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目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第1章  大切なもの
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33 再会


 夕食時にお祖父様がいらっしゃらなくて、お忙しいのかなと思っていると、お祖母様が「イルはちょっと所用で離宮を離れているの」と言うことで、お祖母様と二人でいただいた。


 お茶会の続きのように、色んなお話をしてとても楽しかった。

 この後はもうお開きになるのかと思ったのだけれど、お祖母様に「いつもの部屋に行きましょう」とお誘いを受けたので移動した。



 部屋の前には何故か侍従がいて部屋をノックした。


 

 ――あれ? 誰がお客様がいらっしゃるの?


 

 中からはお祖父様が「入れ」と、いつの間に戻っていらっしゃったのか、お祖母様は知っていたようで中に入っていく。

 私も続いて入り、そこにはいないはずの人達がいて⋯⋯、本当に驚いた。

 驚きすぎて立ち止まってしまった。



 中にいた人達はお父様、お母様、そしてお兄様だった。



 ――どうして⋯⋯。



 私がお祖父様にお願いしたからなんだと思うけれど、昨日の今日で会えるとは思っていなくて、心構えも何も出来てなくて、どうして良いか分からず前に進むことが出来なかった。


 挨拶しなきゃと思ったけれど、言葉が出てこない。

 前にお手紙を書いたけれど、返事もなかった。

 忙しいのだろうと思っていたけれど、心の中では本当は私の事などそれほど思っていないのだろうかと。

 会いたいけれど、本当は怖いのもある。

 頭の中でぐるぐると考えていると、いつの間にかお父様が膝をついて目の前にいた。



「ステラ」

「はっ、はい!」

「元気そうで何よりだ」



 そう言って私を抱き締めた。



 ――あっ⋯⋯。



 抱き締められて頭を撫でられ、私はいつの間にか涙を流していた。

 とても暖かい。



「ステラの意見を聞かず、シベリウスに移動させることになってすまなかった。寂しい思いをさせ、怖い思いをさせたな。本当にすまない」



 お父様は謝ってきたけれど、私は首を振ってお父様に抱きついた。

 毒の事はお父様の責任じゃない。



「お父様に嫌われていたわけじゃないと分かっただけでいいです」

「なっ! 嫌うわけないじゃないか!! ステラは私達の掛け替えのない娘だ! 記憶を持っていようと関係ない」

「そうよ、ステラ。貴女は(わたくし)達の大切な娘です。何があろうと手放すはず無いでしょう」

「⋯⋯お父様、お母様、申し訳ありません」

「ばかだなぁ、そんな謝罪は要らん。違うだろう?」

「ありがとうございます」



 私はお父様とお母様に抱きついて泣いた。

 暫くして、私ははっとした!

 やってしまった!



「あの! お母様、体調は大丈夫ですか? ごめんなさい。ちゃんとソファに座ってください! お腹に障ります」



 そういうと皆がふっと笑った。

 今笑うとこじゃないよね?

  可笑しな事は言ってない筈なんだけど!

 なんで笑われているの!



