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目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第4章 忍び寄る闇
267/273

267 新たな年の始まり


 今日は交流会最終日で、社交会別対抗試合の決勝戦だ。

 勝ち上がったのは風紀部、生徒会、服飾部と園芸部で、今回は決勝進出常連の生徒会と風紀部の他の社交会は今回初めて決勝に進んできた。

 社交会別対抗試合は毎年内容が変わるのが見所のひとつだ。

 今回は芸術よりの内容が多くあり穏やかな試合といっても良いだろう。

 けれど、決勝戦はやはり見応えのある内容となっていた。

 試合は進み、最終種目は二人一組となり試合を行う。

 今の所風紀部が一位、二位が生徒会、三位が園芸部で四位が服飾部だ。

 試合内容に決まりはなく、相手が負けを認めるか場外へ出ると負けとなる。

 其々の部と一戦ずつ対戦し、勝利した点数と今迄の点数を足した合計で優勝が決まるので、まだ何処が優勝するかは分からない。

 三戦共必ず違う人が出る事、生徒会の場合は対戦相手が決めるので誰が出るかはその時のお楽しみだ。

 決勝戦と言えど、優勝したいという気持ちは何処も一緒で、一戦目の園芸部との対戦はハネルとソニアの二年の二人が指名され、二戦目の服飾部とはユーリアとエミリオの一年の二人。

 そして三戦目、最終試合の相手は風紀部だ。

 風紀部は部長と副部長の二人で、生徒会への指名はマティお従兄様とティナの二人だ。



「流石、シグルド部長とハルル副部長。真っ向勝負をするみたいだね」

「風紀部と生徒会は密接した関係。その辺の社交会とはやはり違うよ」

「レーア。流石にその言い方は他の社交会から睨まれるよ?」

「睨まれるのは嫌だけど、その通りだよ。フィリップだってそう思ってるでしょ?」

「まぁ、そうなんだけどね」



 次期生徒会長と副会長の二人は仲良くこの状況を分析している。

 対戦相手が決まり、マティお従兄様とティナの二人はアレーナへと向かう。



「会長と副会長は嬉しいだろうね。けど、あの二人の強さって学生の域を超えているから、直ぐに決着がついたりして⋯⋯」

「いや、そうとは限らない。シグルド部長は学園卒業後魔法師団へ。ハルル副部長は確か外務省だったかな」

「確かそうだったと聞いています。お二人共あまり表には出しませんが、風紀部とあって実力もありますよ」

「そろそろ試合が始まりますね」



 フィリップ達の会話に耳を傾けていたけれど、目の前では試合開始の合図があり、試合が始まった。

 二人一組での試合ではマティお従兄様が前衛、ティナが後衛として魔法を駆使するようだ。

 相手はハルル副部長が前衛を、シグルド部長が後衛を務めるようで、その陣をとっている。

 二人の試合を観ているから、今回この試合がどこまで見応えのあるものになるのか⋯⋯。

 あの試合を観た者はそう思ったに違いない。

 だけど予想を裏切り、風紀部の二人は強かった。

 ただ強いというよりも、相手の動きを読む力があるというか、実力もあるのだけれど、そういった所も優れていた。

 交流会では二人共文系の種目に参加していたようだからその実力は分からなかっただろう。

 けれど、この場にいる者達皆の予想を超えて見応えのある試合となった。

 マティお従兄様とティナは実戦経験も豊富で、やはり風紀部の二人は敵わなかったけれど、やり切ったという晴れやかな表情だった。

 最終結果は今迄の点差もあり、一位が風紀部、二位が生徒会、三位が園芸部、四位が服飾部と途中結果と変わらずで社交会別対抗試合が終わった。

 試合が終わり、表彰後に私達は生徒会室へと戻ってきた。



「皆お疲れ様。結果は二位と優勝を逃したけれど、生徒会の仲間と共に戦えて嬉しく思う。何よりも大きな怪我も無く、また今年は大きな問題もなく終えられた事、皆の協力があってこそだ。来週末は慰労会をシベリウス邸で行うので、皆予定が無ければ参加してほしい」

