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目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第1章  大切なもの
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60 お誕生日と波乱の予感


 食後の団欒にて、お兄様が今日の事をお養父様に報告をする。

 お養父様も既に騎士団から報告は受けているだろうけれど。

 報告を聞き終わり、お養父様は一言「そうか」と⋯⋯。

 お養父様達も頭を悩ませているのかな。



「レオン、シア。気になるだろうが、二人は気にせずに自分の事を頑張りなさい」

「「はい」」

「明日二人は何をする予定なのかしら?」

「僕は毎週同じですが、エドガーに訓練をつけて貰います」

(わたくし)もクラースに午前中は訓練をお願いしています。昼からは読書、勉強をする予定です」

「二人共、昼からは少し予定を空けておきなさい」



 お茶会ではなく予定を空けておくだけなんて、誰か来るのかしら?

 もしかして、サムエルかな?

 何となくそう思ってちらっとお養父様を見れば、その通りだと言わんばかりの目で私を見た。

 私もまだきちんと挨拶できてないし、明日挨拶しよう。

 その後、少し雑談をしてお開きとなった。


 翌日のクラースの特訓は、最近私が素振りをしているので、私がクラースに打ち込む訓練をした。

 受けられた時の衝撃に慣れるためにも、少しずつ、最初は軽めに行い、徐々に慣れていこうと言うことになった。

 急に打ち込めば昨日みたいに手が痺れて使い物にならなくなるからね。

 訓練終わりに、クラースも昨日の訓練場での事が気になったのか、聞いてきた。

 が、お養父様は気にするなと言うので、その事を伝えると「閣下は何かお考えがあるのかもしれませんね」と。

 まぁ、今気にしても分からないし。

 取り敢えずこの話題は直ぐに終わった。



「クラース、いつも休息日にありがとう」

「いえ、私もお嬢様の成長が楽しみなので、構いませんよ」



 きちんとお礼を言って、昼食までに汗を流す。

 その後、皆で昼食を食べ、その後は部屋を変え、そのまま食後のお茶を楽しむ。

 暫くするとノックがあり「サムエル様が来られました」とアルヴァーの声が聞こえたので、「通せ」とお養父様の返答。

 直ぐドアが開き、サムエルが入ってきた。

 サムエルも休息日なのか、騎士服ではなく貴族的な服装で現れた。



「ご歓談中失礼致します。お呼びとあり参りました」

「あぁ、よく来たな。そこに掛けなさい」

「失礼致します」



 サムエルは私達に一礼して向かいのソファに腰掛けた。

 騎士服しか見てないから雰囲気が大分違う。

 見慣れないからか不思議な感じがする。



「レオンは訓練場で会っているな。彼はサムエル。元々イェルハルド様の元にいたが、昨日から正式に此処の騎士団所属となった。暫くは、だがな。シアの側にいることが増えるだろうから、知っておきなさい」

「分かりました。改めて、よろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願い致します」



 レオンお兄様への紹介が終わったので今度は私に話しかけてきた。



「彼がシベリウス(ここ)にいる事にシアが一番気になっているだろう?」

「はい、お祖父様の所で訓練をつけていただいていたのですが、昨日此方で会って驚きました。一昨日は何も言ってませんでしたもの」

「急に決まってイェルハルド様が寄越してきたから、私も驚いたよ」

「私も急に決まりましたので移動に慌てました」

「えっ! そうなのですか?」

「はい」



 お祖父様は何をお考えになって決めたのかしら?

 サムエル、振り回されてない?



「あの方の中では、私かテオドルを此方に移動させる事は決定事項だったみたいですよ」



 そうだったの?

 決定してたのなら私はともかく、先にサムエルやお養父様に言うべきじゃないかしら⋯⋯。

 急に移動って住む場所もガラリと変わるしお引っ越しが大変でしょう?



「貴方も大変だったわね。お父様が無理を言ってごめんなさいね」

「いえ、慣れておりますのでお気になさらず」



 慣れるほどあるんだ⋯⋯。

 本人が気にしていないのなら良いのだけれど。

 それよりどうして移動してきたのでしょう?