「笑ってないでちゃんと座ってください、心配です」

「分かったわ。ありがとう、ステラ」



 そこで、お兄様が声をかけてきた⋯⋯、というか、拗ねていた。



「ステラ、酷い。そろそろお兄様の事も思い出してほしいんだけど! 私の事は忘れた? 泣いちゃうよ、拗ねちゃうよ」

「わぁ! ごめんなさい! 忘れてません。ヴィンスお兄様会いたかったです! 大好きです!」



 そう言って、私はお兄様に抱きついた。

 そしたら中々の力で抱き締められた。


 ちょっと痛い⋯⋯。



「ほんとに心配したんだよ。ステラは何があっても大切な妹だからね、体はもう平気?」

「ありがとうございます。お兄様。もう全然大丈夫ですわ」

「良かった⋯⋯。あぁ、可愛いなぁ、ステラは」



 私は改めて家族に愛されているのを肌で感じ、幸せを噛みしめる。



「貴女達もそろそろ座りなさいな」

「ステラはじいじの膝においで」

「はぁ!? 何言ってんだ! ふざけるな!」

「は? ふざけてなどいない。さぁ、ステラおいで」

「ステラはお父様のとこにきなさい」



 えっ、これ凄く行きにくいんだけど⋯⋯ 。

 二人とも凄い笑顔でこっち見たりお互い牽制したりしている。

 えー⋯⋯と⋯⋯。



 私は取り敢えずとことこと、お祖父様のところへ行った。



「お祖父様、お父様達に会わせていただき、ありがとうございます」

「可愛い孫の頼みだ。叶えるのがじいじの役目だよ」



 私はお祖父様のお膝に抱っこされた。



「糞親父に負けた⋯⋯」



 お父様は落ち込んでいたけれど、ちゃんとお祖父様にお礼は言わないとね。大事なことだから。

 だけど、直ぐに降りて、お父様達のところに座り直した。

 お膝には座らないけどね。

 お兄様の隣です。

 お父様は残念がっていたけれど、お兄様は喜んでいた。



「ステラ、シベリウスではどうだ? ちゃんと過ごせているか? 不自由ないか?」

「不自由はありません。伯母様と伯父様にも良くしていただいてます。あちらのお従兄様達にも可愛がっていただいてます」

「それならいいが、本当にすまないな。不甲斐ないばかりに王宮から遠ざけて⋯⋯」



 この様子では難航しているのかしら。



「そんなに複雑なのですか?」

「大体は分かっているんだが⋯⋯」

「アンセ、昼間も言ったが、ステラに隠し事は不要だ。聡いから自ら調べて知ることになるぞ」



 お祖父様、それは買いかぶりだと思います。

 そんなに、聡くはありませんよ。

 それに調べるってどうやって?

 心の中で突っ込んでいる内も話は進んでいる。



「余計な不安は与えず、きちんと情報は共有した方がいい」


  お祖父様の言葉にお父様は渋ってはいたが、反論出来ずに私に視線を向けた。


 

「はぁ⋯⋯ステラ、今回の黒幕は今世界的にも問題になっている闇集団が関わっているんだ。あやつらは邪神を崇め、人々の恐怖心や不安、嫉妬、妬み⋯⋯そう言った負の感情を好み、故意に与え争いを促す。奴等が暗躍して今回はステラに嫉妬し、邪魔だと思った連中を唆し、害を及ぼした。その下端連中共は捕まえたんだが、そいつらを煽動した者までは証拠が揃わなくてな。流石に何もないのに捕まえられない。蜥蜴の尻尾切り状態だ。ステラには悪いが病気療養というかたちで離宮で静養とした方が良いと考え今に至る」

「なるほど、分かりましたわ」

「不自由を掛けるがシベリウスで暫くは過ごしてほしい。アルに意地悪されたら直ぐ言えよ!」



 どうして伯父様限定?

 仲悪いの?


 首を捻っていると、お兄様がこそっと「父上はアル伯父上にステラをとられて拗ねてるんだよ。この間伯父上が父上に自慢していたからね。それ以前からの、学園時代からの腐れ縁らしいよ」



 だって⋯⋯。

 えー⋯⋯私を挟まないでほしいです。



「不自由とは思いませんので、安心してくださいお父様。シベリウスで伯父様達に鍛えていただきます! それに、王宮にいると出来ないことをやろうと思います」



 私は、心配を掛けないようそうお父様達に話した。

 お父様は「それはそれで心配だ⋯⋯」とぼそっと呟いたけれど、どの部分が心配なのだろう?



