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目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第1章  大切なもの
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78 会議の始まり


 今夜は世界会議前夜の歓迎パーティが行われ、私もオリーと共に参加する。

 オリーは元王女なのでこの場では王妃様の側で外交の手伝いをするのだ。

 私は私で情報収集をする。


 ダンスが始まるまではオリーと共に挨拶周りを、各国の代表と挨拶をしていく。

 ヴァレニウス国同様に王太子が来てる国もあれば、王自ら来訪している国もある。

 大体国が安定しているところは自ら足を運ぶが、安定していない国というのは代理が来る事が多い、まぁ必ずしもそうとは限らないのだが。

 ただ、割合的にそういった国はきな臭いかったり、少々問題がある国だから注意は必要だ。

 昨日同様今夜もヴァレンティーン殿下はとても気軽に声をかけてくる。



「昨日振りだな」

「ごきげんよう、殿下。パーティはいかがですか?」

「まぁ、顔触れは予想通りと言ったところか」



 挨拶をしていると、そこへ更に二人声をかけてきた人物がいる。



「お前達は相変わらずだな、ヴァレンにアル。オリーヴィアは変わらず美しいな」

「これは、ゼフィール国王。ご無沙汰をしております」

「ごきげんよう、陛下。お褒めいただき光栄ですわ。陛下も相変わらずですわね」

「レイフォール国王、ご無沙汰しております」



 ゼフィール国はセイデリア辺境領と国境に深い山を挟んだ魔族が住む隣国。

 ゼフィール国の現王は、レイフォール・ゼル・ジュレブランシュ。

 漆黒の髪に深紅の瞳の魔王で、一際存在感のある方だ。

 そんな魔王と一緒に現れたのは、セイデリア辺境伯、ユリウス・セイデリア。

 我がシベリウスと双璧をなす兄弟領の当主だ。

 魔国はセイデリアとより良い関係を築いているので、シベリウスとヴァレニウスと同様の関係だ。

 勿論、グランフェルトとは友好国である。



「それで、お前達は何を話していたんだ?」

「まだ何も話しはしていません。殿下に挨拶をしているところに陛下がいらっしゃったのです」

「そうか。私もそこでユリウスに会ったのでな、一緒に連れてきたわけだ」

「左様でしたか」

「ところで、お前達二人にも話があるのだが、時間は取れるか?」

「それなら二日後にアルノルドと夜に話をする予定になっているので、ご一緒に如何か?」

「そうだな、ではそうしよう。ユリウスもそれでいいな」

「私に拒否権は無いでしょうに⋯⋯」

「良く分かっているな。それで、場所は何処で行うのだ?」

「王宮は目立つので、我が邸で話をすることになっております」

「そうか、では我々も参ろう」



 私達は明後日の予定を決めて各々別の者達に挨拶をして別れた。

 あまり一ヶ所に長居していると目立つからな。

 それにそろそろ陛下がいらっしゃる頃合いだ。

 いらっしゃれば本格的にパーティが始まる。

 そう思っていたところに丁度陛下がご入場され、段に上がる。



「今年は我がグランフェルトで世界会議を開催する運びとなり、この地に足を運んで頂いた、各国の代表の皆様に感謝を。歓迎の宴を楽しんで頂ければと思う⋯⋯」



 陛下の挨拶が続いている中、異様にじっとり睨み付けるかのように見ている人物がいた。



 ――あれは⋯⋯。

  


