216 芸術への熱意
今日が建国祭最終日。
朝から夕刻まで大聖堂で一仕事を終え、王宮に戻ってくると今度はお父様達と共にゆったりと過ごす。
「ステラ、初めての建国祭で疲れてないか?」
「疲れはありませんわ。とても充実した三日間でした」
「それは何よりだ。民からの評判も上々だと私の耳に入っている。よくやった」
「ありがとうございます。ですが、特に特別な事は何もしておりませんわ」
「それが良いんだ。別に特別な事をする必要などない。ステラは民に対して飾らずありのままで良い。私の話している意味はわかるな?」
「はい、お父様。必要以上に作らず、だからといって王家の一員として品位品格を失わず、ですね」
私がそう答えるとそうだと頷いた。
ただお父様の言い方にちょっと疑問が浮かんだけれど、それは民に対して取り繕う必要がある者もいる、という事かな。
まぁ、世の中色んな人がいるものね。
それだけお父様は私を評価して下さっている、という事だとしたらとても嬉しい。
「そういえば、先日はダリアン伯爵夫妻と長く話していたようだが、何を話していたんだ?」
「伯爵とは芸術のお話しをしておりました。押し花の技術を使って、色んな所に使えればとても素敵な作品が沢山出来ると思い、それをお伝えしようと今度伯爵と会う事にしました」
私がそう言うとお父様達は不思議そうにしていたので詳細を話すと納得して下さり、お母様は私の発案で流行を生み出すのは良い事だと誉めて下さった。
「ステラ、伯爵と会う時はヴォルゴート公爵にも声を掛けなさい。まだ暫く王都にいるだろうからな」
「何故です?」
「ヴォルゴート領は国内随一のガラスの工芸品が盛んだろう? ダリアン伯爵は芸術に秀でていて、ガラス細工のデザインを請け負い、公爵から依頼されて共同作品を世に出している。もし考えている作品の中にガラスを使った物を作るならば、公爵を通すのが筋だ。だが別々に呼んでは面倒だから二人纏めて会うようにした方が良いな」
そのような繫がりがあるなら公爵を呼ばないわけにはいかない。
ヴォルゴート公爵はエドフェルト公爵、ヒュランデル公爵と並びグランフェルト王国の三大公爵家の一つ。
普段は北側にある公爵領で過ごし、社交会の時期に王都へ顔を出すが普段は王都に住んでいる次期公爵が出席し、公爵自身は頻繁に王都に姿を現さない。
だからといってノルドヴァル公爵の様に反王家側という事も無く関係は良好でだ。
話によれば、少し⋯⋯頑固者ではあるらしい。
自由気ままの変人腹黒エドフェルト公爵に生真面目ヒュランデル公爵、そして頑固者ヴォルゴート公爵。
これで均衡がとれているのが凄いと思う。
三人で会ったらどんな感じになるのかしら。
ちょっと気になるけれど、これはその場を覗くだけでいいかも。
一緒にいると疲れそうな気がする。
話しが逸れてしまったけれど、私が発案したものはシベリウス家に偏っていたが、アンデル家に続き、ダリアン家とヴォルゴート家といった他家にも出す事で贔屓をしていないと周囲に周知し、適材適所なのだと理解できるでしょう。
私はお父様の仰る通りに公爵と伯爵宛に手紙を送る。
公爵と会った事が無いので応じて下さるかは定かではないけどね。
相手が王女と言えど否と言われる可能性はなくはない。
手紙を送ってから数日後に思ったよりも早く公爵から返事が届いた。
内容を確認すると、会って下さるそうだ。
伯爵も日程に問題が無いという事だったので、私の側近が学園休日の週末に会う事が決まった。
詳細は既に纏めているので後は当日を待つのみ。
側近達には予め私が進めることについては説明済だ。
そして面会当日。
今日私に付き添うのはティナとロベルトの二人。
本当はルイスにしようかと思ったけれど、公爵と会うのが私も初めてなので、ここは公爵に会った事のあるティナにお願いをした。
