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目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第2章 学園生活の始まり
175/273

175 楽しい時間の後は


 翌日の朝、何時もより少し早い時間に起きると、お外は朝にもかかわらず薄暗く、しんしんと雪が降っている。


 

 ――この分だとまだまだ積もりそうね。


 

 窓を開けるととっても寒く、お部屋の温度が一気に下がる。

 寒いけれど、この銀色に染まった世界を目に焼き付ける。

 暫く眺めていると、モニカが部屋へと入ってきて驚いたように私の元に近づいてくる。



「ステラ様、おはようございます。そのように窓を開けていますとお風邪を召されてしまいますよ」

「モニカおはよう。大丈夫よ。それにこの景色を見ておきたいの」

「ですが、お身体が冷え切っています」



 モニカはそう言うと厚手のストールを私の肩に掛ける。



「そろそろ窓を閉めませんか?」

「もう少しだけ⋯⋯」

「お気持ちは分かりますが、あまり無理はいけませんよ」

「分かっているわ」



 モニカに心配されたので名残惜しいけれど大人しく窓を閉める。

 窓を閉めると自身がどれだけ冷え切ってしまったのか、寒さで少し震えているのが分かる。

 モニカはすぐに温かいお茶を淹れてくれた。

 少ししてから朝の準備を整えていると、お兄様が部屋にいらっしゃった。



「おはよう、ステラ」

「おはようございます、お兄様。お身体は大丈夫ですか?」

「ちょっと筋肉痛かな。けど大したことないよ」

「良かったですわ」



 思ったより酷い筋肉痛ではなくて良かったわ。

 雪の上だと普段と違う筋肉を使うから、心配だったけど。


 

「今日は雪が凄いな。これまだまだ積もる?」

「そうですね、この雪はまだまだ積もりますわね」

「やはり王都とは違うな」

「この地を見れば、王都の雪なんて積もった内に入りませんわね」


 

 お兄様と一緒に外の様子を見ていると、お兄様は徐にこちらに向き直った。



「ステラ、楽しかった?」

「とても楽しかったですわ。お兄様は如何でしたか?」

「私もとても楽しかったよ。ステラが過ごした地をこうして体験出来て良かった」

「お兄様も楽しんで頂けたなら良かったですわ。少し、(わたくし)が振り回していたのではと心配になりましたから」

「そんな心配はいらないよ。私としたら妹にもっと振り回されたいと思っているからね」

「お兄様、その言葉は少し奇怪しいですわ」



 ちょっと変態っぽいですよ。

 ジト目でお兄様を見るけれど、全く動じていない。

 


「ご歓談中失礼いたします。そろそろ朝食のお時間です」

「もうそんな時間?」

「あっという間だね。じゃあ行こうか」

「はい、お兄様」



 私はお兄様と一緒に食堂へ向かった。

 食堂には若干顔色の悪いエドフェルト卿がいて、薬湯を飲んでいるようだ。



「飲み過ぎか?」

「王都のお酒と違い、此処のお酒はきついですね⋯⋯」

「昨日はヴァレニウスから入ってきたお酒もあったからな。あちらのお酒は味に騙されると痛い目に合うと先に忠告したんだけどね」

「伯父上の忠告を守らず飲み過ぎたと?」

「美味しすぎて⋯⋯申し訳ありません」



 かなり飲んだのね。

 伯父様はそもそもお酒をあまり嗜まれないので、きっとイクセル卿やハルド達と一緒になって飲んでいたなら、完全に飲みすぎ。

 あの二人はシベリウス一二を争う蟒蛇だから。

 此処の二日酔いの薬湯はかなり効くようだから、その内気分もよくなるでしょう。

 体験したことが無く聞いた話なので実際は分からないけれどね。

 エドフェルト卿はさておき、私達は朝食を頂き、帰る時間まで皆で談笑する。

 そして伯父様からお土産にと、エドフェルト卿にはヴァレニウスのお酒を渡していたが、彼はちょっとしばらく見たくないといった風だったけれど、伯父様が少し笑っているので態とかしらね。

