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目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第1章  大切なもの
67/273

67 初めての体験


 そして、翌翌日の待ちに待った休息日がやってきました!


 今日は昼食後にハルド様のご自宅にお邪魔させてもらって、動物達と戯れる日!

 お兄様と護衛のエドガー、クラースにサムエル。

 そしてモニカも一緒だ。

 昼食後に馬車で向かう。

  騎士団の本部がある建物より西側に騎士達が住んでいる寮や其々の邸宅がある。

 勿論、街に住んでいる人達もいるが、少し遠いので大体本部の近くに居を構える者達が多い。

 景色を楽しんでいたら、ハルド様のご自宅に着いた。

 ハルド様もミルヴェーデン伯爵家の三男だが、貴族の三男ともなると、独立して自ら生計を立てなければならず、ここシベリウス辺境領の騎士団に王都から移籍して今に至る。

 なので此方で結婚をして、二男一女の父親でもある。

 お子様方も大きいようで、嫡男の方も今年二十歳だという。

 それなりに大きなご自宅だった。

 サムエルの手を借りて馬車を降りると、ハルド様と奥方様、お子様方全員揃っていた。



「レオナルド様、姫様。ようこそいらっしゃいました」



 ハルド様の挨拶を筆頭に、皆様頭を下げて暖かく出迎えてくださった。



「ごきげんよう、ハルド。今日はシアの為にありがとう」

「ごきげんよう、ハルド様。今日はとても楽しみにしていました。よろしくお願いしますね」

「いえ、姫様に喜んでいただけるのならば、いつでもお越し下さい。先ずは家族を紹介致します」



 ハルド様は私にご家族を紹介してくれた。

 奥様のテレーサ様、嫡男のメルケル、長女のアンネ、次男のディック。

 私達は挨拶をしてご自宅を案内してくれた。

 最初に案内された所は、そこには可愛らしい猫達が一室丸々遊び場になっているお部屋で、可愛らしく遊んでいたのを目にして思わず声を上げてしまった。



「わぁ! 可愛い!! ハルド様、触れても大丈夫ですか?」

「構いませんよ。ですが、そっとですよ」

「はい!」



 私はそろそろと近づいていき、一匹の白猫に優しく触れると、にゃーと一声鳴いて、ごろごろと頭をすり付けてきた。



 ――あぁ! 可愛すぎる!! もふもふで毛並みも良いし、人懐っこい! 幸せ⋯⋯。



 私は一人悶えながら白猫ちゃんを堪能していたら、他の子達も寄ってきた!

 だめ、此処から離れられない!

 可愛すぎる!


 そんな私を見てハルド様は「ここは天国か!」と訳の分からないことを言っていたが私は気にしない。

 レオンお兄様も私と一緒に猫ちゃんを堪能していた。

 テレーサ様は私に一匹ずつ名前を教えてくれた。

 暫くしたら各々散らばっていった。

 流石は自由気ままな猫よね。

 だけど、猫にしては抱っこされても嫌がらなかったし、撫でても怒らなかったし、とても優しい子達だと思う。


 次はお庭に出て、犬達と会わせてくれた。

 一番目を惹いたのは大型犬だったので、私はびくびくしながらも近付いて行き、そっと撫でてみると、嬉しそうな表情をしたので私は安心して撫でた。

 そうしたら、顔を舐められたのでびっくりしてしまい、お兄様に「大丈夫、犬の愛情表現だよ」と教えてくれた。

 他にも小型犬が三匹いて、どの子も瞳がつぶらでとっても可愛らしかった。

 猫のような自由気ままな感じはないけれど、賢くてお手や待ても出来て、皆とっても可愛い!


 その後は鶏も見せてくれて、ヒヨコも沢山よちよちと歩いていて、思わず可愛すぎて叫びそうになった!

 鶏は可愛いとは思わなかったけど、ヒヨコはとっても可愛かった!

 黄色くて丸くてあったかい!

