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目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第1章  大切なもの
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74 雑談


 私の話し相手、雑談に二人を呼ぶのもどうかとも思うのだけれど、私がもんもんとして持たないので付き合って貰うことにした。



「二人共そこにいるの?」

「はっ、お側に」


 

 影の二人は返事と共に私の前に姿を見せた。

 ほんと、なんでこの二人は私の事を主にしようと思ったのかしら。



「少し(わたくし)の雑談に付き合って貰ってもいい?」

「勿論です」

「アステール、昨日はお疲れ様」

「勿体無いお言葉」

「ヴァレニウスの騎士はどう? やっぱり力が強かったりするの?」

「そうですね、人族に比べると力は格段に違います。力業は通用しませんので、技術で勝る他無いですね」



 やっぱり力は強いのね。

 見ていても剣を弾かれた時のシベリウスの騎士達は、バランスを崩したりしていたものね。



「とても素朴な疑問なのだけど、⋯⋯アステールは日中はサムエルとして動いているから良いとして、ノヴルーノはどうしているの?」

「私はずっと姫様の側におりますよ」

「そうなの?」

「影は何も姫様達の手足となって情報を集めるだけではなく、護衛でもあります」



 ――あれ、そうすると、殿下とのあれこれも見られていた⋯⋯!? 人に見られているなんて恥ずかしすぎる!



「姫様?」

「なっ、何でもないわ!」



 ダメ、見ていたか何て聞けない!

 無理無理!

 内心忙しなく悶えていると、二人にじっと見詰められていたので、頑張って話題を変えることにした。



「今までゆっくりと二人の事を話したことないけど、二人は何が得意なの?」



 この機会に二人の事を聞いてみよう。

 二人を影にしたのはいいけれど、あまり二人の事を知らないからね。

 いつか聞かなきゃと思ってたけど、中々聞けなかったので、いい機会だわ。



「あっ、その前にそのままではしんどいでしょう? 崩していいわ」

「ありがとうございます」



 二人はすっと立ち上がった。

 あれ? 私としては座って貰ってもいいのだけれど、立ったまま話すのかな?

 私が首をかしげて目で問うと、このままでいいらしい。

 そして、私が質問したことに答えてくれる。

 アステールは魔法も剣も得意で、影だが表、裏からの情報収集、後は変装も得意だとか。

 ノヴルーノは剣が主で魔法はあまり得意ではないらしい。使えないことはないけれど、アステール程ではないと。ただ、アステールとは逆で裏からの情報収集が得意で、こちらも変装は得意なんだとか。

 二人共に潜入捜査や暗殺もするようで、影の有能さに驚くわ。

 それに、得意でないと言ってもそれなりに出来るから問題はないようで、影って何でもそつなくこなさないとなれないのかな。

 けど、暗殺はやらなくていいかな⋯⋯。

 まぁそれぐらい出来なければ影は勤まらない、と言うことなのでしょうね。



「我々からもお聞きしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」

「いいわよ」

「我々の名前の事です」

「名前?」

「はい。影に名前をつける時、大体他の方々は呼びやすく、どちらかと言うと名前とは言えないようなのが殆どですが、姫様は我々にきちんとした名前をお与えになられた。不思議な響きですけど、何か意味があるのかと思いまして」

「んー⋯⋯これは記憶の言葉なのだけれど⋯⋯、(わたくし)の名は彼方では“星”という意味があるの。アステールは同じ“星”で記憶での(わたくし)の生きていた国とは違う言語。ノヴルーノは“新月”で同じく外国語よ。名前を与えるなら(わたくし)と何か繋がりがある方がいいなと思ったの」



 私が二人の名前の由来を話すと、二人共に何故か驚いた表情をしていたけれど、その後何故かまた跪き頭を下げる。

 何故?