別々に来るかと思っていたけど公爵と伯爵二人一緒にいらっしゃったみたいなので私達も応接室へ移動する。
中に入るとダリアン伯爵、そして公爵であろうその人が立ち上がる。
今は顔を伏せているので公爵の容貌は分からない。
「お待たせしました」
「いえ、我々も今来たところです」
「公爵とは初めてお会いしますね」
「はい。エステル王女殿下にご挨拶致します。ヴィクトル・ヴォルゴートと申します。ご挨拶が遅れました事を申し訳なく、遅ればせながら王女殿下のお戻りを心からお祝い申し上げます」
「ご丁寧にありがとう。今日は来て下さって嬉しく思います」
挨拶を受けたので、二人に席を進める。
公爵は、頑固という様な外見はしていないが、三大公爵の内一番の年上だというけれど、それにふさわしい貫禄はある。
「本日来ていただいたのはお二人にお願いしたい事があります」
「お願い、ですか」
「えぇ。本題に入る前にこちらはご存じ?」
二人の前にこの間作成した押し花のカードを見せるが、これが何なのかと公爵は訝しげにしている。
「ただのカードに見えますが、これが何か?」
「これはこの間の建国祭に民に配ったものです。私がお願いしたいのは、カード自体は関係ありません。この押し花を使って作品を作っていただきたいのです」
「⋯⋯⋯⋯」
公爵は押し花を見て考え込んでいる様子で伯爵は未だに私が言いたい事が分からず困惑している。
「ふむ、殿下はこの押し花を用いて作品を作れと仰せですが、それだけだとダリアン伯爵に願えば済む事。私を同席させたという事は、我が領の工芸品のひとつ、ガラスを使ってという事ですか?」
「公爵の仰る通りです」
「ですが、押し花というのはガラス工芸品を作成するに辺り、跡形もなく残りません」
表情にこそ呆れた様子は見せないけれど、声には多少そういった感情が混ざっている。
まぁ普通に考えれば公爵の発言は至極真っ当で、呆れられても仕方がない。
「そういえば、まだこの押し花の工程を話していませんでしたね」
私がそう言うと、ロベルトがそっと花とカードを準備する。
そして二人に「見ていてください」と一言添え、私は実際に作成するのを見せる。
二人は何をするのかと興味津々に私の作業を見ているが、最後は驚いた表情をしていた。
普通に作成するならば、先ず花の水分を取る為古紙等に挟み日に何度か取り換える。
水分が取れれば乾燥させ、その後本など平らな物を重しにし、数日待てば完成だ。
だけど、こうして基礎の魔法を用いて行えば、難しいことは無い。
そして出来上がった押し花をカードに定着させれば完成だ。
それを二人に見せると感心した様にまじまじと目を輝かせている。
「これは、工夫をすれば色んな作品が出来ますな! 今迄ガラスに描いていたいましたが、これを用いれば更に良き物が出来るでしょう。これは、殿下が思いつかれたのですか?」
「えぇ、そうですわ」
「何故我々にこの提案を?」
「芸術家であるダリアン伯爵や夫人ならばカードの他にも美術品等に応用し、より素晴らしい作品が仕上がるでしょうけれど、美術品だけでなく色んな用途に使えるかと。そこでまず思いついたのがガラス品でしたの」
ガラスって結構周囲に多いのよね。
化粧品類の器を始め、グラスもそうだしね。
生活の部分では大体デザイン加工されたもので、装飾品には公爵が話したように絵を施し飾る事が多い。
勿論デザイン加工された物は美しいが、綺麗な曲線に押し花を定着させても素敵だと思う。
小さい花ならばネックレスやイヤリングにしてもいいかも。
それならば平民でも手が出やすいでしょうし、貴族だけではなく世の女性陣達に受けか良いかもしれない。
「⋯⋯下」
あっ、そういえばガラス内に植物を入れるのも良いわね!
これは流行りそうだわ!
