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目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第1章  大切なもの
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06 寝てる間の話し合い


 姫様が寝たのを確認した私は部屋をそっと後にし、辺境伯当主がいる執務室へと足を運んだ。

 ノックをし、「モニカです」と名乗ると直ぐに「入れ」と返事があった。

 返事を確認し部屋に入ると、中にはシベリウス辺境伯はもちろん、辺境伯夫人、側近のイクセル・ラルセン様、筆頭執事のアルヴァー様、そして侍女長のロニア様の五人が揃っていた。



「失礼いたします。姫様がお休みになられましたので、ご報告にあがりました」

「ご苦労。早速だがモニカの目から見てステラ様の様子をどう感じる?」

「お休みになられるまでの間に少しお話をさせて頂きましたが、本当に成人した女性と会話をしているような、お姿はお小さいのに不思議な感覚です。毒を受けてから前世の記憶がはっきりとお戻りになられたように思います」

「そうか⋯⋯」



 何か考えるようにそう呟かれた。



「まぁ前世の記憶の件は取り敢えず、此処にいる我々だけの内に秘めておくように。陛下には折を見て私からご説明するとして⋯⋯」

「アル待って、丁度八日後にリュス様とのお茶会があるわ。その時にでも伝えましょう」

「そういえば予定があったね、それなら、そのお茶会を報告の場とした方が話が早いな。そう提案を出しておこう。オリーはそれでいいかな?」

「そうね。お茶会と称した報告会にしましょう」



 お二人でお茶会の内容を決めていた。

 ちなみに、リュス様というのは姫様のお母様で王妃殿下のリュシエンヌ様のこと。


 話を戻して、問題は此処での滞在についての擦り合わせが必要なのだ。

 私としては姫様には心煩わされること無く穏やかに暮らしていただきたいのだけれど⋯⋯。

 此処ではそうも言っていられないのと、姫様自身の為にはきつくても多方面の教育を受けていただきたい、今後の為にも。

 そう考えていると辺境伯夫人から声をかけられた。



「モニカ」

「はい、何でございましょう」

「貴女には王宮と同じくステラ付き筆頭侍女として付いてもらいます。一番あの子の近くにいて、それでいて今回の件を身近で見ているからよ。一人では支障があるので、こちらからは後二人付けます。協力してあの子の事をお願するわね」

 


 勿論他の者に任せるなんて頷けるわけでも無かったので、辺境伯夫人の言葉に否応無く承知した。



「はい、この命に代えましても誠心誠意お仕えいたします」

「モニカ、命は大事にしないといけませんよ。貴女に何かあればあの子が悲しむわ」



 その言葉にはっとした。



「はい、気を付けます」

「明日にでも二人を紹介するわね」

「よろしくお願い致します」



 姫様付きの侍女の件は決まったとして、まだまだ決めなければいけないことが沢山ある。

 ただ、姫様はどのくらいの期間をこの辺境伯低で暮らすのか⋯⋯。



「あの、ひとつ質問をよろしいでしょうか?」

「何かな?」

「姫様はこちらにどの程度の期間をお過ごしになられるのでしょうか?」

「陛下との話では、十三歳の社交界デビューまでの間という事になっているな。まぁ、周囲の状況によって早まったりすることもあるかもしれないが、最長その歳までと決めている」



 私はそんなに長い期間を此処で暮らすことにとても驚いた。



「理由は様々ある、が全てを話すわけにはいかない。言えるのは、今回何故毒を盛られたか、その背後にいる者の存在が小さいものではないという事だ」



 そう、その背後にいる者に向けてぞっとするような冷たい声色で話す辺境伯に私は寒気を覚えた。

 その様子を感じてか、直ぐに霧散し和らいだ雰囲気に戻った。



「なので、その年になるまでの期間は此処で我々の持てる技術をステラ様にお教えする。自身を守る事は勿論周りを守る力も持っているに越したことはない」

「それだけではなく、王女としての教育も(わたくし)自ら教える予定よ」



 それを聞いて私は安堵と一抹の不安を覚えた⋯⋯。

 主に辺境伯家の技術、それは剣術、魔法、戦術と様々な技術と中々厳しい訓練で有名だからである。



「身を守る云々の部分ではモニカ、貴女にも一緒に受けてもらうからそのつもりでいてね」



 と何故かとてもいい笑顔でオリーヴィア様がおっしゃった。


 

 ――私⋯⋯生きてられるかな。


 

 けれど、今回の事で無力な自分のまま無力でいることも嫌だったので、その申し出を有り難く受けた。



「はい、よろしくお願い致します!」



 姫様を守るためにも身を引き締めなければ!



「教育はステラ様のご体調が回復次第ということになるから、それまでにスケジュールを組む、イクセル手配を頼む」

「心得ました」

「さて、此処でのステラ様の立ち位置だが⋯⋯」



 流石に王女が此処に居るのには長すぎる期間を過ごされることとなるので、王女だとバレるとよくない噂と醜聞が流れかねない。

 そこは私も懸念している部分なので、静かに話を聞く。



「王女とバレるのはよくない。ご年齢がまだ五歳なのでお披露目も済んでないからな。魔道具で御髪と王家の瞳を隠し、私達の養女として過ごしていただく。これは陛下も了承済みの事だ」

「そうねぇ、あの髪色と瞳の組合せは王家の血筋にしか生まれないからそこをアルと同じにすれば外見からはバレることはないでしょうね」

「そうだな」



 なるほど、魔道具で隠せば王家の者とは思わないだろう。後は⋯⋯。



「お名前はどうされるのでしょう?」

「それなら考えてあるわ!」



 オリーヴィア様が華やいだ声をあげた。



「アリシアでどう? アリシア・シベリウス」

「いいね! 本当に娘が出来たらこんな気持ちになるのかな。嬉しいな!」

「ふふふ、此処にいる間はめいいっぱい可愛がるわよ!」

「陛下には悪いが私も溺愛しそうだなぁ」



 全く悪いと思ってなさそうな雰囲気で辺境伯夫妻が盛り上がる。

 一気に緊張感が消えてしまったように感じるが、いつまでも緊迫した日常を送るよりもいい。



「さて、明日ステラ様の体調が良ければ今後の事について話をしよう。ブルーノ医師(せんせい)が言っていたように次の診察まではお部屋で安静に過ごしていただく」

「モニカ、明日の朝に二人の侍女を先ず貴女に引き合わせるのでそのつもりでいてね」

「畏まりました」

 


 これからの事が大体決まった後、明日の予定に姫様への報告、侍女の顔合わせ等が組まれ、私は部屋を下がった。

 姫様のお部屋へ向かいながら、姫様が毒を受けてから今日まで一週間。

 緊迫した毎日と目を覚まされない事で気が気ではなく、心に余裕がない日々だったが、お目覚めになられて安堵し、これからの事が決まり、ようやく一息付けたように思う。

 だけど、これまでよりも一層気を引き締めねば⋯⋯

 姫様をあのようなめに遇わせることのないよう、精進しなければ、と私は強く決意を新たにした。

 

お読みいただき、またブクマもありがとうございます。

次話もよろしくお願い致します。

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