192 憧れの女性
大変お待たせしまた!
再開しますのでよろしくお願いします(ꈍᴗꈍ)
各学園の卒業パーティーが終わり、残すは学年末にある試験のみとなった。
私も試験は宮廷で受ける為に勉強の時間を取るが、その合間にこの間の件に関しての報告を受ける。
クルト卿の回復が思ったよりも早いようで彼から話を聴くが、まだ話せるのは短時間なので捜査としてはそれ程進展はしていないようだ。
と言っても、別に彼から話を聞くだけではなく調査をしているのでそう時間も掛からずに進展があるかもしれない。
私も皆に調べて貰おうかと思ったけれど、その前にお父様に却下されてしまったから動けずにいた。
こっそり調べるようにお願いする事も出来るけれど、今は護衛を減らすべきではないと、釘を差されてしまったのだ。
それはそうと今日はお母様、オリー伯母様とベアトリス様の四人でお茶会を開いている。
本日の話題は春の長期休暇の件だ。
以前話していたように、一週間程シベリウスの二人はセイデリアに、セイデリアの三人はシベリウスへ学びに行く件だった。
「それで、陛下の許可が下りましたのね」
「渋々ですけれど、ヴィンスとステラには沢山の経験をしてほしいという事もありますし、シベリウスに行ったのにセイデリアに行かないと、というのもよろしくありませんからね」
「それはそうね」
「話は変わりますが子供達全員お互いの領に行くのかしら?」
「いえ、ベティ様とお話したのですが一人残す事にしたわ。シベリウスにはレオンが残るわ」
「セイデリアはマルクスが残りますわ。本当はアストを残そうかと思ったのですけれど、あの娘が一番シベリウスに行きたいと言い張っていますので、それに殿下の側近でもありますので丁度良いですわね」
成る程、レオンお従兄様はヴィンスお兄様の側近だけれどセイデリアにマルクス卿が残るのね。
「殿下方の側近は何名いらっしゃるでしょう?」
「シベリウスと同じく一人ずつになるかと思いますわ」
行き先がセイデリアなだけあって対応はシベリウスと同様で問題ない。
前はティナにお願いしたから今回は誰にしようかしら。
護衛を兼ねるならディオだけど、マティお従兄様がいるのでルイスやロベルトでも問題はないよね。
けどやはり女性がいいかな。
私が誰にしようか悩んでいると、ベティ様も何か思いついたのかふと微笑んでいた。
その様子を不思議に思ってお母様がお聞きしたけれど、何でもないと言うように首を振り話題を変えた。
「ステラ様はようやく外出が解禁となりますね」
「えぇ、セイデリアに行くのがとても楽しみですわ」
「ずっと城の中でいるのも息がつまりますものね。私には無理な事です。私なら何度も抜け出している事でしょうね」
ベティ様はそう自信満々に言い切った。
それを聞いてお母様達は「やりそうね」と頷いていらっしゃるので、ベティ様はとても行動力に溢れた方なのでしょう。
「そういえば、卒業パーティーにご出席されたとお聞きしましたけれど、各学園は如何でしたか?」
「ハーヴェ王立学園は別として⋯⋯」
お兄様にもお話したんだけれど、オルカ騎士魔法学園は中々個性的な所だった。
騎士を目指す学生と魔法師を目指す学生では何というか性格が分かりやすく分かれていて見分けが付きやすいというか何というか、全員がそうだというわけではないけれど、見ていて何となく分かるのよね。
雰囲気が違う、というのもあるけれど行動や仕草を見ているとこの人は騎士かな、この人は魔法師かな、とパーティーの最中にお父様達と話をしていた。
偏見かもしれないが、騎士は少しごつごつとした感じで外見がではなく、行動がそんな感じだ。
魔法師は比べて理知的な雰囲気がある。
本当にただの偏見なのだけれど。
お父様にも偏見をする訳ではないけれど、何となくそう感じると伝えると爆笑していた。
侯爵と宰相も一緒に頷くようにくすくすと笑っているところを見るとそう強ち間違いではないのかもしれない。
アルスカー専門学園はその名の通り分野別に専門知識を学ぶ学園であり、こちらの多くは真面目な印象が強い。
他の学園が不真面目、という意味ではなく優等生といった感じかな。
卒業パーティーで私達がいる間は気を付けていたかもしれないけれど、其々の学園の特性が見えてとても楽しかった。
それに、とても活き活きとした、これからのやる気に満ちた表情が印象に強く残っている。
「ステラが卒業パーティーに出席してから貴女の噂が増えたわね」
「大体想像がつきますわ」
「困った連中ですわよね」
「まぁお馬鹿さんは何処にでもいて、これからもっと増えるでしょう」
「ベティ様は容赦がありませんわね」
「その通りなので否定はしませんわ」
そもそもその内容というのが以前から噂されている事で下火になっていたのがまた浮き彫りになっただけというだけの事なのでお母様達も私もまたか、といった感じなのだ。
「次に大きな話題を攫うのはヴィンスの誕生日パーティーね」
「来月ですわね」
「丁度学園も長期休暇ですので成人した学生達も参加する事でしょう」
「復学前に騒がれそうですわね」
「学園で大いに騒がれるよりは安心ですけれど」