 一人の人物を注視していると、挨拶が終わり演奏が始まった。

 ダンスの始まりだ。

 私はオリーの手をとり、ダンスの輪に入る。

 ダンスが始まると、オリーがこそっと話しかけてきた。



「先程の者はラヴィラ国の者ね」

「気付いていたか」

「えぇ、あんなにじっとりとアンセを見ているのですもの。要注意だわ」

「後で陛下に注意しておかねばな」

「その必要はないわ 。アンセの近くにベリセリウス侯爵がいたし、(わたくし)に一瞬目を向けたので気づいているわ」

「それなら安心だな。ありがとう」

「ふふ、弟に何かあれば一大事だもの」

「今回は気を付けねばな。オリーも気を付けなさい」

「あら、心配してくれるの?」

「当たり前だろう。私の愛しい人も王家を離れたとはいえ、王家の血筋だ。心配ぐらいする」

「アル、ありがとう。気を付けるわ」



 私達はダンスを終え、オリーを王妃陛下の所へエスコートする。

 両陛下に挨拶と再度注意を促し、私は人々の中へ向かった。


 さて、先程の者を探すと案外簡単に見つかった。

 今は先程のような嫌な目をしておらず、普通に談笑していて、雰囲気も明るい。

 おや、周りを見ると丁度獣人族の次期王がそこにいた。

 あちらも私に気付いたようで、こちらに笑いかけてきた。

 


「おっ! シベリウス辺境伯じゃないか! 久しいな」

「ご無沙汰をしております。レーヴェ殿下」

「相変わらずだな。お前の細君は何処だ?」

「彼女なら王妃殿下の側におりますよ」

「そうか」



 相変わらず快活な方だ。


 

「殿下、あちらの方々は?」

「あぁ、辺境伯は会うのは初めてか? ラヴィラ公国の者達で、彼は公弟ルイン・ラヴィラ・アヴァリス公爵だ」

「なるほど、ラヴィラ公国は公弟がいらっしゃったのですね」



 ラヴィラ公国の大公が病に臥せっていると言う噂だが、果たしてどうなのだろう。



「何か気になることでもあるのか?」

「いえ、思ったよりも公弟がお若く見えるので、確か御年は二十を過ぎた辺りだと聞いておりましたが⋯⋯」

「あぁ、あれの母親は側妃でな、人族ではなく獣人族だ。なので公弟は人族と獣人の相の子だから若く見える」

「なるほど、⋯⋯もしかしてその事実は隠されていたのですか? そう言ったことは此方にも伝わりそうな事ですが」

「それがな、現公妃はどちらかというと差別的な思考を持つ者でな、半獣人族という義弟が気に入らなかったのだろう。その事実を隠蔽していたからだが⋯⋯、流石に公弟の見た目は誤魔化せるものではない。こうやって公に出てきたら流石にばれるだろう」

「それでよく公弟を公に出してきましたね。憶測ですが⋯⋯公妃は嫌がったが、大公が弟君を可愛がっていた、とかですか?」

「そうだ。大公はいい奴でな。獣人族だからと言って差別的な目で見たりはせず、自身の母親と同様に獣人族の側妃を母として慕っていてな、年の離れた弟をそれは良く可愛がっている。だが、現公妃を筆頭に周囲からよく差別的な目で見られ、影で色々あったようで、あまり自分からは公の場には出てこなかったんだが、大公が現在病に臥せっていて、息子達は遅くにできた子でまだ幼い。故に公弟であるアヴァリス公爵が表に出てきたのだ。影では色々言われているが、彼自身は優秀だ」



 良くありそうなお家騒動か。

 だが、差別的な事案は根が深い。

 果たしてそれがどのように影響するか、それにあの目が気になる⋯⋯。

 注視する必要はある。



「さて、辛気臭い話は終わりだ。我もそろそろお前の所の王に挨拶してくるかな」

「お引き留めして申し訳ありません」

「いや、ではな」



 ラヴィラ公国⋯⋯、あぁそういえばラルフの一件は彼の国だったな。

 関連付けるのは良くないが、あの国で何かあるのか。

 情報が足りないな。

 まぁ、今の私はステラ様を守る事とシベリウスを守ることが大前提だ。

 それの憂いがあるならば関わらねばならないが、さてどうだろうな。


 考えながらも周囲を注視する。

 エルフ族は女王が、共和国は、珍しく元首自ら来ているな⋯⋯

 あぁ、もしかしてあれか?