「どうしたの?」

「改めて姫様に忠誠を」

「我らにその様な繋がりある名前をお与え頂き、光栄に存じます」



 これは、名前に不満があるとかじゃなくて良かったわ。

 不満があっても変えられないけど⋯⋯。

 気に入ってくれたのなら良かった。

 ちょっと大袈裟だけど。

 けど、名前の事はいつか話したいなと思っていたから、少しすっきりしたし、私の気分も落ち着いたのか、眠たくなってきたわね。



「二人共、改めてよろしくね」

「「はっ!」」




 私は二人にお礼を言って休むことを伝える。




 ***




 子供達が部屋に戻り暫くしてから、今は私達大人だけでお酒を楽しみつつステラの話をしていた。

 この場にいるのはアルと私、殿下の三人。

 なので、防音も張っているので気兼ね無く話を進めれる。



「殿下、ステラ様に伝えたのですね」

「エスターに聞いたのか」

「昼間にオリーがステラ様とお話しをされたのです。その時に。⋯⋯ですが、殿下の執着具合がよく分かりますね」

「エスターは私のみ呼べる名だ。本人にも他に呼ばせるなと言ってある」



 人族なら引くレベルの執着心。

 あの子、本当に大丈夫かしら。

 昼間の話しも引っ掛かるし⋯⋯。



「それで、ステラ様からの返事は何と?」

「彼女には自身の気持ちが分からないと言われたな。だが、私が他の女にエスターにした事をすればそれは嫌だと言って嫉妬心を見せて、それは可愛らしかったぞ」



 あら?

 嫉妬はするのね⋯⋯。

 ステラったらそんな話し昼間はしてなかったわよ。



「あの子に何かあったのか?」

「何か⋯⋯とは?」

「心に何か引っ掛かっているように感じたのだ」



 殿下は鋭いのね。

 アルには話せていないから、これを言うのは躊躇われる。

 あまり話したくない内容ではあるけれど、話さないわけにはいかないわね。



「少しよろしいかしら?」

「何だ」

「殿下は本気でステラを娶りたいと?」

「本気だ。私にはエスターだけだ。出来るなら本国にこのまま連れ帰りたい」



 本気ね。

 だけど、あの子を不幸にするわけにはいかない。



「今から話すことは昼間にステラ本人に聞いたこと。あの子の“記憶”に残る話よ。その話を聞いて(わたくし)は更に今世では幸せになって欲しいと思ったのよ。それに、あの子自身が自身の評価の低さも垣間見たわ」

「その話を聞いても?」

「お話しします。けれど、胸の内に秘めておいてくださいね。アルも」

「あぁ、分かった」



 私は昼間にステラから聞いた話しを二人に話した。

 そして、あの愚かな男がステラに何て言ったのかも⋯⋯。

 そう、人は見た目だけではない、中身も重要なのだけれど、その愚かな男は不貞を働いただけでなく、暴言も吐いていた。

 それは外見や性格から、自分勝手な事まで⋯⋯、本人は呆れただけとは言っていたけれど、耳を塞ぎたくなるような事まで吐かれていた。

 聞いてるこちらが殺意を覚える程に。

 聞き終わった二人から冷えた殺気が漏れ出ていたけれど、殺る相手は此処にはいないのよ?

 分かってるのかしら?



「なるほどな⋯⋯この世にいれば即刻見つけ出して殺してやったものを」

「エスターは男不信に陥り、そして自己評価が低いのは暴言を吐かれたせいか⋯⋯我が手で殺れないのは残念でならん」

「殿下には本気でステラを娶るのであれば、申し訳ないですけれど、側妃や愛人を作らないで頂きたいのです。勿論時期国王である殿下に子が出来なければやむを得ませんが⋯⋯」

「そんなもの端から作るつもりも気もないしその気も毛頭ない。エスターが我の唯一だ。それに、あの子の守りとして、我が鱗を渡してある」



 なるほど、だからあの子は何かお返しがしたいと言っていたのね⋯⋯。

 時間がないから悩んでいると言っていたけれど。

 これは、悩むわね。



「ステラ様は鱗を渡された意味はご存知なのですか?」

「いや、知らないだろうな。綺麗だとは言われたが。意味は分からなくとも、彼女には私だけしか見れないように私が努力すればいいだけの事だときちんと言葉にして伝えてある。後は外堀を先に埋めてしまえばいい」

「殿下の言いたいことは分かりますが、流石に引きます」

「まぁお前はオリーヴィアに押し込まれたくちだからな。だが、血の繋がりもないエスターに娘としての執着はお前も相当だぞ」

「うるさいですね。姪として可愛いのだから、可愛がっても良いでしょう。それに、可愛がったとしてもそれを鼻にかけることも、我が儘になることもない。本当なら貴方に嫁がせたくもありません」

