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目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第1章  大切なもの
82/264

82 危険な行為


 探索を再開させ、私は先程よりもより細かく分かるようにと制御を緩めた。

 そうすると、より魔物が何処にいるとか、どの方角にいるかがよく分かる。

 今は常にお養父様が側にいるので、その都度報告をする。

 ただ、時々感覚を閉めないと気持ち悪くなってしまうので、休み休みだから皆には申し訳ないと思う。

 お養父様は気にしなくていいと言ってくれているけれど、足手まといには違いないよね。

 暫くそうやって進んでいくと、ふと何か違和感を感じたので私は急に立ち止まった形となり、皆が何事かと此方を見る。

 私はそれに気付かず、ただ気配を探る⋯⋯。

 魔物の瘴気ではなく、これは⋯⋯。

 目を閉じて集中する。

 何処、この気配の場所は⋯⋯。



 ――見つけた!



 遠くからこの気配を察知したけれど、この状態でお養父様に伝えたいけど、上手く言葉にするのが難しい⋯⋯。

 言葉で言うより感じて貰った方がより分かると思うんだよね。

 上手くいくか分からないけれど、ヴァン様が私にしてくれたように、伝えられれば⋯⋯。

 私は目を開けてお養父様を見ると、私の真剣な眼差しを受けて私の目の前に膝を付いてくれた。

 私はお養父様の眉間に指先を持っていく。

 私は気配を察知したままの状態でお養父様にも伝わるよう力を流す。

 そうすると、一瞬びくりとお養父様が揺れた。



「これは⋯⋯あぁ成る程な。こういう気配なのか。シア、ありがとう。もういいよ」



 お養父様の言葉に私は力を抜くと、思ったより集中したのか、足元から力が抜けてそのままお養父様に抱き抱えられた。



「大丈夫か?」

「はい。少し、疲れました⋯⋯」

「シアのお陰で気配が分かったから私でも探し出せるだろう。サムエル、シアを頼む」

「お任せください」



 私をサムエルに渡し、お養父様は場所を特定し指示を出す。

 此処からは本当に気を付けなければならない。

 私はサムエルに抱えられながらの移動となる。

 勿論周りには私を守るために騎士で固めてくれた。

 少し情けない思いもするが、少しでも役に立ったのなら良かった。

 それから、皆で気配の場所へと向かう。

 近づくに連れて魔物が多くなったが、皆討伐に馴れているから連携し倒していくと、その先に、魔物の瘴気とは別の瘴気が発せられたとても暗い闇色の玉が浮いていた。

 それは、ラルフが身に付けていた宝石と同じと思える色で、それよりも少し大きめだったが、気配は紛れもなく瘴気で、人の嫉妬や憎悪と言った負の感情が渦巻いていた。

 何というか、人の思いが凝縮した玉と言った感じ。

 これが人為的に発生させられている瘴気か⋯⋯。

 見ているだけでとても嫌な気分になる。

 これは自分の気持ちに強くなければ負けてしまうかもしれない。



「皆それ以上は近づくなよ。後気分の悪いものは意地を張らずに退避しろ! これは想像以上に不味いものだ⋯⋯」



 確かに、これは本当に不味いと思う。

 こんなの放置できない。



「アリシア様、ご気分はいかがですか?」

「今は閉じているので大丈夫です。サムエル、下ろして貰えますか?」

「何があるか分かりませんから、私の側を決して離れないで下さい」

「分かりましたわ」



 私は下ろして貰い、そのままサムエルの近くに控える。

 お養父様は指示を出して光魔法を使える者達を玉を中心に周囲に配置させる。

 そして一斉に光魔法で玉を覆うように包んでいく。

 そして、暖かな浄化の光で闇を消していく。

 少しずつだが、気配が薄くなり、暫くすると完全に瘴気は無くなっていた。

 光が止むと、そこには透明の玉が転がっていて、周囲に結界を張り、お養父様はそれに近づく。

 そこから気配はなにも感じないので大丈夫だとは思うけれど、お養父様は用心として、少し大きめの石を拾い、透明の玉に向けて投げると、コツンっとした音を響かせただけで何も起きなかった。

