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目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第1章  大切なもの
32/263

32 お祖母様とお茶会


 お祖父様達とお話しした日の夜中、あまり寝れず目が覚めた。

 私はベッドから降りて窓辺に寄り、外を見ると綺麗な星空が広がってた。


 記憶の中では此処まで綺麗な星空は見たことがない。

 外国の自然が多い場所での星空を見ているよう。

 こうやって大空を見上げると穏やかになり、落ち着く。

 だけど、目を閉じて己の魔力を視ると、変わらず流れが速い。

 ずっとざわざわとした感覚がある。

 だけど、焦らない事。

 皆に言われていること。


 そういえば、伯父様達はもう領に戻られたのかな。

 お父様達は私が此処に来ている事にどう思っているのかな。

 周りの皆がどう考えているか、気になってしまう。

 考えても仕方がないのだけれど⋯⋯。

 けどダメだわ。

 考えてしまうし頭を使っているせいか眠れない⋯⋯。



 ざわざわする⋯⋯。

 


 私は深呼吸を繰り返す。

 大丈夫、直ぐに死ぬことはない。

 そこは大丈夫。

 だから落ち着いて前に進むこと。

 今世を、長く生きて楽しむこと。


 考えるのは、お父様達と会った後だ。


 私はもう一度深呼吸をし、気持ちを整えるとベッドへ戻って布団にはいる。

 ベッドの中でも深呼吸をし、目を瞑る。

 そして眠りについた⋯⋯。


 次に目を覚ますと、柔らかな日差しが窓から射し込んでいた。

 あれ、寝過ごしたかな?


 こんこんこんっとノック音があり「エメリです。入ってもよろしいでしょうか?」と⋯⋯。

 あれ? モニカは?

 そう不思議に思いながらも、入室許可を出す。



「失礼致します。おはようございます。姫様。暫くの間、モニカに代わり、私がお世話をさせていただきます。これは先代様のご指示です」

「おはよう、エメリ。お祖父様がそう言ったの? 何故?」

「此方にいる間にモニカを鍛えるそうですよ」

「鍛えるの?」

「左様です」



 ――⋯⋯モニカ、大丈夫かな。



「では姫様、お支度を致しましょう」



 いつもなら自分で出来ることはするのだけれど、今日はそれが出来なかった。



「エメリ、待って! それくらい自分で出来ます」

「いけませんよ、姫様。これは私達の仕事です。姫様は私達からお仕事を取り上げるのですか?」

「そんな事はしませんが」

「姫様にそのつもりがなくてもそうなってしまいますよ」

「ごめんなさい。気を付けるわ⋯⋯」

「はい。全て私達にお任せくださいませ」



 やっぱりこの離宮に働く人達は色んな意味で強いわ⋯⋯。

 だけど、彼女の言うことも本当だし。

 自分で出来ることは自分でやりたいのだけれど⋯⋯。



「エメリ、今日の予定は? こんなドレスではお祖父様に教えていただくのに動きにくいわ」

「本日の予定は休息ですよ。お昼からはアクセリナ様とのお茶会の予定ですので、それまではゆるりとお寛ぎくださいませ」

「そう⋯⋯」

「退屈でしたら離宮内を散策されてはいかがでしょう?」

「そうね! 案内をお願いしても?」

「勿論です」



 私は離宮の散策に出掛けた。

 此処の空気は穏やかで澄んでいる。

 辺境領みたいに⋯⋯。



 離宮はそれなりに広くて、お庭も素敵だし、落ち着いた色合いが此処の雰囲気にとても合っていた。


 散策が終わって、今日は一人で昼食をいただく。

 その後少し休憩をして、お祖母様とのお茶会の場所へ案内して貰った。


 すでにお祖母様がいらっしゃって、にこやかに迎えてくれた。



「ごきげんよう、お祖母様。お招きありがとうございます」

「ごきげんよう、ステラ。今朝はゆっくり出来たかしら?」

「はい、今朝は離宮内を案内して貰い、散策しておりました」



 私達は挨拶を終え、席に着いた。

 直ぐにお祖母様の侍女達がお茶を手際よく用意していく。



「体調はどうかしら?」

「体調は問題ありませんが、まだ、魔力は安定しません」

「今日はあまり考えずに過ごしなさい」



 考えないようにするほど考えてしまうのだけれど⋯⋯。



「ふふっ、ステラは真面目さんね。もっと肩の力を抜いてもいいのよ」

「はい、頭では分かってはいるのですが⋯⋯」

「そうね、中々思っていることを行動に移すのは難しいのよね」

「お祖母様もそう言う時があるのですか?」

「長い人生を生きているので沢山ありますよ」



 そうだよね、何もないはず無いわよね⋯⋯。



「ステラは、どうしたいの?」

(わたくし)は⋯⋯、今世はもっと長く生きたいです。だけど今は狙われたりする立場にあるので、やはり強くなりたいと思います。自分の為だけじゃなく、周りの大切な人達を守れる位、何も出来ずに死ぬのは嫌です」

「なるほど、ステラは強いわね。そう思うなら強くなれるわ。学ぶことは大切だけれど、焦ると失敗するからステラのペースで頑張りなさい。イルも話していたけれど、生き急いではだめよ」

