19 ひ弱な私
翌日目覚めると、昨日の運動後の怠さが残っているかと思ったけれど、モニカ達のマッサージのお陰でさほど痛くもなく歩けた。
マッサージの効力ってやっぱり凄いのね。
毎回感動するわ。
本日は午前中に家庭教師から語学を習い、昼からはお兄様達とダンスとお養母様とのお茶会兼勉強があるので楽しみだ。
時間前には勉強部屋にて待機。
十分前行動って大切よね。
今日も楽しみでうきうきと待っていたら「家庭教師の方が来られました」と声がかかったのでのでミアに目配せして中に招き入れた。
私は椅子から降りて先生を迎えた。
「失礼致します。始めてお目にかかります、アリシア様の語学教師を仰せつかりました、ヨエル・セーデンと申します。以後、よろしくお願い致します」
「はじめまして、セーデン先生。アリシア・シベリウスです。よろしくお願い致します」
私はふと気になって、そういえば、お養父様の側近にもセーデンって人がいたような⋯⋯。
それに⋯⋯何となく似てる?
「もしかして、お養父様の側近のデニス・セーデン様はご兄弟ですか?」
「よくお分かりになられましたね。デニス・セーデンは私の兄です」
やっぱり! 私は気になったことが解決したので、すっきりして席に着いた。
先日お養母様にお話しした語学の進み具合で、今日から隣国のヴァレニウス竜王国の言葉を習うことになった。
グランフェルト王国とは友好国で、このシベリウス辺境領とは「霧の森」を挟んだ隣国となる。
シベリウス辺境領とは森を挟んでいるとは言え、行商がよく行き来するくらいに交流が盛んなのだ。
友好国と言う事もあり、王宮で習う言語はヴァレニウス語が最初だった。
お養母様は、先生に私が自発的に本を読んで少し話せる位の説明をしていたみたいで、私は先生とヴァレニウス語で挨拶をした。
『はじめまして、私はヨエル・セーデンと申します。貴女のお名前を伺ってもよろしいですか?』
『はじめまして、セーデン先生。私はアリシア・シベリウスといいます。よろしくお願いします』
『本を読んで勉強されたとお聞きましたが⋯⋯』
『はい。興味があって読んでいたら少し覚えました』
私の語学力を確かめながら会話を進めていく。
ヴァレニウス語はちょっと独特な発音だけど、音階のようで簡単な会話ならすんなり覚えられた。
まだ難しい言葉や専門用語等は分からないけれど、簡単な事なら話せるので先生との会話も楽しく出来た。
「思ったよりもお嬢様のヴァレニウス語が堪能で驚きました。これなら次の授業ではもう少し実用的な会話を出来るよう、難度をあげましょう」
「はい! 新しい事が覚えられるのは楽しいので、次回もよろしくお願いします」
「次回の授業までに課題をお渡ししますので仕上げてきてください」
「わかりました」
午前中の授業が終わり、部屋でお昼をいただく。
その後、少しのんびりしてからお兄様達とダンスの授業があるので、部屋まで迎えに来てくれた。
ちなみに、ダンスのレッスンなので衣装は動きやすいワンピースからドレスに着替えて、髪もセットして貰った。
「今日はシアと一緒に授業を受けられるから嬉しいよ」
「私もです、お兄様方」
「やっぱり可愛い女の子いる方がやる気でるよ!」
ちょっと、レオお兄様の言葉に呆れてしまった。
まぁ男ばかりだとやる気もでないのかな⋯⋯。
話をしながらお部屋へ向かった。
部屋に入るとすでに先生がいらっしゃった。
「ごきげんよう、皆様方。お嬢様ははじめましてですね。ステファン・アンドレーと申します。よろしくお願い致します」
「「ごきげんよう」」
「ごきげんよう。はじめまして、アリシア・シベリウスです。よろしくお願いします」
「可愛らしいお嬢様ですね。奥様からお話はお伺いしております。ダンスは少し踊れるということでしたね」
「はい」
ダンスに関しては、お兄様方から少し習ったという事になっていた。
「早速ですが、マティアス様とアリシア様のペアでどの程度踊れるかを確認させてください」
私達は早速ペアを組んで踊った。
先生の手拍子に合わせて踊ったけれど、ダメ⋯⋯。
流石にまだ体力が戻りきっていないので途中で息があがってしまった。
「お兄様、ごめんなさい」
「私は平気だよ。シアは大丈夫? まだ体力戻ってないでしょ?」
「⋯⋯はい」
私はちょっと悔しくてしょんぼりした。
こんなに踊れないなんて⋯⋯。
悔しくて仕方がない。
「奥様からお話は伺っておりましたが、基礎はしっかりしておりますので、体力が戻れば大丈夫ですよ」
⋯⋯やっぱり体力って大事だわ。
お部屋でも簡単に出来ないか考えよう!