 それを確認した後、玉を拾い上げ、お養父様は繁々と観察をする、がやはり何も痕跡は残していないようで、探ることは難しいようだった。

 だが、一度持ち帰って再度調べてみるようで、一応用心のために、幾重にもそれに結界を張って袋に詰めた。


 今日のところはかなり大きな収穫があったので、探索は以上で終了となり、森の入口へと戻る。

 私は途中で歩くのが遅いせいでお養父様に抱き抱えられた。

 遅いとかじゃなく、子供だから歩幅の問題。

 だけど、足を引っ張ってるのは分かっているので、素直に従う。

 森の入口まで戻ってくるととてもほっとした。

 先に戻っている班もあり、まだ戻っていない班もいるので、皆が戻るまで待機する。

 お養父様は他の者達に指示を出したりしているので、私は邪魔にならないように端っこで座り、その間に少し水分補給をする。

 そうしていると、残りの班が戻ってきたので、全員無事に揃った。

 今日分かったことは明日の朝から領主館で会議を開く事を此処で決めて、冒険者達はギルドへ報告に行き、私達は騎士団の本部へと帰路に着いた。

 帰りも行きと同じく、お養父様に同乗したのだけれど、初めての森といろんな事があり、いつの間にか眠ってしまった。



 ふと、話し声が聞こえたので目を開けると、いつの間にか邸に着いていて、丁度馬から降りたとこだったみたい。


 

 ――あれ⋯⋯?



「お目覚めになられましたか?」

「サムエル⋯⋯(わたくし)寝てしまってたの?」

「はい。森を後にして暫くしたら眠ってしまったようで、閣下は騎士団でまだ仕事をなさるそうなので、アリシア様を邸にお連れするようにとの事で、今に至ります」

「ありがとう。歩けるので下ろしてください」

「畏まりました」



 私は下ろして貰って側にいたお養母様にただいまの挨拶をする。



「無事に帰ってきてほっとしたわ。ケガはないと聞いたけれど、大丈夫かしら?」

「ご心配をお掛けしました。少し疲れましたけど、大丈夫です」

「無理はだめよ。まずは汗を流してきなさい」

「はい」



 お風呂は入りたいので、お養母様の言葉は大歓迎!

 同じく迎えに出てくれたモニカを伴って部屋へと戻る。

 私はそのままお風呂へと向かった。

 いっぱい歩いたし、汗も沢山かいたので、さっぱりしたいわ。

 マリー達に体を洗われ、マッサージも受けてお風呂に浸かってとても気持ちいい。

 ふわふわして、このまま寝てしまいそうになるのをマリー達に強制的にお風呂から出されて着替えさせられる。

 これでいつ寝てもいいのだけれど、お腹は空いていた。

 けれど、今の私は眠気に勝てなくて、そのまま夢の中に旅立った。


 次に目が覚めると、もう夜も大分更けていて、私はベッドの中にいて辺りは暗かった。

 私はぐっと深く寝たのか、凄くスッキリと目が覚めてしまった。

 ベッドから降り、寝室を出て部屋へ行くと、軽食が用意されていた。

 モニカの字で「お腹が空いていると思いますので、軽食を用意しておきます。よければお召し上がりください」と。

 流石ね!

 私は早速頂く。

 起きたてだけど、お腹は凄く空いてるので全然食べれる。

 用意されていた軽食を残さず食べ、お腹が落ち着いたので今日の事を思い返す。

 何だか色々ありすぎて、聞きたいことも盛りだくさんなんだけど⋯⋯。

 私はふと思う。

 そう言えば、ここには鑑定魔法とか無いのかな⋯⋯?

 そう言うのがあれば色んな事が分かるかもしれないのに⋯⋯。

 けど、あったら既に誰か使ってるよね。

 使ってる気配無いからやっぱり無いのかな。

 けど⋯⋯、ヴァン様はよく見破るって言っていたけれど、それってもしかして、そうなのかな。

 それを言わないとなると、あまり公にするべき事ではないのかも。

 気になる⋯⋯。

 気になり始めるととても気になる⋯⋯。



「アステール、ノヴルーノ?」

「如何されましたか?」

「二人共いたのね⋯⋯聞きたいことあるんだけど、あっ、その前に! 二人共ちゃんと休んでる?」

「それなりに⋯⋯、いえ、交代で休んでおります」



 言い直したわね。

 私は半信半疑で二人を見る。

 んー⋯⋯二人で休み回すのって出来るけど、まぁ苦しいよね。

 もう一人いた方がいいのは分かる。

 だけど⋯⋯まぁ、今は二人を信じよう。



「無理だけはしないでね」

「そのお言葉、そっくり姫様にお返し致します」



 あれ、二人共何か怒ってる⋯⋯?