 けど、なんで鶏? って思わなくもないのだけれど⋯⋯、まぁ、人それぞれよね。


 私はいっぱい、もふもふを堪能してから休憩にとお茶に誘われ、部屋に移動した。



「ハルド様、テレーサ様、今日はありがとうございました。とても楽しかったです」

「姫様が楽しそうで安堵致しました。それに姫様の笑顔は眩しいですね」

「アリシア様が笑顔でいますと、こちらも嬉しくなりますね」

「シアの笑顔っていいよねぇ」



 私は三人の話を聞き不思議に思って首をかしげた。

 私の笑顔って、別に普通よね?

 誉めすぎじゃない?

 レオンお兄様は何時もの事だから別として。


 その後私達は動物達の話を沢山教えて貰い、楽しい一時を過ごした。

 ハルド様達にお礼を言って、私とお兄様は邸に戻った。



 その夜、お養父様達に今日の出来事をお話しする。

 私が本当に楽しかったのが伝わったのか、お養父様達も終始笑顔で私の話を聞いてくれた。



「お養父様、お養母様。今日はハルド様の所に行かせていただき、ありがとうございました」

「いや、シアの心からの笑顔を見れて良かった。とても楽しめたようで安心したよ」

「シアの笑顔は周りに幸せを与えるわね。そんな笑顔よ。今の気持ちを忘れずにね」

「はい、お養母様」



 この日は本当に楽しい一日だったので、何も憂う事無く寝ることが出来た。


 ハルド様のご自宅に行った日からは本当に平和な日常で、私も自分の事に専念ができ、また穏やかに過ごすことが出来た。

 ただ、ヴァレニウス竜王国の王太子がこのシベリウスに数日滞在されると言うことで、その点に関しては歓迎の準備が進められていて、何時もより活気が溢れていた。

 私も初めてお会いするので、お養母様が張り切ってドレスを仕立てたり、所作の確認やらに余念がない。

 ただ、今回のドレスを仕立てるにあたり、私は自分の希望も添えてみたら、お養母様とエーヴェが感激と言わんばかりのきらきらした圧のある目と勢いで、私は若干よれよれになってしまった。

 私の描いたドレスの案が気に入ったようで、私の気が向いたときで良いから、ドレスのデザインをして欲しいと頼まれた。

 楽しいから息抜きに描きますね、と伝えておいた。

 歴史や現代史、言語もヴァレニウス国を中心に勉強が進められている。

 言語に関してはただ、復習をしているだけなのだけれども。

 そんな感じで毎日が過ぎ、あっという間に迎える前日になっていた。


 今日は朝から入念に迎える準備の最終調整がされていた。

 私やお兄様はお役に立てないので朝から散歩に出掛けていた。

 実は、ようやく許可が降りて、念願の初の街歩きの日なのです!

 モニカとお兄様の侍従のフレヤ、勿論護衛も一緒でエドガーと私の護衛のクラースとサムエルも一緒だ。

 屋敷から街まで距離があるので、街の入り口までは馬車だけど、そこからはお兄様と手を繋いで歩く。

 私は見ているだけでも楽しくて、あちこち見回す。

 そんな私をお兄様達は微笑ましい感じで見ていたようだけれど、私は色んな物を見るのに忙しく気付かなかった。

 私は初めて見るものに、皆に質問をして教えて貰いながら歩みを進めていた。

 あぁ、楽しい!

 すっごく、楽しい!



「アリシア様?」

「えっ、カリーナ! ごきげんよう」

「こんにちは。まさか街でアリシア様にお会いするなんて! 今日は何故街に?」

「ようやく街歩きの許可をお養父様から頂いたので、早速来てみたの。今邸にいても皆のお役に立てないもの。カリーナは何をしていたの?」

「私は母に買い物を頼まれたので、買い出しですね」

「お買い物⋯⋯そういえば、街に来たのにお買い物を全くしていないわ!」

 


 私は街に来たというのに、見るだけでお買い物をしていない!

 お買い物を体験しなきゃ!

 けど、何を買えば良いのかしら?