その後はお兄様達のダンスを見学して、レオンお兄様とも少し練習し終了した。
練習が終わった後、お兄様達と共にお養母様とお茶会をするお部屋まで行くと、既にお養母様はお部屋にいて私達を出迎えてくださった。
「お養母様、お待たせいたしました」
「ダンスレッスンお疲れ様。疲れてないかしら?」
「大丈夫です。体力が持たなかったので、途中からは見学をしながら受けていました」
「体力が付くまでは無理はダメよ。さぁ、お茶会を始めましょう」
そう言って授業を兼ねたお茶会が始まった。
此処で見られるのはマナーと所作。
少し緊張したけれど、会話を楽しみながらそれ程不備もなく出来たようで、お養母様からの注意もさほどなかった。
ひとつ挙げるとしたら、私は表情がわかりやすい、とのことで、此処が一番の注意どころ。
普段から気を付けていかないと、これが一番難しいかもしれない。
その点が一番良くなかったところだったけれど「難しいと思うけど、頑張って」 と励ましの言葉をいただきお開きとなった。
部屋に戻ってからはワンピースに着替え、モニカ達にお茶を淹れてもらって一息。
ふと、モニカを見ると少し疲れてるように見えた。
「モニカ、どうしたの? 疲れてる?」
「えっあっ! 申し訳ありません! 顔に出てましたか?」
「いつも通りだけど、雰囲気がちょっと疲れてるのかなって」
モニカは慌ててたけど、ほんとにモニカの纏う空気? がなんか疲れてるのかと思ったのよね。
「実は、私も足手まといにならないように手ほどきを受けておりまして、何かあった時にシア様を守れるようにと」
「それって⋯⋯」
「奥様の指示です」
「なるほど⋯⋯だけど、無理しないでね」
「ありがとうございます」
モニカは荒事に向かなさそうだけど、やる気に満ちていているけれど、無理はしないでほしい。
あっ、それで勉強しているときはモニカがいないのね。
勿論、マリーやミアが側に控えているけれど、その理由に納得した。
さて、夜までまだ暫く時間あるし、ちょっと自主練しましょう!
「モニカ、動きやすい服に着替えたいのだけれど⋯⋯」
「何をなされるのですか?」
「体力が無さすぎて、お兄様達とのダンスレッスンでもご迷惑をかけてしまったので、お部屋でも出来る事をしようかと思って⋯⋯」
「それはお勧めできません。あまり根を詰めますと体を壊してしまいます」
モニカはいい顔しなかったけれど、私は私で早く体力をつける為に頑張りたいのでモニカの顔をじっと見つめた。
暫くにらめっこ状態が続いたけれど、先にモニカが折れてくれた。
「分かりました。ですが疲れが見えましたら直ぐにお止めしますよ」
「分かったわ! ありがとう」
早速着替えて、ストレッチからの筋トレをした。
記憶の頃はよくジムに通っていたのでよく覚えている。
モニカ達には少し不思議に思われたかもしれない。
けど、五歳の身体では少し早すぎたかも。
かなり疲れてしまった。
やっぱりウォーキングがいいかな。
それなら朝の少し早い時間がいいかも。
朝食までの間に歩くのもありかもしれない。
あっ、そうなったらクラース呼ばないといけないんだった。
「シア様、迷われているならクラース様に相談されてはいかがでしょう?」
迷ってるのを察したモニカはそう提案してきたので、私も「それが早いかな⋯⋯」と言うと「クラース様を呼んで参ります」とミアが呼びにいった。
その間にワンピースへ着替えて待つと程なくしてミアがクラースを伴って戻ってきた。
「お呼びとあり、参りました」
「急に呼び出してごめんなさい。クラースに相談があって」
「何かございましたか?」
「今日のダンスレッスンで思ったのだけれど、あまりに体力が無いのを痛感して、自分でも何か出来ないかと思って」
クラースは私の話を聞いて難しい顔をした。
これは頷いてくれないかもしれない。
「お嬢様のやる気は理解できますが、あまり無理に体力つけるのはお勧め出来ません」
「心配してくれるのは嬉しいけれど、朝、朝食までの時間帯に少しお散歩しても問題ありませんか?」
「そうですね、距離にもよりますが、それ位ならいいでしょう。私も付き添います」
散歩程度ならとクラースの許可が降りたので、早速明日の朝から散歩というなのウォーキングを始めることとなった。
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早ければ今日からGWの始まりですね!
連休中は一日置きで更新しようと思っていますので、次話もお読みいただければと思います。
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