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目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第1章  大切なもの
66/264

66 処断


 こちらに戻ってくると、夕食の時間となっていた為、そのまま食堂に向かう。

 お養父様とお養母様が労るように私を見て「お疲れ様」と声をかけてくれた。

 私、疲れた顔しているのかしら?

 帰ってくるのが遅かったからかしら。

 皆で夕食をいただき、団欒の間にて何時ものように今日の出来事を話しだす前に、私とレオンお兄様に「話がある」と、お養父様が声をかけてきた。

 私もお兄様もお養父様の真剣な声に姿勢を正す。



「この間騎士団で起きた騒ぎの件だが、ラルフは正気に戻ることはないと私が判断を下した。まだまだ瘴気が残る身体で、その殆どが魔物と化していて、時折獣のように唸ることもある。これ以上置いておくのは危険と判断し、明日の早朝騎士団内で焼き払う。お前達も何か思うことがあるだろうが、これは、決定事項だ」

「分かりました」

「お養父様がお決めになったことなら、何も言いません。ですが、見届けることは出来ますか?」

「シア?」

「あんな事があっても、少しの間一緒に訓練をしたのです。最後を見届けたいと思います」



 私は別に彼が哀れでそうしたいと言っているわけではなくて、ただ、自分自身に区切りを付けたい、そして私自身がそうならない為の戒めとして⋯⋯。

 この先何が起こるかなんて未来は分からない。

 もしかしたら、私がそうなる可能性だってある。

 まぁそうなったら私の影が止めるでしょうけど。



「シア、僕も行くよ。父上、よろしいですか?」

「お前達は真面目だな⋯⋯。好きにしなさい」

「「ありがとうございます」」



 却下されるかと思ったけれど、意外とすんなり了承してくれた。

 明日はお養父様とお兄様と一緒に騎士団に向かうことになったので、時間を伝えられ、今日は早めにお開きとなった。



 部屋に戻って、就寝の準備をし、モニカ達に挨拶をする。

 今日も、とても濃い一日だったきがする。

 頭が冴えて寝れそうにないわね。



 花の香りがふわっとなんとなく、香った気がした。



「エストレヤ?」

「よく分かったね!」

「最近よく来るわね。どうしたの?」

「んー、エステルに会いたいから。それよりなんだか疲れてる?」

「どうして?」

「そんな気がしたから」



 そう言うと、私の頭を撫でてぎゅっと抱きしめた。

 落ち着く香り⋯⋯。



「おやすみ、エステル。良い夢見てね」

「エ、ストレヤ⋯⋯」



 最後まで言えず私は強制的に眠らされた。



「さてと、エステルはぐっすり寝たね。ねぇ、そこに隠れてる君たち、出てきなよ」



「出てこないの? まぁいいや。けど、これだけは覚えておいて。エステルに無理させたら僕本気で怒るからね」



 夢の中でエストレヤが怒っているのを感じた。

 私にではなさそうだけど⋯⋯。

 そんなに怒らなくても大丈夫だよ。

 けど、私のために怒ってくれてありがとう。

 また花の香りが強くなったけど、私はぐっすりと眠りについた。

 