「シアは何を悩んでるの?」

「お兄様⋯⋯折角街に来ましたのに、お買い物を体験していません。けど、何を買えば良いのか分からなくて」

「シアってば、そんな事で悩んでたの? 可愛いなぁ」

「もう! (わたくし)本気で悩んでますのに!」

「怒った姿も可愛いなぁ。何か食べたいものとか欲しいものとかはない?」

「食べたいものや欲しいもの、ですか?」

「アリシア様、特になければお勧めを教えましょうか?」

「ありがとう! お勧めは何かしら?」

「あそこに見えるパン屋のデニッシュペストリーがお勧めです。何種類かあるのですが、その中でも果物の乗ったものが程よい甘さで美味しいですよ。大きさもさほど大きくないので食べやすいです」

「ありがとう。早速行ってみます! お兄様はそれでよろしいでしょうか?」

「いいよ、行こうか」

「カリーナありがとう! また訓練の時に会いましょう」

「お役に立てて良かったです」



 カリーナとお別れして、早速教えて貰ったパン屋に行ってみた。

 とても美味しそうな匂いが漂っている。

 モニカが先に店に入ると「いらっしゃいませ!」と、とても元気な声に迎えられた。

 お兄様に続いて私も入る。

 店内には沢山の種類のパンが並んでいた!

 見ているだけでも楽しい!



「シア、これがカリーナが言っていたパンじゃないかな?」

「そうですわね、名前もあっていますわ。果物がお勧めと話していたので、(わたくし)はこれにします。お兄様はどうしますか?」

「んー、僕はこのクリームのにしようかな」




 私とお兄様が決めると、モニカが注文の仕方を教えてくれたので、私はドキドキしながら注文をすると、店員のお姉さんは笑顔で対応してくれた!

 お支払も初めて自分でしてみる。

 ちゃんとモニカが側で見ててくれたので安心して支払うことが出来た。

 こうしてドキドキな初のお買い物が体験できた。

 お店を出ると、護衛の三人が待っていてくれたので、先ほど購入したパンを一つずつ渡す。



「はい、三人にも購入してきましたので、よかったら食べて?」

「宜しいのですか?」

「もちろんです」

「では、有り難くいただきます」



 購入したパンは店先にある椅子に座って食べて良いみたいで、早速いただく。

 初めてお外で食べるのだけれど、そのまま食べて良いのか迷いつつ、お兄様が食べているのを見て、同じように食べてみる。

 さくさくっとした食間に、しっとりとした甘さが相まって美味しい!



「美味しい!」

「ほんとだね! このサクサクした食感がいいね!」

「それに、こうやって皆で食べるのも良いですわね。嬉しいです」



 私が、そう言うと護衛の三人とモニカが目を見開いて驚いていた。

 何かおかしな事言ったかしら?

 不思議に思っていると、モニカが「シア様、ありがとうございます」とお礼を言われた。

 私は何故お礼を言われたかが分からなかったけれど、モニカが嬉しそうならそれでいいかなと思った。

 お兄様は「シアは天然の人たらしだね」と呟いたけれど、その言葉は私にまでは聞こえなかった。


 パンを食べ終わり、散策を再開する。

 花屋に果物屋、お肉や野菜を売っているお店など、食べ物の他に生活用品や色んなお店があり、見ているだけでも楽しい。

 そうしていると、今日の昼食をいただくお店に着いたみたい。

 モニカは受付を済ませ、奥の席に案内される。

 そこは個室となっていた。



「お食事をお運び致しますので、少々お待ち下さいませ」



 私はどれもが新鮮で、わくわくが止まらない。



「シアはほんとに楽しそうだね!」

「とても楽しいですわ。何もかもが新鮮です」

「ここのお店は父上と母上もたまに訪れてるんだって。なんでも母上が嫁いできた時に父上と初めて外食したのがこの店で、料理も美味しいし思い出の場所だって話していたよ」

「まぁ! そうなのですね。では、(わたくし)にとってはお兄様との初めての外食ですので、思い出の場所になりますね」

「シアが可愛すぎて天然で⋯⋯そう言うこと他で言っちゃだめだよ! お兄様は心配になるよ⋯⋯」



 えっと⋯⋯お兄様との思い出の場所だと言って何故心配されるのかしら?

