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目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第1章  大切なもの
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37 ギルドで報告会


 お養父様とクリス様は仕事の話をしているけれど、私はこのまま一緒に聞いててもいいのかな⋯⋯。

 そう思わなくもない。

 お養父様もクリス様も何も言わないからいいのかな。

 内容は定期報告会らしく、お養父様が街の視察がてら此方に聞きに来たりする事もあるらしいが、普段はクリス様が領館に報告に訪れるそう。


 今回の報告は、最近の森の様子や魔物の数、街に入ってくる冒険者達や他の地域のギルド等、変わった点がないかを確認する。

 少しでも異変があれば早急に対処する必要がある。

 今回は特に問題はないようだった。

 一度街に怪しい連中が来て以来は不審者もいないようで、私はそれを聞いて安堵した。


 森の様子も変わらず、安定しているということ。

 魔物も急激に増えている、という可怪しい様子もない。

 ただ、この街にやってくる商人の質が落ちていると⋯⋯。

 少しがらの悪い者達がやってくるそうで、とても怪しいのだけれど、商人の証明を持っていたそうで、領内に留まっているという。

 だが、扱っている商品が市場に出回っているものと同じように見えるが怪しい点がもあるようだ。

 これは領館で商いをしている人達から同じような報告が上がっているというので問題になっているようだ。

 今回のギルドへの訪問はそれが主な理由みたい。


 と、そこへノックがあり「遅くなりました。エヴェリーナです」と声が掛かると、クリス様が「どうぞ」と応えた。



「失礼します。閣下、ギルマス、遅くなり申し訳ありません」

「構わないよ」



 挨拶して彼女がクリス様の横に座ろうと動くと、私に気が付いて動きを止めた。

 そして目を見開き、瞳がキラキラと輝いている⋯⋯。


 

 ――な、なに!?



「かっ」



 ――かっ?



「かーわーいーいー!!」

「!?」



 何事!?

 キャラが違わない?

 出来るお姉さんと言う感じが一瞬で崩壊した。



「落ち着きなさい、エーヴェ。お嬢様がビックリしているでしょう?」

「だって! ギルマス、こーんな可愛い子中々いないわよ! 可愛すぎる!! ねぇ、私のドレスの広告塔になって! あっ、自己紹介がまだだったわね。私はエヴェリーナ。エーヴェって呼んでね」

「ご挨拶が遅れてすみません。(わたくし)はアリシアです。よろしくお願いします」

「アリシアちゃんね! 名前も可愛いわ」

「エーヴェ! 落ち着いて。彼女は閣下のご息女ですよ」

「本当に⁉ 閣下のお嬢様? オリー様にこんな愛らしいお嬢様がいらっしゃったなんて初耳なんですけど!」

「エーヴェ、彼女は養女だよ。だから君が知らなくても当然だ。だが、シアの、この子くらいの年のドレスや普段着を作るよう、オリーから依頼があったと思うが?」

「ありましたが、まさかお嬢様のお衣装だと思わず⋯⋯」



 まぁ、確かにいきなり五歳児の服を依頼されてもまさか養女(むすめ)だとは思わない。

 依頼するなら産まれた時からだし。



「興奮してしまい申し訳ありません。お嬢様」

「いえ、ビックリしてしまいましたが、いつも可愛いお洋服をありがとうございます」

「やっぱり可愛い!」



 お養父様は頷いているし、クリス様は呆れている。

 私もちょっとどうしていいか分からない⋯⋯。



「さて、エーヴェも来たことだし、話を進めよう」

「お養父様、(わたくし)このまま此処にいても良いのでしょうか? お仕事のお話し中席を外しましょうか?」

「シアは退屈かい?」

「いえ、退屈ではないのですけれど。私がこのまま聞いていてもいいのかどうか⋯⋯」

「構わないよ。隣にいなさい」

「分かりました」



 私は此処にいていいとのお養父様の言葉に従い、そのまま座わる。



「エーヴェ、丁度商人と扱っている物について話していたところだ。実際物を見た感想はどうだった?」

「そうですね、物はそれなりに質は良さそうでしたけれど、どうも違うと感じるのです。これはただの勘ですが⋯⋯」

「エーヴェの勘はバカに出来ませんからね。何かしら裏がありそうですね」

「ただ、それをどう証明するかが問題だな」



 証明⋯⋯。

 彼方だったら品質証明書等があるし、商品には必ず記載されているけれど、此方ではそういったものはないのよね?

 だけど、魔法も魔道具もあるならば、作れそうな気もするんだけれどな⋯⋯。

 と言っても、私にはまだ魔法や魔道具の知識が殆ど無いので何とも言えないけれど。

 出来ても直ぐに作れるかも疑問だし。

 後はアナログだけど商人達が彼方みたいに生産元が品質証明書を発行し、商品に添付する等⋯⋯。

 だけど、それ自体が此方の世界ではそれほど一般的では無いようだから、どれも難しいかなぁ。

 あぁ、それか魔道具で嘘発見器的な物を作るとか?

 色々と考えていると、ふと横から視線を感じて見ると、お養父様が此方を見ていた。



「どうかされましたか?」

「さっきから何を考えているんだい?」

「え?」



 ――あれ、声に出てた? それとも顔に出てた?



