05 報告
「先ずは、貴女に毒を盛った不届き者は捕らえましたが、何者かに操られていたようで、尋問しても黒幕までの情報が挙がらずに全てを捕らえきれていないのが現状です」
「私に毒を盛ったのは誰なのでしょう?」
私はそれが知りたくて質問をしたが「それは⋯⋯」と言葉を濁す。
「⋯⋯もしかして、私の侍女ですか? モニカがここにいるのに、ヴィヴィの姿がありません。関係がありますか?」
私は、私が口にするものは毒に慣れた専属の毒見が必ず付くことは知っている。
それでも私に毒を盛ることが出来るのは近しいものしかいないと考えた。
モニカが側にいるのに彼女がいない。
そんな現状が私に暗い思考を促す。
「驚きました。本当に貴女は聡明ですね。ステラ様のお考えは正しいです。貴女に毒を盛ったのは王女付き侍女の一人、ヴィヴィ・アーネルです」
――やはり⋯⋯。
近しいものが自分に毒を盛るなんて、考えたくはないけど、これが現実。
何だろう、すごく悲しい。
「ヴィヴィは今どうしていますか? 何者かに操られていた、と言うことは私に毒を盛ったのは彼女の意思ではないのでしょう?」
「呪術は解きましたが、罪がないわけではありません。今は宮廷の牢に捕らえてありますが命に別状はありませんよ」
「操られていただけなのに?」
「操られていたといっても、王族に手を出した時点で何の罪もないとは言えません。操られていた、は言い訳にはならないのです。それに、操られるとしても何かしら付け入る隙があったり邪な心があれば掛りやすい。まぁ理由によっては情状酌量の余地はありますが⋯⋯」
私は何とも言えない気持ちで俯いてしまった。
操られていただけで、ヴィヴィが私を害する気持ちが無いのであれば釈放してもいいと思う“前”の考え方と、“今”の私は背後にいる者を捕らえなければ終わらない、もしかしたら私ではなく本当の狙いは両親や、第一王子である兄かもしれない。
今後更に被害が及ぶかもしれないから彼女を釈放することは出来ない。
思考を巡らせていると、額に手が触れたので顔をあげれば、アル伯父様の手だった。
「ステラ様、大丈夫ですか? 少し熱が上がって来ましたね。気付かず申し訳ありません。続きは明日にしましょう」
私が思考に耽っていたのを落ち込んだのだろうと、そう見兼ねてアル伯父様は提案してきたので、私はその言葉に甘えることにした。
本当に身体が重いので、思ったより熱が上がってきたのかも。
「ありがとうございます、伯父様。お言葉に甘えて少し休みます」
そう答えると、伯父様と伯母様は「おやすみ」と一言言って部屋を後にした。
残ったモニカが気遣わしげに横になる準備をしてくれた。
私は横になりながら先程の事を考えていた。
ヴィヴィは誰に操られていたのか、犯人は誰が、何が狙いなのか。
今の話だけでは何も分からないことだらけで⋯⋯。
ちらりとモニカの顔を見ると何か言いたそうにこちらを見ていた。
「モニカ、何か言いたいことがあるなら遠慮せずに話して?」
「姫様、ヴィヴィの事ですがそのように思い悩まれる必要はありません。姫様付きの侍女になるには厳しく精査されます。勿論彼女の実家にもその時は問題は無かったので姫様付きとして仕えていました。ただ⋯⋯、最近彼女自身に問題があったように思うのです」
「問題?」
「はい。何と言っていいのか、姫様にお仕えしている時は特に何も無いように何時も通りでしたが、姫様のお部屋以外の仕事を担当している時、何といいますか、違和感? あぁ、申し訳ございません、言葉に表すのが難しくて⋯⋯」
「彼女の態度は問題ないけど纏う空気が奇怪しい、とそういうことかしら? 何か魔力を使ったり呪術を使用していたとか?」
「分かりかねますが、そう、雰囲気には違和感と言いますか、暗い、邪のような感じだと思います。ただ、姫様に毒を盛ったのは事実ですので、あの者に対して姫様が心を痛める必要はありません」
「何か心を病むような、もしくは⋯⋯」
考えていても中々纏まらない。
そろそろ限界かな、とても眠くなってきて⋯⋯。
「姫様、考えるのは一旦終わりにしましょう。お顔の色が悪うございます。気になるとは思いますが、お休みになってくださいませ」
モニカに心配されてので、素直に従って寝ることにした。
「そうね、少し寝るわ。ありがとう」
「おやすみなさいませ」
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