22 休息日
今日は休息日。
朝の支度が終わり、朝食をいただく。
早朝の運動は、休息日はお休みをくださいと言われてしまい、そちらも休みとなった。
ちょっと残念だけど休みは大事よね。
休息日の昼食はお養父様達と共にいただくことになっているので、それまでは昨日借りた本を読んで過ごす。
あっ、ちなみに、授業で出されている課題については早々に終わらせております!
今日は歴史書を読みましょう。
グランフェルト王国の成り立ちから、初代王の功績や生涯が書かれているが、この本には王の事ばかりでなく、生涯一人の伴侶である、ヴィルヘルミーナ王妃、王の仲間であり、建国時やそれからの運営を支えた者達の事も詳しく書いてあった。
余談だが、王族は必ずミドルネームが付く。
その名こそが、初代王と王妃の名前だ。
お二人の想いを受け継ぎ、国を支え、国民を守り平和を続かせる事を忘れずに⋯⋯、王子には王の、王女には王妃の名前を戴いている。
真剣に読んでいると時間もあっという間に進み、私は集中して読んでいた為、モニカに声をかけられても気付かなかったようで、肩をポンポンとされてようやく気が付いた。
「とても真剣に読んでおられましたね。ですがそろそろ昼食のお時間ですので」
「ごめんなさい、全然気付かなかったわ」
「いえ、大丈夫ですよ」
私は本を置き、準備をして食堂に向かった。
休息日は昼食も皆でいただいている。
私が先に付くと、時間を置かずにお兄様達がやってきた。
「ごきげんよう。マティお兄様、レオンお兄様」
「「ごきげんよう、シア」」
「今日は休息日だし、ゆっくり出来てる?」
「先程まで本を読んでおりました」
「あぁ、昨日図書室で読んでいた本だね。シアは本が好きなの?」
「はい! 色んな事が分かり楽しいです」
「シアはすごいね。僕本なんて読むの苦手だよ」
レオンお兄様は本が苦手なようだ。
話をしていると、お養父様達がいらっしゃったので、私達は挨拶をして席に着いた。
お養父様の合図で食事を始める。
私も運動を始めてからしっかりとした食事を摂るようになったので、ちょっとふっくらして、健康的な年齢に合った体型に戻った。
お食事も済んで、各々部屋に戻る。
お養父様とのお茶会まで後二時間程あるので、それまでは先程の続きを読む。
後少しだったので、読み終わるのも早かった。
少し早いけどお茶会の準備をして、先に図書室へ本を返却に行きお茶会の場所へ向かう。
今日も温室の中なのでお花を楽しみながら行くと、既にお養父様がいて驚いた。
お養父様だけでなく領主館で会ったお養父様の側近のイクセル・アルセン様もいらっしゃった。
「申し訳ありません。お待たせしてしまいましたか?」
「いや、私が早く着いただけだから気にしなくていいよ」
「イクセル様、ごきげんよう」
「ごきげんよう。以前お会いしたときよりも健康的になられましたね。安心いたしました」
「ありがとうございます」
――あれ? 今の言い方って、イクセル様はご存知なのかしら?
疑問は残るが挨拶をして席に着く。
「イクセルも席へ」
「はい、失礼致します」
立っていたのは私が来た時に挨拶するためだったみたい。
皆が席に着いたので、ロニア達がお茶の準備をし、温室から下がった。
やっぱり⋯⋯。
「さて、話を始めようか。まずはシア、想像している通り、イクセルにはシアの事情を全て話してあるから気にせずに話なさい」
「分かりました」
「閣下よりお伺いしていた通り、とても聡明ですね」
お養父様の鋭さに呆れてしまう。
何故わかったのでしょう?
お養父様は笑いながら「言っただろう?すぐ分かる」と。
凄すぎです。
「私ってそんなに分かりやすいでしょうか⋯⋯」
流石にすぐ見抜かれるなんて落ち込んでしまう。
お養母様の教育で殊更気を付けているのに⋯⋯。
「お嬢様、大丈夫ですよ。閣下の鋭さは化け物並みですから」
そうイクセル様は仰ったけれど、化け物並みって⋯⋯、そんな風に言っても大丈夫なの?
