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目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第1章  大切なもの
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59 先生は厳しいです


 どういう班分けがなされたかは謎だけれど、これ考えたのは誰なのかしら?

 凄く凄く嫌な予感がするのだけれど。

 私達の事を知ってるカリーナ達は心配そうに見ていたけれど、まぁ何故彼がいるかは分からないけれど、サムエルがいるなら大丈夫? なのかな⋯⋯。

 取り敢えず、お兄様と一緒にサムエルの所へ向かう。

 私達新しい班のメンバー、私の知らないのはエミーリオだけなのだけど、誰かに似ている、ていうか、クリス様に似ている。



「集まったな。今日からこのメンバーで訓練を行う。私もだが、初対面もいるだろうし、先に自己紹介をしておこう。私はサムエル、昨日からこの騎士団に移籍したので、此処では新参だが、それなりに経験はあるので分からないことは遠慮せず何でも聞いてくれていい。よろしく。では、年長者から挨拶していこうか」

「はい。私はエミーリオ。見ての通り、エルフとのクオータです。よろしくお願いします」

「俺はラルフ。よろしくお願いします」



 あれ、ちゃんと挨拶できてる?



「僕はレオナルドです。よろしくお願いします」



 お兄様はちょっとラルフを警戒しているような⋯⋯。



(わたくし)はアリシアです。皆様の足を引っ張らないよう頑張りますので、よろしくお願いします」



 何故かサムエルが笑いを堪えている。

 私がエステルだって知っているのね。

 それはそうか、お祖父様の采配なら知っていて当然ね。



「さて、自己紹介も済んだところで、訓練の内容だが、今回この組み合わせになったのは、より自己の意識を高める為だ。いいな!」

「「「はい!」」」



 どうなるかは分からないけれど、私は私で訓練するだけ。



「まずは、エミーリオとアリシア様、レオナルド様とラルフの組になり、エミーリオとレオナルド様が相手に剣の素振りを教えてみよう。教えることによって自身の勉強にもなるし、どこが悪いかを客観的に見つめ直す事が出来る。教わる側もどんどん質問してみよう! まずは一時間だ!」



 レオンお兄様は大丈夫かしら⋯⋯。

 相手がラルフなんて、喧嘩にならなければ良いけれど。

 私はお兄様の心配をしつつも、エミーリオと組む。



「アリシア様、よろしくお願い致します」

「こちらこそ、よろしくお願い致しますね」

「アリシア様は実際持つのは初めてですよね?」

「いや、アリシア様は持ったことある」



 サムエルが近づいてきてそう答えた。



「そうなのですね。では構えてみましょう」

「はい」



 私は彼に渡された訓練用の剣を手に持ち、構える。

 そして素振りを始める。

 サムエルは横手から見ているだけで、エミーリオが指摘し、直してくれる。

 暫くそうしていると、後ろからラルフの怒鳴り声が聞こえた。

 私は心の中でやっぱり⋯⋯と毒づいてしまった。

 溜め息を出さなかっただけ誉めて欲しい。

 お兄様は呆れながらも、根気よく教えているけれど、ダメみたい。

 そんな時「ガキに教わるなんて最悪だ!」

 ⋯⋯今なんて言ったのかしら!?

 お兄様に暴言を吐いた。

 お兄様は気にしていらっしゃらないみたいだけど、私が気にするわ!

 思わず彼らの方を向いたけれど、サムエルに止められた。

 サムエルが彼らに近づき、ラルフの頭に拳を叩き込む。

 ガツッ!

 物凄く痛そうな音がしたけど⋯⋯頭蓋骨割れてないよね?

 自業自得たけど流石にちょっと頭蓋骨骨折していないかが心配になる。



「ラルフ、騎士団の規律は知っているか? 訓練開始前に説明は受けてるはずなんだが?」

「ッ⋯⋯! 受けた! けど、なんで俺より下のガキに教えられないといけないんだ!?」



 そこから!?

 なんでって、お兄様の方が早くに訓練を受けていて、どちらかと言うと先輩に当たるのに、そんなことも分からないの?

 呆れてしまうわ⋯⋯。

 それよりも、お兄様に対してそんな言い方!



「あのな、此処だけに限らず、年齢の上下など関係ない。レオナルド様が先に訓練を受けているからお前が年上だろうが、後輩になる。まして、レオナルド様はこの辺境領、領主のご子息だ。訓練を一緒に受かられているが、実際騎士団は領主に支える身。そのご家族に対して流石に口が過ぎるぞ」

「意味が分かんない! 貴族なんて威張ってるだけじゃないか! 敬う必要ないだろ! 俺らみたいなの助けてくれないじゃないか! それに、まだガキじゃん!」



 過去に何かあったのかしら?