 だってその笑顔が怪しんだもの。

 何となく想像できてしまうのが成長した証かしら。

 時間となったので、私達は中庭に移動すると、そこには見送りにイクセル卿やハルド達が寒い中集まっていた。



「凄い雪ですね」

「ティナ、いつもこれ位は降っているのよ」

「足が埋まってしまいそうですね」

「ヴィーお兄様、気を付けてくださいね」



 エドフェルト卿は復活したのかいつも通りの話し方だった。

 アレクったら本当にエドフェルト卿に懐いているわね。



「皆さん、雪が深い中、お見送りありがとうございます」

「いえ、雪など大したことはありませんよ。今回は必ずお見送りすると決めていましたからね。あちらにお戻りになっても、お健やかにお過ごしください」

「殿下、お身体にお気をつけくださいね」

「姫様、何事かあったとしてもご自分から動いてはいけませんよ」

 


 皆からお見送りの言葉が掛けられる。

 だけど、昨年みたいな締めっぽ感じはなく、とても暖かい。



「ステラ様、また学園が始まりましたら登城いたします」

「同じくヴィンス様、学園でお会い致します」

「マティお従兄様、レオンお従兄様。お待ちしておりますわ」

「二人共また学園でな」

「従兄上、従姉上⋯⋯」

「アレク、お勉強頑張ってね」

「また会えるのを楽しみにしているよ」

「僕もです!」



 お従兄様達は後少しシベリウスで残り、学園が始まる前に王都へと戻って来るのでそれまでのお別れだ。

 きっとこの後伯父様のきつい訓練が待っているので、心の中で応援をする。



「伯父様、伯母様。そしてシベリウスでお世話になった皆さん。とても楽しい時間でしたわ。ありがとうございます」

「ステラ様に楽しんで頂けたのなら幸いです」

「ステラ、何度も言うけれど、無理はしないようにね」

「はい。伯母様」

「伯父上、伯母上。短い間でしたがとても有意義な時間が過ごせました。感謝します」

「ヴィンス様もあまりご無理なさいませんよう」

「はい、伯父上。ありがとうございます」



 私達は皆さんに挨拶をして、転移を発動する為、伯父様達は少し距離を開ける。

 お外で話していると皆寒いでしょうし、伯父様達は慣れているとはいえ、ティナ達が凍えちゃうからね。



「では皆さん、またお会いしましょう」

「はい。お気をつけてお帰り下さい」



 私は伯父様達に笑って、転移を発動させた。

 行きと同じく帰りも離宮の中庭に戻って来ると、お祖父様とお祖母様が迎えに来て下さっていた。



「お帰り」

「ただいま戻りましたわ」

「元気そうで安心したわ。あちらは寒かったでしょう?」

「帰りは雪の降り方が王都では見れない程に降っていましたよ」

「それは寒かったろうな。まぁ中に入れ」



 私達は部屋へと通される。

 彼方から戻ってきたら、離宮のお部屋が少し熱く感じる。

 


「何事もなく過ごせたか?」

「はい。恙なく過ごせましたわ」

「まぁステラのその顔を見ればよく分かる。楽しめたようだな」

「伯父様達のお陰でとても楽しく過ごせました。それに皆さんにきちんとお礼を言えましたし、心残りはありません」

「そうか」



 お祖父様はやはりそこを心配していたようで安心したような表情をされていた。



「ヴィンスもいい経験が出来たようだな」

「はい。こちらにいると出来ない体験をさせて頂き、とても有意義に過ごせました」

「お前にとってもいい経験になったようだな。⋯⋯あちらの森はどうだった?」

「とても静かでしたわ。魔物も少なかったですし、今は落ち着いております」



 ほんの少し出たくらいだったので、問題はないと思う。

 伯父様達も少しは気が楽になるかしらね。



「少しはあれらもゆるりと出来るだろうな」

「伯父様には昨年沢山ご迷惑をかけてしまったので、少しはのんびりしていただきたいですわね」

「だが、そうそうのんびりはしないだろうがな」



 伯父様がゆっくりしている姿はあまり想像出来ないけれど、少しは休んでアレクの事も見てあげてほしい。

 その時間を私が使ってしまったから、本人は気にしてなさそうに思うけれど、それでも親子の時間は大切にしてほしい。



「ステラ?」

「何でもありませんわ。お祖父様達にもお土産があるのです」

「何だ? ヴァレニウスの酒か? あそこの酒は格別だからな」

「お祖父様、飲み過ぎはよくありませんわ。お酒ではありません。お祖母様とお揃いでお兄様と一緒に選びましたの。気に入ってくださるといいのですけど⋯⋯」



 お祖父様にはカフスボタンを、お祖母様にはカフスボタンと同じ意匠のイヤリングだ。



「まぁ! とても細やかな細工ね。落ち着いたデザインがいいわ。それに、イルの瞳の色ね。ふふっ。この年になってもイルとお揃いなんて、嬉しいわ」

「んっ、まぁ、そうだな」



 お祖父様が照れてる!

