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目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第1章  大切なもの
53/273

53 問題児


 今日は朝から騎士団で訓練の日。

 お兄様と一緒に訓練場へ向かうのだけれど、昨日の嬉しい報告で、私の足取りはいつも以上に軽い。

 お兄様はちょっと呆れた感じだったけど「僕にとっては従弟妹になるから楽しみだよ」と、お兄様も実は楽しみにしているみたい。


 さて、訓練場に着くと、前回と同じく朝は魔法の訓練で、リュシアン先生とクレール先生について今日の訓練の始まり。

 前回は組になってお互い課題を出したけれど、今日は先生が皆に課題を出しながら、座学もするようで、筆記用具が用意されていた。

 私達は先生の課題をひとつずつ見てもらい、魔法の仕組みや基礎を紙に書き込んでいく。

 課題をしながらの説明って分かりやすいね。

 だけど、やっぱり暑いわ⋯⋯。

 日焼け止め、早く出来て欲しいなぁ。

 頭の片隅でそんな事を思っていた。


 午前中の訓練が終わると、食堂へ移動する。

 そして、実は訓練中に気になったことがあったので、お兄様に聞いてみる。



「お兄様、クレール先生ってクラースと兄弟なのかしら?」

「急にどうしたの?」

「何処と無く似てる気がするのですが⋯⋯」

「シアは知らなかったの? あの二人は双子だよ」

「えっ? そうなのですか?」

「クラースから聞いてないの?」

「何も⋯⋯」



 兄弟かなぁとは思ったけれど、まさか双子だったとは⋯⋯。

 クラースとは性格が違いそうだし、似てないし、二卵性かな。

 食事が終わり、雑談をして午後からの訓練に赴く。

 カリーナがいたので、私はお兄様と分かれてそちらに向かった。

 彼女も私に気付いたのでにっこりと笑って挨拶してくる。



「こんにちは、アリシア様。今日も頑張りましょうね!」

「ごきげんよう、カリーナ。今日もよろしくお願いしますね」



 私とカリーナは同性と言うこともあって、先生が来るまで一緒に話をしながら待つ。

 そこにルイとヴィムがやって来た。



「こんにちは。今日もよろしくお願いします」

「こ、こんにちは。よろしくお願いします」

「ごきげんよう。こちらこそよろしくお願いします」

「こんにちは、今日も頑張ろうね!」



 私達は各々挨拶をして一緒に待っていると、ラルフがやってきた。

 今日もつんけんしてる感じで、こっちを睨み付けている。

 ラルフが来てから空気が重いわね。

 だけど、無視するわけにもいかない。



「ごきげんよう、今日もよろしくお願いします」



 私は挨拶をしたのだけれど、凄い睨まれた挙げ句の無視。

 反抗期ですか?

 どこの子供ですか?

 ついつい溜め息が出ちゃいそう。



「なにあれ! アリシア様が挨拶してるのに!」

「別に構わないわ。此所で規律を守らなければ、私でも出入りさせて貰えなくなりますから、それに、挨拶は大事です。相手が無視したとしても、此方がきちんとしていればいいのよ」

「考え方が五歳とは思えないです⋯⋯」

(わたくし)達の教育は厳しいの。それにこの間の件ではお養父様に報告をしなかったので叱られました」

「えっ? あんなこと言われたのに何も言わなかったんですか?」

「子供なのは事実だし、頑張って実力で圧倒したら考えも改めるかなと思って、大事にしたくなくて何も言わなかったの。それが間違いだったわ」



 何だか皆感心してるけど、お養父様、怖かったのよ⋯⋯ほんとに。

 感心する所じゃないからね。



「待たせたね」

「「「今日もよろしくお願いします」」」



 私達は先生に声を揃えて挨拶をした。

 ラルフはぶすっとしていたけれど。

 ほんとに何なの⋯⋯。



「二日休息日を挟んだわけだが、自主練はしたかな?」

「「「はい!」」」

「よし! では本日は前半後半で内容を変える。前半は引き続き体力作りを重点に、少し休憩を挟み後半は実技に入っていく」



 なるほど、クラースの言う通りにユーグ先生は顔に似合わず厳しく、尚且つ同時進行するのね。

 私達は前半、先生の言った通り体力作りをし、少し休憩を挟む。

 休憩中にきちんと水分も補給するのを忘れずに。

 その後、初めての実技にはいる。

 今日は武器の種類の説明を受け、実際触ってみる。

 長剣や槍等は私にはまだ重たいので、短剣や弓を触らせて貰う。

 実際に触ると重みが増す。

 これで人を守ることも、殺すことも出来る。

 全ては使い方次第。

 先生の説明をしっかり聞いたら、今度は刃を潰した剣を渡される。

 各々に体格に合ったものだ。

 私も子供用の軽めの物を渡された。

 話を聞けば、お兄様達も使っていたものらしい。

 まずは、これで素振りの練習をする。

 先生の指示にしたがって剣を振るう。

 思っていたより重いし、コツがいる。

 竹刀の感覚と全然違う⋯⋯。

 “記憶”では、剣道と弓道をしていたので、感覚が思い起こされるがそれとは全く違う。

 これは毎日の鍛練は絶対欠かせないわ。

 今日は素振りをしながら、重心がぶれていないか、力のいれ具合を注意しながら進めていく。

 これが中々辛い。

 小休憩を挟みながらも集中して訓練をしていると、時間もあっという間に過ぎていき、本日の訓練は終了となった。


 先生も毎日の鍛練が必要だと私達に言い、各々の問題点を指摘し、次回は其処を直すように助言をくれた。

 私は次回三日後なので、課題を言い渡された。

 他の皆は毎日午後から訓練をするようで、置いていかれないように頑張らなきゃ!


