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目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第1章  大切なもの
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25 癒しと不安


 王都へお養父様達が出発した日から気付けば一週間経っていた。

 私は相変わらずの日常を送っている。

 運動も毎朝と一日置きに欠かさずしているので、大分体力も付き、疲れることが少なくなった。

 淑女教育はお養母様が王都へ行っている為、帰ってこられるまではお休み。

 その休みを利用して、アレクと一緒に過ごしている。

 それ以外の授業はきちんとこなして、大分この生活にも慣れたと思う。

 そんな日常を壊すこともなく平和に過ごしている。

 イクセル様も毎夕いらっしゃるけれど、最近は世間話や領の事を教えて貰ったりしている。


 さて、今日は休息日なので、レオンお兄様とアレクと一緒に過ごす約束をしていた。

 昼食後庭に散歩に行き、花を愛でながらシートを木陰に敷き、ささやかなお茶会を行った。


 アレクもしっかり歩くので、虫を追いかけたりお花で遊んだり、見ているだけで癒される。

 私はレオンお兄様とお話ししたり、アレクと遊んだり、とても楽しい一時を過ごした。


 そんな時、アルヴァーが此方に来た。



「レオナルド様、イクセル様がいらっしゃっていますので応接室へお越し下さい」



 この時間に来るなんて珍しい。

 何かあったのかしら。



「イクセルが僕を訪ねるなんて、何かあったのかな?」



 レオンお兄様も同じ事を思ったようだ。


 

「内容はお伺いしておりませんが⋯⋯」

「そっか。シア、ちょっと行ってくるから、アレクをお願い。クラース、シア達を頼むよ」

「分かりましたわ。行ってらっしゃいませ」

「畏まりました」



 お兄様はアルヴァーを伴って邸に戻って行った。

 アレクが不安そうな顔をしていたので、私はにっこり微笑んで、アレクを安心させた。



「アレク、大丈夫だよ。お兄様はお話しを聞きに行っただけだからね」

「おはなし?」

「そうよ。だからお姉様とここで待っていましょうね」

「はい!」



 アレクの笑顔は可愛い!!

 癒される!




 シア達が庭で楽しんでいる頃、僕は応接室でイクセルと話をしていた。



「僕に話って?」

「一応報告と注意を促しに参りました」



 報告と言うことよりも、注意に対して少し身構える。

 何かあったのか⋯⋯。

 取り敢えず、話を聞こう。



「何があったの?」

「まだ何があったわけではないのですが、街で見馴れぬ、少々怪しい連中がいるとギルドから報告が入りまして、今調査中です。今は閣下達がいらっしゃらないので、邸でも注意をして頂きたく参りました」

「目的がまだ何か分からない、か。シアを狙ってきた連中ではなさそう?」

「完全に否定することはできません。ですが注意するに越したことはありません」

「それなら邸内でもクラースを護衛に付かせた方がいいね。勿論アレクにも」

「レオナルド様、貴方も同様ですよ」

「⋯⋯分かっているよ」



 ちょっと窮屈に思いながらも、仕方ない⋯⋯。

 四六時中側にいると息が詰まるんだよね。



「それより、父上に連絡は?」

「報告済みです。閣下からは、アリシア様を狙っている可能性は大いにあるから警戒は怠るな、との事です。ですので、邸には昼夜問わず不自然にならないぐらいの騎士を配置いたしますので、ご承知ください」

「分かった。よろしく頼みます」

「では、また夜に伺います」



 イクセルは報告をして領主館へ戻っていった。

 僕は少し緊張していた。

 今は父は勿論兄もおらず、周りには頼りになる者達は大勢いるが、シアやアレクが襲われたら⋯⋯そんなことを考えると少し不安になる。

 けどそうも言ってられない。

 とにかく、夜イクセルが来るまではシアには黙っておこう。

 僕はアルヴァーに邸の者達に警戒を促すようにと命じ、僕の護衛を呼ぶように伝えた。

 暫く待つと、エドガー・ハルネスがやってきた。

 彼が僕の護衛騎士だ。



「お呼びですか?」

「さっきイクセルが来てね、街に怪しげな連中が入り込んでいるらしく、警戒のために暫くは邸内でも警護を頼むよ」

「畏まりました」

「⋯⋯何か言いたそうだよね?」

「お顔に出てますよ、窮屈だって」



 エドガーはそう言って笑った。

「うるさいよ」僕はそう言ってそっぽ向いた。



「それはそうと、その連中の目的は分からないんですか?」

「調査中で、分かり次第こっちにも連絡が来るよ。だから邸内でも護衛が必要と言うわけ」

「レオン様よりお嬢様やアレクシス様に必要なのでは?」

「勿論二人にも付けるよ」

 


 本当にもしもの時は、シアを守るのが第一だ。

 さて、そろそろ二人の所に戻らないと不安がるよね。



「エドガー、シア達のところに戻るからよろしく」

「畏まりました」



 


 アレクが私のお膝で寝ちゃったので、動けないでいた。

 寝顔がほんとに可愛い!

