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目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第1章  大切なもの
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81 森の探索


 シベリウスに戻ってから翌日。

 昨夜、お養父様に言われたことをお兄様にもお伝えした。

 私があちらに行っていた事にとても驚き、かなり心配されたけれど、無事に戻ってきてよかったと、そして後から知らされるのは心臓に悪いから自分にも教えて欲しいと強く言われた。

 だけど、こんな事は何回も起こってほしくないけれど、陛下とお話出来たのは有意義な時間だった。

 今日からはお養父様達が戻られるまでは大人しくしておきましょう。


 私もお兄様もお養父様の言いつけ通り、訓練以外は敷地内から出ずに大人しく過ごす。

 休日はお庭で変わらず訓練をしたり、アレクと一緒にお散歩をしたりと、兄弟で過ごす時間を多く取っている。

 何事もなく平穏な日々を送っていると、あっという間にお養父様達が帰ってこられる日となった。

 普通に勉強したり訓練したり過ごしていると、二週間なんてあっという間だと思う。


 お昼過ぎ、ハルド様とセーデン様がお養父様のお出迎えに此方にいらっしゃった。

 私とお兄様もお出迎えのためにお外に出る。

 今日も日差しがとてもきつい。

 暫くすると、馬車が見えてきた。

 姿が見えると、邸に着くのはあっという間で、馬車が止まると、イクセル様が降りてきて、お養父様、お養母様が順で降りてきた。



「「「おかえりなさいませ」」」



 使用人達が一斉にお出迎えをする。



「今戻った。レオン、シア、留守中何もなかったかな?」

「おかえりなさい、父上。何も問題ありませんでした」

「おかえりなさい、お養父様、お養母様」

「ただいま。報告は部屋で聞こう」



 お養父様の言葉で私たちは居間へ移る。

 各々ソファへ掛けると、早速お養父様が話し始める。



「レオン、シア。留守番ご苦労様。問題がなくて何よりだ」

「父上に言われた通りにしておりました」

「そうか。デニスとハルドも何事もなかったか?」

「此方も滞りなく」

「私の方も、特に問題はありません」



 今回は何事もなくて良かった。

 私はエストレヤのお陰で問題あったけれど、あれ以来何もなく平穏な毎日だった。

 特に何も問題がなかったので、仕事の細かいことは明日話すようで、皆早々に持ち場に戻っていった。

 居間には私達だけとなり、どう過ごしていたかをお養父達に報告する。

 いつも通り授業を受けて、訓練をして、休息日はお兄様とアレクと遊んだりしたことを話す。

 話し終えると、お養父様達は王都でマティお兄様と会ったことを話して聞かせてくれた。

 とても元気そうで、少し見ない内に背も伸びて、学園でも楽しく過ごしているようだったと。

 後一ヶ月もしない内に長期休みにはいるので、此方に戻ってくるとの事でとても楽しみ。

 お手紙はやり取りしていたけれど、やっぱり会えるのは嬉しい。

 暫く他愛ない話をして、各々部屋へと下がった。


 翌日からはいつもの日常に戻り、私も勉強や訓練に励む毎日を送る。

 数日経ったある日の夜の事。

 何時もの団欒の時間に、少し真剣なお話があった。



「この間、王都でヴァレンティーン殿下に言われたことだが、森に人為的な瘴気が発生することがあると言われ、一度森へ直接見に行こうと思う。シアは一緒に話を聞いていたから知っているだろう。本音は連れて行きたくないが、一番シアが気付く可能性があるからな。急だが、明日朝から一度森を探索しに行くのでそのつもりでいなさい」