 不思議に思っていると、アステールが口を開いた。



「姫様、昼間の件は肝を冷やしましたよ」

「昼間の件? ⋯⋯あっ、精霊と話してたときの事?」

「左様です。姫様に一つ忠告を。我が国にとっては精霊とは友好的ですが、彼らの本質はとても気紛れです。そのまま連れ去られることもあるのです。その事を胸に留めておいて下さい」



 私、すでに一回連れ去られているわよ。

 一回ではないわね、この間の事があるから二回ね。

 それは二人も分かっていると思うんだけど。

 それも合わせてってことかな。



「気を付けるわ。けど、昼間の事は(わたくし)も驚いたのよ」

「何故あの大樹に寄りかかったのですか?」

「とても暖かくて、ほっと出来るというか、安心感があというか、生きている樹という感じがして、それで⋯⋯」

「それで寄りかかったと?」

「⋯⋯そうね」

「姫様はあの大樹が何かはご存知ではないのですか?」

「知らないわ。何かあるの?」

「あの大樹は精霊の宿る樹と言われていて、あの樹がある一帯は魔物を寄せ付けない、森を迷ってもあの樹の近くにいれば安全で、冒険者がよく利用するのです。ただ、気に入った者が入れば精霊に連れていかれるともされているので、気を付けないといけないのです」

「だったら、あの時どうして(わたくし)を止めなかったの?」

「止めなかったのではなくて、止められなかったのです。早い段階で精霊に阻まれていました。先にお伝えしなかった我々も悪いのですが」

「そうだったのね。だからお養父様もあんなに焦ってらしたのね」

「左様です」



 納得したわ。

 それは、お養父様も焦るし、二人も怒るわね。



「心配掛けてごめんね」

「姫様の美徳は我々に対してもそうやって素直でいらっしゃるところですね」

「当たり前じゃないの?」

「普通の貴族はそうではありません。ですが、王族の方々は姫様同様気安い方が多いのは確かですね」

 

 

 まぁ、そうか。権力持ってる人間は総じて高圧的になる者が多い。

 残念ながらね。



「それより、我々に何か聞きたい事があったのではないのですか?」

「あっ、そう! 聞きたい事というか確認しておきたいのだけれど。魔法で、例えば魔道具とかを調べる魔法とかってあるの?」

「申し訳ありません、もう少し具体的に教えていただいても?」

「ごめんなさい、そうね、(わたくし)は魔道具で姿を変えているでしょう? だけど、(わたくし)自身は何も変わらない。だけど、(わたくし)を魔法で調べる、鑑定? そういったもので見破るような魔法ってあるのかなって⋯⋯」

「それは鑑定魔法ですね。一応存在しますが、かなり高度な魔法で、使える者は殆どいません。そして使える者はそれを秘匿しています。人族で使える者はいますが、正確ではありませんが確率で言えば千人に一人、位ではないでしょうか」

