251 末弟の悩み
今日から長期休暇の始まりだ。
側近達は順番に休暇を取る事になっている。
私も同様だ。
初日は兄妹水入らずで過ごす約束をしており、朝からフレッドがべったりと私とお兄様に引っ付いている。
真ん中にフレッド、両サイドに私達。
王宮の一角にある庭園で横並びに座る私達を側で従う侍女や近衛は微笑ましいとばかりに私達を見守っている。
「フレッド、ちゃんと座ろう」
「嫌です! お二人共忙しくて全然ゆっくり会えないから、たまには許してください!」
絶対離さないとぎゅうっと握りしめてくる。
――可愛すぎる!!
フレッドの可愛さに悶えていると、お兄様からくぐもった笑い声が漏れた。
不思議そうにフレッドと揃ってお兄様を見ると、更に笑い声が上がった。
「お兄様?」
「ふふふ、あぁ、ごめんごめん。あまりにも二人が可愛いからつい」
目尻に涙が溜まっているのを拭ってはぁと笑いを引っ込めた。
「フレッドは昨日のステラと一緒だね」
「なっ、お、お兄様! それは言わないでください!」
「姉上と一緒?」
「そうだよ」
「お兄様!」
昨日帰りの場所でのことを暴露されかけ、慌てて止めに入るが誂う気満々のお兄様はにやにやと笑みを浮かべている。
気になる言い方をするものだからフレッドは聞きたくて仕方がない様子。
だけど必死で止める私と、端から見れば微笑ましい光景だが当人としては断固阻止したい!
「姉上、聞いたら駄目ですか?」
「フレッド、そんな目で見つめないで」
上目遣いにウルウルとした目で見られると弱い。
じーっと見つめてくるフレッドにたじたじになり、私はあっさりと陥落した。
「フレッド」
「はい!」
「姉上じゃなくてお姉様って呼んで?」
「え?」
何を言われたかよく分かってないフレッドはきょとんとしていたが、それもまた可愛い!
「お・ね・え・さ・ま」
「お姉様?」
「これからは、そう呼んでね」
「え、姉上じゃだめですか?」
「だめ」
「ぶっ!」
フレッドの隣からまたくぐもった笑い声が聞こえる。
その声の犯人はお兄様だ。
反対方向を向いてブルブルと肩を震わせている。
「分かりました! お姉様、昨日の事教えてください」
そこは忘れていなかったみたい。
ちょっと忘れてほしいなぁと、考えは甘かった。
じっと純粋な目で見つめられ、私は昨日のことを語った。
と言っても内容が内容なんだけど⋯⋯。
「お姉様には僕達がいます。だから寂しくないですよ?」
「そうね⋯⋯」
「お姉様は違うのですか?」
フレッドは昨日のお兄様みたいにぎゅっと私の腕を離さないとばかりに力を入れる。
思ったより力が強くてびっくりした。
「フレッドがいるから寂しくないわ。けどね。マティお従兄様にはいつもそばで沢山助けてもらったから」
「お姉様⋯⋯」
「まぁけど、年の瀬には何かない限り王都に来るだろうから、全く会えない訳じゃないよ」
「そうですね」
「そうですよ! それに従兄ですから気軽に会えます。お祖父様のいらっしゃる離宮に来てもらったらどうでしょう?」
フレッドの言葉に私とお兄様は吃驚して目を見開いた。
「あれ? どうしたのですか?」
「あ、あぁ。フレッドがまさか提案してくるとは思わず⋯⋯。成長したね」
「お兄様の仰る通りですわね。頼もしいわ」
褒められたフレッドは照れながらも嬉しそうにはにかんだ。
漸くフレッドが腕を離したので私達は少し先にあるガボゼへ向かった。
久しぶりの兄妹水入らずのお茶会で、今日は私が直接手作りしたお菓子が満載だ。
「美味しい! お姉様、このふわっふわのケーキ? これすっごく美味しいです!」
「これは驚いたな。この間のよりふわふわだね。」
「少しばかり作り方が違うのです」
「お姉様! この添えてあるクリームやアイスと一緒に食べるととっても美味しいです。けど、このアイスに入っているのは何ですか?」
「桃を混ぜてみたの」
フレッドが言っているのはアイスに混ぜた果物の事。
今回は桃を混ぜたアイスを作ってみたのだけど、フレッドは気に入ってくれたみたい。
お兄様を見るとこちらも気に入ったのか美味しそうに食べていた。