「分かりました」

「父上、僕も行っていいですか?」

「いや、今回は留守番だ。流石に二人は連れていけない 」

「⋯⋯分かりました」



 お兄様は行きたそうにしていたけれど、お父様の無言の圧力で渋々留守番となった。

 明日は一日森を探索することとなったので「早く休みなさい」という事で、今日は早めに休んで明日に備えることにする。



 翌日、朝食を食べ終わり、森に行く準備をする。

 勿論訓練用に仕立てた服を着て、髪はハーフアップにし、別に髪飾りとか入らないと思うんだけど、モニカ達に「可愛さも必要です!」と言われてしまい、可愛く仕上げて貰う。

 腰にはポーチとお父様に頂いた短剣を差す。

 昨夜言われた時間に玄関ホールへと行くと、お養父様が待っていた。



「おはようございます。お待たせいたしました」

「おはよう。体調は問題ないね?」

「はい、大丈夫です」

「では行こうか」



 まずは騎士団へ向かうようだった。

 今日は馬車でなく、馬で向かうようで、私は初めての事なのでとても気分が上がった。

 お養父様の前に乗せて貰い、馬からの景色に興奮したけれど、お養父様には程々になと注意を受けた。

 馬車と違って馬なので、騎士団に着くのも早かった。

 既に騎士団では森へ向かう部隊が揃っていて、サムエルとクラースも私の護衛だから勿論一緒だ。



「待たせたな」

「お待ちしておりました。既に用意は整っております」

「良し、では出発しようか」



 私はそのままお養父様の馬で森へ向かう。

 森へ向かう時は街道からはずれた道を行く。

 時々お養父様は私がしんどくないか大丈夫かと確認してくれるけど、私は楽しくて特に問題はなかった。

 ただ、馴れない馬の上なのでお尻が痛い⋯⋯。

 それを素直に伝えると、お養父様は笑って「馴れるまでは皆通る道だな」と教えてくれた。

 少し体勢を変えて振動を少なくしてくれたので、森に着くまで音をあげずに済んだ。

 騎士団だけでなく、森の入口付近には冒険者達も揃っていた。


 皆を集めて今回の目的をお養父様はお話しされた。

 今回は魔物の討伐も含め、森の調査が主な目的で、無理をすることなく深追いもしないよう注意を受けた。

 私にはサムエル、クラースの他にリンデルも護衛として側にいてくれるみたい。

 見知った人がいると心強いよね。

 森は深いので、此処からは徒歩で進む。

 私達は何班かに分かれて行動することになる。

 私はお養父様と同じ班で、班分けは騎士団と冒険者達の混同。

 それっていざと言う時に連携取れるのかと思うけれど、全く問題ないらしい。

 同じ班の人達、冒険者ギルドの人達からは、私が一緒で大丈夫なのかとお養父様に確認していたけれど、お養父様は問題ないの一言。

 普通は五歳児をこんな所に連れてこないよね。

 私は制御を緩めて皆について行く。

 歩くのが辛くなったら直ぐに言うようにと皆に念押しされた。

 足手まといにはなりたくないので、無理はしない。

 暫くは何事もなく進んでいく。

 結構奥まで進むにつれて、魔物の気配が増え、自ずと戦闘も増える。

 私は邪魔にならないようにしながらも気配を探っていくが、魔物からの瘴気が濃く、中々見つけられない。

 私に近づく魔物はサムエル達が討伐していく。

 魔物も賢いようで、弱いものから狙いを付けてくる。

 主に私なのだけど⋯⋯。

 途中魔物に襲われて怖くはないかと冒険者達に聞かれたけれど、私は魔物より人の方が怖く感じる。

 感情がある生き物だからだ。

 そっちの方が怖い。

 そう答えると、驚かれたが、そう感じるのだから仕方ない。

 勿論全く怖くないと言えば嘘になる。

 気配を探りながら皆の戦いも勿論勉強のためによく見て参考にする。

 暫く進むと、少し開けた場所に出てきた。

 此処は何だか他と違って空気が澄んでる。



「此処で一旦休憩にする」



 お養父様の言葉で、この開けた場所で休憩となった。

 私もほっと一息付く。



「アリシア様、お疲れではないですか?」

「大丈夫です」

「シア、此方においで」

「はい、お養父様」



 私はお養父様に呼ばれたので側に行く。

 他の騎士や冒険者達は軽く昼食の準備をし始める。

 私が側まで行くと、此処までの間に気配はどうだったかを聞かれる。

 けれど、今のところは何も感じないと伝えた。

 焦りは禁物だし、今日直ぐに気配を感じ取れるかも分からない。

 もしかしたら何も発生していないこともある。

 考え込んでいると、お養父様に頭を撫でられた。

 考えていることがばれているのかもしれない。

 暫くすると、昼食の準備が整い皆でご飯を頂く。

 こんな風に外で食べるのは初めてで、とても新鮮だ。

 簡単な具沢山のスープとパン。

 素朴な味だったけれど、悪くない。

 たまに食べたくなる味かも。

 食べ終わると、少し作戦会議をするようでお養父様達は話し合っている。

 私はここの空気が澄んでいることに不思議に思って少し辺りを歩いていた。

 勿論目の届かないところへは行かないけれど。

 そして気になっていた一本の大樹の元へ向かう。

 この樹からとても温かい気配がする。

 私は大樹に手を当ててみる。

 やっぱりとても温かくてなんだか安心する。

 この森でこんな樹があるなんて。

 私は思わずピタリと樹の鼓動を聞くように頬を当て目を閉じる。

 そうすると何処からともなく声が聞こえてきた。



 ――王の愛し子、気を付けなさい。


 ――王の愛し子⋯⋯?



 どう言うこと?

 王の愛し子って何⋯⋯?



 ――精霊女王の愛し子。この森は危険⋯⋯闇に魅入られた者達が瘴気を撒き散らしている。この地だけではない。森以外も⋯⋯気を付けなさい。


 ――ヴァレンティーン殿下が話していた人為的に発生させている瘴気の事?


 ――そう。あれに触れると違う場所へ跳ばされる。決して触れてはならない。


 ――それを察知したり消滅させる方法ってありますか?


 ――気配を探るのは愛し子のやり方で良い。消滅させるには闇と対局にある光で浄化させること。


 ――光魔法で浄化ですね。


 ――そろそろお戻り⋯⋯。外の者達が心配している。


 ――外?



 そう思ったら、お養父様の声が聞こえてきた。

 切羽詰まったような声で私を呼んでいる。



「⋯⋯ア⋯⋯シア! 目を覚ましなさい!!」

「⋯⋯ん、⋯⋯お養父様」



 私はお養父様の腕の中にいて、周りには私の護衛達が顔を白くさせて覗き込んでいた。



「はぁ。良かった。大丈夫か? 気分が悪かったりは⋯⋯」

「大丈夫です。ご心配をお掛けして申し訳ありません」

「いや、無事ならいい。精霊か?」

「はい⋯⋯」



 私は先程の事をお養父様達に話をした。

 愛し子云々は置いといて⋯⋯。

 それは今度エストレヤに聞いてみよう。

 今は瘴気の対策が大事だから。


 一通り話終えると、皆各々なるほど、と頷いていた。



「シアが聞いた話ではやはりこの森にも人為的に瘴気が発生させられているのは確実だな。瘴気の気配を辿るのは、今のやり方でいいのだな?」

「はい。そう言ってってました」

「ここを拠点に周囲を探ってみよう。シア、探索はいけそうか?」

「はい、大丈夫です」

「少しでも気分が悪くなったら言いなさい。我慢は禁物だ」

「はい」



 かなり心配を掛けたようで、釘を刺された。

 少し休んだ後、私達は探索を開始した。

 

ご覧いただきありがとうございます。

ブクマをしていただき、とても嬉しいです!

ありがとうございます。

次話もお読みいただけたら嬉しいです。

よろしくお願い致します。

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