「シベリウスではどの様に過ごしていたの?」

「あちらでは、体調が戻るまではお邸で過ごしていました。お庭で運動したり、勿論お勉強もしておりました。後は図書室で読書したり、伯母様に淑女教育をしていただいてます」

「そうなのね。ステラはお勉強をしっかりしていたのね」

「お勉強もしていましたが、アレクシスとも遊んでいましたよ」

「私もステラと遊びたいな」



 お兄様はぽつりとそんな風に溢した。

 私もお兄様といっぱいお話ししたいです。



「お兄様⋯⋯あっ、三年後に学園に行かれますよね?」

「三年後に入学だね。何かあるの?」

「シベリウスのレオンお従兄様がヴィンスお兄様と同じ歳なのですけど、どちらが首席になるかというお話しをしていたのですが⋯⋯お兄様!  レオンお兄様に負けないで頑張って首席合格してくださいね!」

「ステラに期待されたら頑張らないといけないね」



 私が期待に満ちためを向けると、ヴィンスお兄様はとても嬉しそうにしていた。



「そうだ! ステラに渡したい物があるんだ⋯⋯」

(わたくし)にですか?」



 お兄様はそういうと、懐から封書を出した。



「お手紙をありがとう。とても嬉しかった。私からの返事だよ」



 お手紙の返事⋯⋯。

 無いと思っていたから、嬉しい。

 嬉しくて、思わずお兄様に抱きついた。



「お兄様。お手紙のお返事ありがとうございます⋯⋯お返事をいただけると思ってなかったので、とっても嬉しいです」

「遅くなったが、返事を書かないわけ無いだろう。大切な妹なのだから⋯⋯書きたいことが山ほどあったから遅くなってすまない」



 私はお兄様からお手紙を受け取った。

 私が書いたよりも枚数がとても多かった。

 読むのがとても楽しみ!



「ステラ、私達も勿論手紙を書いたぞ」

「素敵なお手紙をありがとう。とても嬉しかったわ」



 お父様とお母様からもお手紙を受け取った。

 嬉しくて、二人にもぎゅっと抱きつくと、抱き締め返してくれた。

 それだけでとても幸せで、嬉しくて、離れていても頑張れそう。



「頻繁には無理だが、たまに会えるよう機会は作るよ」

「ほんとですか! 嬉しいです! ⋯⋯それであの、またお手紙を書いてもよろしいでしょうか」

「私達もステラに会いたいからね。手紙も楽しみにしているよ」



 お父様達と沢山お話しをして、次のお手紙の約束もして、心が満たされた。

 私自身とても寂しかったのだと思う。

 だけど、そんな楽しい時間はあっという間に過ぎるもの⋯⋯。



「名残惜しいが、そろそろ戻らねばならん。ステラ、くれぐれも無理はしないようにな。何かあれば直ぐに言いなさい」

「分かりましたわ、お父様」

「ステラ、身体には気を付けてね。また会えるの楽しみにしているわ」

「お母様もお身体に気をつけて下さいね。元気な弟か妹に会えるのを楽しみにしています」

「ステラ、本当に無理しないでね! 何かあったらお兄様が直ぐに駆けつけるから! だからお兄様を頼りなさい」

「ありがとうございます。お兄様こそ気をつけて下さいね。大好きです」




 私は各々抱擁を交わし、挨拶をした。

 お見送りをしに部屋を出る。

 転移陣の部屋まではお父様に抱っこされてしまった⋯⋯。

 部屋の前につくと下ろされ、部屋に入る。



「父上、くれぐれもステラに無茶をさせないようにお願いしますよ。後ちゃんとシベリウスまで送ってください」

「言われるまでもない。お前はきちんとを仕事しろ」

「誤解を生む言い方をしないで頂きたい! それでは私が仕事をしないとステラが勘違いするでしょう!」

「お父様がお仕事なさらないとは思いませんよ」

「ステラは優しいな」

「お父様達も無理しないで下さいね。また会えるのを楽しみにしています」



 和やかな雰囲気で私はお父様達を見送った。

 

ご覧頂き、ありがとうございます。


ブクマに評価、とても嬉しいです。

ありがとうございます。


次話もよろしくお願い致します。

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