「エステル殿下!」
少し大きめな声で名を呼ばれ顔を上げれば、きょとんとしたような伯爵とじっと何かを伺う様な公爵、視線を動かせば少し呆れ顔のティナとロベルトが私を見ている。
――これは⋯⋯久しぶりにやってしまったかしら。
コホンとひとつ咳ばらいをし、素直に謝る。
「殿下、今口にされていた案を採用させて頂いても宜しいですか?」
「えっ? 私声に出していたかしら?」
「はい。独り言のようでしたが、私の耳にははっきりと聞こえていました」
そう話すのは公爵だ。
そんなはっきり声に出していた⋯⋯?
『姫様、公爵は地獄耳をお持ちです。伯爵には所々しか聞こえていないかと』
そう私の疑問に答えてくれたのはノルヴィニオだった。
公爵に視線を向けると私の答えを求めているようでどうするのかと視線で問いかけてくる。
「私が口にしていた案というのは何処までかしら?」
「全てです。勿論それ相応の対価はお渡しいたします」
別に対価とかは要らないのだけれど、それに対してはシベリウスにいる時に伯父様と伯母様に散々お説教されたので要らないとは言えない。
本音は要らないのだけれどね。
対価ね、どうしようかしら⋯⋯。
「因みに何故私の案を採用しようと思いましたの?」
「前々からガラスを使い他に使い道がないかを模索しておりました。ですが良い案が思い浮かばず、殿下の案は私共にとっては渡り船なのですよ。それだけでなく、透明度が高く細やかな品と言えば対象が必然的に貴族中心となります。殿下の案には平民にも手が出せるような案がいくつもありますので対象を増やし尚且つ新たな作品を生み出せることは職人にとってもまた我が領にとっては良い事しかありません」
新しい品物は売れればそうでしょうけど、売れるとは限らない。
私が提案しておきながらだけれど、こればかりは結果を見なければわからないのだが、公爵はいけると思っているようだ。
隣に座る伯爵を見やるとこちらも何やら考え込んでいる様子。
「伯爵、如何されましたか?」
「あぁ、いえ。申し訳ございません」
「殿下、ビリエル卿はどのような芸術品を作ろうかを考えていていたのです。彼の作品へ情熱は人一倍あります。それで、何を作ろうとお考えに?」
「キャンバスに描くのもいいですが、他にももっと何かないかと考えておりました」
「もう少し変わった使い方をするならば、貼り絵は如何でしょう?」
「貼り絵、とはどのような技法なのでしょうか?」
この世界には無いのかしら。
ちらりと伯爵をみれば、新たな技法があるのかと目の色が変わっている。
「貼り絵というのはそのままですわ。貼り合わせた絵、押し花だけでなく、色んなものを使用して貼り合わせ、立体的な作品が仕上がると思いませんか?」
花にも色んな色があるので、勿論そのまま使うのもいいけれど、色んな部分を組み合わせて絵を作るのも面白いと思う。
「成程! 今迄にない技法です。殿下は一体どのようにしてそのような編み出されるのですか? これは芸術界においてまた一歩新たな世界が開かれます!」
「ビリエル卿、少し落ち着かれよ」
「あっ、これは失礼を致しました」
今までにない興奮を見せる伯爵に公爵が慣れたように宥めるが、伯爵はただ純粋に知りたいようだけれど、公爵の様子は少し違う。
あぁ、これは彼の中の何かを刺激してしまったかしら。
伯爵は伯爵で早速試したくてうずうずしている。
私は提案をしただけなのだけれど、この様に喜んで貰えて良かったわ。
「お二人に提案をして正解でしたね。伯爵、作品が出来ましたら拝見してもいいかしら?」
「勿論です。真っ先にお持ちさせて頂きます」
問題は公爵をどのように躱そうか、今日一番の課題かもしれない。
「私も殿下に頂いた提案の品々が完成いたしましたらお持ちさせて頂きます」
「えぇ、楽しみにしておりますわ」
「つきましては、ダリアン伯爵とのお話しは以上でしょうか?」
「そうですわね。彼は早く作品が作りたくて仕方がないといった様子。それに公爵もお忙しいでしょう。先程の件はまた後日お話し致しましょう」
対価の件はまた考えて伝えると、今日のお話しを終わらせる。
「いえ、私はまだ時間がありますので良ければこのまま殿下とお話ししたく、お時間を頂きたい。私も滅多に王都へ来ることがありませんので是非この機会を有効活用したく存じますが、殿下は如何ですかな?」
――公爵の目が私を逃さないと言っている!
