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目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第1章  大切なもの
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65 影の主として


 休息日明けの訓練日。

 そういえば、あれから私は気を失ってしまったの皆に会うの久し振りで、色んな意味で大丈夫かな。

 ちょっと心配になりつつもお兄様と訓練場に向かうと、既に皆集まっていて、こっちに気付いたと思ってら駆け寄ってきた。


 

 ――何事!?



 その何時にない皆の行動に驚いてしまった。



「レオナルド様、アリシア様。お話聞きました! すごい活躍だったとか、魔法で攻撃しているところみたかったです!」



 だって⋯⋯。

 魔法訓練場には現れなかったと聞くし、話し盛られてない?



「はいはい、皆落ち着いてね。攻撃って言っても一度だけだし、騎士団が殲滅したからね」



 そうお兄様は皆を落ち着かせた。

 そんな所に先生方はやってきて「落ち着けよー!」って声をかけた。



「その話は終わりだ! 訓練を始めるぞ。レオナルド様とアリシア様先週の引き続きでこちらで。アリシア様に関しては一つ訓練に追加がありますので、移動後に説明しますね」

「はい、よろしくお願いします」



 私とお兄様は同じ場所へ移動して、お兄様は先生から与えられた課題をし、私は別の訓練を言い渡された。



「アリシア様、お話は伺っております。今日から瘴気を感じたり視たりするのを制御する訓練を追加します」

「はい」

「ではまずは、アリシア様がどの様に感じるか、視ることが出来るのかを詳細に教えていただいてもよろしいですか?」



 私は、リュシアン先生にどう見えるかを伝えた。

 伝え終わると、私程見える者が騎士団の中でも中々いないようで、驚いていた。

 ただ、見方を制御するのは基本皆同じなので、まず基本的な制御術を習うこととなった。

 視える人、感じる事の出来る人と言うのは、第三の眼があると言われている。

 実際眼があるわけではなく、“内なる眼”と言われ、その眼が開きっぱなしだと私みたいに酔ったりするみたい。

 なので、そこを制御できれば視ることも感じることも抑える事が出来、気分が悪くなることもなくなるようだ。

 まずは、自分の中の第三の眼の力の流れを知ること。

 先生曰く、そこだけ少し違う色をしているそう。

 そういえば、お祖父様のところで魔力操作を習ったとき、違うところがあったよな⋯⋯?

 大体眉間の当たりが第三の眼の場所で言われている。

 私は、そこに集中し内なる力を視ると、確かにそこだけが色が違う。

 なんだかとっても力強くて、自分の中の内なる力だけれども、飲み込まれそう⋯⋯。

 私は一度目を開けて、一息ついた。



「どうですか?」

「確かに、眉間の当たりに凄く、飲み込まれそうな程の力の塊がありました」

「確認できましたか。では次の段階に進みましょう。力が確認できたのなら、その力を抑えこみ、小さくすることです。これが一番難しいのですが、抑えると言っても力ずくではなく、包み込むような感じですね。これは人によって感じかたが変わるのですが⋯⋯」

「一度試してみます」



 私は再度目を閉じて眉間の力を視る。

 包み込むような感じ⋯⋯。

 パシッ!



「きゃあ!」

「アリシア様!?  大丈夫ですか?」

「いたたっ。大丈夫です。弾かれてしまいました⋯⋯」

「えっ? 弾かれたのですか? そのような現象は初めて聞きました。自分の力に弾かれるなど、あるのか?」



 ――えっ? そんな不安になるようなこと普通に話さないで欲しいのですけど!


 

 弾かれたらどうしたら良いの⋯⋯。

 んー⋯⋯、包み込むのが駄目なのかしら。

 私は再度挑戦する。

 今度は包み込むのではなく、直接力に働きかけてみる。

 深呼吸をし、息を整えて、少しずつ、少しずつ干渉してみる。

 そうすると、少しだけ力が揺らめいた。

 包むというより、均すと言った感じかな。

 視たいときだけ集中して塊になれば、それ以外の時は馴染ませとけばいいのかなぁと思ったのだけど、少し揺らめいただけで、上手くいかない。

 流石に集中力が切れたので、目を開け、大きく息を吐く。

 はぁ。これは時間かかるかも⋯⋯。



「アリシア様、いかがですか?」

「中々上手くいきません。力の塊が大きすぎて、包むのは無理です」

「そうですか⋯⋯地道にするしかありませんね。俺の方でも他に方法がないか、探してみます」

「ありがとうございます」

「今日は此処までにしましょう。もう少ししたら終了です」

「はい、ありがとうございました」



 その後、お兄様の訓練が終わるのを待ち、騎士団の食堂へ向かうと、クラースとエドガーが待っていた。

 何かあったのかしら?