 だとしても、騎士団の訓練を受けているからはきちんと規律は守らないといけないし、ましてそんな心境で支えるなんて無理でしょう。

 このまま入ったとしても、必ず命に背く。

 矯正するなら今しかないと思うのだけれど、サムエルはどうするつもりかしら?



「過去に何があったかは知らんが、貴族が全員同じだと思うな。その方がどのようなお人かも知りもしないで、憶測だけで批判するのは馬鹿と同じだ。騎士団の規律を学んだと言うならまずきちんと守れ! 守れもしないで人の批判中傷だけをするのは騎士団の行うことじゃない。それが分からないなら今すぐ辞めろ」

「うるさい!」



 ラルフは捨て台詞を吐いて走り去っていた。

 何なの一体。



「先生、よろしいのですか? 一応騎士団で矯正させるのに彼の養父母から依頼を受けたと聞いてるんですけど」

「構いませんよ。あの者に関しては、団長から好きにして良いと言われています。それより、あれだけ言われて何も言い返しませんでしたね。アリシア様が暴言を吐かれたときにはかなりお怒りだったとお聞きしましたが?」

「僕自身は別に何を言われようと何とも思わないよ。だけど、シアは可愛い妹だからね。妹だけじゃなく、家族を侮辱されたら流石に僕も怒るよ」

「⋯⋯あちらでアリシア様の目が据わっていますが? アリシア様もレオナルド様と同じ気持ちなのでしょう」

「えっ、あ、シア! 僕は何とも思ってないから大丈夫だよ?」

「お兄様、(わたくし)もお兄様達が侮辱されたら怒りますよ」

「シアが僕のために怒ってくれるなんて! 可愛いなぁ」



 可愛いは関係ないと思います!

 サムエルが呆れているわ!



「お兄様、先生が呆れているからお止めください。それよりも、本当によろしいのですか?」

「えぇ、これで頭が冷えるとも思いませんが、取り敢えずは様子見ですね。さて、ラルフの件は置いといて、続きです。ラルフがいなくなったので、レオナルド様もエミーリオと一緒にアリシア様に基本を教えて下さい」

「お兄様、よろしくお願いしますわ」



 私はエミーリオとお兄様に教えて貰いながら基本の動作を覚える。

 時々サムエルが口を挟むけれど、二人共教え方が上手なのか分かりやすい。

 途中アクシデントがあったけれど、一時間続けると教えて貰い、小休憩を挟む。

 次は実際剣を合わせてみる。

 先ずはエミーリオとレオンお兄様のを見学する。

 エミーリオがどのくらいから訓練をしているかは知らないけれど、レオンお兄様との打ち合いは激しかった。

 体格差はあるものの、レオンお兄様も負けていない。

 暫くしてお兄様が打ち合いに負け、終了となる。



「さて二人共、今打ち合いしてみてどう思ったか感想を言ってみようか。先ずはエミーリオから」

「はい。レオン様の攻撃力はまだ弱いですが、技術があると思います。背丈が違いますので、私の攻撃を上手くすり抜けて下から反撃が来るので躱すのに苦労します。私の隙を突く事や、ご自分の弱い部分を逆に上手く利用している所が凄いと思います」

「なるほどな、よく見ている。レオナルド様はエミーリオをどう見ます?」

「リオは身のこなしが素早く、軽やかで掴み所がなくて攻撃を繰り出しても中々捉えることが出来ない。僕の技術が全然追い付かないですね。反撃してもまだ届かない。踏み込みが甘いと言われればそれまでだけど⋯⋯」

「なるほどな、二人共よく互いの事を見ているな。其々に良さがあり悪い点もある。レオナルド様はご自分の甘さを認識できていて良いと思いますよ。それは次の課題であり、技術向上にもなります。さて、アリシア様はお二人をどう見ましたか?」

(わたくし)、ですか?」

「遠慮せず素直に話して構いませんよ」



 サムエルはそう言うけど、話して良いのかな⋯⋯。

 お祖父様の所では私の事を知ってる人しかいないので、素直過ぎるくらい話してしまったけれど。

 まぁ興奮してたのもあるし。

 んー⋯⋯。



「エミーリオはそもそも力を抜いていましたよね? 本気のように見せかけていましたけれど。お兄様はそれを分かって、それが挑発かどうかは分かりませんが、力みすぎてエミーリオに届いていないように感じました。もう少し冷静に動けば届くのではないでしょうか?」

「流石アリシア様、よく見ていますね。エミーリオは何故わざと力を抜いた?」

「本気でいくと、やり過ぎる可能性があったからです。挑発目的ではないのですが⋯⋯」

「レオナルド様はどう感じましたか?」

「手を抜かれてるのが見て直ぐ分かった。流石に始めから手を抜かれると少し感情が乱され、力みすぎたのはあります。これは僕が未熟なせいですけどね」

「よく自身を見つめ直していますね。エミーリオ、相手を思っての事は良いが、手を抜いて相手がどう思うかを考えた方がいい。お前がアリシア様を相手にするなら手加減をしろと私も注意するが、レオナルド様相手なら手加減の必要はない。私が見たところ、二人に差程差はないからな」

「はい。申し訳ありません」

「さて、アリシア様ですが、エミーリオの攻撃を避けてみましょう。攻撃できたらしてもいいですよ」

「「えっ!?」」

「先生、流石にシアにはまだ早くないですか?」

「早くないですよ」



 お兄様にはお祖父様の所での訓練内容伝えてないものね。

 それは心配よね⋯⋯。

 私も心配なんですけどね。

 けど、危なかったら防護魔法で防げばいいのかな?

