38 私の提案
私達が応接室へ戻ると、お養父様達もお話が終わっていたようで、私達の戻りを待っていた。
「シア、散歩は楽しかったかい?」
「はい。中庭の庭園に行きましたが、とても綺麗なお花がいっぱい咲いていて楽しかったです」
「それはよかった。ではそろそろ帰ろうか」
「はい!」
私達はクリス様達に挨拶をしてギルドを後にした。
馬車の中では他愛ない話をして、領主館に戻ってきた。
領主館に戻った私達は、お養父様の執務室へ行き、人払いをして先程イクセル様に話をした内容をお養父様にお話しした。
お養父様は「なるほどな⋯⋯」と考えている様子。
「シア、その案を使っていいかい?」
「勿論です。ですけど、私が案を出したのは内緒で⋯⋯」
「優秀なのはいい事だから内密にする必要はないんだけど、変に目立って狙われるのも良くないからな。この案件の出所は、我々だけの秘密にしておこう」
「ありがとうございます。お養父様」
私は心底ほっとした。
変に目立ちたくはないからね。
狙われる要素を態々作らなくてもいい。
「だけど、シア。集中するのは良いことだが、周りが見えなくなるのはたまに傷だな」
「うっ、気を付けます⋯⋯」
「さて、シアはクラースを伴って先に邸に帰りなさい。夕食まで少し休むこと、いいね」
「はい、わかりました。イクセル様、今日はありがとうございました」
「いいえ、私も楽しかったですよ」
私はお養父様達に挨拶をしてクラースと一緒に邸に戻った。
「クラース、今日は一日ありがとう」
「いいえ、お嬢様も体力が大分お付きになったので安堵してます」
「クラースのお陰よ」
邸に着くと、邸内では護衛は一旦終わるので、玄関ホールではミア達が待っており、クラースにお礼を言って別れる。
部屋へ戻った私は、お養父様の言う通りに少し休むことにした。
そのまま少し眠っていたようで、夕食も近づき、ミア達に起こされた。
軽く準備をして食堂へ行くと、すでに皆揃っていた。
「遅れて申し訳ありません」
「大丈夫よ。さぁ座って」
「はい」
皆揃ったところで食事をし、団欒の間に移動した。
今日の話題は私が街に行った事の話題で盛り上がった。
私が馬車の中から見た街の様子、それを見ていたお養父様の感想等、ちょっとはしゃぎすぎていたみたいで、恥ずかしいけれど⋯⋯。
ギルドの様子やそこで会ったクリス様達の話しもした。
クリス様が本当に綺麗で、お養父様が変な勘違いした事もお養母様達に話すと、声を上げて笑っていた。
「そういえばそのクリスだけど、年齢は聞いた?」
「いえ、流石に初対面では聞けませんよ」
「シア吃驚するよ! 僕も聞いたときは驚きすぎて固まっちゃったし」
「そうなのですか? 三十半ばか位だと思ったのですが⋯⋯」
ギルドマスターと言う地位にあり、落ち着いていて慕われていそうだったから見た目に反してそれくらいかなと⋯⋯。
「彼、百二十歳だから」
「⋯⋯えっ? ⋯⋯あっ! エルフ族ですか?」
「半分正解よ! クリスはエルフと人間のハーフなのよ」
納得!
エルフ族とのハーフなら、あの外見に年齢も不思議ではない。
「エーヴェにも会ったのかしら?」
「お会いしました! 真面目な時と崩れた時の差があり、驚きました」
「あぁ、確かに⋯⋯。貴女を見て弾けたのね」
「はい。広告塔になって欲しいと言われました」
「流石に断らないとね。今度彼女に話をしておくわ」
「よろしくお願いします」
流石に広告塔は目立っちゃう。
可愛い服を着るのは楽しいけれどね。
「ギルドの報告会は問題なかったのかしら?」
「いや、領主館に報告が上がっていた通り商人達の様子がよろしくないようだね。そこで、シアが良い案を提供してくれてね。それを実行しようと思う」
そう言うと私に書類を渡してきた。
ん? これってお仕事の書類よね?
お養母様じゃなくて私なの?
「あの、これって⋯⋯」
「読んでいいよ。発案者はシアだからね。勿論これは家族とイクセルだけの秘密だよ」
「では拝見します」
私は渡された書類を読んだ。
その間にお養父様はお養母様達に説明していた。
私がざっくりした案を出しただけだったが、そこには詳細が加わり事細かに書き出されていた。
魔道具で品質、産地、呪い系等の安心安全を調べる事にするそう。
食物系には更に、毒物が含まれていないかも加えるみたい。
それなら口にいれても安心だよね。
ただ、やはり魔道具だと金銭的にかなり大掛かりになりそうで、生産者が書面で証明書を作成するよう、王都で行われるグランフェフト内各ギルド支部マスター会議で出すよう、クリス様に要請するようだ。
大事になったけれど、確かに此処だけやってても意味ないよね。
「読んでみてどうだった?」
「はい、これなら安心できますね。クリス様のお仕事が大変になりそうですけど」
「それがあいつの仕事だからね。気にしなくていいよ」
確かに上の人の仕事って、そう言うのあるよね。
大変だけど、頑張って下さい!
私は心の中で応援する。
けれど、やっぱり魔道具って便利だよね、色んな事が出来て。
「父上、僕も読んでも構いませんか?」
「構わないよ。レオンも沢山勉強するといい」
「勉強は好きじゃないんだけど⋯⋯」
レオンお兄様も書類を読む。
勉強が嫌いとか言いつつ真剣に読む。
やれば出来るのに何でやらないんだろうね。
「はぁ、シアは凄いね、これ考えたの?」
「ここまで綿密にではないです。ただ、こういうのがあればなと提案を出しただけですよ」
「けど、これいいね! 他にも色々と応用できそうだし。本当に凄いよ!」
大したことはしてないのだけど、誉められると嬉しい。
これで少しは悪徳商人が減ればいいのだけれど。
まぁ、今回のこの領での事はまだどちらとも言えないようなのだけどね。
「明日早速魔道具職人を呼んで、試作品の作成をするよう伝えるつもりだ。何事も早々に動いた方がいいからね。シア、ありがとう」
「いいえ、少しでもお役に立てるのなら喜んで」
「明日から勉強を再開することになる。それと、手紙で魔力操作を教えるよう指示も来てるので、クラースの運動の時間に魔力操作と実技を加えるから、その時は邸ではなく騎士団の訓練場で行うから、クラースを伴って騎士団行くように。レオンも同じ時間に騎士団で行っているから、一緒に来るといい。明日の昼からだな。なので、今日はゆっくりおやすみ」
お養父様が明日からの予定を私達に伝え、私達は各々部屋へ戻っていった。
今日は街に行って思ったよりはしゃいだようで
この日はぐっすりと眠りについた。
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