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目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第1章  大切なもの
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76 興奮冷めやらぬ人々


 殿下達が王都へ出発した翌日からは何時も通りの日常に戻る。

 今日は朝から私とお兄様は訓練場での訓練日。

 お養父様は王都での会議に出席するので、明後日の出発に向けての準備が進められていて、とても忙しくしている。


 私とお兄様は訓練場へ向かう。

 午前中は魔法の訓練を行うので、そちらへ向かうと、既に皆集まっていて、話をしていた。

 よくよく聞いてみれば、まだ興奮冷めやらぬのか、この間の試合の事を話していた。

 もう二日前の話なのだけれど。



「皆様、おはようございます」

「あっ! おはようございます。レオナルド様とアリシア様は上からご覧になってましたよね? 」

「おはよう、そうだよ」

「凄かったですよね! あんなに凄い試合が観るのは初めてで、興奮しました!」



 凄い興奮具合⋯⋯。

 確かに試合とても素晴らしく、勉強になる事が多くあり、私もお兄様も勿論一つ一つの動きを見逃さないよう観ていたし、凄いと話をしていたけれど、どちらかと言うと冷静に動きを見ていたと思う。

 皆は、なんていうか⋯⋯ミーハー的な?

 今まで見たことのない位の興奮状態。

 うん、確かに凄かったものね。



「はいはい! そろそろ落ち着け」



 いつの間にか先生方がいらっしゃった。

 若干呆れている。



「お前達もあれぐらいまでにはなって貰わないと困るぞ」

「僕達でも出来るでしょうか?」

「それはお前達の努力次第だな」



 それはそうね。

 私も人の事言えないけれど、頑張らないと。

 私がこの間まで別メニューで制御訓練をしていたけれど、殿下のお陰で制御が出来るようになったので、通常の訓練に戻る。

 それはハルド様から聞いていたみたいで、特に何かを言われることはなかった。

 お兄様と一緒に訓練を行うのだけれど、お兄様ったら見ない間にとても上手くなっている!

 いつ訓練しているの?

 魔法の発動が前よりもより早くなっているし、とても正確に的に当たっている。

 そして、何よりも威力が上がってる⋯⋯。

 お兄様凄いわ!

 私も負けていられない。

 お兄様にならって私も的に当てていく。

 前半は的を狙ったりしたけれど、後半はお兄様と対峙して実際にお互いに向けて魔法を放つ。

 お兄様も防御を張れるようになったみたい。

 お互いに放つのは、まずは実際に向けられる攻撃に耐性を付けるため。

 対魔物でも人間でも魔法を放たれることは有ることだし、慣れることは大事。

 私もお兄様の攻撃に対して防御を張りながら攻撃に転じる。

 何度か打ち合って、休憩に入る。

 休憩時にリュシアン先生に良いところ、悪いところをの指摘を受ける。

 それを繰り返して慣れていくのだけれど、時間は過ぎ、午前中の訓練が終了となる。

 大分慣れてきたと思う。

 最近は先生も、私たちを子供扱いはあまりしないようになった。

 先生に今日の訓練のお礼を言い、お昼休憩を取る。

 午後からは剣の訓練を受けるので、訓練場へに向かい皆に挨拶をすると、やっぱりこっちでもかなり盛り上がっていた。

 カリーナがいたので話をするが、彼女も皆と同様にかなり興奮していた。

 というよりも、私と会って興奮度が増した⋯⋯?



「アリシア様! この間のアリシア様の挨拶に感動しました!」



 ⋯⋯何故? 感動する場面なんてあったかしら? いや、ないと思う。

 挨拶もお養母様に急に振られたので、そこまで感動されるような挨拶は出来てないと思うのだけれど、カリーナはキラキラした目で私を見ている。



「カリーナ、(わたくし)は大したことは言ってないと思うのだけれど⋯⋯」

「いいえ! そんな事はありません。凄く堂々としていて、格好良かったです! 何より王太子殿下に祝福のキスなんて! 凄くドキドキしちゃいました! 可愛らしい アリシア様が格好いい殿下の額にキスするところなんて、絵に描いて欲しいくらいですよ!」



 カリーナが壊れた⋯⋯!?

 というか、殿下にキスの事を他人から言われると私が恥ずかしいのだけど!

