52 嬉しいお知らせ
今日も朝からクラースの訓練を受け、お昼までは昨日と同じように過ごした。
体を動かすのは楽しい。
その後また少し寝てしまったけれど⋯⋯。
今日はお昼からお兄様とお庭を散策する予定。
昨日のお茶会の時に約束をしたので、とても楽しみにしている。
兄妹だけで一緒に過ごすのってかなり久しぶりな気がする。
お外に出ると今日は日差しが強く、大分暑さも増してきた。
季節は夏。
日焼け止めが欲しくなる季節だ。
今はまだ良いとしても、お手入れは早いほうがいいのよね。
――作ろうかな。
そんな事を考えながらお庭に行くと、お兄様が既に待っていらっしゃった。
いつも思うのだけど、私も早く来てるのに、それ以上に皆早いのよね。
「お待たせいたしました。お兄様お早いですわね」
「シアを待たせるなんて出来ないからね」
お兄様、モテそうね。
そんな事を考えていると、手をとられた。
「シア、行こうか。この間より違う花が沢山咲いてるんだよ」
「そうなのですね! 楽しみです」
私はお兄様に連れられて庭を案内して貰う。
色とりどりの花が綺麗に咲き誇る。
花の種類も彼方とあまり変わらず知っている花が沢山咲いていて、マリーゴールドやペンタス、ルドベキア、ジニア等沢山の種類がある。
温室にはプルメリアも咲いていた。
ちっさくて花の形も可愛いのよね。
色も白ピンク黄色と色んな色が咲いている。
「シア楽しそうだね」
「はい! 色んな花が咲いていて可愛いです。癒されます」
「シアこっちに来て、まだ見頃の花があるから」
温室の更に奥、温室を出た所に一面に薔薇が咲いていた⋯⋯。
絵に描いたような、凄く素敵な光景。
「ここは父上が母上に内緒で造り、母上の誕生日に贈ったんだって。母上はよく疲れたらあそこのガボゼでお茶してるんだよ。母上と父上のお気に入りの場所で僕達もたまに此処に来るんだ。シアに見せたかったんだよ。どう?」
「凄いです⋯⋯此所でお茶なんてとても素敵ですね。お養父様ってお養母様に猛アタックされて陥落したってお祖母様にお聞きましたけど、意外にお養父様もお養母様にベタ惚れなのですか?」
「シア、その言い方⋯⋯」
「あっ! つい⋯⋯ごめんなさい」
「シアの意外な面を発見して嬉しいよ。シアの言う通り、父上は母上一筋だし、凄い仲良しだよね」
「家族が仲良いのは良い事ですし、素敵です」
「シアは、やっぱり寂しい?」
私の言葉にレオンお兄様は私を気遣うようにそっと聞いてきた。
「⋯⋯そうですね。寂しいですけれど、お手紙でやり取りしていますし、お父様達の気持ちは伝わってますので、大丈夫ですよ。それに、お養父様達にもとても良くしていただいてますし、レオンお兄様もいますので、そこまで寂しくありません。あっ、それに、マティお兄様からお手紙が届きましたよ」
「僕にも届いたよ! 兄上は元気みたいだし、勉強も楽しくしてるようだから安心だね。まぁ兄上の事だから難なくこなしているだろうけど。というか、そこより女子が面倒臭いとぼやいていたよ」
「確かに、マティお兄様ってお養父様に似てとても格好いいですものね」
「きっと兄上の事だから冷たくあしらってそうだけどね」
「何となく、想像がつきます」
私達はお兄様の事で盛り上がり、気付けば結構な時間を此処で話していたみたい。
レオンお兄様が「そろそろ戻ろうか」と言ったので、邸に戻ってきた。
夕食までまだ時間があり、昼間に考えていた、日焼け止めの事でお養母様と相談したかったので、マリーに予定を聞いてきて貰うと、会いに行っても良いという事で、早速お養母様の所へ向かった。
お部屋の中にはお養父様も一緒にいらっしゃった。
お兄様とお話ししていた事を思い出して、つい顔が緩んだところに、お養母様から指摘された。
「シア? 人の顔見て笑うのは駄目よ」
「ごめんなさい、お養母様。お兄様とお話ししていた事を、お二人を見ていたら思い出してしまって⋯⋯」
「何を話していたのかしら?」
「お養父様とお養母様はとても素敵ですっていうお話しです」
「何よそれ⋯⋯それよりもどうしたの?」
「お養母様にお聞きしたいことがありまして⋯⋯」
「内緒のお話しね」
そういうと、お養母様の指示で侍女達が下がる。
「それで、何かしら?」
「そんな大したことではないのですけど、此処に日焼け止めとかあるのでしょうか?」
「ひやけどめ? って何かしら?」
存在しないのね。
これは、作るしかないわ!
紫外線は女性の天敵、必要不可欠よ!