 翌日の早朝も早い時間に目が覚めた。

 昨日少し怠さを感じていたのがすっきりと無くなっていて、とてもさっぱりしていた。



「エストレヤ、ありがとう」



 私は此処にはいないエストレヤにお礼を言った。

 今日は早朝に騎士団に行くので、準備をするので、ベルを鳴らし、モニカ達に準備を手伝ってもらう。


 準備をし終わり、玄関ホールに行くと、お養父様とお兄様が既に待っていた。



「おはようございます。お養父様、お兄様。お待たせしてすみません」

「おはよう、シア。そんなに待っていないよ」

「シア、おはよう」

「では向かおう」



 私達は馬車で騎士団へ向かった。

 騎士団に付くと、ハルド様とイクセル様が出迎えに出ていた。



「おはようございます。閣下、並びにレオナルド様に姫様」

「あぁ、おはよう」

「おはよう」

「おはようございます」



 私達は挨拶をして、ハルド様の先導で訓練場の一角に向かった。

 そこには、魔法師達がラルフが動き出さないよう封じていた。

 近づくにつれ、獣の唸り声が聞こえる。

 ラルフから発せられているようだ。

 瘴気を濃く纏っている。



「シア、無理せずにここに。レオンはシアと共にいなさい」

「はい。お養父様」

「はい、父上」



 私は無理をせず、少し離れた場所で見ることにした。

 レオンお兄様も一緒だ。

 と、そこにサムエルとクラース、エドガーが近くに来た。



「おはようございます。レオナルド様、アリシア様」

「おはよう。早朝からごめんね」

「おはようございます。早朝からありがとうございます」



 挨拶を済ませ、視線を正面に戻すと、そこにはラルフの養父母らしき人達もいた。

 養父は厳しい目でラルフを見ているようだった。

 養母は痛そうに涙を流している。


 お養父様はハルド様に合図を送ると、養父母は騎士達の後ろまで下がらされた。

 その後、お養父様の合図でラルフを業火で焼き払った。


 私は目を逸らす事無く、見つめた。

 全てを焼き払う炎を⋯⋯。

 来世では間違わず、穏やかに暮らせますように⋯⋯。

 そう願いながら。


 ラルフの処断が終わると、私とレオンお兄様は「一度邸に戻りなさい」と言われたので、邸に戻ってきた。

 今日は訓練日だが、午前中は私とお兄様は休みとなった。

 午後からの訓練に参加するようにと。

 なので、午前中は図書室で読書をすることにした。

 私は第三の眼の制御方法が何か無いかと探す。

 だけど、中々そういった書物がない。

 来週、離宮へ行った時に探してみようかしら。


 昼食をお兄様達といただき、昼からの訓練に向け騎士団へ向かう。

 訓練前には訓練生達にラルフの処断の件が伝えられた。

 皆様々な反応をしたけれど、騎士になるべくここにいる者達は、少しショックを受けながらも気丈にしていた。

 それからは、いつも通り訓練が始まる。

 私も真面目に取り組み、あっという間に時間が過ぎ、今日の訓練が終わる。


 この日の夜、モニカ達に就寝の挨拶を終えて、部屋に一人になると、私は二人を呼んだ。



「二人共、昨夜何かあった?」

「何か⋯⋯とは?」

「エストレヤが来たでしょう? 私いつの間にか寝てしまってたみたいだし、何だか夢うつつにエストレヤが怒ってる感じがしたから⋯⋯」

「その事ですか。姫様に無理をさせたら怒るからと忠告を受けました」

「無理は、別にさせられていないけど? エストレヤは何か勘違いしているのかしら。貴方達に怒る必要ないよね」

「⋯⋯」



 うん? そこで沈黙って⋯⋯、私知らないところで無理させられてるの?



「何故黙るの?」

「申し訳ありません。彼の精霊が仰っているのは、姫様との契約の件でございましょう」

「契約の事? 何故?」

「姫様に我々の命を背負わせた事に対して怒っているのですよ」

「けど、最終的にそう決めたのは(わたくし)だから。二人は気にする必要ないわ。今度エストレヤに会ったら話をするわ」

「いえ、そのお気持ちだけで充分です」

「二人の気持ちは分かったけれど、私は勘違いされたままは嫌だわ」

「⋯⋯姫様は意外に頑固でいらっしゃる」

「何か言ったかしら?」

「いえ、何も⋯⋯」



 アステールに何か良からぬ事を言われたように感じたのだけれど。

 まぁいいわ。



「そろそろ休みます」

「「はっ、おやすみなさいませ」」


 

 ラルフの件が片付いたので、しばらく何事も起こらず平和に過ごせたらいいな。

 私も集中して制御しなければならないし⋯⋯。

 その前に、明後日の休息日はハルド様のご自宅の動物達に会いに行くので、そこはとても楽しみにしている。

 折角生きているのだから、楽しむ時は楽しまないと。

 何時までも引きずるわけにはいかない。


 考え事をしていたら眠れなくなるわね。

 そろそろ休まないと、また皆に心配かけるわ。

 

 私は思考を中断して眠りについた。

 

ご覧いただき有難うございます。

次話も楽しんでいただけれ嬉しく思います。

よろしくお願いいたします。

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