21 読書の時間
モニカを伴って図書室へ行くと、マティお兄様がいらっしゃった。
真剣に書物を読んでいた為、声をかけるのも躊躇われたのでそっと私も自身で読む本を探した。
私が手に取ったのは歴史書。
課題の事もあるけれど、もう一度始めから読みたくなったから。
そしてヴァレニウス語とこのシベリウス辺境領についての本。
読みきれなかった分はお部屋に持ち帰って読んでもいいということだったので、先に読みたい三冊を選んだ。
私は図書室にある椅子に掛けてまず、歴史書から読み始めた。
この国の成り立ちから初代エドヴァルド王の功績、精霊との関係性について。
精霊⋯⋯ 。
そう言えば、あの声はどこから聞こえてきてたのかな?
姿は見えなかったけど、声が⋯⋯直接頭に響いていたような。
私はふと気になって、歴史書に栞を挟み精霊に関しての本を探してみた。
探したら何冊かあったので、そのうちの一冊を持っていきそちらを読み始める。
本によると、精霊は基本的に自由気ままで殆ど姿を見せることがない。
本当に気に入った者にしか姿を見せず、声も聞こえない。
精霊が見える人は純粋な者、魔力の豊富な者、魂の色が綺麗な者、もしくは変人⋯⋯。
――変人って⋯⋯何故?
邪な心や濁った魂の者には決して姿を見せることはないらしい。
精霊の性格は様々ではあるが、生来好奇心旺盛で見えないだけであちらこちらに存在しているようだ。
特に自然が多いところには集まりやすい。
だが、本来精霊は“精霊界”と呼ばれる場所で生まれ住んでいるとされている。
そう、グランフェルト王国初代国王である、エドヴァルドが訪れた場所である。
――と言うことは、エドヴァルド王は純粋かつ魔力が膨大だったのかな? もしくは⋯⋯変人?
中々に自分の祖先を変人扱いは嫌なのだけれど。
とにかく、興味深いことが沢山でずっと読んでいたけれど、呼ばれたので振り向くとマティお兄様だった。
「シア、何時からそこに?」
「一時間程前です。お兄様がとても真剣に本を読んでいらっしゃったので、声をかけませんでした」
「そうか、学園の入学が後一ヶ月後だから、出来ることをしておこうと思って、ついつい真剣になっていたようだね」
「えっ! 一ヶ月後に学園に行かれるのですか?」
驚いたものの、王公貴族は皆十歳で王都の三つある学園内、どれかに通うんだった。
お兄様は今年十歳なので、王立学園へ通われる。
そうなったら二週間ある休み以外は帰ってこない⋯⋯。
せっかく妹として仲良くなれたと思ったのに会えなくなるなんて、寂しくなる。
「お兄様、二週間の休日には帰ってきますよね?」
「もちろんだよ。シアは寂しいの?」
「はい。寂しくなります」
「嬉しいこと言ってくれるね」
そういうと、私をぎゅうっと抱き締めた。
「私も寂しいから手紙を書くよ。返事をくれる?」
「もちろんです!」
「後二週間は此処にいるから一緒にお茶しようね」
「はい!」
私はお兄様とお茶の約束をし、そろそろ夕食の時間だと言われたので、本をモニカに持ってもらい一度部屋に戻った。
ちなみに、昼食はお部屋でいただくけど、朝食と夕食は家族揃っていただくのが、シベリウス家の決まりごとだ。
部屋につき、身なりを整えてから食堂へ向かう。
お兄様達はもうすでにいらっしゃってて、挨拶をしていると、お養父様とお養母様がやってきた。
皆揃ったところで、お養父様の合図で食事が始まった。
「そういえば、マティの学園入学まで後一ヶ月だな」
「そうよ、早いわねぇ」
「学園では寮に入るのですよね?」
「そうだよ。五日は寮で過ごして六、七日目の休日は王都にある邸に帰ってもいいことになる」
この国は一週間が七日で一月は三十日。それが一から十二月まであり、“記憶”とほぼ変わることはない。
時間も一日二十四時間で“記憶”と同じだ。
食事が終わり団欒の間に移動して皆で食後のお茶をする。
この時間が大体皆の一日の報告会というか、家族の交流の場といった感じで、心が暖かくなる。
お養父様は今日一日は領主館の執務室で書類仕事をしていたという。
お養母様は街や森の様子を確認していたそうなんたけど、私が不思議に思ったを感じたお養母様は、森の様子は冒険者ギルドが主に請け負っているけれど、たまにお養母様達もその様子を確認するのだと補足してくれた。
数年から十数年置きに来る、魔物の大襲来に備えているという。
もし来る場合は先ずは森に異変があるみたいなので、日々の確認は大事なのだとか。
マティお兄様とレオンお兄様は午前中は騎士団の訓練に参加して、午後からは語学の勉強だったみたい。
マティお兄様はお勉強が終わったあと、図書室で更に自主的に学習しているのですって。
私も今日一日の出来事を話し終わると、マティお兄様の学園への入学の話になった。
「準備は進んでいるのか?」
「殆ど終わっています」
「学園には首席で合格したからといって勉学を疎かにしないようにな」
「はい」
「お兄様はすごいですね!」
首席合格なんてすごい!
「王都の邸に出発は二週間後の十四日だ。それまでに準備を整えておきなさい」
「はい」
「レオン、シア、アレクは留守番だよ」
「「はい」」
勿論私達はお留守番。
私の場合は、どちらにしても外に出れないのだけれどね。
「さて、明日は休息日だ。シア、私とお茶しないかい?」
「もちろんです! 明日楽しみにしています」
明日お養父様とのお茶会が決まって、お開きになった。
きっと、お養父様達が王都に行っている間のことかなと思う。
部屋に戻り、寝支度を整えて、ベッドに入ってから図書室から借りてきた本を読む。
先に読むのは精霊の事、図書室で読んでいた続きだ。
集中して読んでいると、あっという間に読み終わってしまった。
――なるほど、精霊は気に入った人には自ら声をかけたり姿を見せたりするのね。
だけど、“見る”力が強い人は気に入られなくても“見る”事だけはできるらしい。逆に、“声”だけを聞くことが出来ることもあるそう。
どちらにしても、そういう人は本当に気に入られなければ、仲良くする出来ない。
――あの時の声って⋯⋯もしかしたら精霊だったのかな? そのうち会えるって言ってたけれど、待てば私も精霊に会えるのね。
そう思うと、凄くわくわくと楽しい気持ちになった。
だけど、精霊が見えることはあまり公にしない方がいいのかな⋯⋯。
まぁ、そこはもし精霊に会うことが出来たら、お養父様に確認してみましょう。
さて、もう一冊読みたいけれど、寝れなくなってしまいそうだから明日にしよう。
明日は闇曜日で休息の日なので、お勉強もお休みの日。
お養父様とのお茶会まで読めるわね。
そう明日の予定を確認しながら眠りに落ちた。
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