この場を逃れたとしても結局次回捕まるだろう。
それならば今日で終わらせる方がいいのか⋯⋯。
「私が王都に来た際は王子殿下ともお時間を頂きお話しをさせて頂いております。エドフェルト公爵、ヒュランデル公爵の様に常に宮廷にいるわけではありませんから。我々公爵家と言葉を交わしておいた方が何かと殿下のお役に立つかと思いますが? 勿論殿下が私をお嫌いで否と申すならばお暇いたしますが、お優しいと評判の殿下ならばそのような事はなさりますまい」
自分が今だと思ったらどうしてでも今日は話す気で私を逃そうとしない。
しかもその言い方!
公爵が嫌いならこんな提案はしない⋯⋯事もないわね。
嫌いでもこの国の為ならば提案はするけれど、今日会ったばかりで嫌いになることもない。
ダリアン伯爵はまた始まったというように、げんなりした表情だ。
「優しいかどうかはともかく、公爵が仰ったようにあまり王都には来られないとの事でしたので、お忙しいと思いましたの。そうでないのなら私はこのままお話しをしても構いませんわ」
「あぁ、では私はそろそろ失礼させて頂きます」
伯爵は今だ! といった様子でこの機会を見逃さなかった。
まぁ私が態とその機会を作ったのだけれどね。
私と公爵に挟まれるなんてその時間が勿体無いでしょうし、何よりも早く帰りたいという雰囲気を隠す事も無く出ていたもの。
「さて、これでゆっくりお話しが出来ますな」
「公爵、私と何を話したいのです?」
「殿下については愚息から報告を受けておりますが、実際に言葉を交わしたいというのは嘘ではありません。噂と事実は異なるもの。殿下のお噂に関しては中々に悪意ある内容が多くありますので、この目と耳で確認をしておきたく、どのように機会を作ろうかと思っていたところに殿下よりお手紙を頂いた時は幸いでした」
その話だと公爵自身は私と話す機会を探っていたという事ね。
「それで、実際に私と会った感想は如何かしら?」
「所詮噂は噂でしかありません。そもそもあのエドフェルト公爵に好かれているという観点からも王女殿下が我儘傲慢王女であるはずがありません」
「⋯⋯そのように言われていただなんて初耳ですわ」
その初めて聞く噂に驚く。
私が知らない噂もまだまだ在りそうだ。
というか、我儘傲慢王女って何?
一体どうやったらそのような噂が出るのか、不思議で仕方がない。
あぁけど私の何気ない行動でそのように思われた、という事もあるのかな。
それとも私がそうだと思っていないだけで、我儘な事を言ったりしたのかしら。
そう思うと少し不安になる。
「本日初めてお会いしましたが、殿下は良い意味、悪い意味でも素直なお方だ。王子殿下とは性格がかなり違いますな」
「そうかしら?」
「貴女様の兄君は⋯⋯王女殿下がお戻りになるまで、冷ややかで淡々とし他者を寄せ付けない雰囲気でした。今はかなり柔らかくなり側近達は安堵している事でしょう」
そのような話も初めてだ。
お兄様が冷ややかだなんて想像できない。
敵対する者に対しては冷ややかな時はあるけれど、公爵の口振りからだと普段からそうだったのだと言っている。
「話は変わりますが、殿下は発想力が豊かで驚きました。一体どのようにして思いつかれているのか、是非お伺いしたいところです」
やはり気になるところはそこなのね。
記憶の知識があるとはいえ、それらを話すわけにはいかないし、悟られるわけにもいかない。
「公爵に提案した事は周囲にある物ばかりですわ。綺麗な細工は本当に芸術的ですが、少し工夫をすれば更に素敵な物が仕上がると思っただけです。それに女性は身分関係なくお洒落がしたいでしょう。宝石は物にもよりますが平民では中々手が出せなくても、ガラスで装飾品を作るならばそれ程高価な物にはならないでしょう。勿論細工の凝ったものならばそれなりのお値段になるでしょうけれどね。ダリアン伯爵に提案した事も同様ですわ」
「ただ単にいつもの日常から考え付いたという事ですか」