 それに、絵なんて要らない!

 そんなキラキラした眼差しで見られても困るわ⋯⋯。



「カリーナ、絵が欲しいなら私で良かったら描くよ」

「え?」

「あの場面は私も良いと思ったから描いたんだよ」



 エミーリオは何を言っているの?

 絵を描いた? 何故描いたの!?



「リオの絵は上手いから描いてもらったら?」

「お兄様! 何を仰っているんですか!?」

「本当ですか! エミーリオ、お願いしても良いですか?」

「勿論だよ、レオン様とアリシア様はどうですか?」

「僕もお願いしようかな。シアは恥ずかしいから要らないんだよね?」

「えぇ、(わたくし)は遠慮いたしますわ」



 そんなの、恥ずかしくて見れないわ。

 とういか、どうしてその場面なの?

 殿下の美貌には私なんて霞んでしまうと思うのだけれど⋯⋯。

 思い出してもドキドキする。



「アリシア様が挨拶するのは決まっていたのですか?」

「いえ、お養母様がご挨拶されたとき、あの時に知りました」

「えっ!? あの時知ってあの挨拶ですか!?」

(わたくし)も急に振られたので驚きましたけれど、挨拶はそこまで大したことは言ってませんわ」

「私から見たらとても凄いと思います。あんな大勢に見られてるのに、絶対緊張して何も言えませんよ」



 まぁ普通は緊張するわよね。

 私の場合は失敗は許されないもの。

 カリーナ達と話をしていると、先生方がやって来たので班に分かれて訓練を開始した。

 あの試合に触発されてか、皆の訓練にも力が入る。

 あの試合は只の親善試合ではなく、皆の向上心をも高めたようだ。

 激しい訓練が終わり、お兄様と共に屋敷に戻る。


 夕食後の団欒にて、お養父様達今後の予定を教えられた。

 明後日から二週間、王都へ行き会議に出席する、これは前々から聞いていた事なので、驚きはない。

 お養母様は行かないものと思っていたのだけれど、一緒に行くみたい。

 まぁ、良く考えればお養父様の会議とは別に世界会議があるから、社交シーズンではないとは言え、歓迎パーティーが開かれるはずだし、行かないわけには行きませんよね。

 私とお兄様は仲良くお留守番。

 お兄様は良いとしても私はそう易々と出向くわけには行かないものね。

 お勉強を頑張りましょう。

 

