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目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第1章  大切なもの
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07 食事とお薬

 

 夢を見ていた気がする。

 どんな夢かまでは曖昧で鮮明には覚えていない。

 ただ、とてもきれいな場所で誰かと話をしていたと思う。

 見たこともない場所に知らない誰か⋯⋯。

 悪いものじゃなく、とても安心出来るような不思議な感覚。


 そんな夢を見ていたのだけれど、ふと目を覚めた。

 周りは暗く、カーテンの隙間から入るのは月明かり。

 あれから起きることもなく、よく寝ていたみたい。

 まだ少し熱があるようで身体は怠い。

 だけど、起き上がれないほどではなかった。


 周りを見渡せばベッドサイドに水差しが置いてあり、喉が渇いていたということあって、コップに水を入れようと手を伸ばすが、そこで躊躇ってしまった。

 あの時の、毒を口にした時の事が蘇る。

 毒が入ってるかどうか、安全かそうでないか分かればいいのに⋯⋯。

 そんな風に考えていたその時



 ――その水は大丈夫だよ。



 そう声が聞こえた。



 私は慌てて周囲を見渡したが誰もいない。

 その声は夢で見たときに話をしていた声に似ている気がする⋯⋯。

 その言葉を聞いた途端、これは“大丈夫”と不思議と躊躇いがなくなり、水を飲む。

 ふぅと一息、喉も潤ったらまた眠たくなってきたので横になると何かを考えることもなく、夢も見ることなくぐっすりと眠った。


 次に目を覚ましたときには日差しが入り、明るくなっていた。

 あれだけ寝たのにまだどこかぼんやりしている。

 ノックがあり「失礼します」とモニカが入ってきた。

 私が目を覚ましているのに気付き声をかけてきた。



「おはようございます、姫様。ご気分はいかがですか?」

「おはよう、モニカ。たっぷり寝たから大丈夫よ」

「それはようございました」



 私に近づき「失礼します」と言うと私の額に手を当てた。



「熱はまだ少しありますが、昨夜より下がりましたね」



 ほっと一息安心したように微笑んだ。



「心配かけてごめんなさい。今は朝⋯⋯かしら?」

「はい。お加減が良ければ朝食をお持ちしますが?」

「まだそんなに量は食べられないかもしれないけど、少しいただくわ」



 ほんとうにまだそこまで食べられる訳じゃないと思うけれど、食べなきゃ体力もつかないし⋯⋯。というかと

 用意してもらったタオルで顔を拭き、髪を梳かして貰って軽く整えてもらった。



「お食事を用意して参りますので、少々お待ちくださいませ」



 モニカは準備の為、一度部屋を出た。

 私は顔を拭きさっぱりしたので、昨日より少し気分的にも余裕があり、改めて部屋を見渡してから梳かしてもらった髪を掴んで見た。

 少し紫がかったシルバーブロンドの髪。

 記憶が戻るまでは何も感じなかっただけに、今はとても不思議に感じる。

 私だけど私でないような、“今”の私の記憶はもちろんあるけど、“前”の記憶が鮮明すぎてまだ少し混乱する。


 

 ――その内馴染むのかな⋯⋯。


 

 考え事をしているとノックがあり「お食事をお持ちしました」とモニカが戻ってきた。



「お待たせいたしました」



 消化のしやすいようにとミルク粥だった。

 私は小さく「いただきます」と呟いて久しぶりの食事をいただいた。

 とても優しい味でほっとする。

 あまり食べれないと思っていたけれど、すんなりと食べれたのでほっとした。



「とても美味しかったわ」

「あまり量が食べられないとの事でしたので、少なめにご用意したのですが、足りましたか?」

「これぐらいで丁度いいわ。ありがとう」



 私が食べれたことに安堵しながら食器を下げ、代わりにお薬? が出された⋯⋯が、その色がとてもえげつない。

 コップに半分程の、濃い緑色のした液体⋯⋯。



 ――これ、飲めるの? 毒じゃないよね?



 その色と臭いに冷や汗が流れる。 



「見た目はあれですが、医師(せんせい)が食後に出すようにと指示されていたものですので⋯⋯頑張って下さい!」



 モニカに激励されてしまった。

 先程の美味しい食事が直ぐに無かったことにされそう⋯⋯。



「因みにですが、効能は解熱と毒素の中和、消化を促し体内の環境を調える、らしいです」



 私は、はぁ、と一息き、目をぎゅっと瞑って息を止めて頑張って飲み干した⋯⋯!



 ――うぅ⋯⋯まずいし苦い臭い!