「午前中の訓練、お疲れ様です」

「何かあった?」

「特に何かあったと言うわけではないのですが、団長よりお二人の側にいろという指示でしたので、お待ちしておりました」

「ふーん? まぁいいや、シアお昼食べよっか」

「はい、お兄様」



 気になりつつも、私達はお昼をいただき、昼からの訓練場へと向かう。

 いつもと変わらない事に安堵しながらも、他の訓練生と会うのに少し緊張した。

 別に悪いことはしていないのだけれどね。


 

「あっ、アリシア様にレオナルド様!」

「カリーナ! ごきげんよう」

「アリシア様、お身体は大丈夫ですか?」

「もう大丈夫です。心配をありがとう」

「それを聞いて安心しました! 父からは瘴気に当てられたと聞いていたので」

「今朝からそうならない様に訓練を開始したので、その内馴れると思います」



 カリーナは変わらず声をかけてきてくれた。

 周りを見ると、今日は少し少ない。

 やはり、精神的に傷を負ったのだろうか。



「皆揃っているか?」



 そこへアンリ先生、ユーグ先生、そしてサムエルがやって来た。



「揃ってるな。では班に分かれて訓練を開始する!」



 休む者達は事前に分かっていたようで、直ぐに訓練にはいる。

 私とお兄様、エミーリオの三人が集まり、サムエルに指導してもらう。

 私は基礎訓練を前半行う、その間にお兄様とエミーリオは打ち合いをしていた。

 エミーリオの方が年上だけれど、お兄様は全然負けていない。

 て言うか、この間よりも強くなってます?

 お兄様の上達具合がすごいです。

 私は負けじとサムエルの指導を受ける。

 まずは、右手でサムエルに打ちかかる。

 それを受けながらどこをどうすれば良いか、的確に教えてくれる。

 次に左手に持ちかけて同じことをする。

 馴れてきたところで、両手に持ち、打ちに行く。

 サムエル達が前に打ち合っているのを見ているから、イメージは出来ている。

 私は、それに習って打ち込んでいく。

 サムエルは片手で受けながら、指摘するのを繰り返す。

 少しは様になってきたように思う、が、まだまだだ。


 全般を終了したところで少し休憩を挟む。

 私達が訓練をしている最中は、クラースとエドガーは同じく打ち合いをしていたが、私達の休憩と同じく休憩を挟む。

 じっくり見てみたい⋯⋯。


 休憩が終わり、後半はエミーリオとお兄様と交互に相手をしてもらう。

 前半で少し様になってきたので、そのままの勢いで打ち合ってみようと言うことになった。

 ただ、エミーリオとお兄様は受け身だけだ。

 各々に相手をしてもらい、その後は良い点と悪い点をあげていく。

 私は、二人の言葉を聞き、二回目はその点を補正しながら再度打ち込む。

 頭では分かるけど、それを実際にするのって難しいのよね。

 身体が中々付いていかない⋯⋯。


 だけど、今日は思ったよりも進んだと思う。

 サムエルも上達が早いと誉めてくれた。


 時間も来たので、今日の訓練は終了となった。



 私は、お兄様とクラース、エドガーを伴って邸に戻る。

 今日もよく動いたので、湯に浸かってほっと一息。

 モニカ達のマッサージがよく効くのか、翌日に痛くて動けないということは、未だにない。

 本当にすごいと思う。

 感謝しかない。



 座学はより難しく、お養母様の淑女教育も熱が入っている。

 なんでも、八の月に王都で大会議があるとかで、各国の王が、もしくは王太子クラスの方々が集まるという。

 今年はこのグランフェルトで行うので、王都は今迎える準備に湧いているそうだ。

 そして、このシベリウスでもヴァレニウスの王太子が会議前にこの領に寄るそうで、その準備が始まっていた。

 私の淑女教育もそれの一貫で、粗相があってはいけないから教育にも力が入るという。

 なるほど⋯⋯、お養母様達に恥をかかせないように頑張らねば!



 それから翌翌日の帝王学の授業がやってきて、離宮に向かう。

 サムエル達の事を色々と聞きたいし、きっとお祖父様からも話があると思う。

 離宮に着き、お祖父様にお会いする。



「ステラよ、サムエルを影と認め契約したようだな」

「はい、お祖父様」

「聞きたいことがあるだろう?」

「はい。お祖父様は(わたくし)に学園に入る頃に付けると仰っておりましたが、何故今なのですか?」

「それか⋯⋯本当だったら学園に入る頃と考えていたのだがな、あの小僧の件と、シアの能力を見て早い方がいいだろうということになったのだ。私が決めたことじゃないぞ。現国王はアンセだからな、あれが決めて私に依頼してきたのだ」