「この慰労会は強制ではないから、遠慮なく言ってくれていいわ」



 ティナの言葉に不参加の声は上がらなかった。

 全員参加するようだ。



「皆参加でいいかな?」

「「「はい」」」



 皆参加すると決まった時、生徒会室の扉が開いた。



「皆お疲れ!」

「⋯⋯⋯⋯」

「無反応は流石に悲しいな」



 その言葉にはぁとマティお従兄様はわざとらしく溜息をついた。


 

「ハセリウス先生、いつもながら自由ですね」

「それが信条だからな」



 何時もながら自由な先生で今みたいに悪びれもせずに堂々と言ってのけるのは凄いと思う。

 


「今年は二位と惜しかったが、いつも以上に不利な中で検討したな。一年の二人には感心したよ」

「ありがとうございます」

「今年は無事に終える事が出来たな」

「はい。珍しい事ですが、本来はそれが当たり前ですから」

「確かに。だがこう平和過ぎると少し物足りないな⋯⋯」

「先生、それは些か問題発言が過ぎます」

「悪い悪い」



 先生の口は悪いけどその表情からはやっと平和な本来の交流会を無事終えたという安堵感が漂っていた。

 先生は先生でいつも気を張っていらっしゃったのだろう。

 教師として生徒達の安全を第一に考えるのは教師の鏡だ。

 だというのにいつもは自由気ままで生徒会にもあまり顔を出さないのは平和な証拠、ということなのか⋯⋯。



「さて、明日明後日は休日だ。皆ゆっくり休み、直ぐに学園入試試験が始まるのでもう暫く気を許さずにな」



 先生は休日をゆっくりして学園入試試験の準備に備える様にと言って生徒会室を後にした。

 入試試験は約二週間後で休日明けから準備が始まる。

 休日の一日目はゆっくりと過ごし、この日は執務をお休みにして、側近達もお休みでゆっくりして貰い、翌日から執務再開だ。

 日々が過ぎるのは早く、入学試験前日、最終確認をして試験当日を迎えた。

 私は今回学園入口で試験を受ける子達の受付とどの教室で受けるのかの案内をする。

 一緒にそれを行うのはレグリスとリアムさんとケヴィン先輩の四人で対応する。

 受付に来た子達を見ると、緊張していたり不安でたまらない、逆に自信ありげな表情の子もいて私達は優しく対応するもこの場に私がいる事で逆に緊張してしまったり、固まったり顔が真っ赤になったりと何だか申し訳なくなる。

 


「従姉上! おはようございます」

「まぁ、アレク! おはよう。昨夜はよく眠れたかしら」

「はい、ぐっすりと! 今日は従姉上に受付をしてもらったので、絶対首席で合格しますから、よろしくお願いします」

「自信満々ね。応援しているわ。頑張ってね」

「はい! 行ってきます」



 可愛い。

 本人に可愛いなんて言ったら流石に年齢的に怒られそうだから言わないけどね。

 受付が問題なく終わり、欠席者もいないようだ。

 受付が終わると学園内の見回りだ。

 もうすぐ試験が開始される。

 私達は学園内入口から校内へ入り、二人一組で見回りを開始する。

 集中して試験を受ける受験者達の邪魔にならない様見回り、一日の試験が終われば受験者達が迷わない様に見守る。

 全ての受験生が帰宅するのを確認し、私達は明日の準備へと移る。

 明日は面接が行われるので、教室内を面接がしやすいようにと変える。

 それが終われば今日の生徒会の仕事は終わりだ。

 翌日の面接試験日。

 私とレグリスは滞りなく面接が行えるようにと先生方のお手伝いを行う。

 今日はアレクと会えなかったけれど、伯父様達の子だし、何よりマティお従兄様とレオンお従兄様の弟なのだから心配ないだろう。

 結果が楽しみだ。

 面接が終われば入試試験は終わりだ。

 受験生にとっては一旦試験が終わった事でほっとした事だろう。

 帰宅する受験生たちはやっと終わった試験にほっとしていたり試験を振り返ったりと様様だ。

 試験が終わると後は結果が張り出されるが、結果は一週間後。それが終われば私達の生徒の試験が始まる。

 そして貴族社会では社交シーズンの始まりだ。

 そう思ったら一年は本当に早く過ぎ去っていく。

 あっという間だ。

 試験の結果は、アレクは宣言通りに首席で合格をしたので、生徒会入りが決定している。

 一緒に学園生活を遅れる事に嬉しい。

 アレクとは入れ違いにマティお従兄様は卒業し、会う事も少なくなる。

 そう思うとまた寂しさが込み上げてくるが、シベリウス領の事を思えばマティお従兄様をいつまでも私に縛り付ける事は出来ない。

 