 私としてはそこが一番気になります。



「シアは何故彼が此処にいるのか気になっているね」



  そうお養父様に言われたけれど、毎回私の心を読まないで欲しいです。

 勿論気になってはいるけれど⋯⋯。



「私が此処に居るのは、アリシア様の護衛が主です。後は此方でも直接訓練をするよう言われております。そういった理由でこちらの騎士団へ移籍したのですよ」

「護衛なら此方にもいますが⋯⋯?」

「邸での護衛ならクラースがいることは存じています。ですが、彼はアリシア様の事をご存知ではないでしょう? 貴女様の事を知っている護衛が一人は必要と言うことですよ」

「納得しましたわ。此方でもよろしくお願いしますね」

「お任せください」



 成る程と納得し、サムエルを護衛として受け入れた。

 というか、お祖父様の命だから受け入れざるを得ないのだけれど、心強くはある。

 何かあったとき、私の事を知ってる人が側に居るのと居ないのでは勝手が違う。

 相談もしやすいしね。



「レオンとシアへの説明が終わったので二人はもう行っていいよ」

「「分かりました(わ)」」



 私とお兄様はお部屋を後にした。

 お兄様は訓練をするようで、庭に向かい、私は図書室へ向かった。

 訓練だけでなく、きちんと勉強もしないとね。

 今のところ、語学の、魔国の言葉が難しく思うので、今日はそれを重点的に勉強をする。

 読み始めるとすぐに集中する。

 集中すると内容も頭に入ってくる。

 何時ものごとく、呼ばれただけでは気付かなくて、肩を、マリーに軽く叩かれてようやく気付く。

 毎回なのだけど「ごめんなさい」と謝る。

 謝るけど、また聞こえなくなると思うので、またお願いしますの意味も込めて⋯⋯。


 休息日はこんな感じで、図書室で勉強をして過ごした。

 何事もなく平和に過ごせるのは良いことね。

 この二日間で大分勉強も捗ったと思う。

 休息日明けは騎士団での訓練から始まる。

 ラルフは一応訓練に顔を出し、不満げな顔ながら訓練に取り組む。

 今週は何事もなく始まりそうね。

 勉強も滞りなく行われて、私も遅れることなく授業を受ける。

 帝王学の時だけ離宮に行き、お祖父様に教わる。

 サムエルのお礼も忘れずに。

 アルフレッドも日々成長しているようで、お祖母様にお話を聞いて、それだけで私の気分も上がる。

 何事もなく二週間過ぎ、何だか久しぶりに平和な日常を過ごしている気がする。


 この間に、私が提案した日焼け止めが出来たようで、肌に合うかどうかや、きちんと日焼け止めとして使用できるかを試して貰い、何ら問題無さそうだったので、このシベリウスから徐々に広げていこうと言うことになり、既に販売が開始されている。

 こんなに早く出来るとは思っていなかったので、私としても嬉しい。

 勿論私の分も確保していただきました!

 よく売れているそうで、まだ生産が追い付かないのか暫く休止となり、もっと在庫を造ってから販売するそう。

 なので、私も無駄遣いせず使わないとね。

 お義父様にもお義母様にも喜んでいただけたので良かった。

 魔道具に関しては今試供の段階で、それできちんと成果が出れば売り出す予定だとか!

 そちらが手に入れば嬉しいな!


 あっという間にお養母様とのお茶会から一ヶ月が過ぎ、お養父様のお誕生日の日を向かえた。

 朝、お養父様が領館へ仕事に行き、朝から皆で飾りつけをして、昼からはお義母様達とクロカンブッシュを作る。

 シュークリームは料理人の人達が作るけど、クリームを入れるのは私達で入れた。

 そして、土台はタルトにして貰い、その上にシュークリームを積み重ねていく。

 少し甘さ控えめのクリームとその間にフルーツも一緒に盛合せる。

 楽しく話をしながら作ること暫く、完成した。

 見た目も可愛いく、豪華になったと思う。

 最後の仕上げはケーキを出す前だ。

 これを食料を冷やす魔道具が組み込まれた大きな食料庫に入れ、私達は邪魔にならないよう調理室から出て、そのままお茶会をすることに。



「作るの楽しかったわね。シア、あんなに可愛らしい提案をありがとう。アルの喜ぶ顔が見られそうね。楽しみだわ」

「いえ、きちんと出来て良かったです」

「僕も作るの楽しかったよ! シュークリームってあんな風に中にクリーム入れるんだね。夢中になっちゃった」

「お兄様は一番楽しそうでしたね」



 私達はケーキ作りの話して盛り上がった。

 それからは、勉強の進み具合とか、訓練はどうかとか、色んな話をして、楽しく過ごした。

 夕刻、お養父様が帰って来られる時間帯に、何時もとは違い、私もお兄様もお養母様と一緒に玄関ホールで待つこと少し、お養父様が帰っていらした!



「「お帰りなさい!」」



 私達は元気良くお義父様を出迎えて、一緒に大広間へいく。

 お誕生日は皆で祝うのが、この邸の決まりごとの一つ。

 なので、大広間に侍女や使用人たち皆も集まる。

 皆が集まったところで、今日はお養母様が仕切る。


 先ずはお祝いの言葉をお養父様にかける。

 お養父様は嬉しそうにお礼の言葉と労いの言葉をかけられた。

 その後は無礼講で食事が始まる。

 こう言ったことは初めてで、私はちょっと戸惑ったりもしたけれど、とっても楽しい!