「日焼け止めというのは、紫外線からお肌を守るものです。強い陽射しを浴びすぎると、お肌にシミが増えるので、帽子や日傘を使用しても勿論良いですけど、日焼け止めを塗ることで更なる対策が出来るのです!」
「シア!! とても素晴らしいわ! それはどうやって作るのかしら! アル、これは事業で取り組めないかしら? 絶対世の女性陣に売れるわよ! それに、女性騎士には嬉しいものよね! さぁ、教えて頂戴!」
お養母様の勢いが増した⋯⋯。
その材料を作るのも時間かかりそうなんだけど、まぁそこはお養母様達の力の見せ所かしら。
取りあえず、此所でも作れそうな作り方を事細かに書き出して、お養母様に渡そうと⋯⋯だけど⋯⋯。
「シア?」
私が渡そうとする途中で手を止めたので、お養母様が不思議に思ったようだけど、私は思考に耽っていた。
何を考えているかと言うと、日焼け止めを作るより、魔道具で作れないかと。
陽光を遮断する魔道具⋯⋯。
だめね、一人で考えても分からないわ。
「この紙には日焼け止めの作り方を書いたのですけれど、魔道具で作れないのかなって思いまして⋯⋯」
「魔道具でか⋯⋯、日焼けをするのは世の女性達は毎年悩みの種だからな。ご婦人方は大体は傘をさしているが⋯⋯その紫外線を遮断する魔道具か、なるほどな」
「お養父様、作れそうですか?」
「⋯⋯いけるかもしれない、そしてこれは確実に売れるな」
「本当ですか!」
「シアの発想は凄いな」
「あと、女性はお化粧をするでしょう? 日焼けを防止しながら水魔法でこう、涼しく体感させれるようにすれば、汗でお化粧が取れる心配をしなくて済むかなって思うのですが、い如何ですか?」
「あぁ、それはいいな。それは簡単にできそうだな。すでにそういった魔道具はあるから、それに日焼け防止効果を入れればいけるかもしるない。考えてみよう」
「お養父様、よろしくお願い致します」
「任せなさい」
魔道具で出来そうならそっちでもいいかなって思ったけど、お値段的にどうなんだろう?
お養母様に渡した物も作ってもらって、価格が安ければ領民向けにもなるかしら。
「お養母様に渡した作り方ですが⋯⋯」
「こちらも作ろう。シアが考えている通りだよ」
「⋯⋯お養父様」
「別に心は読んではいない。シアならそう考えるだろう思ったのだ。違うか?」
「違わないです」
作り方を渡したものをお二人が読んだら、お養母様達からの質問に答えて、お養母様達が事細かに書き出していく。
私への質問が終われば、お養父様と相談し始めたので、後はお任せして私は部屋を後にした。
部屋へ戻ってからは何時もながらの読書に没頭した。
「やっほー! 遊びに来たよ!」
「っ!?」
吃驚した!
普通に出てきたくれないかしら。
心臓に悪いわ。
「エストレヤ、急に吃驚したわ⋯⋯」
「ごめんねー。何してるの?」
「魔国の言葉を勉強していたの」
「シアは勉強熱心だね」
「そうかな? ところで、今日はどうしたの?」
「そうそう! シアに朗報だよ! ここ数日の内に産まれると思うよ」
――産まれる⋯⋯? 産まれる!? それって!
「えっ! それ本当に!?」
「もちろん! 僕は嘘はつかないよ」
「教えてくれてありがとう!」
「シアの喜んだ顔見たかったからねー」
わぁ! 早く会いたいなぁ。会えるかなぁ。
会えないかもしれないけど、先ずは無事に産まれてくれると良いな。
「あっ、僕そろそろ行くねー!」
「えっ、もう?」
「うん、またね!」
「エストレヤ、ありがとう!」
赤ちゃん。嬉しいなぁ。
お養母様とお養父様にも報告しといた方が良いかしら。
考えていると、モニカに「そろそろ夕食のお時間ですよ」と言われたので、食堂へ移動した。
私はきっと嬉しすぎて顔に出てたのか、お養父様達に「何かあったのかい?」と聞かれたけれど「後で教えますね」と先送りした。
団欒の間に移動してから、お茶を淹れてもらって、此処には事情を知る人だけとなった。
「先程、エストレヤが来まして、嬉しい報告を聞きました!」
「何だったのかな?」
「ここ数日の内に赤ちゃんが産まれるそうです!」
「そうか! それでシアは浮かれてたんだね」
「すみません。だけど、会えなくても嬉しくて、お母様も赤ちゃんも元気だとそれだけで幸せです」
「ふふ、シアったら。会ったら嬉しさが弾けそうね」
「弾けると思います! お養母様は会いに行かれるのですか?」
「会いに行くとしても、落ち着いてからね」
「赤ちゃんに会ったらどんな子か教えて下さいね」
「気が早いわね。勿論よ」
私は嬉しくて、気分が高揚していた。
明日の訓練も厳しくても、何言われても頑張れそう!
早く会いたいなぁ。
だけどまずは、無事に産まれてきますように⋯⋯。
ご覧いただき、ありがとうございます。
次話もお読みいただければ嬉しいです。
よろしくお願い致します。