 今年の社交シーズン、最初の行事としては社交界デビューする十三歳の子息令嬢が日中に王城へ招き、王へと挨拶を行う。

 生徒会からはケヴィン先輩が社交界デビューをし若者達のお披露目となるが、当の本人はあまり気乗りしない様子だった。

 ヴィンスお兄様と私にその日お出ましになるのかと聞いてきたが、社交界デビューのお披露目には私達は参加しないと伝えると、落ち込みリアムさんに励まされていた。

 

 そうして社交会デビュー当日。

 日中に行われたデビュタントは滞りなく終わり、その夜からは社交界の始まりだ。

 私とお兄様は未だ未成年の為に相変わらず時間が限られているのでその間に交流を深める。

 お兄様は来年成人を迎える年となる。

 そうすると、もっと長い間夜会へ出席する事になるだろう。

 段々と私と一緒に行動する事も少なくなってくる。

 少し寂しいという気持ちはあるけれど、まだ正式に決まってないとはいえ、お兄様が次期国王になるのは間違いないので、今の内に多方面で交流を図って将来の国運営の為に人脈を作らなくてはならないのでそのお邪魔になるような事をしてはならない。

 今夜の夜会もお兄様とは別行動をし、私は私でご夫人方と女性ならではの交流を図る。

 今日側にいてくれるのはマティお従兄様とティナだ。

 この二人も相変わらずで共にいてくれるが、今夜私が会場を後にすれば、お従兄様はご自身の為にご友人と話をされるそうだ。

 というのも、シベリウス領に共に来てくれると仰ってくれている方がいるそうで、その方とご両親とお話されるそうだ。

 時間となり、ティナ達に見送られてホールを後にした。


 学園の試験も滞りなく終わり、私は成績を落とす事無く首席で一安心したが、レグリスが落ち込んでいた。

 次席のままだけれど、自分で間違った箇所を把握していて、後になって気付いたのだとか。

 かなり悔しがっていた。

 そして学園は冬の休暇に入り、私の誕生日会が行われる。

 それが終わるともう今年も残すところあと僅か。

 問題なく、新年を迎えられる事にほっとした。

 年明けは新年大神殿へ赴き祈りを捧げ民達への挨拶だ。

 雪は積もり、新年も雪が降っていて寒い年明けとなったが、それでも王都民達がこうして集まってくれるという事は、それだけ今の国が彼らにとって良き治世を築いているという表れだろう。

 その後は馬車で街を巡り王宮へと帰ってきた。

 三日間は執務も休みでゆっくりとした家族団欒を楽しむ。

 今年はフレッドのお披露目があり、その前にフレッドの側近を決める為のお茶会が開かれる。

 フレッドも今年は少し忙しい年になるだろうが、本人はいたってやる気満々で、漸くお父様達のお役に立てる第一歩だと意気込みが凄い。

 側近の一人にアレクが入っていて、アレクもその気だからお茶会ではアレク以外を選ばなければならない。

 そこが少し自信なさげだ。

 私の時は急な事でこちらからの指名だったので、アレクが同年代、若しくは年上の子達の中から選ぶとなったら、それは私でも悩むと思う。

 お茶会は今月末の週末に行う予定だというから、私達がそのお茶会を覗いてもいいというので、少しだけ顔を出そうかな。

 そうすればフレッドも少しは安心するだろう。

 お兄様と私はフレッドを安心させるため、一緒に顔を出すと約束した。

 三日間の休日が終わると、私達も仕事の始まりで、久し振りに執務室へ行くとティナとルイスが既に執務室にいて、書類の確認を始めていた。



「おはよう。二人共いつ来たのかしら」

「おはようございます。つい先程ですわ」

「早いから驚いたわ」

「そういうステラ様も早いですわよ」



 ティナにし指摘されたけれど、私が早く来るには良いけれど、二人共も時間通りで良いのにと思いつつも指摘するのをやめた。

 その次に来たのがマティお従兄様、フィリップにレグリス、ロベルトにディオと、そう時間を置かずに全員揃ったので、私は今年一年もよろしくと先ず新年の挨拶を行った。

 そして今年、四月のマティお従兄様が学園を卒業されるとシベリウス領に戻る事を改めて皆に伝えた。

 お従兄様と一緒にいれるのは後四か月。

 あっという間だけれど、この期間は沢山お従兄様と話をして、笑顔でいようと思う。

 でなければ、きっとお従兄様は私を心配してしまうから。

 