そんな事を思っていると、イクセル様は「私と閣下は学園時代からの腐れ縁ですから」と。
「イクセルぐらいだよ、堂々と私を化け物に例えるのは」
「まぁ、学園時代からアルの能力を目の当たりにしているからなぁ。そう言いたくもなるさ」
イクセル様の口調が砕けたものとなり、普段はそういう話し方なのかな?
「お二人はとても仲が良かったのですか?」
「「腐れ縁だ(です)よ」」
二人の言葉が重なり、私は声を出して思わず笑ってしまった。
「⋯⋯此処に来てからシアのそんな風に笑うのを見るのは初めてだな。良い兆しだ」
そう優しい眼差しで私を見るお養父様。
そう言えば、声を出して笑ったのは久しぶりかも。
「笑ってしまってごめんなさい」
「謝る必要はないよ。笑いたい時は我慢せずに笑いなさい」
「お嬢様は笑顔の方が可愛らしいですよ。勿論普段も可愛らしいですけどね」
お養父様が途中でイクセル様をちらりと見たので、慌てて一言付け加えた。
別に気にしないのに⋯⋯。
私は若干呆れた顔をお養父様に向けた。
「さて、そろそろ本題に入ろうか。話と言うのは私とオリーがマティの学園入学のために王都へ行っている間のことだ」
やっぱりその事。
私が毒を受けてまだ一ヶ月も経っていない上に、犯人も分からないまま。
「シア、私達が戻るまでは邸の外には出来るだけ出ないようにしてほしい。窮屈な思いをさせて申し訳ないが、何が起こるか分からないからな」
「庭に出るくらいなら大丈夫でしょうか?」
「それくらいなら大丈夫だよ。但し、必ずクラースを伴うのを忘れずに」
「はい、分かりました」
「一日の終わりに、必ずイクセルが邸を訪れる。一応その日の報告をイクセルにするように。後、日中違和感や何かあれば必ずイクセルやアルヴァーを頼りなさい」
「はい。イクセル様、よろしくお願い致します」
「こちらこそ、些細な事でも頼っていただいて構いませんよ。お護り致します」
とても頼りになるお言葉を貰って、私は息をついた。
「シア? 大丈夫かい?」
「大丈夫ですよ?」
私は何が大丈夫なのか分からず不思議そうに返した。
「いや、いつ狙われるかと不安だろう?」
「大丈夫です。王宮でもそうでしたので、特に何とも思いません」
私は少し吹っ切れたのもあり、そう答えたら「強いな」とお養父様は呟いた。
狙われて怯え続けるのも嫌だしね。
それに、強くなると決めたから!
「シアから何か質問はないかな ?」
「お養父様が此方に戻られてからで良いのですが、お願いがあるのです」
「何だい?」
「私、街を見てみたいです。行っても構いませんか?」
私のその言葉は予想しなかったようで、とても驚いていた。
けど、せっかく王宮ではなく外の世界にいるので、出来ることはやりたい。
街にも行ってみたい。
「また何故急に?」
「急にってこともないのですが、折角シベリウス辺境領に滞在している間に、王宮にいたら出来ない事をしたいのです」
「なるほどね。条件は付けるけど行けるようにしよう」
「ありがとうございます!」
条件付きでも街に行けそうなので、嬉しい!
「お嬢様は活発ですね。流石夫人の姪なだけはあります」
「お養母様って活発なのですか?」
「それはもう!」
めいいっぱいそう言うと、お養父様は「確かにな」と。
そうなんだ。
今日は新にお養父様とお養母様の一面を知れた。
この後少し雑談をして、お開きとなった。
ご覧いただき、ありがとうございます。
ブクマもとても嬉しいです。
次話もよろしくお願い致します。