「はい。今は魔力の安定を頑張ります」



 そう、まずはそこを安定させないことには次には進めない。



「あと、肝心なことがあるわ!」

「肝心なことですか?」

「そうよ! 人生楽しまなきゃ! そして恋をしなさい!」

「楽しむのは分かりますけれど、⋯⋯恋は、まだ早くはないでしょうか? そこまで考えられません」

「早くはないわ。イルには内緒だけれど、(わたくし)は五歳の頃には初恋を経験しているのよ! 恋は楽しいわよ!」

「お祖母様はすごいですね⋯⋯」



 人生は楽しみたい。

 出来れば⋯⋯恋もしてみたい。

 だけど、記憶では全く縁が無かったので分からない⋯⋯。

 そこは余裕が出てきてからというかまだもっと先で良いと思うのです。

 まだ私には早いと思います⋯⋯。



「貴女は奥手かもしれないわねぇ」



 多分、そうかもしれないけれど、自分ではよく分からない。

 


「話しを変えませんか?」

「あら、ステラは恋の話しは苦手?」

「苦手と言いますか、記憶でも縁がありませんでしたから」

「あらあら⋯⋯」



 お祖母様は残念な子を見るように私を見た。



「では、今世では是非恋をなさい!」

「あの、お言葉ですがお祖母様。(わたくし)は恋をしても良いのでしょうか? 政略結婚になるのでは?」

「もう! 夢がないわね⋯⋯」



 私はこの国の王女だから、王女でなくても、貴族なら政略結婚が、当たり前の世では?

 というか、恋をしても政略結婚で違う人と婚姻することになるのは自分が辛くなるだけでは⋯⋯。

 恋って難しくないのかな。



(わたくし)には難しいと思います⋯⋯」

「分からないわよぉ、恋なんて知らない内に落ちてるものなんだから!」



 ――なにそれ!?



「えっと! お祖母様はお祖父様とはどうだったのですか?」

「イルと? そうねぇ⋯⋯知りたい?」

「知りたいです!!」

「イルとは元々はステラが言うように、政略結婚よ」



 ――なんだ、お祖母様達もやっぱり政略結婚なんだね。



(わたくし)とイルは三年歳が離れていて、あの頃は少し情勢が良くなかったのよね。(わたくし)の出身国のアルバネーゼ国が国内というか、王家が割れていたの。言わばお家騒動ね。野心家だった叔父様が私の異母弟を持ち上げて王家を乗っ取ろうとしたの。だけど、国王たるお父様の表向き病気が悪化して⋯⋯事実は毒を盛られていたせいなのだけれど。他にも色々とあってね、国内では収拾がつかなくなってしまい、本当に情けない話だけど、アルバネーゼより大国で友好国のこのグランフェルトに恥を忍んで助けを求めたの。だけど、助けを求めただけだと他から見ればアルバネーゼに内政干渉するだけに見えてしまうから、当時(わたくし)と王太子のイルに婚約者や恋人もいなかったので手っ取り早く婚約することで、アルバネーゼはグランフェルトに救われたの。これが(わたくし)とイルの最初の話」



 ――あれ? 政略結婚というだけの話ではなかったの?



「イルと婚約するとなった時は、(わたくし)本当は嫌だったのよ。元々友好国というのもあり、当時イェルハルド王子の事は知っていたけれど、モテすぎて競争率も激しくて周りの女性陣がとにかくもう面倒臭くて嫌だったの! あちらもそんな女性陣にうんざりしていたから、向こうも(わたくし)の事がというより、女が、結婚が嫌だと言っていたわね」



 それは、ちょっと面倒臭いですね。

 私もそう思います。



「だから彼と婚約してからは色んな嫌がらせをされたわ。だけど、(わたくし)は負けず嫌いで勝ち気だったのよ。一番は国の事もあったから、イルに群がる女性陣や(わたくし)にねちねちと嫌がらせする者達を蹴散らしたの。半分は(わたくし)のストレス発散ね。それをイルは見ているだけだったのよ。けど暫くそのような事が続き、嫌気がさしてきた頃に(わたくし)がイルに群がる女性陣とは全く違う人種の女だからと少しずつ話すようになったの。(わたくし)達にとって彼女達は共通の敵になっていたのよ。だけど(わたくし)はねちっこい女にうんざりしていたから、初めの頃はイルに八つ当たり気味だったわ。そこから色々とあってお互いに歩み寄りを努力していたら、いつの間にか好きになっていたのよ」



 なるほど、そういう事もあるのですね。

 ふむふむ、勉強になります。



「では、お祖母様達は政略結婚から恋をしたということでしょうか?」

「そうよ! 何があるか分からないわよねぇ。だけど、あの時は本当に色々と鬱陶しかったのよ!! それに、あの澄ました王太子が嫌いだったわ」



 お祖母様、かなりお冠だったのですね。

 私もそんなの面倒臭くて嫌になってしまいますね。



「だからね、政略結婚でも恋はできるわよ! ちなみに、オリーはアルノルドに猛アタックしてアルノルドを陥落させていたわね。今では丸くなったけど、あの頃のアルノルドは氷壁のよう冷たくて女性は誰も近づけない難攻不落だと言われていたのよ」

「⋯⋯今では考えられませんね。もしかして、家族間では丸くなったけど、お外ではまだそうなのですか?」

「そんなこと無いわよ。外面はよくなったけど、内面真っ黒で冷たいわよ」



 なんとなくそうかなぁとは思っていたけれど、伯父様、真っ黒なんですね⋯⋯。



「アルノルドより、アンセの方がどす黒いわよ」



 お祖母様が爆弾を落とした!

 そこは聞きたくなかったです!!

 なんだか、段々と暴露話に突入しているような⋯⋯、気のせいではないはず⋯⋯。




 暴露はちょっとあれだったけど、色んなお話しが聞けて楽しいお茶会と少しの暴露話は終了した⋯⋯。

 

ご覧いただき、ありがとうございます。

ブクマや評価を頂き、とても嬉しいです。

続きのストックが少し出来ましたので、今日から一週間は一日置きに更新いたしますので、よろしくお願い致します。

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