 初めてみたわ!

 いつも威厳に満ちていらっしゃるけど、何だか可愛く見える。

 ちなみにお祖父様にはお祖母様の瞳の色であるエメラルドを使用している。



「ヴィンス、ステラ。ありがとう。大切にするわね」

「二人共ありがとう」

「喜んでいただけて良かったですわ」

「お祖父様とお祖母様の笑顔を見る事が出来て私達も嬉しいです」



 お二人が喜んでくださって良かったわ。

 私はお兄様と微笑み合う。

 お祖父様達とは少しシベリウスで体験した事をお話した後、私達は王宮へと戻って来た。

 王宮の転移陣の部屋には王宮の執事長であるハリアンが出迎えに待っていた。



「お帰りなさいませ。ヴィンセント殿下、エステル殿下」

「今戻った」

「お迎えありがとう」



 私達は一旦王宮の一室へと向かう。

 帰城の挨拶をする為、お母様がそちらで待っているのだ。

 部屋に着き入ると、そこにはお母様だけかと思ったらお父様もいらっしゃって少し驚いたけれど、お兄様と共に挨拶をする。



「父上、母上。ただいま戻りました」

「お帰り二人共。何事もなく過ごせたようだな」

「はい」

「ステラも思い残す事無くすっきりとした顔をしているな」

「はい、お父様。改めてシベリウス領へ行く事を許して下さりありがとうございます」



 皆さんにきちんと挨拶が出来たし、心残りは無い。

 だからあちらに行く許可を出して下さったお父様には感謝しかない。



「エドフェルト卿とベリセリウス嬢。其方らにも二人の護衛を感謝する」

「勿体なきお言葉。私達も良い経験となりました」

「そうか。今日はゆるりと休みなさい。あぁ、昼食は此方で用意しているからヴィンス達と共にとるといい」

「感謝いたします」

「お前達は昼食後話があるから宮廷に来るように」

「畏まりました」



 何かあったのかしら。

 お父様の表情からは何も伺えないし、お母様はいつも通りだ。

 気にはなるけれど、今は聞ける雰囲気ではない。

 お父様の話はそれだけなのか、直ぐに宮廷へと戻って行き、お母様もご予定があるのか直ぐにお部屋を後にした。

 お父様達がこの場から居なくなると、ティナ達はほっと一息ついていた。

 ちょっと緊張していたみたい。

 これでお父様達が一緒に昼食をとる事となったらどうなっていたのかしらね。



「アルヴィン達も緊張するんだな」

「ヴィンス様は私を何だと思っているのですか?」

「腹黒」



 にべもなくスパッと言い切るお兄様に流石にエドフェルト卿も一瞬沈黙した。


 

「間違ってはいませんが、流石に傷つきますよ」

「ですが、私達だけで良かったです。王妃殿下が一緒なら流石に緊張致します」

「そんなに緊張する事ないと思うけれど」

「それはステラ様にとってはお母様だからですわ」



 まぁそれはそうだけれど、特に緊張するような難しい感じでもないと思うのだけれどね。

 けど、他国の王族と共に、と考えたら⋯⋯うん、緊張はするかもね。

 他愛無い話をしながら昼食を頂き、私は改めて二人にお礼を言い、ティナ達は自分達の邸へと帰って行った。

 そしてお兄様と共に宮廷へ、お父様の執務室へと向かう。

 中にはお父様の側近達が揃っていて、何やら難しい顔をしていらっしゃった。



「二人共来たな。そこに座り少し待っていなさい」

「はい、失礼いたします」

 


 何だか深刻なお話をなさっているみたい。

 私達は大人しく待っていると、漸くお話が一段落したのかお父様がソファへ掛けた。



「二人がシベリウスへ行っている間に事が起こってな。特にステラにも関係のある事だ」

(わたくし)に、ですか?」

「そうだ。ステラが学園で突き落された件だ。あれに関わっていた二ルソン家、子息ではなく、子爵本人を禁止薬物の密輸幇助で拘束した。子爵本人はそれが禁止薬物だとは知らなかったみたいだが、それだけでは済まされないからな。それに伴い家族は勿論使用人に関しても捜査が終わるまで邸にて謹慎を申し渡している」

「父上、その禁止薬物、とはどのような類の物なのですか?」

「精神に作用するものだ」



 ――精神に? それって⋯⋯まさか?