「それもそうね。パーティーならば私達もいる事ですしステラ様の負担が減ると考えれば良い事ですわね」
何だかお母様達に甘やかされているようだわ。
こんなに甘えてしまっていいのかしら。
そう疑問に思いながらも楽しそうに話すお母様達の会話に割り込む事が出来ずにお茶会が終了した。
お母様達とのお茶会の次は月に一度開くのが定着したお兄様と側近の皆とのお茶会の日。
もうすぐ学年末試験があるので今は試験の話しも出たけれど、此処にいるのは大体成績優秀者なので来年の授業について話をしていた。
此処には各学年や卒業した二人もいるので話は聞きたい放題だ。
来年からちゃんと通えるかな。
私の心配はそこだけで早く学園に復学して学園生活を楽しみたい。
「ステラ、どうしたの?」
お兄様に声を掛けられたけど、私か悩んでいるように見えたのかな。
「何か考えてたでしょう? 何か心配事?」
「いえ、そのような事はありませわ」
「お兄様に隠し事?」
「隠し事でもないのですが。二学年は公務は別としてきちんと学園に通えたらいいなと思っただけですわ」
私がそう言うとお兄様は安心させるように私に笑いかけた。
「大丈夫、と言いたいけれど、何が起こるか分からないからね。けど何が起こっても私が護るよ」
「お母様だけでなくお兄様も私に甘いですわ」
「そこに父上も加わるけどね。あぁお祖父様達もそうだね」
「甘やかしすぎは良くないと思いますわ」
「ステラだってフレッドに甘いだろう?」
「可愛い弟ですもの」
「ステラの気持ちと同じだよ。だから甘やかされていると思わずに素直に皆の気持ちを受け取ってほしい」
此処で否定したら私がフレッドを甘やかしてしまう事も否定してしまう事になるので素直に頷く。
けど、もしお兄様に何かあった場合は私がお兄様の力になるわ。
だからもっと頑張らなくては!
「それはそうと、ステラはセイデリアに誰を連れて行くんだ?」
「まだ決め兼ねていますわ。お兄様は誰を連れて行くのです?」
「ヴィルとエミールを連れて行くよ」
「シベリウスの時はお一人でしたのに今回はお二人連れて行くのですか?」
「そうだよ。セイデリア夫人から何人でもと言われている。だからステラも一人と言わずに決めていいよ」
この間のお茶会ではシベリウスのときと同じく一人と話していたけれど、変わったのね。
それにマティお兄様は元々セイデリアに行く予定だったので今回の人数には入れないのでお兄様とティナ以外から選ぶとしたら、誰がいいかしら。
ティナはちょっと不服そうだけれど、折角なら他の皆も色んな体験をして欲しいと思う。
だけど、きっとセイデリアに行けば皆ベティ様に扱かれそうな気がするけれどね。
それは口にしないけれど。
連れて行くならば⋯⋯。
「ディオとロベルト。セイデリアには二人にお願いしようと思うのだけれど、良いかしら?」
「選んで頂けて嬉しいですわ」
「喜んで同行させて頂きます」
二人共とても嬉しそうにしていたけれど、それとは対照的に選ばれなかったルイスとティナは不服そうにしていた。
ティナはこの間同行してもらったので我慢して欲しいのだけれどね。
ルイスも迷ったけれど、一度セイデリアには行ったことがあると言っていたので今回はお留守番にしたのだ。
「決めるの早かったね」
「迷ってはいましたが大体決めていましたから。楽しみですわ」
「ステラ様、楽しみになさっている所申し訳ありませんが⋯⋯」
「どうしたの、レグリス?」
「母上が張り切っているので気を付けた方がよろしいかと」
「ベティ様が?」
この間お会いした時は楽しそうにはしていらっしゃったけれど、いつもと変わらなかったと思うのだけれど。
レグリスの表情を見た後、お兄様の側近でレグリスの兄であるマルクス卿を見ると、彼も似たような表情だった。
少し違うのは、彼はレグリスはシベリウスへ行くので幾分かましだったが、マルクス卿は顔色が悪い。
「レグリス君達のお母様と言えばゼフィール国の元王女様でしたわよね?」
「そうですね」
何故かそのような確認をしたディオは何かを期待するような、そんな表情をしていた。
「ディオ様、何故そのような確認をするんですか?」
「ゼフィール国のベアトリス様と言えば強くなりたい女性の憧れの存在よ! 今迄はお茶会等でお会いするだけでしたけれど、セイデリアに行けば訓練しているお姿とか拝見できるのかしら⁉」
ベティ様が憧れの存在って初めて知ったわ。
それにディオのあの目の輝き、相当よね。
レグリスが引いているわ。
「あー⋯⋯見られると思いますよ? マティ様達がいらっしゃるし、父上より母上が張り切っているので。そもそも言い出したのは母上ですからね」
「あの方が訓練する姿が見られるなんて!」
「ディオ、落ち着いて。そもそも今回貴女は殿下の側近として同行するのよ? 本来の役割を忘れてはいけないわ」
興奮するディオにすかさず指摘するティナ。
その言葉を聞いてディオは「勿論分かっています」と答えているけれど、目の輝きはまだまだ憧れの人に会えると興奮したままだ。
そんなディオの顔を見てティナは呆れていた。
「そういえばレグリス」
「何ですか、兄上?」
「母上からのお手紙はちゃんとお渡ししたのか?」
――手紙?
