ。

 急に養女としてシベリウス家に入ったというのに、初めから存在していたような、そういった感覚に陥る位自然だ。

 これもお養父様達の人望のおかげかしら。


 お茶を淹れてもらい、夕食まではゆっくりと過ごす。

 アイナはとてもおおらかでほっと出来るような雰囲気を持つ女性で、アイナの笑顔はなんだか安らげる。

 私がお茶を飲んでいる間に、荷解きがされていく。

 その間、私は此処での過ごし方をどうしようか考えていた。

 そんな時、誰かが来たようだ。



「アリシア様、奥様がいらっしゃっておりますが」

「お通しして」



 直ぐにお養母様が部屋に入ってくる。

 どうしたのかしら⋯⋯。



「シア、少しいいかしら」

「勿論ですわ」

「三日後なのだけれど、此処でお茶会を開く予定なのよ。流石に貴女の存在を隠したままと言うわけにもいかないでしょう? 今の貴女はシベリウス家の養女(むすめ)なのだから。結論から言うと、そのお茶会にレオンとアレクと一緒に出てほしいの。 集まるのは(わたくし)と懇意にしている信用のおける人達だけだから安心なさい」

「分かりましたわ。出席致します」

「ありがとう。詳細は明日詳しく話すわね」



 (アリシア)として過ごすのだから避けては通れないので、否はないけれど、少し緊張するわ。

 というか、そのお茶会ってもっと前に決まっていたわよね?

 もう少し早くに知りたかったです⋯⋯。



 そして翌日。

 お昼からお兄様に邸を案内して貰い、そして、目的の図書室があった!

 嬉しくて中に入ると、彼方とはまた違った種類の本が置いてあったので、予定のない時は此処で読書を楽しみましょう。

 それを見たお兄様は「程々にね」とちょっと呆れていらっしゃった。

 その後は各お部屋や、サロン、最後に暖かい格好をしてお庭に出た。

 温室があり、魔道具で暖めているのか、中は丁度いい温度だった。

 そこにはすでにお茶の準備がされていて、お養母様がいらっしゃった。



「邸の探検は終わったかしら?」

「はい。ここで読書をするのが楽しみですわ」

「貴女は何処に行っても本を読むのが好きね」

「色んな知識が増えるのは楽しいです」

「レオンも見習いなさいな」

「僕もシアほどじゃないけど、本はきちんと読んでいますよ」



 お兄様はそう反論していた。

 温かいお茶を淹れて貰い、ささやかなお茶会が始まった。



「明後日のお茶会の事なのだけれど、レオンは去年も参加したから分かっていると思うけれど、シアは初めてですからね。レオンはシアとアレクに付いててあげてね」

「勿論ですよ、母上。出席者は前回と同じなのですか?」

「えぇ、そうよ」

「お養母様、どのような方々がいらっしゃるのかお伺いしてもよろしいでしょうか?」

「勿論よ」



 出席者は、お養母様の懇意にしている方々で、聞けば中々なお家柄の人達だった。

 お子様方を連れてくる人もいれば、そうでない人もいるので、子供達は少ないとの事。

 お養父様も出席するようで、いつも途中から女性陣と男性陣に分かれて話をするようで、私達はというと子供同士で交流を深める事、年齢も様々だから、小さい子に合わせるようで、その時によって違うみたい。


 そういえば、王宮にいるときもそうだったけれど、良く考えたら身内以外の貴族の令息令嬢に会うのって初めてだわ。

 不安よりも楽しみで、今からわくわくする。

 明後日が楽しみになった。

 その後は当日の注意する事をお養母様から確認して、ささやかなお茶会は終了した。



 それからお茶会までの間に、私はいらっしゃる方々の領地の事やお仕事など、勉強をして過ごした。

 特に、注意しなければならないのは、セイデリア辺境伯と辺境伯夫人やベリセリウス侯爵と侯爵夫人の組合せでは、侯爵と辺境伯は(エステル)の事をご存知だけど、其々の夫人は知らないので気を付けなければいけない事。

 まぁ、私が話し掛けることはないだろうから、大丈夫だろうけれど、気を付けるに越したことはない。

 これらを軽くこなせなくてはいけないのも分かってはいるが、楽しみではあるけれど緊張はする。

 先ずはお養母様達に恥をかかせないようにしたい。

 そして、これをこなせなければ、王宮に戻ったときに苦労するのは目に見えている。

 緊張しすぎずにお茶会を楽しみ、お友達が出来ればとても嬉しいので、楽しみながら頑張ろうと思う。

 そう思うと、明後日が楽しみで早く当日になって欲しい。

 後一日、当日に備えましょう。


ご覧いただき、ありがとうございます。

次話も楽しんでいただけたら嬉しいです。

よろしくお願い致します。

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