「とても美味しかったよ。これは暑い夏にぴったりだね」
「良ければ今度執務の合間の休憩に食べれるように伝えておきますね」
「ありがとう!」
こんなにのんびりするのは久しぶりな気がする。
「フレッド」
「はい、兄上」
「最近の授業はどう?」
「そうですね。楽しいです。難しい所もありますけど、新しく覚えることが楽しくて頑張っています」
「そうか。あ、そうだ。私の事はお兄様って呼んで?」
「え? け、けど⋯⋯」
呼び方ひとつでとても迷っている、というより悩んでいるフレッドを見て私とお兄様は不思議に思って顔を見合わせる。
「フレッド、私はフレッドにお兄様と呼ばれると嬉しい。兄上と呼ばれるよりもっと仲が良いと感じるんだけど、フレッドはどうだ? 勿論今もフレッドが自慢で可愛くて今後が楽しみなんだけどね」
「兄上⋯⋯。嬉しいです。あの、お兄様ってこれからは呼びます。お兄様が喜んで下さるなら僕も嬉しいから」
歯切れが悪く、けどお兄様を気にしてかの発言が気になる。
「こら。フレッドが嫌ならいいんだ。フレッドの気持ちが大事だからね」
「いえ、お兄様って呼びたいです!」
なんだかフレッドは何かを隠しているように思う。
何かは分からないけど。
以前フレッドに要らぬ妄言を吹き込んだ奴はお兄様が辞めさせた。
今はどうなんだろう。
「フレッドは何の授業が楽しいの?」
「えっと、今はゼフィールの言葉を覚えるのが楽しいです」
「どの程度話せるようになったんだい?」
「日常生活程度は。けどまだまだ難しいです」
「もう? 私、フレッドの年の頃はやっとゼフィールの文法を理解して基本的な会話が出来るようになったばかりだったわ」
「そうなのですか?」
「えぇ。ゼフィールの言葉って少し独特ですもの。だからフレッドは凄いわ。もっと自信を持っていいのよ」
褒めると恥ずかしそうに俯いたけれど、その顔には嬉しいと顔に書いてある。
けれど、その中にほんの少しだけ負の感情が見えた。
「フレッド、苦手な授業はあるのかな?」
「苦手、ですか?」
「あぁ。私はお茶の種類を覚えるのに苦労した。マナーの一環だが、そこまで興味が持てなくてね」
「お兄様も苦手な事があるのですね」
「ステラは私を何だと思っているんだい?」
「完璧なお兄様?」
「なんで疑問形なのか気になるけど。苦手な事くらいいっぱいあるよ。お茶は飲めれば何でもいい」
初めて知った。
お兄様って何でも出来て苦手な事なんてないと思っていた。
私も驚いたけど、フレッドはもっと驚いているようだ。
「完璧じゃなくていいんですか?」
「何故?」
「だって、教師達は完璧に出来ないとお兄様の役に立たないって⋯⋯」
「ほぉ。教師達がね」
これは何かある、とお兄様と私はちらりと視線を合わせる。
「フレッド、完璧は流石に難しいわ。私も完璧とは程遠くて、皆に助けて貰っているのよ」
「私もそうだよ。勿論覚えておかないといけない事は努力するけれど、細かい所はね。フレッドも助けて貰っていいんだよ」
フレッドが目を見開いている。
一体教師達に何を言われているのか。
私は王宮で学んだ事は、ほんの一瞬だったから分からないけれど、お兄様の教師達とまた別なのかな。
ふと疑問に思ってお兄様を見ると、どうやら違うみたい。
これは一度フレッドの授業中を見てみたい。
けれど私達がいれば猫を被るかもしれないので見学するのは悪手だろう。
一度お兄様と話し合った方がいいかも。
ちらりとお兄様を見ると、お兄様も同じ考えなのか頷いた。
「フレッド。授業で気になる事はあるかしら。例えば、少しでも疑問に思ったり教師達の言葉に引っかかりを覚えたり。些細な事でもいいわ。お姉様達に教えてくれる?」
「それ私も知りたいな。教師達が必ずしも正しいとは限らない。フレッド自身の考えを聞きたいな」
私とお兄様はフレッドが気負わない様に出来るだけ優しく聞いてみると、ぎゅっと口を結び一度下を見てぐっと私達を見返した。
「前にお兄様達が教師の一人を解雇してくださいましたよね」
「したね」