マルクス卿の言葉ではきっと私へのお手紙よね。
貰ってないけれど、レグリスの顔を見ればサァーっと血の気の引いた恐怖に引き攣った表情に変わっていった。
「あーーーっ‼」
「未だなのか?」
「あー⋯⋯忘れた」
「はぁ⁉」
レグリスは何故か顔色真っ青で固まった。
マルクス卿も顔色真っ青だ。
そしてレグリスに対して「お前馬鹿だろう!?」とマルクス卿が呟いている。
「レグリス、何かあったの?」
「エステル殿下にお渡しするようにと母上からお手紙を渡されていたのですが、それをこいつは忘れてきたようです」
「急ぎの用事かしら? この間お会いした時は特に何もお話はなかったけれど」
「内容までは分かりませんが⋯⋯申し訳ございません」
「殿下、すみません! 直ぐに取りに戻ります!」
「急ぎでないのなら明日お兄様に預けて下さればいいわ。けど、ベティ様にはきちんと自分から話してね」
「ゔっ、はい。殿下、申し訳ございませんでした」
ベティ様に謝罪するのは勿論、私への謝罪も口にした。
それにしてもそんなにベティ様が怖いのかしら。
確かにお母様や伯母様と違って一見冷たいような凛とした佇まいだけを見たら少し怖いという印象があるけれど、顔色を悪くするほどってどれほど怖いのかしら。
けど私もお祖父様に叱られた事があるけれど、あのような感じ?
それとも辺境領の事を考えたら訓練が厳しくなるとかそういった事かもしれないわね。
「やはりマルクスと兄弟なんだな、よく似ているよ」
「お兄様?」
お兄様はそう言ってくすくす笑っている。
「マルクスもセイデリア夫人に叱られると顔色を悪くしていたのを思い出したんだ。外見は似てない兄弟だが、そういったところはそっくりだな」
「お二人はベティ様によく叱られているの?」
「叱られるというか厳しいというか何というか⋯⋯ですね」
さっぱり分からないわね。
だけどその時の事を思い出しているのか二人は何とも言えない顔をしている。
逆に普段どのような感じなのか見て見たいわ。
「お前達が叱られるのはそれなりの理由があるからだろう? 今回のレグリスの失態も然り、自業自得だね」
お兄様の仰る通りだからレグリスも諦めている。
明日必ずお兄様にお手紙を渡すように念押しした。
そして翌日、学園から帰ってくる時間帯に私はお兄様の執務室に来ている。
執務室にはエドフェルト卿とベリセリウス卿の二人が仕事をしていたが、私が来ると手を止めて私と一緒にお茶を飲んでいる。
「お二人共、お仕事はよろしいの?」
「急ぎの書類もありませんのでご一緒させてください」
「効率よく進める為にも休憩も大事でしょう?」
「休憩は大事ですわ。けれど、お兄様に叱られても知りませんわよ」
「ご心配ありがとうございます」
まぁ二人が良いのなら私は何も言わないけれど、この状況はきっとお兄様怒りそうな気がするわ。
二人も分かっているだろうけれど、全く意に返さず雑談をしながらお茶を楽しんでいる。
「そういえば妹が悔しがっていましたよ」
「悔しがるって、何故?」
「セイデリアにへ行く際、殿下に同行できないからですよ」
「そうは見えなかったけれど」
「猫被っていますからね。殿下の前で態度を崩すようなことはありませんよ」
「側近としては優秀だけれど、私としては寂しいわ」
「その言葉を本人に言えば喜びます」
ティナの普段ってどんな感じなのかしら。
前にも猫をかぶっているって聞いたけれど、普段の彼女を見てみたい。
いつかはその猫を脱いだところも見せてくれるかな。
そう思っていると扉が開きお兄様が帰って来られた。
「お兄様、お帰りなさいませ」
「ただいま、ステラ。ステラはいいとして何故お前達はステラと一緒にお茶をしてるんだ?」
「本日の休憩が未だでしたのでご一緒させて頂いておりました」
「ステラとお茶をしていいと許した覚えはないが?」
「ヴィンス様は我々に休憩をするなと?」