 ステラ様の案で作製した魔道具の件か。

 これが狙いなら、見つかると面倒だな。

 彼の相手はクリスに任せよう。

 後は⋯⋯、アクセリナ様の故郷、アルバネーゼ国からはアクセリナ様の甥であり、若き国王のシルヴェストル・アルバネーゼ陛下がいらっしゃっている。

 若いが中々のやり手だという噂だ。

 後の二国は各々次期が来ているのか。

 今回は一応全ての国の者達が来ているな。

 取りあえずは恙無く会議が終わるよう願うだけだ。

 私は考えながらも挨拶を交わしていき、オリーの元へ戻る。

 あちらも大体挨拶や外交を終えたのか、内々で話をしていた。

 パーティも終盤に差し掛かり、人々は帰途へとつく。

 私も陛下達に暇の挨拶を終え邸に帰宅する。

 馬車の中でオリーと情報共有をするが、やはりこちらもラヴィラ公国の事が話題に上がっていたようだ。

 特に動きがないので注視するだけだが。

 あの視線は気になる⋯⋯ラルフと似た目をしていた。

 だが、この話は陛下も既にご存じだろうから、見張らせている事だろう。



 翌日、世界会議が始まり、朝から王宮の大会議室と周辺は厳重に警備されていた。

 私は大会議室とは別に、貴族会議へと出席するのに、そちらに赴いていた。

 何時もと同じように貴族間の決め事や報告、魔物の出現率等を話し合う。

 まぁ会議というより定例報告会だな。

 貴族会議は筆頭公爵家が取り仕切り、進めていく。

 一日目は特に突飛なこともなく、無難に終わった。

 久しぶりの会議は疲れるな。

 この日は何事もなく一日を終えた。


 会議二日目。

 今日の議題は商人についてだ。

 シベリウスでも起こったりすることだが、最近どの領にも悪徳商人が出入りしていて問題になっているようで、頭を悩ます領民や商人達が多く、各商業ギルドに苦情が入ってるようだ。

 ギルドだけではなく、各領地を納める領主達にも対策をするよう嘆願書が寄せられているとか⋯⋯。

 これはこの国だけでなく、世界各国でも問題になっていて、世界会議の議題のひとつなんだそうだ。

 国としての問題もあるが、領地や王都でも問題になっているので、我々でも対処しなければならない。

 今現在行っている各々の対処法を話し、その対処を統一させるもの。

 統一しなければ齟齬がでるからだ。

 私も今の対処法を話すと、やはり食いついてきた。

 元々はクリスに任せようと思ってはいたが、ここまで範囲が広がっているとなると悠長なことは言ってられない。

 私が発言した内容が他の貴族達も賛同したり、予算的なことで渋ったり、反応は様々だ。

 だが、公爵は事前に情報を仕入れていたからか前向きだ。

 こう言う事は筆頭公爵が纏めて進めてくれたらいい。

 此方ばかりに力が集中しないようすれば、鬱陶しいやっかみも減るだろう。

 色んな意見が出る中、やはり効果的なのは私が発言した内容だろうと言うことで、この件に関しては中央預かりとなり、商業ギルドと合わせて話を進めていくこととなった。

 実物も今手元に無いわけだし、その辺はクリスが上手くやるだろう。

 ギルドの会議は来週から始まるので、後はクリスに任せよう。

 今日の会議も無事に終わり邸に戻ろうとした矢先に呼び止められた。



「お疲れ」

「お疲れ様、どうした?」

「いや、今夜の事だが、陛下と共にお前の邸に転移する事になっている。大体宵の口にはそっちに行けると思うが⋯⋯」

「分かった」

「それにしても、お前が養女を取るとはな。わざわざ養女を取らなくてもまだいけるだろ?」

「余計なお世話だ」

「ははっ! すまん。だが、時期が時期だけに噂が凄いぞ」

「あぁ、それなら一昨日リドマン子爵がベラベラと話してくれたよ」

「それは⋯⋯分かりやすいな」

「だろ?」

「とにかくだ、アル気を付けろよ」

「あぁ、ありがとう、気を付けるよ。また後程」



 私達は軽く話した後、各々の邸に帰宅した。

 

ご覧いただき、ありがとうございます。

次話も楽しんでいただけたらとても嬉しいです。

よろしくお願い致します。

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