「お口直しに果物をいれたヨーグルトはいかがですか?」

「いただきます!!」



 否もなく、直ぐにヨーグルトを食べた。

 甘さと酸味があってほっとする。

 口の中の苦味がなくなり一安心。

 食べた後、モニカに今日の予定を聞いた。



「モニカ、今日の予定は? 伯父様達とお話の続きはいつになりそう?」

「本日姫様のご体調が良ければ昼食後にこちらへお伺いしたいと承っております」

「そう、体調はいいと思うからそれでお願いね」

「畏まりました」



 昼からの予定が決まったけれど、ずっとベッドの中は暇ね。



「モニカ、何か本とかないかしら?」

「本ですか? あまり無理をするのは如何なものかと。昼からは皆様とのお話もありますので、今はゆっくりお休みください」

「流石にもう眠たくないから⋯⋯」



 ――暇がしんどい⋯⋯。



「まだお出しできませんよ。お暇かもしれませんが、無理はお止めくださいませ。姫様はまだ五歳なのですよ。お昼からに備えて少しお休みくださいませ」



 そう言われてしまうと、何も言えない。

 そうだった、私五歳児。大人しくしとこう。

 もう、色々ダメな気がするけど⋯⋯。



「大人しくしときます」



 そういってベッドに横になった。

 それを確認したモニカは食器を下げるため部屋を後にした。

 あれだけ眠くないと言ったけど、ベッドに横になるとまた眠くなってきていつの間にか寝てしまっていた。


 目が覚めると入る日差しで日は高くなっているようだ。

 お昼過ぎくらいかな?

 とぼんやりしていると声がかかった。



「ステラ?」



 声にびっくりすると、そこにはオリー伯母様がいた。



「おはよう、よく眠れたかしら?」

「おはようございます。伯母様。夢も見ずぐっすり寝ました」



 それを聞いた伯母様は安堵の表情を浮かべ、微笑んだ。



「何か飲む? お腹は空いてないかしら?」

「お水が飲みたいです。お腹は少し空きました」



 そう言うと、話を聞いていたモニカが部屋を下がった。



「はい、お水よ」



 伯母様自らお水を淹れてくれた。



「ありがとうございます。いただきます」



 私はお水を飲んで、頭をすっきりさせる。



「体調はどうかしら?」

「はい、大丈夫です。昨日のお話の続きですね?」

「えぇ。熱は、まだ少しあるわね。けど、顔色が昨日よりも戻っているようで、安心したわ」



 オリー伯母様と話をしていると、ノック音がして、「どうぞ」と声をかける。



「失礼します」



 そういって私の側まできて用意してくれた。



「昼食は野菜のスープです」



 朝食と同じく優しい香りがする。



 小さく「いただきます」と言いスープを一口口にした。

 うん、美味しい。優しい味がした。野菜もたっぷり煮込まれていて蕩けるくらい。

 とても食べやすい。


 だけど、その後にまたあの薬が⋯⋯。



 ――また飲むのこれ?



 そう私が苦々しい顔をしているのを見た伯母様はくすくすと笑っていた。



「不味いのよね、それ。頑張って飲んだらご褒美にグラニテは如何?」



 はっとした私はご褒美のために、にがーい薬を今朝みたく、目をぎゅーっとつぶり飲み干した⋯⋯。



 ――苦行だわ⋯⋯。



 飲み干したのを見た伯母様はモニカに指示をしてグラニテを出してくれた。



「さっぱりして美味しいです。癒されます」



 それを見た伯母様はまた笑っていた。



「その様子だとほんとに大丈夫そうね。食べ終わったらアルを呼ぶけれどいいかしら?」

「はい、大丈夫です。よろしくお願いします」



 食べ終わり食器を下げた後、モニカはアル伯父様と執事と一緒に部屋へ入ってきた。



「おはようございます、ステラ様。お顔の色が随分とよくなりしたね、安堵いたしました」



 優しく声をかけてきてくれた。



「おはようございます、伯父様」



 私もにっこりと返事をする。

 伯母様はとなりの椅子へ掛け直し、私の直ぐ側に伯父様は座った。

 伯父様も伯母様同様に額に手を当てて熱を測ってくれた。



「うん、熱は大分下がったみたいですね」



 ほんとにお二人は優しい。

 勿論両親も優しいが、ここまでじっくり会うこともないので不思議な感覚。



「調子が良さそうなので、昨日の続きをお話してもよろしいでしょうか?」

「はい、大丈夫です」

 

お読みいただき、ブクマも本当にありがとうございます。

次話もよろしくお願い致します。

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