 お養父様の所に行き改めて「お誕生日おめでとうございます」と言うと、抱き上げられて「ありがとう、シア」と嬉しそうに答えてくれた。

 食事もある程度進んだところで、私達が手伝ったケーキが前に出された。

 お養父様の驚いた顔と嬉しそうな顔が見れて私達も嬉しい。

 甘さ控えめにお養父様仕様にしていて、お養父様は召し上がっても「少し苦味もあって美味しいな」と喜んでいた。

 シロップに少し苦味を持たせて大人の味にしてみたの。

 それが良かったみたい。


 その後、お養母様から順番に贈り物を渡していく。

 ちなみに私が用意したのは、お養父様をイメージした、とてもお洒落な羽ペン。

 羽と持ち手の部分を留めている部分に小さなお養父様の瞳の色と同じペリドットを填めている。

 まだ私が用意出来るものなんて限られているしね。

 それでも、魔道具や日焼け止めの情報料を頂いたので、それも思ったよりも結構な額を⋯⋯それを使用したのだ。

 (王女)の経費には手を出していませんよ。


 お養父様に渡すと、とても喜んでくれた。

 お世話になっているお養父様の喜んだ顔が見れて私も嬉しくなる。

 何が良いか最後まで悩んでいたので、悩んだかいがあった。

 相談に乗って貰ったレオンお兄様にもお礼を言うと「喜んで貰えて良かったね」と一緒に喜んでくれた。

 お誕生日がこんなに楽しい事なんて初めて知った。

 皆が楽しそうに談笑する姿はいいね。


 ある程度すると、私とお兄様は就寝の挨拶をして部屋を下がる。

 皆は大人の時間でお酒も入ってまだ楽しそうにしていた。

 流石に変に気を張ってたのか、疲れてしまい、湯を使った後は、読書もせずに寝てしまった。

 

 夜中何となくふと目が覚める。

 特に夢も見ていなかったのだけれど⋯⋯。

 何がとは分からないけれど、少し不安が過る。

 ベッドから出て窓辺によると、まだ夜中も過ぎた辺りか、お月様も爛々と輝いている。

 けど、心の中はざわざわとして落ち着かない。

 そんな時「まだ起きてるの?」と声がかかった。

 誰? と思い声のした方を振り向くと、そこには久しぶりにエストレヤがいた。



「エストレヤ、 久し振りね。どうしたの?」

「やだなぁ。僕はいつでも近くにいるよ?」

「あれから姿が見えなかったわ」

「あははー。シア忙しそうだったしね」

「今日はどうしたの?」

「ちょっと、注意しに⋯⋯」



 そういうと、エストレヤは真面目な顔をした。

 注意って何かあるの?



「シアも気付いてるよね?」

「⋯⋯この、少しざわざわする感じの事?」

「そう、シアは敏感だからね。本当に注意してね! 何か起こるよ。嫌な気配がする。瘴気の気配」

「⋯⋯(わたくし)が狙いかしら?」

「今回はシアっていうわけではないと思う。けど、兎に角気を付けて!」

「分かったわ。忠告ををありがとう」

「当たり前だよ! シアは大切だからね」

「あっ、この話はお養父様達に伝えてもいいよね?」

「勿論だよ。アルにも伝えて。シア、怪我しないでね」



 そう言うと私の額にキスをしてエストレヤは姿を消した。

 ⋯⋯やり逃げ?

 って言い方が悪すぎよね。

 額にキスされるとは思ってなかったので、ちょっと恥ずかしい。

 だけど、エストレヤって言いたい事を言って直ぐ行っちゃうのよね。

 精霊だから仕方ないのかな。

 それよりも、気になる。

 何が起こるのだろうか。

 このざわざわした感じ、瘴気を感じての事、なのかな。

 エストレヤの言い方だと、私感じているのは間違いなくて、だけど私が狙いではないとしたら何なの?

 今考えても判断材料がないので分からない。

 私は深呼吸して落ち着かせる。

 きちんと寝ないと朝起きたら皆心配するわね。

 ベッドに入って目を閉じる。

 ふと花の香りがしたと思ったら心が落ち着いていつのまにか眠ってしまった。

 眠る前に「おやすみ、シア」とエストレヤの声が聞こえた気がした。

 

ご覧いただき、ありがとうございます。

次話も楽しんで頂ければとても嬉しいです。

よろしくお願い致します。

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