「後任の教師は父上に対して反感はなく、畏敬の念を持っています。僕に対しても丁寧に接してくれます。けど⋯⋯」
「けど?」
「他の教師は、特に歴史のアーランド・ベルマン。彼は僕に対していつも完璧であるべきだと、でなければ兄殿下が幻滅をする。特に色の薄い殿下は自身が思うよりも努力を重ねなければ貴族からの反発もあり陛下の治世を手伝う事は難しいだろう。今のままだとお披露目をすれば、陛下が悲しまれる、と。言い方は丁寧でしたが言っている事は僕を含めて父上を貶める言葉。けど、今の僕に反論出来る術がありません。全然違うこともないから。だから、彼奴に好き勝手言われてしまいます」
ぎゅっと手に込める力が無力なのだと悔しそうに俯く。
自分がまだ子供だからとぽたぽたと涙をこぼす。
その涙を見た私とお兄様は仲良くぶちっとキレた。
「フレッド、我慢する必要はない。無礼な奴をのさばらせておく方が問題だ。だから言い返していい」
「そうよ。フレッドは私達の大事な弟でお父様達の大事な子供なんだから。他の貴族がどうとか無視して良いわ。そんな事はフレッドのお披露目が終わり、公へ出る様になってから評価されるの。見た目で判断するような者達の意見は聞かなくていいわ」
「ステラの言う通りだよ。だから泣かなくていい。私達がそばにいるから」
お兄様と二人でぎゅっとフレッドを抱きしめる。
彼が落ち着くまでそうしていると、「泣いてごめんなさい」と小さく謝った。
「お兄様、お姉様。僕、悔しくて泣いてるだけですからね!」
「「っ!!!!!」」
今の負けず嫌いなちょっと上目遣いできっと目に力を込めて、けどウルウルと涙を溜めた目で訴えてくる、なんとも可愛い生き物に二人は内心悶え苦しんだ。
――なになになに!?!?!? 可愛すぎるんだけどーーー!!!
――弟が可愛すぎる!!! まずい。これは可愛すぎて外には出せない!!!
兄妹揃って心の中が荒れ狂っているが、当の本人は至って真面目のようで仲良く口元を押えて悶えている二人を見て更に畳みかけてきた。
「僕は本当に悔しいんですっ!!」
「ご、ごめん! あまりにフレッドがかわ、い、いや。真剣だからっ」
「フレッド、お兄様も、私もフレッドを揶揄ってないわ! ただね、その、あのね⋯⋯」
だめ! 何を言っても言い訳にしかならないし、可愛いという言葉しか出てこない!!
お兄様を見るも私と同じなのか、普段と違いいい言葉が出てこずにしどろもどろしている。
「そうだ! 明日の予定は?」
「え? 明日ですか?」
急にお兄様が真面目に明日の予定を聞くも、先程までの事があるからフレッドはきょとんとしてお兄様を見上げている。
「明日の午前中は語学と教養、午後に芸術と、歴史です」
「そうか。明日はいつもより堂々と、疑問に思った事、相手が無礼な発言をしたら指摘しなさい。フレッドは陛下の末王子で私達の大切な弟だ。発言権はあるからね。下手に黙っていると相手をつけ上がらせる。時にはそれが有効的な手段でもあるけど、それはまた今度だね」
信じているからとお兄様に言われ、フレッドは力強く頷いた。
その日の夜、私はお兄様の宮を訪れた。
「お兄様、明日の事ですけど、私が先にフレッドの所に行きますわ」
「どうしてだい?」
「お兄様が行けば相手はきっとお兄様に阿るでしょう。けれど、フレッドに対してあのような言動をするならば、きっと私に対しても同じでしょうから」
「ステラがそうやって率先して嫌な思いをする事ないんだけどね。けど、確かにその方が口を滑らすかな」
思案顔のお兄様に私はすかさず言葉を掛ける。
「お兄様は後からお部屋に入って下さいませ」
「分かった。そうしよう」
断られない様にとの私の意図が分かったのか、苦笑して了承して下さった。
翌日、執務室へ行き、今日の私の仕事は十四時までで王宮に戻る事を伝えた。
少しばかり迷惑を掛けるかと思ったけれど、何故か喜ばれた。
その様子を見て、どうして喜んだのかと聞くと、私が全く我儘を言わない上、休みが少ないと思っていたとの事。
けど、休みはちゃんととっているし、最初の我儘って何?