 私達は挨拶をしてお開きとなった。



 お兄様が、私の所まで迎えに来てくれたので、一緒に騎士団の訓練場を後にした。

 訓練場を出たところでラルフが待ち構えていた。

 こちらを睨んでいるけど、一体何のようなのか?

 


「貴族のお嬢が遊び半分で騎士団になんて来るんじゃねぇ! 見てるだけでムカムカする! もう来るな!」



 そんな捨て台詞を吐いて走り去っていった⋯⋯。

 ほんと、一体何なの?



「あの野郎⋯⋯」



 隣から冷たい殺気を感じ視線を動かせばお兄様が怒っていて今にもラルフを攻撃しそうな勢いだ。



「落ち着いてください!」



 私は慌ててお兄様を制す。


 

「シア、あいつがラルフか?」

「そうですけど、相手にしなくて良いですよ。だから落ち着いてくださいませ」

「シアは遊び半分なんかで訓練してない! 早朝から訓練してるの知ってるし、人一倍頑張ってるのも知ってる! それを好き勝手にほざきやがって!」

「お、お兄様?! お言葉が崩れすぎです! (わたくし)は気にしておりません!」



 お兄様が怒ってしまったわ!

 どうしよう⋯⋯。

 そこへ騒ぎを聞き付けたのか、カリーナともしかしてカリーナのお父様らしき騎士がこちらに走ってきた。



「如何なさいましたか? 何か問題が?」

「アリシア様! 何かあったのですか?」

「カリーナ、と⋯⋯もしかして、カリーナのお父様?」

「はっ、カリーナの父でリンデルと申します。以後お見知りおきを」

「こちらこそ、街では助けていただき、ありがとうございました」

「いえ、駆け付けるのが遅くなり申し訳ありませんでした。それよりも、何があったのですか?」

「それが⋯⋯」

「ラルフがシアを侮辱したんだよ。僕の可愛いシアに向かって!」

「お兄様、それではただの私情です! ⋯⋯ラルフが(わたくし)に遊び半分で騎士団に来るなと言ったのです。それを聞いたお兄様が怒ってしまって⋯⋯ラルフはそのままに走り去りました」

「なるほど、そのようなことがあったのですね。取りあえず団長に報告いたします」

「お願いします。お兄様、取りあえず邸に戻りましょう?」

「シアはもう少し怒ってもいいんだよ」

「別に怒るほどの事でもないわ。(わたくし)にとっては(わたくし)の事をちゃんと見てくれているお兄様達がいるので、それだけで十分なのです」

「あぁシア ほんとに可愛い自慢の妹だよ!」



 お兄様に抱きつかれたけど、苦しい!

 背中をバシバシ叩いたけれどびくともしなくて、リンデルに引き剥がして貰った。



「ごめんね、シア。つい嬉しくて」

「手加減してくださいませ、お兄様。窒息死してしまいます。リンデルもありがとう」

「いえ、レオナルド様の妹愛が凄まじいですね」

「当たり前だよ!」



 それを聞いた私達は苦笑した。

 お兄様のなんとか怒りも収まり、クラースとエドガーも合流したので、私達は帰途についた。


 邸に帰った私達は、汗を流して皆で夕食を取る。

 夕食後、団欒の間に移動してから、お兄様が先程の出来事をお養父様に報告をした。



「はぁ。そんな事をシアに言ったのか?」

「はい、僕も隣で聞いていましたから」

「あらあら、(わたくし)達の可愛いシアにそーんなことを言うなんてね。何も知らないのによく言えたわね。呆れてしまうわ」

「全くだな。シアは頑張っているのにな。そんな調子だと、二日後の訓練時には悪化させそうだな」

(わたくし)は全く気にしておりませんわ」

「シアが気にしなくても、親として娘が侮辱されて黙ってはいられないよ?」

「いえ、お養父様は此所の領主なので、黙っていてくださいませ。これが一般家庭の娘だったら黙ってなくても良いと思いますが⋯⋯。お養父様達が出てくるとよけいに悪化させますよ」

「はぁ⋯⋯まぁそうだろうな。だか、何もないのは無理だ。騎士団内で処理するようにハルドに伝えておこう」

「お願い致します」



 取りあえず、落ち着いたので良かった。

 お義父様達まで出てくると絶対に酷くなるのは分かるから⋯⋯。

 どうにかならないかしら。



「そういえば、リュシアンとクレールからの報告だが、今年の新人は筋が良いと誉めてたぞ。レオンとシアに関しては論外だと言っていたがな⋯⋯」

「父上、その論外ってどういう意味でしょうか?」

「規格外だと言うことだ。お前達は格が違うんだよ」

「僕は普通だと思うんだけどなぁ」

「レオン、普通の意味が分かっているか? 四属性も持っていて普通ではないよ」

「アレクも三歳になれば少しずつ慣れさせないとね」



 アレクはまだ二歳になったばかりなので、一緒にお食事したりはしないけれど、三歳になれば少しずつ勉強を始める。

 


「明日は二人とも座学だな」

「はい、そうです」

「今日はゆっくり休んで明日に備えなさい」

「「はい、おやすみなさい」」



 私達は就寝の挨拶をして部屋へ戻った。


 寝る前に今日の出来事を振り返る。

 結局今日も問題起こったよね。

 気にしてないのは確かだけど、面倒臭いのは否めない。

 お兄様の怒りを鎮める方が大変だったわ。

 お養父様が言うように、今日は早く寝て明日に備えましょう。


 

ご覧いただき、ありがとうございます。

ブクマをありがとうございます。

とても嬉しいです!

次話もお読みいただければと思いますので、よろしくお願い致します。

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