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目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第1章  大切なもの
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36 初めての街とギルド


 今日はお養父様と街へ行く日!


 お養父様がいる領主館の執務室で待ち合わせをしているので、昼食後にお外に行く準備をして早速玄関ホールに向かうと、そこにはクラースが待っていた。



「クラース、今日からまたよろしくね」

「お嬢様、こちらこそよろしくお願い致します」



 私が離宮に行っている間に一ヶ月経ったのだが、理由は分からず仕舞いだが、私の護衛を引き受けることにしたようで、お養父様からそう教えて貰い、正式に私の護衛となった。


 クラースを伴って領主館を目指す。

 体力も戻ったので、前に来たときよりも余裕で着いた。

 クラースが受付で名乗り、受付嬢の案内で執務室へと向かった。


 執務室に着くと、受付嬢がノックをし「アリシアお嬢様がいらっしゃいました」と中に声をかけると、直ぐに「どうぞ」と答えがあったので、受付嬢に扉を開けてもらい中に入った。



「失礼します。お養父様、お待たせいたしました。イクセル様、デニス様、お仕事中にお邪魔いたします」

「時間通りだよ、シア。少しソファに座って待っててくれるかい?」

「はい」



 私はソファに座りお養父様のお仕事の目処がつくまで少し待った。

 そう時間もかからず、終わったようで整理をしていた。



「お待たせ、さぁ行こうか。デニス後は任せるよ」

「はい、行ってらっしゃいませ」



 イクセル様は一緒に行くようで、デニス様だけが執務室に残った。

 私はデニス様に会釈をしてお養父様に付いて部屋を後にした。


 領主館のホールを出ると、一台の馬車が停まっていた。

 私はお養父様にエスコートして貰い馬車に乗り、次いでお養父様、イクセル様が乗ってきた。

 クラースは馬で並走するようだ。



 そういえば、馬車に乗るのは初めてかも⋯⋯。



「シアは馬車は初めてだったか?」

「はい。初めてで、少しわくわくします」

「アリシア様、閣下のお膝の上に座って窓から外をご覧になればシベリウスの風景を楽しめますよ」

「イクセルにしてはいい提案だな。シア、こちらにおいで」

「アル、一言余計ですよ」

「お養父様、失礼します」



 私は風景見たさにお養父様のお膝の上に据わらせて貰うと、お養父様は嬉しそうに、私が落ちないようお腹に手を回して固定してくれた。


 

 ――わぁ! きれいな街並みに、緑がきれい!


 

 初めて見た街並みは記憶で言うところのヨーロッパの郊外のような感じで、密集してなくて、程よい感覚で建ち並ぶ建物が可愛い!

 奥に広がる緑もいい雰囲気を出している。


 街に差し掛かると人々が歩いているのが目にはいる。

 色んなお店が建ち並び、買い物をしている人達を見ると、私も路地を歩きたいと思った。


 私は目をキラキラさせてお外を見ていたら、お養父様が声をかけてきた。



「シア、楽しそうだね」

「はい! とても新鮮で見ていてもわくわくします! 街歩きをしてみたいです!」

「それはまた今度だね。もうすぐギルドに着くよ」



 そう、街中を進んで行くと、いつの間にか町外れの方に来ていた。

 段々と少し大きめの建物が目にはいる。

 どうやらあれがこの街のギルドみたい。

 ぽけーっと見ていると、いつの間にか着いたようで馬車が停まった。


 御者が扉を開け、イクセル様、お養父様が降り、最後に私が降りる時、お養父様が手を差し伸べてくれたのでお養父様の手を掴み、そっと馬車を降りた。



「ありがとうございます、お養父様」

「いや、馬車に揺られて疲れてない?」

「大丈夫です」

「さぁ、行こうか」



 私はお養父様の後を付いていった。

 イクセル様は先に行き、ギルドの受付で話をしていた。

 私達が入ると、お養父様に話し掛ける冒険者達が沢山いた。



「閣下! ご無沙汰してます!」

氷花(辺境伯)様がいらっしゃったぞー!」



 お養父様ってとても人気者なのね。

 それより気になるのは氷花って何?

 というか私、人だかりに埋もれそう!

 脱出しなきゃと思ったらお養父様に抱き上げられた。

 助かった⋯⋯。



「お養父様、ありがとうございます」

「怪我はないかな?」

「はい、大丈夫です。それより、氷花って何ですか?」



 私が質問するとお養父様は答えずにイクセル様の笑い声が聞こえた。


 

「アリシア様、それは閣下の二つ名ですよ。『氷花の辺境伯(フルール・ド・グラス)』。閣下がまだマティアス様位の時に魔物が大量発生した際、閣下も戦闘に参加されたみたいでして、街まで侵入されそうになった時に辺り一帯の魔物を氷付けにしたのですが、その様子を見ていた冒険者が氷の花みたいだと名付けをしたとかで広がったようですね」

「なるほど⋯⋯」

「シア、そんなこと聞かなくていいよ。君達に紹介しておこう。私の養女(むすめ)のアリシアだ」

「上から申し訳ありません、皆様。アリシアです。どうぞよろしくお願い致します」



 私は笑顔で挨拶をし、ぺこっと頭を下げたのだけれど、当たりがシーンと静まり返った⋯⋯。

 なんで?

