35 ただいま
お祖父様より許可を頂き、今日はシベリウスへ戻る日の朝。
朝食をいただいてから用意を整え、転移陣のある部屋へと向かう。
そこにはお祖父様、お祖母様に加え、ランヴァルドがいたのだけれど、これは帰りもヴァルドに送って貰うのだろうか。
「お待たせいたしました」
「いや、そんなに待ってないぞ」
「寂しくなるわねぇ」
「先ずは部屋へ入ろうか」
そう言うと私達は部屋へ入った。
そこで、先ずは私の腕に魔道具を、お祖父様が着けてくれた。
「どうだ? 身体に負担はないか?」
「そうですね、力を抑えているので少し重く感じますが、大丈夫です」
「そうか、なら良い。この間伝えた事を忘れずにな」
「はい。お祖父様、ご教授頂きありがとうございました。お祖母様も沢山お話しが出来て楽しかったです」
「ステラ、あちらでも無理はしないようにね。また遊びにきなさい。モニカ、ステラの事をよろしく頼みますよ」
「畏まりました」
私達は各々挨拶をして、転移陣の上に乗る。
で、ヴァルドに抱き上げられた。
やっぱりね。
「ヴァルド、よろしく頼む」
「はっ! では参ります」
私はお祖父様達に手を振るが一瞬で離宮からシベリウスの転移陣に移動した。
シベリウスに着いたら、お養父様達が出迎えてくれると思っていたのだけれど、誰もいなくて不思議に思った。
――どうなっているの?
「ヴァルド?」
「このまま部屋までお連れ致します」
どういうこと?
もしかして、お養父様達に私が今日帰ってくること知らせてない、とか!?
これって、お祖父様の仕業!?
――なんだか嫌な予感⋯⋯。
私はヴァルドに抱かれたまま、部屋の前に辿り着いた。
ヴァルドはきちんとノックをしたので、ちゃんと出来るのね、と変な感心をしてしまった。
中からは「誰だ」とお養父様の声。
ちょっと不機嫌そうなその声に嫌な予感が的中したと確信した。
ヴァルドは何も答えず部屋への扉を開けたのに私は内心悲鳴を上げる。
礼儀もあったものじゃない。
中にはお養父様、お養母様にレオンお兄様、イクセル様にアルヴァーが揃っていた。
私を見た瞬間驚きと共に寄ってきた。
「「シア!?」」
「皆様、只今戻りました。ご心配をお掛けして申し訳ありません」
ヴァルドはようやく下ろしてくれた。
部屋には私の事情を知る人ばかりだから、普通に話を続けた。
「殿下をお連れしました」
「ノルディーン卿、今日帰ってくるとは聞いてないよ。行きなり連れていったり帰ってきたり、なぜ事前に連絡がないのかな?」
「我が主と陛下の指示ゆえ従ったまで」
「ほぉ⋯⋯イェルハルド様はともかく、アンセのやつ!」
――なんか不穏な空気が出てる!!
「とにかく、無事に戻ってきて良かったわ。お帰りなさい、シア」
「ほんとだよ、心配したよ。シア、お帰り」
「お養母様、レオンお兄様。ただいま帰りました」
お養母様は分かっていたようで、けど微笑んで抱き締めてくれた。
「シベリウス辺境伯、こちら、イェルハルド様よりお預かりしてきた手紙です」
「ご苦労様」
「後、伝言がございます。可愛い孫を独り占めするな、とのことです」
お祖父様ったら⋯⋯。
お父様みたいなこと言ってるよ。
「はぁ。独り占めはしておりませんが⋯⋯また離宮へ招くときは、きちんと先に連絡は頂きたいものです」
「それは直接あの方々にお伝えください」
「あぁ、そうしよう。他に何かあるか?」
「いえ、それだけです。アリシア様を皆様の元に無事お返しいたしましたので、そろそろ戻ります。オリーヴィア様、イェルハルド様より、たまには顔を出せ、との事です」
「その内参ります、とお父様にお伝えしておいて」
「畏まりました。では失礼致します」
「ヴァルド、此処までありがとう」
「いえ、アリシア様も恙無くお過ごしくださいますよう」
挨拶がすみ、ヴァルドは帰っていった。
アルヴァーはヴァルドを見送るため、一緒に部屋を出る。
残された私達は久しぶりの団欒の時間となった。
「シア、あちらではどんな風に過ごしていたんだい? 魔力も安定しているね。魔力の不安定さが無くなっている」
「お祖父様に魔力の事を習いました。あちらでは、魔道具を外していたのです」
「やっぱりねぇ。シアの魔力は多いから、離宮では魔力操作を習ってると思っていたのよ」
「お養母様はご存じだったのですか?」
「レオンからシアが離宮に行ったと話を聞いたとき、もしかしたら、とは思っていたわ。お父様はそれを教えるのが第一で第二に貴女に会いたかったという理由でしょう」
「ヴァルドが此処に来た時は驚きました」
「あの脳筋を寄越したということは、貴女を逃さないという意思だろうね」
そうでしょうね。
話が中々通じないし、あれで現役時代は王国の騎士団総団長だったが不思議⋯⋯。
「それだけではないでしょう?」
「⋯⋯お父様達にもお会いしました」
「そう。会えて良かったわね。きちんとお話しできたかしら?」
「はい。お祖父様のお陰で沢山お話しできましたし、お手紙も直接いただきました」
「すっきりした顔しているわ。貴女の懸念が少しでもとれたのなら安心ね」
お養母様にはバレバレだったみたい。
「なるほどな、それで魔力が安定したんだね。⋯⋯よし! シア、早速約束通り明日街に行ってみるかい?」
「いいのですか!?」
「明日、私と一緒にだよ。丁度ギルドに顔を出しに行くんだけどね、その時に案内しよう」
「お仕事ですよね? よろしいのですか?」
「構わないよ」
「ありがとうございます!」
お養父様が約束を覚えてくださっていて、街へ行けるなんてとても嬉しい!
お父様達にもお手紙で自慢しよう!
そんな私を見て、お養父様はちょっと黒い笑みを浮かべていたのを私は気づかなかったけれど、お養母様とレオンお兄様は呆れた顔でお養父様を見ていた。
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