「どっちもだな」

「!? お養父様、心を読むのは止めてください」

「読んではないよ、声に出てたと言うか考え事をして唸ってる感じだったね。で、何を考えていたんだい?」

「⋯⋯今お話しするのですか?」



 私が考えたいたことは記憶の事だし、五歳児が考えるようなことではないと思うので、今話すのは憚れるんですけど⋯⋯。

 私は首をこてんと傾げてお義父様を見上げ、そう目で訴えてみる。



「シア、そんな可愛い顔して見上げるなんて⋯⋯」



 お養父様はそう言うと私をお膝の上に抱き上げた。

 何故!?

 あっ、寂しいと思われたのかな?

 またしても首をかしげると、イクセル様が後ろでまた口を覆って笑いを耐えていたけれど、肩が完全に震えている。

 一体どこに笑いの要素があるの?



「お嬢様には退屈なお話でしたね」

「いえ、退屈ではないのですが」



 どう答えていいものか⋯⋯。



「シア、イクセルと少し散歩しておいで」

「分かりました。お散歩に行ってきます」



 空気が微妙だったので、お養父様の提案に頷くと、イクセル様は私を抱っこして部屋を出る。

 部屋を出ると、クラースが付いて来ようとしたが、イクセル様が「私が付いてるから大丈夫だ」と部屋の前で待っているよう告げた。


 抱っこされたまま、中庭の庭園に着いた。

 ここはギルド職員の憩いの場といった感じのようだ。

 今は人の気配も少なく、庭園の一角にある椅子に下ろされた。



「アリシア様、お疲れではありませんか?」

「大丈夫ですけれど、(わたくし)、何かしてしまいましたでしょうか?」

「どうしてそう思われるのです?」

(わたくし)が考え事をしていた時に何か声に出していたりしたのかなと。それか変な顔してましたか?」

「くくっ、アリシア様、可愛くて面白すぎです」

「意味が分かりません。イクセル様は笑いすぎではありませんか! そんなに笑わなくても⋯⋯」



 ほんとに笑いすぎだと思う、この人。



「すみません。⋯⋯先程は何を考えられてたのですか?」

「お養父様達がお話になっていた、商人とのやり取りの際の商品の証明についてです。お話を聞く限りでは、商品のやり取りの際に、品質や産地等の証明書といったものは無いのですよね?」

「ありませんね。聞かれたら口頭で伝えたりが普通です。高等のお店では産地等の証明書があったりはしますが⋯⋯」

「品質や産地証明書が無いのであれば、今から普及させるのって難しいでしょう? (わたくし)は魔道具や魔法の事は無知に近いので(わたくし)が考えている事が出来るかどうか分かりませんが⋯⋯」

「話してみてください」

「んー⋯⋯、本当にこういうことが出来たらなと言う感じなので、笑わないで下さいね」



 私はイクセル様に笑わないよう釘を刺した。

 イクセル様はというと、言い笑顔で了承してくれたけど胡散臭い。



「例えばですが、宝石を扱っている商人がいるとします。そして、その宝石を買おうとしてる店主がいます。ですが、その宝石が本物か、混じりけの無い純粋な物か、呪いの類いが入ってないかが気になりますよね。そういった時に、魔道具等で予め純粋な宝石類をインプット⋯⋯、えっと記録しておき、その魔道具を使用して判断する。呪い系の有無も判れば安心かなと⋯⋯それが難しければ、書面等で品質や産地証明を普及させてみればどうかな? (わたくし)が考えたいたのはこう言う事です」



 私はざっくりと話し終えて、イクセル様の様子を窺う。

 イクセル様は私の突飛の無い話しにももう驚く様子はないけれど、何やら考え込んでいる。



「アリシア様は流石ですね」

「何が流石なのか分からないのだけれど。これは彼方の知識を元にした考えなので、(わたくし)の考えとは別物ですよ」

「いえ、それでもですよ。彼方の知識であろうと無かろうと、此処では新しい考えなのです。もっと自信を持ってくださいね」

「ありがとうございます。それで、これは使えそうですか?」

「使えますね。少し時間は掛かるかもしれませんが⋯⋯魔道具に関しては、この領に魔道具馬鹿がおりますので、発破をかければ出来そうです。先ずはアルに提案しなければならないけどね」



 確かに、領主であるお養父様に提案し許可を貰わなければ出来ないでしょう。

 けど、私は一つの懸念があり、イクセル様に聞いてみた。



「あの、イクセル様? (わたくし)が今提案した件ですが、お養父様はいいとして、(わたくし)が提案したとは内緒にしていただけるのでしょうか?」

「内緒にする必要がありますか?」

「え⋯⋯ですが、(わたくし)はまだ五歳の子供ですよ? そんな子供が考えたなんて可怪しく思われます」

「まぁその辺はアルの判断に任せましょう」



 結局、お養父様に全て委ねることで話しは終わった。

 その後、少し雑談をしてお養父様達がいる執務室へ向かった。

 

ご覧頂き、ありがとうございます。


ブクマもありがとうございます。


次話もよろしくお願い致します。

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