 ずっとシベリウス(ここ)に住むわけではないから、楽しい思い出はいっぱい作りたいと思っているのだけれど。


 不思議に思っていると、お食事が運ばれてきた。

 そして説明してくれる。

 わぁ! どれも美味しそう。

 サラダに冷製スープ、そしてトマトのファルシーにクロワッサン。

 量も調整してくれているのか、多くなくて食べれそう!


 私とお兄様は食事を楽しんだ。

 護衛の三人は交代で食事をとっていたようだ。

 モニカとフレヤも交代で食事を楽しんだみたいで良かった。

 デザートはクレームブリュレ。

 勿論完食しました!

 美味しかった!



「シア、全部食べれたね」

「どれも美味しかったので、それに、量も少しずつでしたので食べれましたわ」

「まぁ母上の采配だろうね」

「残さずに済んで良かったです」



 お養母様にはお礼言わないと。

 残すなんて申し訳ないですものね。



「この後はエーヴェの所に行くんだよね?」

「はい。お養母様が街に行くなら品物を受け取ってきて欲しいと言っておりましたので」

「何だろうね?」



 とにかく行ってみましょう!

 初めてのお使いです。

 私達はお店の人達にお礼を言って店を後にした。

 その後はエーヴェのお店に歩いていく。

 しばらく歩くと見えてきた。

 あれ、あれは⋯⋯。



「母上がいるね」

「しかも(わたくし)達を待っていますね」



 私とお兄様は不思議に思いつつもお店の前に着く。



「街歩きはどう? 楽しかったかしら?」

「はい、とても楽しかったです! それより、お養母様はどうしてこちらに?」

「帰りは一緒に帰ろうと思って、エーヴェのところで待っていたのよ。だから貴方達にここに来るように伝えたの」

「母上の用事は終わったのですか?」

「終わっているから、帰りましょうか」

「「はい」」



 初めてのお使いとはならず、私達は店の前に停まっていた馬車に乗り、邸に戻った。

 邸に戻るとお養父様もお外で待っていて、お養母様をエスコートする。

 お兄様、私の順で下りる。



「おかえり、二人共」

「「ただいま戻りました」」

「話は後で、まずは邸に入ろうか」

 


 私達は邸に入り、居間へ行く。

 直ぐにお茶の準備がされ、私がお土産に選んだお菓子も出してくれた。



「シア、街は楽しかったかい?」

「はい! とても楽しかったです。お養父様、お養母様、ありがとうございます。それにお昼もとっても美味しくて、量も事前に伝えていたのですか?」

「えぇ、シアはそれほど食べれないと思ったから、いつも残す時に申し訳なさそうにするでしょう? 丁度良かったかしら?」

「はい! 残さずに食べる事が出来ましたわ。ありがとうございます」

「シアの顔を見ていると楽しかったのがよく分かるよ。このお菓子は?」

「お土産です」

「ふふ、シアは優しいのね。それにここのお菓子は美味しいと評判のお店よ」

「そうなのですね! とても見た目が可愛らしくて皆様並んでらっしゃったので、美味しいのかなと思いましたの」



 私達は今日の街歩きの感想を話していたけれど、それが一段落すると、お養父様は明日からの事について話し始めた。

 明日からこの邸にはヴァレニウス竜王国の王太子殿下が滞在される。

 明日はお昼過ぎに到着予定だという。

 滞在期間は四日間。

 その間に、お養父様と情報交換や騎士団も見に行くそうで、試合も行うという。後は交流したりするみたい。

 特に私やお兄様が何かをすることは無いだろうが、シベリウス家の者として恥じない行動をするようにとの事。

 因みに滞在期間中の訓練前に勉強は無い。

 明日は私やお兄様もお出迎えをするので、午前中から忙しくなりそう。

 特に私が、みたいだけれど。

 朝からヨレヨレになりそうな予感がするわ⋯⋯。


 今日は早く休んだ方が良さそうね。

ご覧いただき有難うございます。

ブクマ、評価を頂き、とても嬉しいです。

ありがとうございます。

次話もお読みいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

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