「えぇ。特別な事でも何でもないでしょう?」
「左様ですな。大人では中々考えつかない、子供ならではでしょうか」
「ヴォルゴート公爵様、殿下に対してその表現は如何なものかと」
ティナは公爵の、私が子供だからという発言に指摘するが、公爵は悪びれもなく受け流している。
「ベリセリウス嬢は臆することなく私に苦言を呈するか」
「勿論です。誰であろうと殿下を軽んじる発言は許されません」
「ははっ! あの小さかった令嬢も侯爵や兄同様に王家の者に魅了されたか」
「誤解を招くような言い方はお止め下さい。私は私の意志で殿下に仕えているのです」
「まぁ良き事だな。これからも殿下を軽く見る者達がおるでしょうが、ベリセリウス嬢がいるならば今後側近達も侮られることは無いでしょう。ですが、他の者達も令嬢の様に毅然とした態度が出来るよう、育てた方がよろしいかと」
公爵はロベルトの事を言っているのでしょうね。
身分が上で父親以上の年齢の方に対して否と言えるように育てた方が良いと助言される。
「殿下、今回は良き提案を頂き、誠にありがとうございます。先程も申し上げましたが作品が仕上がりましたら一度お持ちさせて頂きたく、よろしいでしょうか?」
「楽しみにしておりますわ」
「では、私もそろそろお暇いたします」
公爵はそういうと部屋を後にした。
結局何がしたかったのかしら。
「公爵様は相変わらずですわ」
「公爵の意図が分からないままだったわ」
「今回は本当に殿下の為人を見たかっただけかと。殿下の発想力が気になってはいたようでしたが、公爵様が仰ったように、大人よりも柔軟な考えが出来ると納得なさっておりましたし、私達側近の態度も確認したかっただけでしょう」
「という事は、公爵のあの発言は態となのね」
「そうだと思います」
「だけど話に聞いていたような頑固だというようには感じなかったわ」
「ステラ様、それは公爵様がまだ本来の姿を見せていないだけです。騙されてはいけません」
ティナは真剣にそういうので、本当に今日は序の口なのでしょうね。
「ロベルトの感想は? 最後の公爵の言葉はティナ以外の側近に対しての言葉でしたから」
「公爵様の仰る通りだと、私もティナ様みたいに臆することなく対応しなければならないと改めて思いました。ですが、それはとても気力のいる事ですが、そう言ってはいられません」
「そうね。最初はそうかもしれないけれど、一度発言してしまえば楽になるわ」
ティナは軽くそういうが、ロベルトにとっては勇気のいる事でその一歩を踏み出すのが大変なのだ。
「徐々に慣れていけばいいわ。よく考えてみて。お兄様とは違い、私が公に戻ってまだ一年にも満たないのよ。私自身はそう言っていられないけれど、皆は普通に側近となったわけではないの。学園に入学するまでの二年という教育期間がなく、直ぐに側近として侯爵から基礎を叩きこまれただけで、その振舞い方を学ぶ機会が無かったのだから。私としては一年でそれらをしっかりと身に付けてもらえればいいかなと思っていたのだけれどね」
彼等にとっては本当に大変な事だと思うけれど、大きく成長して欲しい。
ロベルトは私の言葉に力強く頷く。
一番大変なのはルイスよね。
最高学年となった今、一番私の側にいて執務をする時間が多くなるのが彼女だから、だからこそ一番成長も早いでしょう。
そして私は皆に幻滅されないように私自身ももっと学び成長しなければいけない。
「そういえば、私の知らない噂話がまだまだ有りそうね。けど、そんな噂話を払拭するぐらい私も頑張らないといけないわね」
「程々で良いですわ」
「そうですよ。ステラ様は少々頑張りすぎです」
私がそう話せば何故か二人から直ぐに突っ込まれてしまった。
別に噂を気にしての発言ではなかったのだけれど、真剣な二人にそれ以上話しをしても止められそうなので心の中で思うことにした。
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