47 面会
翌日の午後。
昨日話をしていた、私が助けた女の子と母親の二人との面会の日。
あれからお養父様は領主館に赴き、直ぐに手筈を整え翌日の今日となった。
あちらは父親がおらず、母の手一つで育てているそうだ。
なので、急ではあるが彼女の休息日である今日となったのだった。
会うのは領主館の応接間の一室で面会することなり、面会時間に合わせて邸を出る。
今日はお養母様と一緒に領主館へ向かった。
応接間に着くと、侍従が扉を開けてくれる。
中にはあの時の子とその母親が立ってこちらが入ってくるのを待っていて、私達が入室すると頭を下げてきた。
「先日は娘を助けていただき、本当にありがとうございました」
そうお礼を言われた。
私は取りあえず、頭を上げるように伝えた。
自己紹介も未だだしね。
「先ずは座りましょう」
お養母様は親子に席を進め、私達も向かいに座った。
「紹介するわね。貴女が助けた母親のサーラとアンよ。二人共、この子は娘のアリシアよ」
「初めまして、アリシアです。この間は巻き込んでしまってごめんなさい。怪我はもう大丈夫かしら?」
「初めまして。ご挨拶が遅れて申し訳ありません。助けていただいたアンの母でサーラと申します。娘の傷は騎士団で治していただきましたので大丈夫です。ご心配をありがとうございます。ほら、アンもご挨拶して」
「アン⋯⋯と言います。助けていただき、ありがとうございます」
大分緊張されてるみたい。
まぁ、辺境伯爵夫人とその娘だし、緊張するよね⋯⋯。
「そのように緊張しなくても大丈夫よ?」
だけど、アンは緊張からなのか震えていた。
だけどそれを見て、私は何となく気がついた。
もしかして、私の事が怖いのかな⋯⋯。
「お養母様、私は挨拶が済みましたので、所用で一度退室してもよろしいでしょうか?」
所用⋯⋯、お手洗いに行きたいので退室したいです。
と⋯⋯。本当のところは違うのだけれど、お養母様にはきちんと通じたみたい。
「構わないわ。遅くならないようにね」
「はい。少し失礼いたしますね」
私は親子に向かって一礼して、退室した。
その足で、お養父様がいる執務室へ向かう。
お養父様も休息日なのだけど、気になっている事があり執務室にいると今朝話していた。
お養父様の執務室に着き、侍従がノックをし「お嬢様がお着きになられました」と、直ぐに「入れ」と返答があった。
「何かあったのか?」
「いえ、何かあったと言うことはないのですけど⋯⋯」
私は困った感じで話をした。
「彼女、私の事が怖いみたいなのです。怖がられても無理はないと思いますけど⋯⋯」
「まぁ、普通あの子位の年齢なら怖い、と思うだろうな。助けて貰ったとはいえ、目の前で剣を向けられ、あまつさえ首を切られた。それに賊を倒すためとはいえ、自分に矢が向かって来たらな⋯⋯」
私はなんとなくお養父様の言葉に引っかかりを覚えた。
「⋯⋯お養父様、私も一応子供ですわ」
「おや、子供という自覚があったのか?」
「もう! 笑わないでください。酷いです」
お養父様に茶化され、笑われた。
もう。子供という自覚はあまりないけど、ちゃんと子供だと分かっているのに⋯⋯。
「それは置いといて⋯⋯」
「お養父様、お顔が笑っていますわ⋯⋯。話を戻しますけど、彼女を怖がらせたのは私ですし、助けることに夢中でそこまで考えられませんでした」
「シア、そこは違う。勿論相手の事を考えるのは良いことだが、命の危機にある時にそこまでは普通考えない。シアのように助けることが優先だからだ。シアは怖がられて落ち込んでるのか?」
「いえ、落ち込んでるわけではないのですけど。⋯⋯今回の事で彼女の心に傷を残していたら申し訳ないなとは思います」
「シアの気持ちも分かるが、こればかりはあの子次第だな」
今すぐに、は難しいよね。
そこまで時間が経っているわけでもない。
「あの子の母親がギルドの職員だから、そこに出入りしてるとその内分かるだろう」
「そうだとよろしいのですが⋯⋯」
「それより、そろそろ戻った方が良くないか?」
「そうですね⋯⋯お養父様、ありがとうございます」
「また後でな」
私は執務室を後にし、応接間に戻った。
ノックをしてから部屋へ入り⋯⋯って何があったの!?
彼女、アンは泣いてるし、サーラは怒っている。
お養母様は苦笑して彼女達を宥めていた。
「どうかされたのですか?」
「シア、お帰りなさい。遅かったわね」
「お待たせして申し訳ありません。ですが、これは⋯⋯?」
「お嬢様! 本当に申し訳ありません! 娘がお嬢様を怖がっているなんて!」
――えっ! 何故その事を?
私が不思議がっていると、お養母様が事情を説明してくれた。
「貴女が退室してからは、最近の街の様子や、ギルドの事等をサーラから聞いていたのよ。そこまでは良かったのだけど⋯⋯アンがずっと俯いているから、サーラが問いかけたの。そうしたら、貴女の事が怖いと言ったものだからサーラが怒っちゃってね。アリシアは気にしていないから大丈夫よ、と言ったのだけれど、この通りなの」
「なるほど、事情は分かりましたわ。サーラ、そんなにアンを怒らないであげて? 私は気にしておりません。急にあんなことがあったのですから、怖いのは当たり前ですわ」
「ですが、お嬢様に大変な失礼をしてしまって⋯⋯」
「お養母様も話しておりましたが、私は気にしてないから大丈夫よ。それにそんなに怒ったらアンも余計に尻込みしてしまうと思うの」
「お嬢様ががそう仰るなら⋯⋯」
サーラはようやく力を抜いた。
アンはまだ泣いていたけれど⋯⋯。
「私と一緒にいるのはあまり良くないと思うから、そろそろお暇しましょう」
「貴女がそれで良いなら」
「怖がらせたくありませんもの」
私達はサーラに暇を告げて部屋を後にし、執務室へ向いお養父様と合流した。
「どうだった?」
「結局アンを泣かせてしまいました⋯⋯」
「あれは泣かせたというより、サーラの怒りが勝ってそっちに怖がっていたような感じだけれどね」
「何にしても、後は親子次第だな」
「そうですわね」
「では、邸に帰ろうか」
お養父様の言葉に仕事はいいのかなと疑問に思ったけれど、お養父様の気になる事とはどうやら私の事だったみたいなので、私達は一緒に領主館を後にし、邸へと戻った。
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