 冬の休暇もあっという間で皆は交代で休みを取って貰ったけれど、明日から学園の始まりだ。

 今日は昨年から続いているお茶会の日。

 相変わらずいい笑顔のエドフェルト卿にベリセリウス卿、そしてシルヴェル卿の三人だ。



「それにしても殿下は年々美しくなられますね」

「⋯⋯⋯⋯急に何を言っているの?」

「いえ。殿下の美しさにの前ではこの冬の雪景色すらも霞んで見えます」



 そう言ってエドフェルト卿は微笑む。

 段々と彼の私に対する評価、というか褒め言葉が過剰になりつつある。



「褒めても何もありませんよ?」

「何も求めてはおりません」

「その笑顔が怪しいわ」

「相変わらず殿下の中で私の評価はどうなっているのでしょうか」

「貴方は貴方のお父様と一緒で何を考えているのか分からないんですもの」

「父と一緒にされたくはないのですが⋯⋯」

「ヴィーは公爵様とよく似ているよ」

「確かに、アルヴィン様の性格はそっくりですね」



 ベリセリウス卿とシルヴェル卿から間髪入れずに一緒だと言われて大袈裟に嘆いている。

 そういう所も一緒だと思うんだよね。



「殿下にご提案があるのですが、よろしいでしょうか」

「何かしら」

「良ければ次回から我々三人の邸へお招きしたいと思います。殿下の良き気分転換にもなりましょう」

「中々王宮の外へお出掛けにならない殿下にとってはいい口実ですね」

「その提案、陛下はご存じなの?」

「勿論です。殿下に確認して良いと言えば許して下さるそうですよ」



 それって、このお茶会自体を本当にそうなるように仕向ける為なのか、お父様のお考えはきっと私をあちらへ行かせたくないから何だろうけれど。

 だからと言って、この提案を断れば何かしら言われるのは目に見えている。

 それに、最近では私の婚約者候補としてこの三人の名が定着しつつあるが、他国からの婚約打診のが無くなるわけでは無かった。

 寧ろ増えているとこの間宰相が言っていたので、このお茶会が功を成しているのか疑問が残るが、此処で私が其々の邸へお茶会に行くようになれば、減るだろうか。

 各家でのお茶会には結局三人も一緒なのだから変な噂が立つ事は無いだろう。

 

 

「分かりましたわ。陛下がそう仰っているのならよろしいですわ」



 まさか私が頷くとは思っていなかったようで、三人共に驚いていた。



「お断りすると思っていたの?」

「はい。殿下はこのお茶会自体、好んでいるように思いませんでしたから」

「理由が理由ですから。けれど、(わたくし)が貴方方のお邸に赴くと、将来に差し支えないでしょうか。そこが心配ではありますわ」

「問題ありませんよ。私は親戚筋から婚約者を決めますから」

「私もまだ先の話のですので。今だけその様に噂されるのは自慢になります」



 ベリセリウス卿とシルヴェス卿は何ら問題ないと話す。

 シルヴェス卿に至っては、何故か自慢になるとかいう部分はちょっとよく分からないけれど、エドフェルト卿は何だか怖い笑顔になっているけれど、どうしたのかな。



「エドフェルト卿、どうかなさったの?」

「いえ。では殿下の許可も頂きましたので、次回のお茶会は順番に邸へお招き致します。詳細はまた後日でもよろしいでしょうか」

「勿論ですわ」



 次回はこの三人の内、誰かの邸へ招かれる事が決まり、お開きとなった。

 

 

 

ご覧いただきありがとうございます。


ブクマ、いいね、評価をいただき、とても嬉しいです。

ありがとうございます(ꈍᴗꈍ)


次回も楽しんでいただけたら幸いです。

よろしくお願い致しますm(_ _)m


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