「それはお前に決定権はないぞ。ただの仮親のアルにはな」

「分かっていますが、陛下を落とすのも中々難しいと思いますよ」

「分かっている。だが、私も譲れないからな。国王には悪いが必ず納得させる」



 アンセは見た目はお母様の容姿に似て美人なのに中身がどす黒いのよね、お父様に似て⋯⋯。

 見た目詐欺なのよ。

 殿下とアンセの攻防が目に浮かぶわ。

 私としてはステラを幸せにしてくれるなら殿下でも良いのよ。

 それに、心の奥深くでは、多分ステラは殿下に惹かれている。

 興味の無い人に嫉妬などしない。

 ただ、自覚するのにはきっと大分時間がかかるでしょうね。

 深層心理できっと拒否しているのね。

 これは殿下の頑張り次第かしら。



「殿下にお聞きしたいのですが」

「改まって何だ?」

「ステラから贈り物がされるとしたら何が欲しいですか?」

「エスターからの贈り物なら何でも嬉しいな」

「全く参考になりませんわね。これだから男というのは⋯⋯。ステラから何かお返しがしたいと相談をされたのだけれど、悩んでいるのよね」



 まぁ殿下への贈り物はあの子自身で考えるでしょうけれど。

 折角ステラに相談されたのだから、何か聞けたらいいと思ったのだけれど、何もなかったわね。

 全く参考にならないわ。



「話しは変わるが、アルノルドも王都へ行くのだろう? いつ頃だ?」

「私が王都へ出立するのは、明々後日になります。何かありましたか?」

「いや、向こうで話す」

「畏まりました」

「後ひとつ頼みがあるのだが⋯⋯」

「⋯⋯嫌な予感がしますね」

「明日、出立前にエスターと会わせて欲しい」

「本日の午前中丸々お渡ししたはずですが?」

「分かっている。だが、暫くは会えないからな、駄目か?」

「はぁ⋯⋯少しだけ目を瞑ります」

「感謝する」



 あら、珍しく直ぐに許可したわね。

 殿下の嬉しそうな顔ったら。

 本当にステラを慈しんでいらっしゃるのね。

 殿下とステラのお茶会ね。

 朝の早い時間に庭園で予定を入れましょう。

 


「あぁ、そうだ。エスターに空間収納を教えておいたから、アルは時間のある時にでも転移を教えてあげて欲しい」

「もう空間収納を覚えたのですか!?」

「飲み込みも理解も早かったぞ」

「あら、ではステラの小指にはめてた指輪は殿下が?」

「私が贈ったものだ」

「は? 指輪!?」

「空間収納の核が必要だろ?」

「別に指輪でなくてもいいでしょう!」

「お前な、少し過保護すぎるぞ」

「いいだろう! ステラ様が此処にいるのは期間限定だ。その間に娘として可愛がっても!」

「面倒な親の典型か?」

「貴方に面倒だとか言われたくはありませんね」



 この二人は仲が良いのか悪いのか⋯⋯。

 アルも口調が砕けているし。

 それにしても、あの子は凄い早さでどんどん吸収していくわね。

 何処まで覚えるのかしら。

 本当に気を付けないと、また狙われる隙を作ってしまうわ。



「オリーヴィア、何を考えている?」

「あら、顔に出てました?」

「難しい顔をしていたぞ」

「オリー、何か心配ごとが?」

「えぇ、ステラはとても優秀で、狙われる理由が増えていくのが少々心配です」

「確かにな⋯⋯だが、最近レオンが更にやる気になっているからね。もしかしたら、レオンはステラ様に触発されているのと、可愛い妹を守るのに頑張っているかもしれないね」

「レオナルドも中々気概のありそうな子だな」

「やる時はやる子よ」

「長男は⋯⋯、学園か?」

「左様です。今年から在籍しております」

「長男にも会いたかったな。アルノルドの後継だろう?」

「そうです。どちらかと言うと私によく似ていますね。技術は私達両方を受け継いでいます」

「それは将来が楽しみだな。王都で会っておきたいな」



 我が子が誉められると嬉しいわね。

 親バカになるつもりはないけれど、あの子達には頑張って貰いたいわね。

 シベリウスの特性上大変ではあるけれど⋯⋯。

 今はステラを預かっているから、あの子達にもいい影響が出ているし、特にレオンはやる気になってくれたので、嬉しく思う。

 あの子が王宮に戻るまでは気を引き締めないといけないわね。

 特に気を付けないといけないのが、もしステラに何かあれば、目の前にいる殿下から受ける被害は甚大になるでしょう。

 色々な者から護らなければならない⋯⋯。

 

ご覧いただき、ありがとうございます。

ブクマもとても嬉しく、励みになります。

ありがとうございます。

次話も楽しんでいただければ嬉しいです。

よろしくお願い致します。

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