 何かおかしな事したかな。

 不安にってお養父様を見上げると、優しい笑みを浮かべていたので、おかしな事はないはず⋯⋯。



「「「か、可愛すぎる!!」」」



 ――なに!? 何か怖いよ!


 

 冒険者の大音量に吃驚して私は思わずお養父様に抱きついた。



「シア、大丈夫だよ。皆シアが可愛くて悶えてるだけだから」



 えっ⋯⋯、そんなこと無いよね?

 私、普通だと思うんだけど?



「そろそろ行こうか」

「早く行きましょう!」



 私は何だかこの場にいるのが怖くて早々に退散したくて早く離れたかったので、お養父様の言葉に安堵した。

 私達は受付嬢の案内で三階まで上がり、三階の応接間へ着いた。

 中へ案内されると、中には見た目が儚いお兄さん? が座って待っていたが、私達が中にはいると立ち上がり挨拶をしてきた。

 


「お待ちしておりました。辺境伯閣下⋯⋯そちらのお嬢さんは?」

「待たせたな。彼女はアリシア、私の養女(むすめ)だ。アリシア、彼はこのシベリウス支部のギルドマスターのクリスティアーノだ」

「初めまして、アリシアです。よろしくお願い致します」

「初めましてお嬢様。この辺境領のギルドを預かっているクリスティアーノです。どうかクリスとお呼びください」


 

 わぁ⋯⋯何だろう、男の人なんだろうけど、綺麗な人。

 きっと見た目と中身とギャップが激しかったりするんだろうなぁ。

 ちょっとどころかかなりの偏見も入った失礼な事を考えていると、お養父様が変な顔でこちらを見ていた。



(わたくし)の顔に何か付いていますか?」

「いや⋯⋯」

「アリシア様、閣下は貴女がクリスをじっと見つめていたので、彼みたいなのが好みなのかと内心で焦っているのですよ」

「好み?」

「イクセル⋯⋯お前」

「お養父様、違いますよ! 男性なのにとても綺麗でしたので⋯⋯不躾にじっと見てしまい申し訳ありませんでした」



 何の事か分かって私は慌てて否定した。

 冷えてる、寒い!

 イクセル様! 笑ってないで助けてください!



「閣下、そんなに冷えた空気出していると、アリシア様に嫌われますよ」



 助けて欲しくてイクセル様を見ていたら直ぐに察して助け舟を出してくれた。


 

「⋯⋯シア?」

「嫌いませんよ! イクセル様もその様にお養父様を煽らないで下さい!」

「仲良しですね。溺愛しすぎではありませんか?」



 私達はクリス様を置いてけぼりにしていた。

 というか、お仕事にきたのでは!?



「クリス様、申し訳ありません。お養父様もお仕事でいらしたのでは?」

「そうだよ。だが、シアが碌でもない男に引っ掛かるのは容認できないからな」



 本人前に碌でもない男って⋯⋯。

 そもそも引っ掛かりませんよ。



「それは無いです。こんなに綺麗な(ひと)の隣なんて無理です。年齢が近くても(わたくし)なんて塵ですよ。なにより、女性同士の競争率が凄そうです。面倒臭そうです」



 私は色々想像して本音過ぎる本音を言ってることに気づかなかった。

 それを聞いたイクセル様は後ろを向いて口を抑えてプルプルしていたし、クリス様は「なるほど、面倒なのは当たっていますね」と呟いている。



 一番はお養父様の突っ込みが激しかった。



「シアが塵な分けないだろう! こんな男よりシアの方が愛らしい。 奴の方が塵だ!」



 とよく分からない事を言っている⋯⋯。



「はぁ、笑った。久々に腹が痛い」

「お前は笑いすぎだ」

「いやいや、アル、アリシア様の言葉が凄い。ただ、私からも一言。アリシア様は本当に可愛らしいので、塵とか言ってはダメですよ。特に同性の前ではね。⋯⋯ご自覚無いかもしれませんが」



 私はイクセル様の言葉に首を捻った。

 私、普通だよね?

 だってマティお兄様はお義父様似で整ってて格好いいし、レオンお兄様ってお養母様似でとっても可愛らしい顔立ちだし、お養父様も整ってて綺麗だし、目の前のクリス様も綺麗すぎて眩しい⋯⋯。

 ちなみにイクセル様もイケメン。

 王宮にいるお父様もお母様も美形美女だけど、私って普通じゃない?


 そんな事を思っていたが、この場にいる全員の目が完全に残念な子を見る目で一致している。



「えっと⋯⋯この話題終わりませんか?」



 全員が溜め息をついた⋯⋯。

 溜め息つかなくても!

 意味が分からない。

 この世界の基準も分からない。

 ⋯⋯私がおかしいの?



「さて、気を取り直して報告を聞こうか」

「はい」



 強制的にこの話を終わらせ、ようやく本題に入った。

 

ご覧いただき、ありがとうございます。


次話もよろしくお願い致します。

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