「休憩を取るなとは言っていない。私がいない間にステラと一緒にお茶する事は駄目だ! ステラもこいつらのいう事なんて無視して良いからね!」
お兄様はやっぱりお二人に怒っていた。
二人は二人で全く意に返していないけれどね。
そんな二人は置いといて、私はお兄様にお手紙を預かってきて下さったのか確認をする。
「レグリスは忘れずに持ってきたよ」
「ありがとうございます」
私はお兄様からお手紙を受け取るとオリヤンがすっとペーパーナイフを差し出してくれたので受け取りすっと手紙の封を切り読む。
ベティ様からのお手紙には私へのお願い事だった。
どうしようかな。
「ステラ、何か難しい事?」
「いえ、難しい事ではないですわ。お兄様、お手紙ありがとうございました。私戻りますわね」
「分かった。また後で」
お兄様に辞去の挨拶をして執務室に戻ると侯爵も戻ってきていたので彼に声を掛けた。
「何かございましたか?」
「ベアトリス様からお手紙を預かったのだけれど、ティナを是非セイデリアに招待したいそうですわ」
「娘を?」
「交流会の時から思っていたのだけれど、ティナに興味があるみたいでしたから」
「確かに、セイデリア夫人に目を付けられていましたね」
一緒に観戦していた時、ベティ様はティナの様子を見て不思議そうにしていた。
実力を出し切れていないのか、態と手加減しているようにも見えるとも話していたからきっと気になっているのだと思う。
「ベティ様が仰っていた言葉が気になるのだけど聞いても良いかしら?」
「何でしょうか?」
「ティナは交流会の時、手加減をしていたの?」
「あぁ、あれは手加減ではありませんよ。娘達には我が家特有の技術を小さい頃から教え込んでいます。ですがそれらの技術をあの場で披露するのは禁じていますので、セイデリア夫人には娘が手加減をしていると思われたのでしょう。あれは一般的に普通に戦うのが下手なだけです」
「そういう理由だったのね。もし、ティナが柵なく戦ったらマティお従兄様とどちらが強いかしら?」
「対人間なら娘ですね。魔物が相手となると彼の方が慣れているでしょう」
侯爵家特有だから学生相手には使わない、という事ね。
ティナだけでなく、私はまだ皆の事を殆知らないものね。
「詳しくはお聞きにならないのですね」
「聞かなくても何となく想像できるわ」
影の皆が顔色悪くしていたのを知っているし、私がそれを言ってしまうと彼等に飛び火しそうだから言わないけれどね。
「それで、ティナを同行させても?」
「問題ありませんよ。娘を同行させるならばルイス嬢はいかがされますか?」
「そうね⋯⋯」
「お悩みならば此方に残して頂いても宜しいですか?」
「構わないけれど、何をする気です?」
「いえ、彼女は元々この宮廷内で働く事を希望していましたので、ステラ様がセイデリアに行く間にもう少し教育しようかと思います。それが今後殿下の助けになります」
「分かったわ。お願いするわね」
「お任せください」
「だけど、無理をさせ過ぎない様にしてくださいね」
「彼女の能力に合わせますので、ご安心ください」
嘘くさい笑顔。
侯爵は笑顔で請け負うがその笑顔が凄く嘘くさい。
それ以上に教え方がとても上手だからルイスにとっては良いのかも。
ちょっと心配だけど、彼女の前向きな気持ちがあれば今回の件で大きな成長が出来る。
それは他の皆もだけどね。
先ずはベティ様とティナに手紙を認め、ルイスには週末に話しましょう。
予定は決まったので、そろそろ来週の試験に向けて勉強をしないとね。
再開まで長らく掛かりましてすみませんでした。
そして読んでいただきまして本当にありがとうございます(ꈍᴗꈍ)
とても嬉しいです!
予定では毎週土曜日に更新予定ですが、更新が遅くなってしまったらすみませんm(_ _)m
物語再開しますので、また楽しんで頂けたらと思います。
宜しくお願い致します。