さらに聞くと、私が仕事を優先させるものだから、もっと我儘になってもいいと言われた。
それって王女としてどうなのかと思ったが、皆は仕事を優先させ過ぎな私をどうなのかと思っていたらしい。
そんな事も無い、くもないかな? と少しばかり振り返る。
早めに帰るので集中して仕事を終わらせる。
時間より少し早く、お兄様が迎えに私の執務室を訪れた。
「ステラ、帰るよ!」
「はい、お兄様!」
その時点で皆があれ? とヴィンスお兄様が一緒だという事に驚いたようだ。
そしてその表情を見て皆何かあったと思ったらしい。
「ふふっ、お兄様、楽しみですわね!」
「あぁ! 楽しみで仕方が無いな」
意味部かな言葉と共に執務室の扉が閉まった為、残された皆は何があったんだと少し怖かったと話ていたと聞いたのは翌日の事。
これはまた別のお話。
王宮に戻り、向かった先はフレッドの書斎へと向かった。
その途中、フレッドが言っていた歴史の教師、アーランド・ベルマンが歩いていた。
私達はそっと身を潜めた。
「顔を見たのは初めてだな」
「何だか表情から一癖、二癖もありそうですわ」
「見た目で判断するのはどうかと思うが⋯⋯」
そうこうしている内にがちゃりと扉を開き書斎へと入って行った。
「ノックすらしないの!?」
「あり得ないな」
取り敢えず、部屋の前で待機し、耳を澄ませると中の会話が聞こえてきた。
だが、その態度があまりにも横柄でフレッドに対して一応丁寧に話しているつもりらしいが、その内容が頂けない。
まだ奴が入って数分。
授業を始める気配はない。
宿題の話から昨日フレッドが話していた内容が奴の口から放たれる。
完全にフレッドを下に見ている態度だった。
だが、昨日私達に話をしたからか、フレッドはその教師に対して冷静に言葉を返した。
けれど、まだ今年で七歳になるフレッドを完全に見下しているため、奴には全然届かない。
それどころか、私達の事を持ち出してきた。
ヴィンスお兄様の事は優秀だと褒め称えているが、如何せん、上から目線だ。
横で聞いているお兄様のお顔は口角が上がって目が笑っていない。
聞いていて不快よね。
次に私の話に変わった、が、やはり私の思った通りだった。
奴は王宮で過ごしてこなかった私が出来損ないだと言った。
ただ努力して今の様に周囲に認められるようになったのだと。
努力は間違ってないわ。
だけど、出来損ないと言われるのは心外だ。
今も血を吐くような努力を重ねなければ直ぐに地の底へ落ちるだろうとも発言している。
「お兄様、そろそろ行ってきますわ」
「⋯⋯やはり行くのか?」
「えぇ。絶好の機会でしてよ」
「分かった。頃合いを見て私も行くからね」
「はい、お待ちしておりますわ」
そう言って私は部屋の扉をノックした。
『誰だ? まだ授業中なんだが⋯⋯』
誰が来たのか確認もせず、その大度はよろしくない。
「授業のお邪魔をしてしまってごめんなさいね」
私は返事を待たずに扉を開けて中へと入った。
王女が来るはずないと思っていたのか、私の姿を見てビクリと体が揺れた。
「ど、どうされたのですか?」
「ふふっ。私、王宮で授業を受けた事が無くて。可愛い弟がどのような授業を受けているのか知りたかったのです。見学してもよろしいかしら」
一応お伺いはするも、私は否を言わせないよう圧を掛けた。
流石にそれは分かったのか、面倒だなとでも言いそうな顔で首を縦に振った。
「見学するのは構いませんが、執務はよろしいのですか?」
「午前中に終らせたわ。今はそれ程忙しくないの。それより何故そのような事をお聞きになるの?」