「なるほど、そんなに少ないのね」

「何故そのようなことを?」

「鑑定魔法があるなら、あの瘴気を失った玉? を鑑定できたら何か分かるかもしれないと思ったの」

「確かにそうですね」

「だけど、そんなに使える人が少ないのなら仕方ないわね。気になってたからすっきりしたわ。ありがとう」



 私は気になったことが解決したのですっきりした。

 後、愛し子⋯⋯。

 あの精霊が言ってた言葉、あれは、何を意味するのかしら。

 それはまたエストレヤに直接聞いてみようかな。

 一つの疑問がすっきりして、お腹も満たされたからまた睡魔が襲ってきた。



「姫様、そろそろお休みください」

「そうね⋯⋯、二人共ありがとう。おやすみなさい」

「「お休みなさいませ」」



 次の日の朝。

 私はぐっすり寝たのですっきりと、昨夜の疲れもなく目が覚めた。

 モニカ達を呼んで、朝の支度を済ますと、休息日なので養父様達と朝食を共にするが、お養父様は朝から昨日の件で会議を開くようで早々に領主館に出掛けて行った。

 私はというと、今日はゆっくり休みなさいと言われたので、部屋で大人しく過ごすことにする。

 まぁ読書はするけどね。

 そうやって午前を過ごし、昼食の時間にお養父様は邸に戻ってきた。

 会議は終わったけれど、内々の話し合いに私も参加して欲しいのだそうで、昼食後に一緒に領主館に行くことになった。


 領主館までは、お養父様の馬に乗せてもらい向かう。

 場所はお養父様の執務室で行うようで、そこにはイクセル様、ハルド様達といったいつもの主要な顔触れが揃っていた。



「待たせたな」

「いえ、我々も今来たところです」



 皆揃うと、侍従がお茶を準備して部屋を下がる。

 私、何か話すことあるのかな⋯⋯。



「シア、午前中の会議で昨日の件を報告、此れからの対策を話し合った。シアのお陰であれがどういったものなのか、皆にも伝えることが出来たので助かったよ。ありがとう」

「そんな⋯⋯、少しでもお役に立てたのなら良かったです」

「少しどころか凄い進歩だよ」



 私はお養父様に誉めていただいたけれど、ちょっと居心地悪かった。

 勿論誉めて貰ったことはとても嬉しいのだけれどね。



「それでだ、明日ユリウスが此方に来るんたが、シアにお願いがあってね。私に教えてくれたみたいにユリウスにも教えてやって欲しいが、出来るか?」

「それはあの気配の事ですか?」

「そうだ。あの時は気配を察したまま私にその気配を教えてくれたが、気配がなくても出来そうかな?」

「あの時、言葉よりも実際感じて貰った方がいいと思い、初めてやったことなので、上手くいって良かったです。ですが、気配が無いまま同じものを伝えられるかは、出来るかどうか分かりません」

「そうか⋯⋯出来れば彼とも連携が取れるし、対策も話しやすいと思ったんだが」

「⋯⋯出来るかどうかの確約は出来ませんけれど、あちらで試してみてもいいですか?」

「勿論だよ。だが、無理はするな」

「はい。サムエル手伝ってください」

「畏まりました」



 私はお養父様達の邪魔にならないように移動し、出来るかどうか試してみる。

 あの時の気配を思い出し、集中する。

 そして、同じようにサムエルの眉間に指先を当てて伝わるように力を流す。

 力を流すと、お養父様の時と同じように少し身体が揺れる。



「アリシア様、微かですが感じます。ですが、アリシア様の力が強いので、流すときに少し手加減された方がよろしいかと。セイデリア辺境伯なら大丈夫かと思いますが、力の弱いものだと、かなり危険かと」

「そうなの!? ごめんなさい! サムエルは大丈夫?」

「私は問題ありません」

「どうした?」



 私が少し大きな声を出したので、お養父様が何事かと此方にやってきた。

 私、あの時何も考えずにお養父様に知らせる事だけを思っていたから⋯⋯。



「お養父様! (わたくし)、ごめんなさい」

「どうした? 何も謝ることはないだろう?」

(わたくし)、あの時お養父様に伝えたい一心で、力を流しすぎたから⋯⋯」

「あぁ、シアの力が強いのは知っているから問題ない。少し驚いたけどね。⋯⋯それに、サムエルの忠告はもっともだが、ユリウスには問題ないから大丈夫だよ。シアが気を付けなければならないのは、力の弱いものに対して決して自分の力を流さないと言うことだけだ」



 本当に気を付けよう。

 というか、しない方がいい。

 何かあってからでは遅い。



「それで、いけそうか?」

「はい。近くで感じたようにはいきませんが、それでもきちんと分かります」

「そうか。シア、明日頼めるか?」

「分かりましたわ」



 一度引き受けたからにはきちんとしよう。

 私が伝えることが出来ると分かったので、お義父様達の話しに一緒に戻った。

 あの玉は、今は何の変哲もない物になっているので、明日それも合わせてセイデリア辺境伯に説明するらしい。

 今日のところは私の確認と、明日の件の打合せ等で話は終わった。

 

ご覧いただき、ありがとうございます。

次話もお読みいただけたらとても嬉しいです。

よろしくお願い致します。

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