 そしてお養父様達の出発の日。

 朝食を一緒に頂き、その一時間後に出発される。

 私とお兄様とアレクはお見送りのために一緒に外に出ると、イクセル様、デニス様にハルド様に護衛の方々がいらっしゃった。



「ごきげんよう、皆様」

「ごきげんよう、レオナルド様、アリシア様」

「イクセル様も行かれるのですか?」



 良く見れば、イクセル様も装いがいつもと違う。

 会議だし、お養父様の側近だからかしら。



「前回と違って、今回は会議ですからね。閣下に付いていきますよ」

「ハルドは付いていくの?」

「私はここに残りますのでご安心を」



 イクセル様だけ付いていかれるのね。

 私がこちらに来てから数ヶ月。

 何も起こらないと良いけれど⋯⋯。

 気になるのはそこだけなのよね。

 だけど、前と違って今は影の二人がいるから前ほど気にすること要らないかな。

 だからと言って楽観は出来ないけれど。

 考え事をしていると、お養父様達が来られた。



「揃っているね。レオン、二週間の間はここを任せる。シアとアレクをよろしく頼むよ」

「はい、父上。お任せください」

「シア、前ほどではないにしろ、気を付けなさい」

「はい、お養父様。十分気を付けますわ。お養父様達もお気を付けて」

「二人ともアレクをお願いね」

「「はい!」」

「では行ってくるよ」



 お養父様はハルド様と二、三言葉を交わし、お養母様を馬車にエスコートし、お養父様、イクセル様も馬車に乗り、出発した。

 前ほど心配されていないのは、私が少し成長したからかしら。

 安定したのもあるし、前よりも色んな事が出来るようになったのもあるのかな。

 馬車が見えなくなるまで見送ると、私とお兄様、ハルド様とデニス様と邸に入る。

 前回はイクセル様もいらっしゃったけど、今回はいないからね。

 部屋に入り、お兄様は前回同様ハルド様とデニス様へと声をかける。

 お二人は力強く了解してくれた。

 前回はイクセル様がこちらに様子見たり、報告をしたりしたけれど、今回はそこまでしないみたい。

 色々と変わったわね。

 ただ、何かあれば直ぐに声をかけるようにとはハルド様に言われたけれどね。



 翌日からの私やお兄様の日常は変わらず、訓練をしたり家庭教師の授業を受けたり、時間が空けばアレクと一緒にいる時間を増やした。

 そして火の日の帝王学、すっかり忘れていたけれど、お祖父様に突っ込まれそうで、行きたくない⋯⋯。

 何時も通り、クレーメンスが迎えに来たので、モニカと一緒に離宮へと向かうがその足どりは重い。

 部屋へ案内されると、お祖父様とお祖母様もいらっしゃった⋯⋯。

 お二人で待ち構えられてるのが怖いのだけれど⋯⋯。



「ごきげんよう、お祖父様、お祖母様」

「あぁ」

「ごきげんよう、貴女に会うのも久し振りね。元気そうで何よりだわ」



 お祖父様は若干、いえ、かなりご機嫌斜めで、お祖母様はいい笑顔⋯⋯何これ、怖い⋯⋯。



「取りあえず座りなさい」

「はい、失礼致します」

「⋯⋯」



 何この沈黙!

 何か話して下さい!

 この沈黙がとても重い⋯⋯。



「ステラよ⋯⋯」

「はい、お祖父様」

「先に言っておく。ヴァレニウスの王太子との婚約はまだだ」

「はい」



 まだ、と言う言葉が気になるのだけれど⋯⋯それは断ったの? それとも私の年齢が原因?

 いえ、婚約だけなら年齢は関係ないはず⋯⋯。

 だけど、まだと言うことは、将来的には婚約するということかしら。

 良く分からないままお祖父様の言葉を待つ。



「はぁ全く、厄介な者に目を付けられおって⋯⋯アンセの話だと、お前の事は諦めるつもりは毛頭ないという事だ。ヴィンスが問題なく王位を継いだらいいが、何かあれば王位を継ぐのはステラになる。だから直ぐに婚約云々は無理だと突っぱねた。だが、ヴィンスが問題なく成長すれば、必ず貰い受けると言っておるそうだ。ヴァレニウスも子が出来にくいと言うのもあり、今の竜王国を継げるのが王太子一人だからな。弟がいたが既に番を見つけて臣下に下っていると言うのは建て前で、ヴァレンティーン殿より能力が劣るから、次期王はヴァレンティーン殿だ。あちらも動けぬ。そうでなければ、此方に婿に来てもらうのも有りだったのだがな」

「お祖父様、それではお兄様が問題なく成長し、(わたくし)が学園を卒業したら、殿下に嫁ぐことになるのですか?」

「全く嬉しくないが、ほぼ確実にそうなるな」



 それは、もう殆ど決定に近いのでは⋯⋯?

 何だろう、ちょっと心臓がうるさい。



「ステラ、嫌なら嫌だと本人に言うがいい。諦めないだろうがな⋯⋯」

「嫌と言うか何と言うか⋯⋯」

「あら、ヴァレンティーン殿下は文武両道で民の事も良く考える御仁だと聞くわ。良いのではなくて? それにとてもお強くていらっしゃるでしょう、貴女の事を守ってくれるし、両国のより良い関係が築けるものね」

(わたくし)守られるだけなのは嫌ですわ」

「あらあら。それで? ステラは殿下の事をどう思っているの?」

「⋯⋯まだよく分かりませんわ」

「二人っきりで会ったのでしょう? 今の段階ではどのように思っているのかしら?」

「二人で会っていたのは、制御訓練にお付き合い頂いただけなのですが⋯⋯」

「その翌日も朝の早い時間帯に会っていたのでしょう?」



 もう! なんでそこまでご存じなのよ!

 誰よ、そんな告げ口しているのは!

 見つけてお口縫い付けようかしら!


 心の中で告げ口した相手に対して愚痴を言っていると、お祖母様に「どうなの?」と催促された。

 というか、待って! あれも報告されているってことよね!?