少し頭の緩い子だと思われるような仕草で聞き返すと、先程のは気のせいか、と小さく呟き、ふっと口角が上がった。
――単純ね。
呆れるほどに単純だ。
「殿下が心配なのです。本来であればこの王宮で授業をお受けになる筈が、辺境の地で勉強をし、果たして宮廷でやって行けるのかと」
「まぁ! 伯父様はちゃんとした教師を雇って下さいましたわ」
「それはそうでしょう! それでも、王都に比べたら、いえ、比べるまでもありませんね。何もかも遅れている辺境の地では満足に学べなかった事でしょう」
この人は本当に歴史の教師なのかと疑問が浮かぶ。
私が黙った事を良い事に、授業が始まらず、ずっとあーだこーだとつらつらと持論を述べている。
一体いつ授業が始まるのか。
フレッドを見ればいつもの事なのだろう、首を振っている。
「あの、先生? 授業はいつ始まるのでしょう?」
「何を仰っているのです? とっくに始まっていますよ。聞いていらっしゃらなかったのですか?」
何とも人を馬鹿にしたような言い方だ。
何処が授業なのかちっとも理解できない。
「ここまでずっと貴方の持論ばかりでしたわ。どこに歴史の要素があったのでしょう?」
私がズバリ持論ばかりで教師として役割を果たしていないという意味を込めたのが分かったのか顔を真っ赤にしてぷるぷると震えている。
「歴史とは、時代の移り変わりにどのような出来事があり、どのように変化し、国が成長してきたか。また過去の偉人達が何を成し遂げてきたかを学ぶ為にありますが、普段はどのような事を習っているの?」
最後はフレッドに直接聞いてみた。
「普段からあの調子です。たまに書籍を使って読んだりしていますが、殆どが独学です」
「まぁ! フレッドは賢いわね。このような教師に文句を言わず、自分で学んでいるなんて!」
「うっ、褒め過ぎです、お姉様」
本気で照れるフレッドに、質問と言って、私が歴史の問題を出して行くと、フレッドは淀みなくスラスラと答えていく。
その様子にベルマンは怒りを通り越して赤から黒へと顔を変化していった。
――面白いわね。
私がその変化を冷ややかに思っていると、とうとうダンッ! っと卓上を手に持っていた分厚い本の角で叩いた。
「今は私が授業を行っているのです! 邪魔をするなら出ていけ‼」
とうとう切れてしまった。
私は思わずにこりと微笑み口を出そうとするが、そこへ誰かが入室してきた。
誰か、といっても我らがお兄様だ。
「乱暴だな。しかもその言葉遣いは何だ? 王族に対し、そのような態度が許されるとでも?」
ここで第一王子であるお兄様が入ってきた事で流石に拙いとでも思ったのか一瞬で大人しくなった。
「こ、これは違うのです!! 王女殿下が乱入し、授業を妨害される為、流石に教師である私を蔑ろにすることは私の矜持がっ!?」
「少し黙れ」
お兄様は一言でベルマンを黙らせた。
「私が何も知らないとでも思っているのか? 外で聞いていたがお前の持論と我々を侮辱する発言、そして歴史深く我が王家とも縁の深いシベリウス辺境領を見下し歴史の教師だというのにあるまじき発言。大切な末弟の教師は任せられない。お前は今を持って暇を出す。あぁ、それだけではない。今迄の事調べさせて貰った。今後、教師として生きていけると思うな」
色んな意味で生きていけるとは思えない。
近衛が教師を連行していくが、その間も暴言を吐き続けていった。
ご覧いただきありがとうございます。
ブクマ、いいねをありがとうございます(ꈍᴗꈍ)
次回は土曜日に更新しますので、よろしくお願い致します。