「ふっ。その顔、二人共勘がいいな」

「お父様、感心するところではありませんわ。フリュデン男爵令嬢もそれを口にした、ということですね?」

「そうだ。あれは禁止薬物とはいえ、量を間違わなければ薬にもなる物。だが、一定量を超えてくると精神に支障をきたす故、一般的には禁止薬物と定めている。扱える者は厳しい試験の後、その名を管理者名簿に載り厳しく管理している」

「それを子爵が知らず加担していたと。ですが、フリュデン嬢がいつそれを口にしたか、ですが⋯⋯」

「それについては私から報告させていただきます」



 ベリセリウス侯爵が口を開いた。

 子爵はあれを甘味の一種だと言われていて、それらを紅茶に入れると甘みが増しとても美味しいのだと説明されたようだ。

 だが、それは間違いではなく、実際にその薬物は甘く感じるので素人が飲んでもそれが薬物だとは気付くことは無いという。

 そして子爵を始め一家もそれを少しずつ摂取していたらしく、ただ少しずつなのでそれ程人体に影響は出ていないらしい。

 そこで何故フリュデン男爵令嬢が口にしたか、という話だが、イーサク・ニルソンが令嬢にそれを渡したと話し、令嬢に事実確認をすると確かに彼から受け取って言われた通り紅茶に入れて飲んだという。

 量に関しては、甘い物が好きだからという事で多めに入れていたと話していたので、それが精神に支障をきたす原因の一つと考えられるそうだ。

 今はそれを摂取していないので、酷くなることは無いらしいけれど、今迄摂取した分がまだ人体に残っているらしく、アンデル伯爵がそちらの治療にもあたっているという。

 知らずとは言え、そのような禁止薬物を人に与えた、という事で二ルソン卿もまた罪に問われる事となる。

 そもそも何故フリュデン嬢に渡したか、特に意味はなく、フリュデン嬢との話の中で甘いものが好きだという事だったので渡しただけらしい。

 私の突き落とし事件が段々と犯罪が漂った方向へと向かっている。

 まぁイーサク・二ルソンに関してはただ親に巻き込まれただけのような気もするけれど、実際にフリュデン令嬢が被害にあっているのだからそれだけでは済まされないのだけど。

 それは一旦置いといて、肝心の子爵に幇助させたのが誰かという事。

 二ルソン子爵にそれを提案したのは彼の家が贔屓にしている商人のようで、ギルドに所属しているので素性は確かなようだけれど、更にその商人に提案した他の者がいるようだった。

 その商人に関しても提案者にいい様に言いくるまれたか、それとも信用に足る人物だったのか⋯⋯そこはまだ調査中だということだけど、そのような怪しい物を扱うって本当に商人なのかしら。

 


「ニルソン家の子息達の内、三男のイーサクだけがその薬物を他人、男爵令嬢に渡したようで、彼の兄達はその粉自体を知らないようです」

「そうすると、何故三男だけがその粉を知っていたんだ?」

「本人の証言では偶然、という事ですが、疑わしいところですね」



 確かにそれは怪しいわ。

 他の兄弟が知らず、何故彼だけが?

 子爵が態と彼にだけに渡るようにしたか、若しくは彼には秘密だと言う風に口止めをしたか。



「今分かっていることは以上です。次にノルドヴァル公爵の件ですが、こちらに関しては以前にも増して調査が難航しております。分かっている事と言えば闇の者が関わっている事は確実という事だけです。それらも証拠となりうるものはありません」

「関わっているのが分かっていて証拠がない?」

「はい。確たる証拠を掴むことには至っておりませんが、エステル殿下がシベリウス、セイデリア両令息と共に交流会の折、魔獣と対峙したあの件に関しては公爵が関わっておりました。後は、その確固たる証拠を確保することなのですが⋯⋯」

「それが難しい、という事か」

「左様です。直ぐに解決できずに申し訳ございません」



 侯爵が謝らなくてもいいと思うのだけれど。

 それだけ相手が狡猾だということで、調査をしている人達に何もなければいいと思う。

 甘いと言われるだろうけど。

 だけど、提示できる証拠がない、というのは証拠を残さないようにしている、だけど何かしら何処かに何かしら残っていそうだけど⋯⋯。

 こういう時に録画機能ってとても便利だと思う⋯⋯あっ! 魔道具で作れないかな?