 そうおもいながら、ちらっとサムエルを見ると、頷いていたので、それならいいかな。



「お兄様、(わたくし)頑張りますわ!」

「⋯⋯無理はしないでね」

「はい! エミーリオ、よろしくお願いします」

「こちらが緊張するのですが、よろしくお願い致します」

 


 私とエミーリオが相対し、サムエルの合図で始まる。

 エミーリオは手加減しながらも的確に私に攻撃を仕掛けてくる。

 私は一呼吸し、攻撃を避ける。

 私はいくつもの攻撃を避け続けながら彼の動きを読む。

 幾つか隙を見つけ⋯⋯まだ避けることだけだったし、魔法で反撃は訓練したけれど、私は決意して反撃に出る。

 一閃振り下ろしてきた瞬間、懐に入り一撃を入れた!

 が、彼は素早く身を捻り、剣で受けられた!

 その衝撃が凄くて、思わず剣を落としてしまった⋯⋯。

 衝撃が凄くて手が痛くてその場に踞ってしまった。

 竹刀の感覚とは違い、とても痛い。



「シア、大丈夫!? 怪我はない?」

「⋯⋯大丈夫です。衝撃が凄くて手が、痛いだけです」

「アリシア様は度胸がありますね。手を見せてください」



 私は言われた通り、彼に手を見せる。

 私の手が折れてないかを見てくれる。

 折れてたら泣いてると思う⋯⋯。

 サムエルは「骨に異常はないので、暫くすれば感覚が戻るでしょう」と言い、私の手を離した。



「エミーリオ、アリシア様と対してどうだった?」

「アリシア様はまだお小さいのと、私の動きをよく見ていて、捉えるのが難しいです。アリシア様は魔法を扱えると聞いてますので、これが魔法で反撃されたら直ぐ負けていたかと思いますし、最後の一撃も鋭かったです」

「レオナルド様はご覧になっていかがですか?」

「シアは相手の動きをよく見て動いているからか避けるのが上手いと思う。というか、避けるのが早く感じるかな。リオと比べてうんと小さいから小回り利くよね、相手を翻弄してる感じがした。けど、リオはリオでシアが女の子だからか、気にしすぎてて攻撃にムラがあって中途半端だと思う」

「二人共によく分かっているね。エミーリオをは手加減の仕方が悪いな。難しいのもあるだろう。レオナルド様が言うようにムラがある。で、レオナルド様、アリシア様の避けるのが早いと言うことですが、アリシア様がどこを見ているかは解りましたか?」



 サムエルは私が何処を見て避けているか流石に分かっているよう、訓練の時のを参考に避けているから分かるだろうけど。



「相手の動きだけではないですよね? 視線は上だったけど⋯⋯もしかして⋯⋯目、とか?」

「正解です。エミーリオの目を見て避けていました」



 お兄様もきちんと正解に辿り着くなんて、やっぱりお兄様も凄いわ。



「アリシア様、手はいかがですか?」

「ほぼ痺れは取れました」

「では、残り時間アリシア様は素振りを、レオナルド様とエミーリオをは再度対戦をしよう」



 サムエルの指示で残り時間、私は教えて貰った素振りをする。

 時々サムエルに少し型を直される。

 が、彼方に居たときみたくかなり厳しく指導されるので、私としては成長できるので嬉しい。

 ただ、物凄く痛いけれど⋯⋯。


 夢中で行っていると、終了時間となったので、私達は集まって、終わりの挨拶をする。

 次の訓練日までの課題を言い渡されて解散となった。

 お兄様と一緒にクラースとエドガーと合流し、邸に戻る。

 ラルフの事、お養父様きにも報告しないと⋯⋯。

 邸に戻ると部屋に戻り、汗を流してマッサージを受ける。

 このお陰で筋肉痛が酷くならずに済むから本当にありがたい。

 その後、暫くして食堂へ向かう。

 いっぱい動いたから、お腹空いたわ⋯⋯。


 ラルフの事は気になるけれど、空腹には勝てないのです。

 

ご覧いただき、ありがとうございます。

そして、ブクマ&評価をありがとうございます。

とても嬉しく、励みになります!

次話もお読みいただければとても嬉しいです。

よろしくお願い致します。

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