 というか、伯母様が今王都にいらっしゃるからそこからでは!?



「ステラ?」

「お祖母様達は伯母様からお話を聞いているのでは?」

「聞いていますよ。ふふっ。話しているときの貴女がとても可愛かったとも言っていたわね」

「伯母様からお話を聞いているなら、(わたくし)から話す必要ありませんよね?」

「あらあら、(わたくし)は貴女の気持ちを聞いているのよ? 孫と恋愛話が出来るなんて嬉しいわ」

「私は全く嬉しくないぞ! 聞きたくない! ステラをヴァレニウスにやりたくないぞ!」



 伯父様と一緒の事言ってる⋯⋯。

 けど、それだけ大事にされていると言う事は素直に嬉しい。



「ステラ、うるさいお祖父様は放っておいて、どうなの?」



 お祖母様、まだ諦めていなかったのね⋯⋯。

 どうって言われましても、伯母様に答えたことと同じ事しか答えられないのだけれど。



「まだよく分かりません」

「貴女は本当に奥手ね。だけど、本当はわかっているのではなくて?」



 分かっている?

 何を?



「殿下に口付けされても嫌じゃなかったのでしょう?」

「なっ!? 違いますわ!」



 口付けって⋯⋯何を言っているのですか!?

 お祖父様の前で!

 お祖父様の目が殺人的にやばいですわ!

 怖い! 怖いけど恥ずかしい!

 お祖母様は私をどうしたいのですか!

 ていうか、口じゃないですからね!



「どうなの?」

「お祖母様、お祖父様の前でそのような話しは止めてくださいませ! それに、 頬に軽くされただけです!」

「ステラ! 男を簡単に許すな!」

「申し訳ありません!」

「もう! 貴方は黙っていてくださいな」



 駄目、この場が混沌としている!

 それにモニカ達にもバレちゃった!

 恥ずかしくてモニカの顔が見れないわ⋯⋯。



「このうるさい人は置いといて、ステラ、本当の事を言いなさい!」



 ヴァン様の口付け⋯⋯。

 思い出しても顔が赤くなるわ。

 こんなの公開処刑と同じよ!

 だけど、答えないとお祖母様も怖いわ。



「⋯⋯その、嫌か嫌ではないか、で言うと、⋯⋯嫌、ではないと⋯⋯」

「まぁまぁまぁ! ステラが可愛いわぁ。お顔が真っ赤よ! 食べちゃいたい!」

「竜族のどこが良いんだ! ステラの口から断ってしまえ! いや、会うことも許さん!」



 この場を何とかして欲しい⋯⋯。

 というか、帝王学を学びに来たはずなのにどうしてこうなったの!

 帰りたいわ⋯⋯。


 

「そんなに真っ赤になってしまうのにどうして自分の気持ちに気づかないのかしらねぇ。恋に恋してる顔よ」

「ステラのそんな顔は見たくないぞ! まだ早い! 早すぎる!」

「そんなこと言われましても⋯⋯。この話しは終わりにしませんか?」

「⋯⋯そんなに冷静に返さないでくれ」



 お祖父様はそう言って重い溜め息をついた。

 私が溜め息をつきたいですよ、お祖父様。



「まぁ、兎に角だ、現状は決まっているようで決まっていない。ステラは自身の勉学や武芸に励みなさい」

「はい」

「只し! これ以上男に隙を見せるなよ。王太子が近付いてきてもな! 簡単に許すな。いいな!」

「はい⋯⋯気を付けます」



 どこでもそれは言われるのかしら⋯⋯。

 周り、男だらけなのですけれど。

 私、今日此処に来る必要無かったのでは?

 といっても、この後はきちんとお祖父様の授業を受けましたよ。

 若干お祖父様の圧が怖かったですけどね。

 授業が始まるお祖母様は部屋を後にしてしまい、一人でお祖父様の圧に耐えました。

 帰りも、同じ注意を受けて、シベリウスに帰ってきたのだけれど⋯⋯。

 もう今日は本当にとてもとても疲れを感じる一日だった。

 主に私の心がね⋯⋯。

 

ご覧いただき、ありがとうございます。

ブクマありがとうございます。

次話も楽しんでいただければ嬉しいです。

よろしくお願い致します。

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