「お父様が?」

「ステラは影が付くことが嫌だったのか?」

「嫌と言うわけではないのですが⋯⋯、サムエルを受け入れてこんな事を言うのもどうかと思いますが、(わたくし)が影達の主となって良いのか、(わたくし)にはそこまでの知識も能力も無いと思うのです」

「それを決めるのは、其方に付いていくと決めた影達が判断することだ。ステラじゃない。それに、あれらはきちんと人を見る。サムエルはステラ自身を見て決めたことだ。誇ると良い、後、テオドルと後で話しをしなさい。あれもステラに付くと言い張っておるからな」

「分かりましたわ」



 影達の件で話を聞き、取りあえずは私の中で燻っていたものを解消させた。

 その後はお祖父様の講義を聞き、今日は早くに授業が終わった。

 何故かというと、この後テオドルに会うからだ。

 私は部屋に移動して人払いをし、誰もいなくなった部屋にテオドルを呼ぶ。

 呼ぶと直ぐに姿を表し、その姿は騎士の格好ではなく、影としての姿。

  私はまだ影達を受け入れることに少し、躊躇う。

 サムエルに聞いたことと同じ事をテオドルに聞いた。



「テオドルに聞きたいことがあります」

「はっ、どんなことでもお聞きください」

「何故(わたくし)に仕えたいと思ったのですか?」

「私はあの二日にも満たない時間の中で、殿下に光を見たのです。その光はとても温かく柔らかく、ですが力強さもあり、まだまだ弱き力ですが、とても真っ直ぐで揺るがない。貴女様のその目は曇りがありません。貴女様の力は強大で、それでいて傲ることもなく、謙虚でいらっしゃる。そんな殿下に惹かれたのです。これからもその力を求めて狙われることもあるでしょう。ですが、私は貴女様の手足となり、憂いを取り除き、貴女様の歩む道に群がる者共を散らしたく思います。この命を貴女様の為だけに、捧げたく存じます。まだ幼い貴女様には重く感じるかもしれませんが、受けていただければ、これ程の誉れはありません」



 サムエルにしてもテオドルにしても、真剣に私を想ってくれている。

 あの短期間で、何故と思うのだけれど、私には判らない何かがあるのね。

 私自身何かをしたわけではないのだけれど⋯⋯。

 こんな風に想われてはその気持ち都覚悟を拒否する事は出来ない。



「分かりました。テオドル、貴方の命を預かります」

「有り難き幸せ。付きましては契約を交わしても?」

「構いません」



 テオドルはサムエルの時と同じく、私に近づき跪づくと、彼の長剣が差し出された。

 私は一呼吸おき、彼の長剣に触れる。



(わたくし)に仕える者に名を。ノヴルーノの名を与える」

「我が名はノヴルーノ。我が剣を、我が命を、エステル・ヴィルヘルミーナ・グランフェルト王女殿下に捧げ、永遠の忠誠を誓います」

(わたくし)、エステル・ヴィルヘルミーナ・グランフェルトは、ノヴルーノの剣を、命を、我がものとし、その命尽きるまで尽くすことを許します」



 魔力を乗せた契約の言葉を終え、私は彼の長剣で指を切り、その血を与える。

 これで契約の義が完了となる。


 これで、テオドル改め、ノヴルーノは私の二人目の影となった。



「我が主、契約を結んでいただき感謝申し上げます。これから、よろしくお願い致します」

「こちらこそ、よろしくお願いするわ。後、アステールにも話したのだけれど、私の事はエステルか彼と同じ呼び方でお願いしたいの」

「兄は何とお呼びしているのですか?」

「名前は遠慮したいと言われたので、姫様と呼ばれているわ」

「畏まりました。では私も姫様と呼ばせていただきます」



 これで話は終わりね。

 そろそろお祖父様にお暇の挨拶をして戻らないと、心配されるわ。



「ノヴルーノ、(わたくし)はお祖父様に挨拶をして彼方に戻ります」

「畏まりました」



 私は、モニカを呼び準備をしてお祖父様の元に挨拶をしに行くと、お祖母様も一緒にいらっしゃった。



「きちんと話せたようだな」

「はい。テオドルを影として受け入れました」

「これからは影達の主として精進するように。後、あの小僧の事は捨て置け。あれは、シベリウス辺境伯家の者を襲ったとしてアルノルドに処罰される。これはシベリウス家当主の決定だ。ステラにも報告が上がるだろうが、先に教えておく」

「わかりましたわ。教えていただき、ありがとうございます」



 やはり、そうなるわよね。

 けど、やはりお祖父様は厳しくも優しいです。



「では、また来週だな」

「はい。本日もありがとうございました。また来週よろしくお願い致します」



 私は、お祖父様とお祖母様に暇の挨拶をし、シベリウスに戻った。

 

ご覧いただき有難うございます。

ブクマや評価もとても嬉しく、励みになります。

ありがとうございます。

次話もよろしくお願い致します。

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