 今回は誰に相談すれば⋯⋯やっぱり侯爵かな。

 頭の中で考えながらもちゃん皆の話を聞くあたり、ちょっとは成長したと思う。

 今後も物的証拠掴むために調査を進める、という事で話は終わったが、学園では今まで以上にあの双子にも、ノルドヴァル公爵家の息の掛かった家には注意するように念を押された。

 私は学園に復学するのはまだ先なので、宮廷での注意するように言われたが、私の行動には侯爵が付いているだろうから何かあるっていう事は無いと思う。

 絶対、というわけではないので勿論自身でも行動には十分に注意を払う。



「ステラは宮廷で一人で行動するようなことが無いように気を付けなさい。必ず護衛を連れ歩く事、出来るだけエリオットと行動しなさい」

「分かりましたわ」

「ヴィンス、お前もだぞ。行動に関してはステラよりお前の方が気軽に動くからな」

「酷いですね。ちゃんとヴィル達と共に行動しますよ」



 現段階で分かっている事を聞いた後、私は一度執務室へと寄った。

 侯爵とアルムにお土産を渡すととても喜んでくれたので良かった。

 一段落したところでアルムから私宛に届いているお手紙を受け取り、中を確認していく。

 その中にダールグレン子爵からのお手紙があったので、そちらを確認すると、昨年私のお誕生日会での出来事の件について私に謝罪したい旨が掛かれていて、一度私に会いたいとの事だった。

 どうしようかしら。



「如何されましたか?」

「ダールグレン子爵からの面会希望があるの。この間のお誕生日パーティーの件ね」

「そういえば彼の令嬢がステラ様に対し無礼な事をしていましたね」



 何も言われないから知らないかと思っていたけれど、やっぱり見られていたのね。



「謝罪したい旨が記されているわ」

「彼は宰相の元で働いておりますので、ご息女の今回の無礼な振る舞いをきちんと謝罪したいのでしょう。行動が遅いと思うのは、令嬢がパーティーの件を彼に話さなかったのが原因でしょうね。今回はダールグレン夫人も参加していなかったわけですし」

「彼はどういった方です?」



 宰相の懐刀と言われるほどに出来る方だとは聞いているけれど、それ以外についてはそれ程知っているわけではない。

 侯爵曰く、彼は誠実で責任感の強い方で、何事にも手を抜く事なく手際よく仕事をされるそうだ。

 対人においてもとても温厚で人当たりが良いので、彼を嫌う人は少ないだろうとの事。

 先入観を持って接するのはどうかと思うけれど、彼は今回の事をどう思っているのでしょう。

 会って話をしてみれば分かるわね。



「とりあえず、子爵に会ってみましょう」

「いつにされますか?」

「そうね、明後日の午後からはどうかしら?」

「ではそのように伝えましょう」

「お願いね⋯⋯あっ! 待って」

「如何されましたか?」

「ついでにエドフェルト公爵と会う日程も決めておきましょう」

「あぁ、そうですね。それがよろしいでしょう。先にダールグレン子爵がステラ様に会うとなると、少し面倒になりかねません」



 面倒の意味が分からないけれど、公爵からも時間を作って欲しいと言われているのに、ダールグレン子爵に先に会う事になるのは、理由があるとはいえ失礼になりますものね。

 公爵は公爵で学園が始まってからという条件付きだから仕方ないと言えば仕方ない事だけど。

 一緒に伝えておくとあちらも予定を立てやすいでしょうし。

 そちらも侯爵に一緒に伝えてもらうようお願いをした。


ご覧頂きありがとうございます。


ブクマ、評価、いいね、をありがとうございます!

とても嬉しいです。


次回は十六日に更新致します。

次話も楽しんていだけたらと思いますので、よろしくお願い致します。

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