 アレクの顔立ちってお養母様似だよね。

 髪の毛も柔らかい。

 ほっぺももちもち⋯⋯

 触り心地良い!


 そんな事を思っていると、レオンお兄様が誰かと一緒に戻ってきた。



「シア、お待たせ。アレクは寝ちゃったの? 可愛いなぁ」

「可愛いですよね! ほっぺもぷにぷになんですよ。 可愛くてつんつんしちゃいます!」

「ほんとだ、もちもち! ずっと触ってられるね」



 そんな私達をモニカ達は呆れてみていた。



「シア様、レオナルド様。あまりほっぺをつんつんされていると、アレクシス様がお起きになられますよ」



 それはダメだわ!

 折角気持ち良さそうに寝てるのに。

「ごめんね、アレク」と小声で謝った。

 レオンお兄様はアレクを部屋へ寝かすように侍女達に指示を出していた。

 その際、お兄様と一緒に来た方もアレク達に付いていった。

 アレクの護衛の方かな?



「お兄様、お疲れ様です」

「うん、ありがとう」



 何か隠してる感じがしたけれど、気にしない方がいいのかな。

 少しして、先程の方が戻ってきた。



「アレクシス様をお部屋へ戻られたのを確認してきました」

「ありがとう。シア、紹介するね。彼はエドガー・ハルネス。僕の護衛騎士だよ」

「お初にお目にかかります。エドガー・ハルネスです。お見知りおきください」

「はじめまして、アリシアです。よろしくお願い致しますね」



 お兄様の護衛騎士だったのね。



「アレクも寝ちゃったし、僕達もお開きにしようか」

「はい」

「シアはこの後何するの?」

「図書室で本を借りてきたので、続きをお部屋で読もうかと思っています」

「シアはほんとに本が好きだね」

「面白いですよ。いろんな事が知れるのでとても楽しいです」

「シアが楽しそうで何より」



 レオンお兄様、逃げましたね。

 追撃はせず、私達は部屋へ戻った。


 部屋へ戻ってからは先程、お兄様に伝えた通り本を読んで過ごした。

 夕食はお兄様と一緒に摂り、その後イクセル様との報告会。

 いつも通り、一日の報告をしたのだけれど、今日は少し違った。



「日中、レオナルド様にもお伝えしたのですが、現在街には怪しい連中がおりまして、ギルドの者達が調査しております。何が目的かはっきりしていませんので、アリシア様にも警戒をしていただきたく、クラースを邸内でも側に置いてください」

「分かりましたわ。⋯⋯街の人達は大丈夫なのでしょうか?」

「今の所は諍いは起こっておりませんから大丈夫ですよ」

「それを聞いて安心しました」



 私は街の人々に何も無いことに安堵した。

 昼間にお兄様が席を外したのって、この事だったのね。

 何事もなければ良いのだけれど⋯⋯。



「アリシア様は落ち着いていらっしゃいますね」

「そうかな?」

「はい」

「慌てても良いことはありません。今の所何も分かっていないわけですし」

「左様ですね。邸の警護も手配しておりますので、ご安心下さい」

「ありがとうございます。皆様も気を付けて、よろしくお願い致しますね」

「畏まりました。何かありましたら遠慮せずになんでも仰ってください」



 イクセル様はそう言って部屋を後にした。



「シア、本当に大丈夫?」

「大丈夫ですけれど、大丈夫に見えませんか?」

「いたって普通に見えるよ。シアは凄いね」

「凄くはないです。(わたくし)はまだ子供ですし、何も力はないので、皆様の足手まといになら無いようにするだけですよ、レオンお兄様」



 私は⋯⋯本当は悔しい。

 まだ子供で力もなく、何も出来ないことに。

 だからこそ何が起きても足手まといになら無いように行動するだけ。

 もし、今回の怪しい連中が私を狙っているならば、護られる立場として、そう行動するだけの事。



 ――早く強くなりたい⋯⋯。



 頭では分かってはいるけど、心の中ではそう思わずにはいられない。

  

 

ご覧いただきありがとうございます。

ブクマも嬉しいです。

また次話も楽しんでいただければと思いますので、よろしくお願い致します。

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